グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬のシャンプー後の行動からわかること

昨晩、ラジオLoveFM放送の「月下虫音(げっかちゅうね)」に出演させていただきました。
事前打ち合わせをやったのにもかからわず、本番では全く違う話しになってしまい、思ったとおりです。

たくさんの質問をいただき、スタジオで拝見させていただきました。
どれも興味深く、ひとつのテーマを取り上げて相手が応じてくれる形式なら1時間くらいはお話できそうな内容でした。
色々な話題にふれたため、消化不良の方もいらっしゃるかと思います。ひとりの疑問は100人の疑問なので、ブログを通して少しずつ紹介できればと思っています。

それで今日の話題は、シャンプー後の不思議行動とその行動から分かることです。

大田さんがブログ記事「雨の日の散歩が嫌いですか?」を番組で紹介してくれました。犬の本では取り上げられないような小さな「犬の不思議」を大切にしていくと、ここから「雨の日は大丈夫なのに、何故シャワーはダメなの?」という疑問に発展していきました。実はこの謎解きは、この「犬のシャンプー」からたどりつきそうなので、ここから始めていきます。

番組でも「シャンプーの後に、部屋の中を走り回ったり、爪をとぐような行動をする」というメッセージをいただきました。これはおそらく、以下のような犬のシャンプー後に起こりやすい行動の組合せのようです。

シャンプー後に起こりやすい行動の例
・走り回る
・身震いをくり返す
・じゅうたんやソファに体をこすり付ける
・飛んだり跳ねたりする
・くるくる回る
・穴掘り行動をする
・耳を後ろ脚でかく行動をする
・体の毛をなめる
・体をカツカツとなめる行動をする
・眠り始める
・まばたきをする
・あくびをする

シャンプー後に、犬はこれらの行動のいくつかを行います。
犬にとって行動はコミュニケーションの手段です。行動の中には犬が伝えたいことがたくさん隠されていますので、これらの行動の意味をわかるようになると、シャンプー後の犬の状態がわかることになります。

これらの行動、どんな意味があると思いますか?

実はこれらの行動はがストレスを感じたときにする行動です。種類はいくつかにわかれますが、ストレスを発散させる行動だったり、落ち着かせることでストレスを回避するための行動、ストレスから逃避するための行動など、どれもストレスを解決させるために必要な行動です。これらの行動は、ストレスの要因となっているものが解決しない限り、継続して出ます。ストレスの要因となっているものが減少すると、これらの行動は減少してきて行動が落ち着いてきます。

シャンプー後の犬の行動を観察してみてください。シャンプー後に激しく犬が行動をします。しかし、飼い主がぬれた犬の体を乾かすための様々なことを行うことで、シャンプーによってぬれた犬の体は乾き始めます。そうすると、犬のこれらの行動は少しずつ減ってきます。ということは、体がぬれていたことが、犬のストレス行動を原因だったいうことになります。

「体をぬれていることがストレスになる?でもうちの犬は泳ぐのが好きなのに?」という飼い主さんもいることでしょう。人から見ると矛盾していそうなことですが、犬からすると当然のことです。なぜなら、泳ぐために水にぬれることと、シャンプーでぬれることは犬にとっては「別のこと」だからです。

では、何が違うのか。
まず、シャンプーという臭いのついた石けんを使われることが、犬にとっては大変なことです。犬は臭いの中で生きています。シャンプーによって犬の臭いは人が感じるところの「いい臭い」に変わってしまいます。これは犬にとって大問題です。犬は安全でリラックス環境の中ではほとんど臭いというものがありません。犬についている臭いは個体を表現するための「名札」のようなものです。ストレスのかかる環境で生活したり、ストレスのかかる経験が重なっていくと、犬の臭いはきつくなります。これも人にとっては好ましくないことですが、犬にとっては今の自分を表現する臭いであり、好き嫌いで済まされる話ではありません。とにかく犬はシャンプーの臭いによって「名札」をなくしたことになります。これは大きなストレスです。

