グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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Monthly Archives: 5月 2016

里山犬の育て方

グッドボーイハート七山校は山との境界線にある、いわゆる奥山と里山をわけるような地形にあります。それぞれの里には家のすぐ裏側に「自家製の野菜室」となる畑を作られています。その畑を奥山から狙っている野生動物たちがいます。イノシシ、タヌキ、アナグマ、テン、イタチ、サル、キツネ、モグラ、鳥たち…とメンバーもそうそうたるものです。

これらの野生動物たちによる被害は大変なものらしいことをイノシシやシカに関する本を読みながら知りました。家の裏の畑は生産物用ではなくあくまでも自宅用のようですが、それでも手をかけて育てた日々の食材に手を出されることは阻止しなければなりません。そこで野生動物を寄せ付けない方法としていろいろな手立てが行われているようです。そのひとつが犬です。

私も当初は、他の生産物用の畑の用に動物用のステンレスの柵で囲っておけばいいのではないかと考えていたのですが、なぜか、家の裏の畑には見たところどのご家庭もその仕様がありません。その必要がないのだとすると、その存在は里の犬たちのガードによるものだと推測しています。

七山校の近くのご家庭にも立派な里山犬が住んでいました。その犬はとても不思議な犬で、私の犬知識をさらに深めてくれた犬になったのですが、まさに彼は飼われているというよりは、住んでいるという犬だったのです。この犬については逸話はまた別の機会にゆっくりと書いていきます。話しを戻します。それで、その立派な里山犬は亡くなって数年たったのですが、1ヶ月ほどまえにその家に新しい犬が来たのです。

さいしょは、ワオーン、ワオーンと4ヶ月くらいの犬が出すような呼びなきが聞こえてきました。まさか捨て犬ではないかと注意深く聞き耳を立てていると、ときどき、キャインキャインと興奮した声になる時間があり、明らかに人が子犬に接触していることがわかりました。新しい里山犬が来たのです。

先代の犬にとても興味があったので、次の犬はどんな犬なのだろうとついつい犬の様子を観察したくなってしまいます。実物を見ると体型はかなり大きくなっており子犬という風貌でもありません。若年期くらいかなと。その犬が少しずつつながれる場所が変化していくその過程がさらに面白いものでした。まだ途中なのですが、つい先日、日中裏側の畑の車のそばに係留されるようになりました。

その日は七山で一日作業日だったので、デビューした犬の様子を掃除したり洗濯したりしながらその日の成長を見届けていました。そしてある行動を学んでいることを目撃しました。というか私自身がその刺激になってしまいました。
午前中に洗濯物を干しに出ると、ちょうどその犬の視界に入る状態になり、ウォンウォンと警戒吠えをするのですが(私は目線を合わせずに淡々と洗濯物を干す)、尾は下がったままで、体重も若干後ろにかかっており、後退の動作にはいっています。私の方をみながら、ウォンウォンと吠えたり、吠えやんだり、吠えたり、吠えやんだり。行動の不安定さにその気持ちもうかがえます。室内に入ると吠えるのを止めましたが、しばらく尾を垂らしたまま立ち尽くしていました。
午後になって、洗濯物の位置を変えに出ると、なんと今度はつながれている車の下にもぐって、吠えずにこちらの様子を伺っています。私の方からは明らかにその姿が見えているのですが、私が視線を送らなかったり、気づかないふりをしていることでその「隠れる行動」は継続しました。結果、室内に入るまで隠れたままでいたのです。
「隠れる行動」については先日ブログに書いたばかりです。
犬は隠れる動物

つながれた午前中は私の姿以外にも、ちょっとした変化にいちいちビクビクとして吠える回数が多かったので、このままビクビクさせて終わってしまっては社会化学習は後退してしまうと心配していたにもかかわらず、昼過ぎには隠れる行動を自分から行ったことで環境は一変し、警戒吠えは明らかに対象を認識したときだけに変化していきます。
途中家の人が作業のためかそばを通ると、キャインキャインと飛び上がろうとする後追い後鳴きをしてアピールしましたが、振り返ってももらえていませんでした。はたからみるとかわいそうかと思えるこうした接し方も、犬が自主的に行動することを引き出すきっかけとなり、簡単には判断できないものです。

田舎でも犬は係留して飼育するようにとの指導が厳しいため、どの犬も係留されています。ですがその育て方は数十年前とたいして変わっていないのではないかなと思えるほど、原始的な感じがします。農業も機械化が進む中で行程自体はかなり変化してきたのだと思いますが、変わらない作業は変えようとしないという風潮が見られるからです。そして犬育てについても同じように「つないだだけ」あとは変わらないという風景に見えるのです。そのことが、犬にとってストレスを与えていることもありますが、変わらないものの中には、犬が育つ接し方も垣間見えて、何事からも学ぶべきことは多いのだと感心させられているところです。

