グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬の大切な役割行動:里山の境界線を守る役目

やっと秋の風がふくようになり、本当に久しぶりに山深く犬たちといっしょに歩きました。

オポがいたときは頼りっきりだった山道も、
小さな犬たちを伴って歩くときは、自分が見張り番になるため気合も入ります。

山歩きするとなんだか勇気がわいてきて、少しだけフットワークも軽くなります。


ついつい後回しになってしまう庭草や木の手入れ。
山と家の境界線になっている崖?の草刈へと向かいました。

そこで、今までにないものをみました。
七山校のある里山に過ごして10年近くで、もしかしたら始めてのことかもしれません。

庭の裏手の坂のような場所に、いくつもの掘り返しの後があるのです。

この痕跡の正体は間違いなくイノシシです。
家のすぐ横の場所で、アジサイなどが咲いている根のところも掘り返されていました。
イノシシが庭近くまで接近することはあっても、こんなに近くを掘り返されたのは始めてです。

「境界線がゆるくなってるんだ…」と感じました。


里山は野生動物と人の暮らす里との境界線です。
人の環境に対する開発によって、野生動物はどんどん山の奥へと追いやられてきました。
里山というと、福岡佐賀近郊ではかなり山に近い場所になります。
七山校はそんな野生動物との境界線になる里山に位置しています。

人の暮らす里と、野生動物の暮らす場には境界線が必要です。

境界線があることで、お互いに無益な衝突や事故を防ぐことができます。
野生動物たちは野山で暮らし、人は里で暮らす。

人やは必要なものをその境界線からとって活用していました。
境界線に人が入ることで、動物達は人の気配を感じることができ、
彼らも境界線に近づくときには、十分に警戒するようになるのです。

動物は警戒すると、とっさのときには逃げるという行動を選択できます。
ところが警戒することを忘れると、逃げるタイミングを逃してしまいます。
人の気配に鈍感になり、お互いに近づきすぎてしまうからです。

だから野生動物と人の境界線は、お互いが安らかに生活していくためにとても重要なのです。


境界線が緩んでしまった理由は、すぐに思いつきました。
里山犬のオポがいなくなったことです。

家の前の庭は山に向かっていく上の方向と、車や人の出入りのある下道に向かう方向があります。
どちらも庭の端側になります。
オポはいつも、庭の山側の斜面に近いところで排泄をしていました。

七山にきて庭に立ち寄って排泄をするほとんどの犬が、車や人の出入りのあるシャッターのところに
脚上げ排尿をします。

ところがオポは、車や人の出入りの制限となるシャッターの近くで排泄することはありませんでした。
下道で排泄をするときは、その境界線よりもう少し下のところで行いましたが、
シャッターが閉まっているときにはその方向には出られませんので、下道での排泄はできません。

下道での排泄はちょうど、下の家にオポがいたころにいた犬との境界線にあたっているように思えました。

山手の方には竹やぶのあるところがあって、そこがイノシシの通り道になっていたようです。
森から竹やぶへと隠れることができるため、移動しやすいからです。
竹やぶはうちの敷地ではないので刈り込みされないままになっています。
そのイノシシの通る道との境になる、刈り込まれているうちの敷地の最先端で、
オポはいつも排泄をしていました。

そのオポという犬の排泄は、野生動物との境界線をはっきりとさせるものであったようです。
その排泄のラインから内側でイノシシの気配を感じるのは、夜暗くなったあとでした。
それでもそこにイノシシがいるときには、私の気配を察してすばやく竹やぶに戻っていきました。

オポといっしょに庭に出たときも、イノシシの動く気配を感じましたが、
逃げるイノシシの気配にオポが顔を上げることがあっても、追うことはありませんでした。
境界線が守られているということを、わかっていたのかもしれません。


犬は山との境界線を守り、人は人里からの境界線を守る。

そんな風に役割分担されていたように思えます。

用件があってシャッターの境界線や家の戸口の境界線を越えることを私が許可した人を、
オポが攻撃したり追い立てたことは一度もありません。
その代わり、その人たちに対してきちんとルールを伝え、テリトリーを安定させることは
私の大切な仕事でした。


オポという犬が境界線をつくってくれていることを、なんとなく知ってはいたものの
こうやって、事実上イノシシが侵入してくる足跡を目にすると
その役割の大きさと重さに、大切な仕事をしていてくれたのだと頭の下がる思いです。


さて、現実的な問題を考える必要があります。
イノシシを寄せ付けないためにできること。

草や藪をもっときれいに刈り払うことです。


野生動物は身を隠す場所のないことを嫌います。
藪があれば藪にかくれれ侵入します。
森と家の間は、草刈がなかなかうまく進まない場所なのです。
経験したことのない方は実際にやってみるとわかりますが
枯れ草剤を使いたくなる気持ちだけは理解できます。
でも、それを使ってしまっては負けだと感じるのは私だけでしょうか。

里山の境界線を守る仕事は、どんな犬にでもできることではありません。
だから、犬を飼えばいいという簡単な問題でもないのです。

できることからひとつずつ。


ということで、秋の草刈大会はじまりました。

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