次に、シャンプーを使わずにシャワーやホースで水やお湯をかけて洗っただけでも、上記のような行動をする犬はたくさんいます。この場合だと、水もしくはお湯のが犬の体に与える影響がストレスになっているということです。
このことについて、泳ぐことや雨の日にぬれることと、シャワーやホースで現れることの違いをどう思いますか?
人と犬は異なる動物なので、全く答えが出ない事もありますが、それでも一旦これしか考えようがないので、「わたしだったらどう感じるだろう」という質問はいつもしています。ここでこの質問を自分にしてみます。どういう違いを感じますか?ここで見つけた違いはとても答えに近づいてきます。

三つつの点で違いがあります。

一つ目に、水やお湯の圧です。犬にとって、体の表面にかかる圧というのはとても重要です。たとえばあなたが誰かがあなたの肩に手を置くことを想像してください。知人があなたの肩に軽く手をおきます。あなたには一定の圧がかかりますね。別のケースでは、知人があなたの肩に手をおき少し強く押します。肩にかかる圧の違いは、あなたにどのような影響を与えるでしょうか?そして、これが予期せぬ圧であったとしたら、動物の体に一定の情報が伝わってしまうということなのです。犬は当然それを避けようとします。そしてあなたはホースを振り回すということになります。水をかけるときでも、シャワーを霧状にしてやわらかく全体的にあたるようにすると犬が落ち着いていられるのは、この圧の違いによるものです。

二つ目に、毛を逆に撫でる行為により犬に与えている影響です。犬を洗うときは毛の中にはいった汚れや砂を落としたいので毛を逆に撫でる行為をします。人の手でやっているつもりはなくても、シャワーを毛の近くにあてると水の力で毛が自然に「逆なで」の状態になってしまいます。この行為は犬のストレスになります。犬の毛が濡れていないときに犬の毛を逆になでると、ブルブルっと身震いすることがあります。逆に撫でた犬の毛はすぐに元の方向に戻りますし、ブルブルっと身震いすることによって、すぐに毛の方向は整えられます。
シャワーのときにこの毛を逆に撫でる行為を行うことで、犬の毛は本来の向きとは異なる方向に向きます。横になったり、上になったり、逆なでになったりしますね。シャンプーの泡がつくと毛の向きがあちこちへ曲がったままになったりしています。

三つ目に、毛についている水の量です。泳ぐことが好きな犬も、水から一旦あがると激しく身ぶるをして水を払います。このとき同時に毛の方向も整えられます。身震いによって出てくる水の量は大変なものなので、そばにいる人間は「キャー」といって逃げることになります。海や川からあがって一旦はストレス状態にある犬の毛も、身震いによりそのストレスを解放します。雨の日に水をはじくタイプの毛質をもつ犬も、泳いだり、シャワーを浴びるという大量の水には水を一旦身に付ける状態になります。ただこのことがまた、犬の泳ぐことを助けているように思えるのです。全くはじいてしまうのでなく、毛の間に水がはいることで毛のひとつひとつが水に抵抗をもつようになるということで機能しているのではないかと。犬が泳いでいるときの被毛をみると水の中でそうした動きをしていると感じるのですが、これは私の推測の範囲内です。

とにかく、こうした理由で犬はシャンプーによりストレス状態におちいり、シャンプー後の行動が出るということです。シャンプー剤を使ったときと使わないときで、その後の行動も異なることがありますので、試してみてください。どうやったら止めさせられますか?という質問には、「ストレス行動はその原因を取り除くことが一番の解決策」だとお答えすることになります。「シャンプーしちゃだめなの?」となるでしょうが、そもそもシャンプーは犬にとってはストレスとなる行為なので、できるだけそうならないように工夫してあげてください。

ちなみに、私と共に暮らしていたオポには、7歳で山に引っ越した後から亡くなるまで、一度もシャンプーや水洗いをしませんでした。その必要がなくなったからです。引越しだけが理由ではありませんが、環境を変えたことで犬の毛質や皮膚は激変しました。大切なのは、私が犬にシャンプーをしなくなったことで彼が解放されたことがとても大きなものだったということです。専門家の私でも、知らないで犬にやってきたことがたくさんあります。逆に仕事としてみにつけた事のほうが、犬を混乱させることがたくさんありました。価値観を捨てて犬と向き合うことを選んだことで知り得たことがたくさんあります。このことが、今こうしてブログを書いている理由でもあります。

ここに書いたことは、トリミングショップなどでのシャンプーには当てはまらないことがあります。また、特殊な被毛をもつ純血種にも、当てはまらない行動があります。その理由はまたいつかご紹介します。


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