さて、このニュー里山犬。冬季からの今シーズンのイノシシ防衛に力を発揮できるほどになるのでしょうか。陰ながら応援しくたいと思います。

いつもながら犬の立場にたって写真はありません。白地に黒いぶちのある洋犬風のミックス犬。その表情と行動の変化がこれから楽しみです。

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Posted in 日々のこと, 犬のこと

わからん犬語も読み方次第

生徒さんの犬語自己解説を聞いていると、「ん?」となる瞬間があります。
先日もこんな「ん?」がありました。

生徒さん「よく会う家族の犬が来ると鼻をペロッてなめるんです。だからちゃんと服従しているんですよ。」といわれるのです。
私「なぜ、服従しているって思うんですか?」
生徒さん「えっ?だって、なめるのって服従ですよね?えっ?違う?」
私「服従する行動の中に確かに“なめる”という行動はあるけど、だからといって“なめる”行動がすべて服従する行動というわけではないですよ。それだったら尾をふっているのが全部喜んでいるのだと思ってしまうのと同じ誤解になってしまうでしょう。」
生徒さん「そうですよね。意地悪するときだって“なめる”ようなことしますよね。」
私「そうそう。そいういうことです。」

なめる行動=服従行動ではないことをなんとか納得してもらいました。
そうすると「ではなぜ、なめているのか?」という疑問がひとつ増えてしまいます。

生徒さん「じゃあ…なぜなめているんですか?」となります。
私「なぜだと思いますか?その2頭はどんな関係だと思いますか?」
生徒さん「ストレス?実は仲が悪い?えー、わかんないです。」

こうなった場合には、2頭の犬と犬の間で起きていることですから、この2頭の間に起きている様々なシチュエーションの行動を再検証して、その関係性を考えなおしてみるといいのです。付き合いの長い犬なら、過去のデータからいくつもの行動チェックができます。これをピンチを思うと辛いけど、チャンスと思えば希望の光が見えてきます。

犬のコミュニケーション、つまり犬語はある程度体系化しています。コミュニケーションですから、ある犬が出すシグナルに、相手の犬が応じるシグナルという風に、刺激があれば反応し、そしてその反応に次の刺激が出る、という風にシンプルなものなのです。

だから本当はわかりやすいものなんですよ、といいたいところですが、最近では犬も犬語が下手になってきています。犬語をきちんと話すことができなくなってきているようです。「うちの犬は犬といっしょに育ったから大丈夫。」ですか?子犬だけが複数で育つと、コミュニケーションが荒くなってしまうこともあります。興奮した行動を止める大人がいないからです。先住犬が子犬を受け入れられないケースもあります。意地悪なのではなくて、「自分にはお世話は無理だよ。」という姿勢を示しているだけなのですが、子犬にとってはきついものですね。

コミュニケーションは「発達」して身に付くという過程を経ていきます。種同士のコミュニケーションは身に付けるべき年齢があり、その後に発達していくのです。コミュニケーションの発達は反復練習ではなく、犬の成長と共に変わっていくコトバの変化のことをさします。私たちの言語の身に付け方と同じように、少しずつ洗練されていくもの、それがコミュニケーションです。

その発達と成長のためのベストの環境が、犬にはなかなか準備できません。そのため、最近の犬たちの言葉は「読み取りにくい」ことがあります。つまり、話題になった「なめる行動」も複雑になっていることがあります。いくつかの「こういうときになめる行動をする。」中に当てはまらないこともあります。

だから、ひとつずつ丁寧に犬の行動を見て、感じて、知ってあげましょう。読み取りにくいというだけで、わけのわからないことを言っているわけではありません。細かく読んでいくと、どの犬もきちんと何かを伝えたがっていることを感じます。

そして、ここが恐ろしくまたすばらしいところなのですが、犬の言葉を感じて知って共感していることをどうやらわかっているらしいのです。この部分については、身近な犬の反応しか例に出すことができず、「それって先生の思い込みやろ。」といわれるかもしれません。それでも、私はこの思い込みを少しだけ維持しようと思っています。「それ私も知りたい!」という方、大歓迎です。

 

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犬語セミナー

今日は犬語セミナーの日でした。プライベートクラスで撮影した犬と犬の対面のビデオを2本見ながら、みなで犬語の勉強をしました。犬語セミナーに始めて参加する方もいたので、最初に犬語セミナーとはどういうクラスなのかを紹介して開始しました。関心のある方はこちらでご覧になってください。
犬語セミナー紹介

今日のビデオは、1頭の犬が異なる2頭の犬とそれぞれに対面したビデオでした。初対面のビデオは、その犬の他の犬に対する行動が分かりやすく表現されているため、犬を知るための貴重な映像になります。さらに、できるだけ条件をそろえた上で、異なる犬を合わせたときにどのような行動の違いが生じるのかを見比べると、より理解も深まります。

犬語を理解するためには、時系列で進む犬の行動をノートに書き出してみることから初めてください。行動を書き出すときは、犬の行動をそのまま書きます。
たとえば、背中の毛が逆立っている、口を大きくあけている、舌をペロッと出す、地面のにおいをとる、といった行動です。時系列で書き出していくと、その犬の行動がどのように変化していくのかを見ることができます。ビデオ撮影したものは、くり返し何回も見ることができます。最初は拾えなかった行動も、くり返し見ていくと拾い上げられるようになり、これをくり返すと、よくたくさんの行動を拾えるようになります。

初参加の方に感想を聞くと「犬の動きが早くて見逃してしまった行動がいくつもあった。」といわれていました。これは見方の練習なので、くり返し参加しているとたくさんの行動を見ることができるのです。とにかく回数です。

今度は拾い上げた行動の種類をまとめていきます。ストレスの表現行動として出たものはどの行動なのかとか、この行動は何を目的としたものなのか、この行動は何に反応したものなのか、ということです。

地道な作業が続くためひとりだと断念しそうですけど、パズルをみんなで探して埋めていくような作業です。犬語セミナーとのきにはだれかが自分の気づかないことを見つけてくれるので、どんどんパズルが出来上がっていきます。

今日のまとめとしては、題材になった犬はどのような性格なのだろうということでした。完全な答えはでませんが、いくつかのヒントは掴めたようです。犬の性格とは、犬がどのような経験を積んできたのかということと、犬が本質的にもっている性質がミックスされたものです。犬という動物を習性的に理解するだけではなく、犬という個体を個性として理解することは同じくらい大切なことだと思います。

どのような環境が犬に落ち着きや安心の効果をもたらすのか、逆にどのような刺激が犬を興奮させたり緊張させたりしてしまうのかをご存知でしょうか。もしかしたら犬にとって良かれと思ってやっていたことが、実は自分が求めていたことの押し付けになってしまうこともあります。こんなことは人と人でもよくあることです。気づいたときに修正をして、より良い関係になれるよう努力すればいいということです。だから、気づくことを恐れずに、犬語セミナーは笑顔で受けていただきたいのです。

犬語にふれる機会はどの飼い主さんにも、犬を飼っていない方にも訪れます。犬語セミナーを通して、犬のことを知りたい方に犬のことをわかりやすく伝えるツールにしていけないかなと考えています。


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犬は隠れる動物

犬のトレーニングクラスで大切にしている課題のひとつが「環境を整える」ことです。

家庭犬インストラクターとして、今までにさまざまな形のクラスを通して犬の生活を飼い主さんといっしょに考える機会がありました。訪問件数が多くなりすぎて訪問ができなくなってしまい、通学型のドッグスクールに変えたこともあります。通学型のスクールの良い点というのもありましたが、どうしてもクリアできなかった問題が、家庭環境を直接見て、その中で犬の行動を観察することができなかったということです。家庭訪問トレーニングから通学型に変更したあとに、家庭訪問トレーニングの大切さを改めて痛感しました。

通学型のトレーニングのときには、飼い主さんにヒヤリングを行ったり、ビデオや写真を取ってきてもらい、いろいろと改善点を探していきました。ですが、実際に家庭訪問を行うと、犬とって大切である環境のいろんな部分が犬目線では考慮されていないことに気づきます。「通路からは犬のスペースが見えないように配慮されていますか?」という質問に、「はい、大丈夫です。」と答えられても、実際にはそうなっていないことがあるのです。

家庭訪問でトレーニングを行うと、犬の目線に立っていろんな角度から、犬の生活している環境を犬がどのように感じているのかを知ることができます。そして、より早く犬の落ち着かない理由を見つけ出すことができるのです。
たとえば、室内と続きのスペースで犬の居場所を設置されている場合があります。テラスを犬用のスペースにされている状態を想像されると良いでしょう。こうした空間は仕切りが家のガラス戸です。そのため、カーテンが閉まっていないと、室内の人からも犬がすぐそばに見え、犬の方からも室内の人が見える状態になります。

カーテンはいつもあけられ、室内にいる飼い主さんたちに常に見られている犬がテラスにいます。もしくは、飼い主さんたちは、各自が犬を見たくなったときにカーテンを開けて犬を見るということも多いようです。
小さな子供さんがいる場合には、犬のスペースは中からみると動物園のような観賞用のスペースになってしまい、子供さんは動くものを見たくてガラス戸に張り付いたり、手を振ったり、ガラス戸の内側でオヤツを食べたりしているのをみかけます。

こうした状況を好まない犬は、そのスペースにある犬小屋に隠れたりすることもあります。まさに動物園の動物が、見物されることをさけるため、奥の部屋に隠れている姿のようですね。あまり出てこない動物のスペースには「夜行性なので日中はあまり外に出てきません。」の表示がかけられていることもあります。犬もそう思われてしまうかもしれません。

犬小屋に隠れることもできないタイプの犬は、自分のスペースを左へ右へとウロウロと歩き回ることがあります。ときには円を描くようにグルグルと回ることもあります。こうした行動も動物園の動物がしているのと同じ行動です。これは常同行動といって、同じ行動を何回もくり返すストレス性の行動で、動物のストレスの度合いはかなり高まっていますよというシグナルです。

犬は動物園の動物と異なり、人に対し積極的なコミュニケーションをとりますので、相手を遠ざけようとワンワンと吠えたり、唸ったり、ガラス戸にとびついたりすることもあります。ですが、こうした攻撃的な行動も、犬が喜んでいると受け取られてしまうことがあるのです。実際これらの行動を見て、小さな子供さんたちはキャーキャーとはしゃいでいます。犬はますます興奮します。犬舎から出てこれらの子供達と接触した場合に、日頃の攻撃的行動のくり返しにより事故が起こる可能性も高まっていくため非常に危険な状態です。

こうした犬の行動から見ると、犬が室内から「いつも見られている」環境では、落ち着けないことがわかっていただけましたか?犬がガラス戸に飛びついたり、吠えたり、くるくると動き回っているのは、喜んでいるからではないことを、知っていただきたいのです。

犬は散歩や遊び以外の多くの時間を休むために使います。他の動物達と同じです。人のように熟睡をしない犬は、浅い眠りを続けますが、その時間はとても長いのです。活動時間は午前中と夕方が中心となり、昼間と夜は寝ています。そのため、犬の生活空間は、落ち着いて寝ることのできる場所を必要としているのです。

子供さんや家族にいつも見れてしまう動物園状態になっている環境では、犬の視線が隠れる高さまで何らかの目隠しをします。犬と遊びたくなったら犬舎まで出て行ったり、犬の散歩に出かけるなど、直接的に触れ合うコミュニケーションをとっていただくこともルールのひとつです。目隠しの設置で犬はかなり落ち着きを取り戻していきます。

室内に近いテラスを犬のスペースにされることが増えているのは、いくつかの理由が考えられます。
いつでも犬に触りたいので、犬を汚したくない。
せっかく犬を飼うのだから、できるだけ近い場所にいていつでも会いにいきたい。
庭が狭いため、テラス以外に外飼いが可能な場所がなかった。

理由はともかく、テラスを犬の生活環境とするなら、きちんと環境を整えてあげる必要があります。

犬という動物は「隠れることが休むこと」という動物です。実はわたしたち人にもその性質があるため、この点については共感できると思います。犬の視点で考えること。動物を理解するためのシンプルな方法です。

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Posted in 犬のこと, コラム

被災犬の譲渡情報

熊本地震で被災した熊本県内の家庭のない犬たちの、新しい飼い主を探しています。
この譲渡希望の犬たちは、熊本県動物愛護センターに登録し熊本でボランティア活動を行っているフィリアさんが募集を行っている犬たちです。(PDFファイルになっています)

管理センター譲渡犬情報1(2016.5.26) (1)

犬の譲渡にあたっては、事前に詳しい情報提供を行い、迎え入れるご家庭と犬が適した形で受け入れができるように最新の配慮を計ります。

犬の受け入れに関してご希望がある、もしくは関心のある方はお手数ですが以下のグッドボーイハートの問い合わせフォームよりご連絡ください。
http://goodboyheart.com/contact/contact.php

もし、お知り合いの方に、犬を飼おうと思っていたという方がいらっしゃいましたらご紹介いただければ幸いです。
福岡・佐賀地区の動物愛護センターでも常時新しい飼い主を待っている犬猫たちがいます。
譲渡情報は各動物愛護センターのホームページでご覧いただけます。
どの施設からでも、各自のご家庭や環境にあった犬や猫と出会える可能性を見つけてください。

成犬を迎えたことがない方には不安も多いことと思います。
グッドボーイハートでは保護施設からの受け入れに不安を抱えられる方の事前カウンセリングを
ボランティアとして無償で行っていますので、お気軽にご相談ください。

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引越し後の環境整備

生徒さんが郊外の戸建てに引っ越したため、環境整備のトレーニングのためにご自宅に伺いました。

犬は9歳の小型犬で、子犬のころからご家族といっしょに、高層マンションに暮らしていました。飼い主さんはマンション暮らしを始めてから犬を迎えることになり、マンションの規定にある「共有部分は犬を抱くかクレートにいれること。」というルールをクリアするために、小型犬を選んだとのことでした。

犬と一緒に暮らしながら、犬の行動についての勉強を重ねる中で、犬の生活にいろいろとストレスもかかっていることを受け止められるようになりました。グッドボーイハート七山校では、犬といっしょに山歩きをするような機会も増えてくると、犬の表情や行動の変化に気づくことも多くなり、お庭のある家でいっしょに暮らしたいと思いが高まってきます。そしてついに戸建てに引っ越すことを決められました。

念願の庭付き戸建て家での生活ですが、最初から思い描いたとおりというわけにはいきません。動物は環境の変化に敏感だからです。それがどんなに良い環境のほうに移ったとしても、今までとは異なる環境に変化したことにストレスを感じてしまうのです。今回は、移転直後にお話を伺ったときにいくつかのアドバイスができる点に気づき、よりスムーズに新しい環境に適応できるようにするための指導のためご自宅に伺いました。

新しい家には庭というスペースがあります。犬が生まれてはじめて経験することは、屋外のなわばりの境界線です。庭の前には道があり、人や犬が歩いているのが見えています。「すぐ外に他者がいて、自分のなわばりが内側にある。」この境界線はどんな動物にとっても緊張感を伴うものなので、できるだけ互いに刺激しあわないようにするのが大切です。
柵があったとしても犬には柵の意味がすぐには理解できません。そこから家族やまた他者が出入りする場所ではない、境界線は守られていると犬が理解するようにする必要があります。たとえば、見えないように工夫をするなどです。犬は臭いで相手との距離をはかっていますが、見えない、つまり自分の姿が見られていないという状況では落ち着いていることができます。逆に見えている、つまり自分が見られているという状況では防衛的行動が高まっていきます。

排泄をどこでさせるかという問題もあります。マンションでは散歩に出て排泄をする以外は、室内のトイレシーツで行っていました。今は、庭に出て排泄をすることができます。ペットドアをつけてあるので、戸口が開いていればいつでも自分で排泄に出ることができます。このような空間があるのに、室内で排泄をしなければいけないのは、庭がなわばりになっていない、もしくは室内マーキングをしているということです。
庭での排泄の仕方をよく見ていると、室内のトイレトレーを撤去できる状況かどうかがわかります。トイレトレーの撤去は、犬に習慣化した不要なマーキング行動をさせないことで、ストレスを軽減させるためです。家族との関係性にも影響します。排泄については天候による排泄行動の変化など、順番を経ながら行う必要があります。

室内のスペースも整えていきます。今まではマンションの高層階だったため、窓の外をみても何も見えません。ところが今度は、窓の外に庭や庭の前の道が見えます。犬の視点に立って、どのスペースが犬が落ち着いて過ごせるのかを考え、犬の臭いのついたベッドやクレートなどをいくつか配置していきます。留守番のときはどうしているかも確認しました。

庭で過ごす時間が増えていたので、散歩に出る時間が少なくなっていたようです。庭があっても散歩はとても大切な時間です。犬が老齢の場合には別ですが、元気な犬にとっては、散歩行動は健全な関係と生活のために必須です。
都市環境での生活では、散歩コースは車の多い大通りでした。自転車は走っているし、騒音もすごいし、犬は散歩を楽しめていないようでした。新しい環境では、家のすぐ後ろが森になっていて、家を出るとすぐに山道へ入ることができ、自然とふれあう散歩ができます。
森が近い環境を選ばれたのも、犬の生活を思っての飼い主さんの思いでした。引越し後も散歩に出るようになり、犬の行動もさらに落ち着いてきたようです。

マンション住まいの方が庭付きの住居を敬遠される理由のひとつが「虫がいますよね…」ということです。虫はいるものと諦めるしかありません。害を及ぼす虫については自分たちの方法で駆除するしかないというはなしです。
七山に来られた当初は虫を見ただけ「キャー」と反応の高い飼い主さんでしたが「昨日、ムカデがいたんです。すごい大きい奴が。」と比較的落ち着いて話されました。「凍結するスプレーでやっつけました。」とのこと。飼い主も強くなりますね。
他にも「目覚まし時計がなくても自然に目が覚めるようになりました。」といううれしい変化もあったようです。新しい生活環境に慣れていない部分もありますが、犬の表情や行動は明らかに以前と違います。

心地よい風が吹きホトトギスの声が聞こえるこの庭と家で、飼い主さんと犬がどのような時間を過ごしどのような関係を結ばれていくのでしょうか。心地よい環境をじっくりとあじわうには時間が必要です。環境を整えていくこの変化のときも含めて、ぜひ楽しんでいただきたいです。


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犬の断尾

トイプードルを散歩している方がとても増えました。
トイプードルの子犬のトレーニングにうかがったときに飼い主さんとお話ししたことで、是非にたくさんの方に知っていただきたいと思うことがありました。

トイプードルの生徒さんの方からこういわれたのです。
「このコの尾っぽって切られてるってこと、知らなかったんです。」ということでした。
「尾だけではありませんね。」と私が答えると、
「指も切られているんですよね。生まれて数日で麻酔もしないで切ってしまうんですよね。痛かったでしょうにね。かわいそうに。」と子犬の体をさすられていました。愛する子犬が自分の元に来る前にそんなひどいことをされていたと知った飼い主さんは、「知らなかった。かわいそうに。」とみなさん言葉を詰まらせます。

犬の尾を子犬の頃に切断することを「断尾」といい、犬と関わる仕事をする者であれば誰でも知っている事実です。みなさんの中にも断尾をされた犬を飼っている方が多いのではないかとおもいます。では、なぜ人間は犬に対し「尾を切り落とす」という行為をするのでしょうか。今日飼い主さんからも、なぜこんなひどいことをするのですか?と尋ねられました。

一般的にいわれている主な理由のひとつは、犬種標準に基づくものです。犬種標準とはドッグショーなどで純血種の形を人の好みによって定めたもので、数十種類の純血種に対して「断尾をしていること」という基準が定められています。トイプードルやミニチュアピンシャー、ミニチュアシュナウザーなどはこの中に入ります。犬種標準はあくまでも人が恣意的に定めたもので、犬にとっての利点欠点は全く考慮されていません。

他の理由のは犬以外の家畜についても行われるもので、作業上支障があるという場合です。牧畜犬として繁殖されたコーギーはこの中に入ります。闘犬として繁殖された犬、ネズミ捕りのための様々なテリア種、スポーツ猟に用いられたスパニエル系の犬。ですが、現在これらの仕事を必要とされている犬種は断尾をされている犬の中にはいません。断尾をしなければいけないような作業は、そもそも犬に負担があったり、また作業としては無理であったりして、現在では行われていないものばかりです。

その証拠に、実際に地域に根付いて昔から人のそばで共に働いている犬には、みな尾があります。尾はただついているのではありません。犬という動物が行動するためにはかかせない道具なのです。働く犬についていうと、尾は行動をするための舵取りのための道具です。尾がないと左右前後にバランスをとって行動することができません。猟犬だと思われている尾を切られた犬たちは、実際には猟師と行動を共にしていません。スパニエル種の犬たちは、スポーツハンターと共に山を歩いていただけのことです。貴族の趣味の遊びのお供だったということです。

他に断尾をされる理由は特に見当たりませんが、実際に断尾をしている人に会う機会があるわけではないので、もしかしたら別にも理由があるのかもしません。もし他に理由があったとして、犬にとって苦痛を伴うこの尾を切るという経験をさせなければいけないほど、大切なことなのかを考えてほしいと思います。

断尾については、生後数日の子犬のころであれば痛みは感じないということを主張されることで、断尾は今でも行われています。これについては、痛みを感じるという人と、痛みを感じないという人が対立する形で平行線をたどっているようです。私は痛みを感じると思っています。自分が同じことをされたら、きっとトラウマになってしまうと思うほどの辛いことだと思えます。

では、痛みを感じないとして、尾が存在することの必要性についてはどうでしょうか。上記の体のバランスや平衡感覚を保つことのほかに、コミュニケーションの手段としても尾は使われます。尾のない犬たちのコミュニケーションは人にとっても読みづらく理解が遅れることがあります。痛みを論ずる前に、犬にとっての尾の必要性を考えると、尾を切るという行為はとてもできないことのように思えます。

しかし、これだけたくさんの方が断尾をした犬種を愛していながら、犬に施されている断尾自体も受け入れてしまっているというのはなぜかという疑問が残ります。これは「血統書」が犬の価値をあげるという思い込みによって生じています。犬種標準に満たなければ血統書がつけられません。なので繁殖者はこれをクリアするために断尾を行います。ですが販売する方からすると「消費者が血統書付きの犬を求めるから」という理由なのです。

ヨーロッパの犬の福祉団体では多くの国が断尾に反対する姿勢をとっています。その中でもまだ断尾は古い習慣として残されています。数年前にイギリスのコーギーを飼育する人による団体が「コーギーの断尾を禁止するのは、犬の文化を無視するものだ。」という抗議を出したというニュースを見ました。人が犬に一方的に決めたことを「犬の文化」と呼ばれてしまうとは、犬が聞いたらビックリするようなはなしです。「犬の文化」とは、犬という動物が犬自身で作り上げたもので、それだったらはなから犬という動物には尾はないはずなのです。ですが、実際には犬は尾のある動物です。

日本では断尾を禁じる法律や条令はありません。これは犬と暮らすみなさんの選択にゆだねられています。わたし自身も、断尾をした犬種と暮らしている飼い主さんはみなさんこの事実をご存知の上で犬を求められたのだろうと思っていました。ですが、まだまだこうした事実が広がっていないことを知り、知らないことはひとつでも知る機会を得られるようにと、今日はこのことを話題にしました。まず真実を知り、誰かを非難するよりも、自分で考え自分で行動を起こすことしかできることはありません。人を変えることはできなくても、自分を変えることはできます。ぜひみなさんも犬の断尾について考えて自分の考えにあった選択をしてください。


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犬を撫でることについて

猫の本を何冊か読んでいます。他の動物の本もよく読むのですが、最近、知人からたくさん猫の本を借りてしまい、猫ずくしとなり猫の夢まで見るようになってしまいました。
犬の本も他の動物の本も同じですが、それぞれの動物の視点にたって書かれている本は興味深く読み応えがあります。動物の中でも人と暮らしている動物、犬と猫の視点にたった上で、その動物の行動や習性を考えることができるのは楽しいものです。

猫の本を読んでいるときにも、犬とは違うなとか、犬と同じ傾向があるなとか、ページをめくる度に犬のことが頭に浮かんでしまうのは、職業病なのでしょうね。

最近、関心を持って読めた猫の本は、アメリカの猫の行動専門家という男性が書いた本で、自伝的要素も強いのですが、猫の行動や環境による変化などの具体的な例の症例も多いものです。その中にもいくつも、犬と同じ傾向があるなと思う部分がありました。そのひとつを紹介します。

「猫を過度に刺激する要因として気をつけたほうがいいこと」ということで揚げられていたことが次のようなものでした。
1 撫ですぎ
2 攻撃的な遊び
3 環境の影響による興奮
4 過度に体をゆすったりしてほめること

これは犬にも当てはまることです。
「撫ですぎ」と「過度に体をゆすったりしてほめること」の二つは、実際にやっているい主さんも多いのではないでしょうか。

「撫ですぎ」といわれると、撫でて可愛がるのがなぜいけないことなの?という質問がきそうですね。「撫でる」というコミュニケーションは接触を伴うコミュニケーションで動物同士でも特別な意味を持ちます。
コミュニケーションの方法は動物によって様々ですが、イヌ科のイヌという動物がイヌ同士で接触しながらコミュニケーションをもとうとするのは、幼少期の子犬に対する親犬や世話犬の態度、幼少期の子犬同士のじゃれ遊び、青年期の犬同志の興奮遊び、繁殖期の性的な行動に見られます。これらは、いわゆる人の「撫でる」に相当するような刺激を受けるコミュニケーションとなります。まだ歩行できない子犬の世話に対する行動以外はどれも興奮を伴う行動です。
他の犬と犬の皮膚接触によるコミュニケーションは、かすかに触れるという程度のもので、これと比較すると明らかに人の「撫でる」という行為は刺激が強いものなのです。

ところが、犬、特に愛玩犬として人為的に繁殖されてきた犬は「撫でられること」を目的に飼われることがあります。ペットの語源も「なでる」という言葉から生じているという説もあるほどです。純血種の犬は、人の様々な目的に応じて作られてきました。働くための使役犬や観賞用の犬などもあります。愛玩犬もそのひとつだと考えると納得もいきます。

ですが、そのように繁殖されたからといって、犬を過剰に撫でることを受け入れさせるのも相手の立場にたたない行為ともいえます。撫でられることを喜んでいるように思える犬も、接触に対して依存的になっている傾向があるのです。たとえばこんな行動です。
飼い主の膝の上にすぐにのってくる。
飼い主のベッドでいっしょに寝たがる。
飼い主の体の一部に接触したがる。
ソファに座るとすぐに横にくっついてくる。
などはその例です。

犬ってこんなものだと思っていたという飼い主さんは、ぜひ犬という動物について知っていただきたいのです。少しずつ接触の仕方を変えたり、他の練習をいれていくことで、犬は自然な行動を取り戻していきます。
誤解していただきたくないのは、犬を撫でてはいけないということではありません。犬は適度にやさしく撫でられるコミュニケーションを好みます。それは、心を通じ合わせた家族や特別な知人からのものであり、そして何事にも節度というものが必要だということです。

「過度に体をゆすったりしてほめること」は犬に対してよく見られる光景ですね。
人が触り終わったあと、犬がブルブルっと身震いの動作をするようだったら、明らかにストレスを感じていたというシグナルですよ。撫でている途中で2本脚で立ち上がったり、跳ねたり、人に飛びついてくる行動や、体を押し付けてくるようなことがあったら、これも興奮行動といってやはりストレスを表現しているのです。

子犬のころに公園などで他人に強い接触をされていた犬は、成犬になってから人に対して興奮しやすいとか、自分の領域を守ることができないなど、社会化が難しい状態になっています。

それに反して、他人が触ろうとすると「ウー。」と小さく唸る犬は、自分の領域を守ることができる自信のある犬であるともいえます。こうした犬がしつけができていないといわれてしまうのは、とても残念なことです。

猫は普段の行動がゆっくりであるのに対し、犬は普段からの行動が早くなりやすく、興奮しやすい動物、もしくは興奮しているのが犬という動物だと思い込まれていることがあります。

興奮行動は脳をハイな状態にさせるもので、動物を疲労させてしまいます。
適度な興奮や運動は別としても、コミュニケーションはやさしくゆっくりとしたソフトなものに変えてみるのも、犬という動物を知る機会になると思います。

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犬のトレーニングって何?

昨日、福岡のFM放送「LoveFM76.1」の月下虫音(げっかちゅうね)という番組で、パーソナリティの大田こぞうさんがグッドボーイハートのブログを朗読してくれました。大田さんはグッドボーイハートの行動学を学ぶ講座を受講されました。大変刺激を受けた生徒さんのひとりです。

自分で書いたブログの朗読を聞いていて、自分でも反省するところがたくさんありました。
犬のトレーニングに縁のない方にも、犬について理解していただくために、今日は、そもそも犬のトレーニングって何?ということにお答えします。
どんな分野にもそのものの価値観が入るように、グッドボーイハートにもまた価値観があります。なので、あくまでグッドボーイハートが考える犬のトレーニングという視点でお話したいと思います。

まず最初に明らかにしておきたいのは、犬のしつけ・トレーニングを学ぶのは「飼い主自身」であり、その飼い主さんの目的に応じて、大きくふたつにわけることができます。
その1 犬の成長過程に応じて必要な環境や成長のチャンスを提供し、犬を理解するためのトレーニング
その2 犬に問題となる行動や状態が生じたとき、それを解決するためのトレーニング

その1の犬の成長過程に応じてというと、わかりやすいのは子犬のトレーニングです。飼育に必要なものを準備し生活環境を整え、犬がはじめて体験する首輪やリードといったものを犬にわかりやすく受け入れさせたり、適応力を育てる社会化の学習など、生後4ヶ月くらいまでに行われます。その後も犬の成長に応じて必要な理解やコミュニケーションを飼い主さんに知っていただくことで、成長過程に応じたトレーニングは継続されます。犬は7歳ころになると安定した気質をみせはじめますが、またこのさき9歳くらいから体の変化がみられるようになり、年齢に応じた生活環境の整え方やケアの仕方、過ごし方など、老犬になっても「成長過程に応じた」トレーニングを受けることができます。

その2は犬の問題となる行動や状態が生じたとき、これは飼い主さんが犬を飼うことに苦痛を感じられるようなことがあった場合にご相談を受けるケースです。トイレの失敗、いたずら、リードのひっぱり、吠え、かみつき、他の犬と遊べない、来客にほえる、逃走、雷をこわがる、ごはんをたべない…などその問題は多岐にわたります。子犬のころからトレーニングを受けられていても、忙しい飼い主さんの練習が進まないとか、環境によりストレスがかかってしまうなどの理由で、生後6ヶ月を過ぎるころから問題となる行動が生じることもあります。

成長過程に応じたトレーニングは、まだ問題がおきる前に成長を支えるトレーニングであるのに対し、問題が生じてから対応するトレーニングは問題を解決することが目的となります。

後者の犬の行動の問題を解決するトレーニングはへの対応は「対処法」と「行動療法」が行われます。「対処法」とは、とりあえず問題が悪化しないように、一時的に処置を施すものです。一方「行動療法」とは行動の要因をつきとめ、根本治療にあたっていくことをいいます。行動療法を行う際も、対処法は一時的には必要のため平衡して行われます。
と、このように書くと、家庭犬インストラクターの私が犬に直接的に行動改善を行うように受け取られるかもしれませんが、問題行動を解決する「行動療法」も飼い主さんによって行われるもので、その手順をインストラクターが説明するという形です。

犬の困った行動に対する対処法はネットや本に出回り、今や情報があふれています。そのため対処法がトレーニングなのだと思われてしまうこともありますが、それは違います。問題の根っこのところから改善を目指していかないと、犬が本来かかえていた問題が解決したとはいえません。対処法はあくまで「人が困らなくなるための一時しのぎの対応」だととらえてください。犬に罰を与えるなどの対処法はのちのち犬の性格を不安定にさせる原因となり、決してお勧めできません。

さて、トレーニングの目的は異なっているとしても、どちらを学ばれてもやっていることは同じことのように感じらえるでしょう。犬という動物を犬として理解すること。動物と暮らすためにはこれに勝る勉強はないと思うのです。犬のしつけ方教室に通った事がない、トレーニングを受けたことがない方でも、犬と暮らしているかたなら先生は目の前の犬です。犬のことを理解できるようになると、犬との暮らしはとても豊かなものになります。

昨日の大田こぞうさんのコメントでは「先生は決して答えを教えてくれないんですけど…。」といわれていました。
これは本当、その通りです。私が飼い主さんに出すのはヒントだけ、なぜなら答えは飼い主さんが知っているからです。理解できたときの感動を味わってもらいたいと思いつつ、いつもワクワクしながら楽しんでいます。

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オスワリとフセはできるのに…。

トレーニングのご相談やカウンセリングの際に飼い主さんによく言われることがあります。「うちの犬はオスワリとかフセはちゃんとできるんですけど」。オスワリやフセはちゃんとできるのに、やってほしいことができないとか、他に困ったことをしてしまうということです。特に室内犬にこの傾向があるように思えます。

子犬を飼い始めたときは、飼い主さんも気合や楽しみがいっぱいです。犬が家に来たら、早速オスワリやフセを教え始めるでしょう。大好きな食べものやオモチャを犬に見せれば、犬はこちらをみます。それを使ってオスワリやフセを教えるのはそれほど難しいことではありません。早ければ数回で覚えてしまうかもしれません。犬が幼少期であればあるほどその覚えは早く「うちの犬は頭がいい!完璧!」だと感動されることでしょう。そして、これで犬のしつけは十分にできていると思い、目の前で起きている少し気になることも、犬が年をとって落ち着いてくればそのうちに止めてくれるだろうという、淡い期待を持ってしまいます。もしくは、成長と共に生じてくる「吠える」「興奮する」という行動も、「オスワリもフセもちゃんとできる。しつけはきちんと教えてあるから大丈夫。」と思って見逃してしまうかもしれません。

ところが、犬の少し気になる行動はなくならないばかりか、新しく生じた問題となる行動や困った行動などが出てきてしまいます。

「オスワリもフセもちゃんとできるんです。子犬のころにパピー教室に通ってちゃんとしつけをしたんです。」飼い主さんにとっては何でもものをおぼえるお利口さんの犬が、どうして困ったことをするのだろうという状態になり、飼い主さんも混乱してしまうようです。

こうしたケースで犬が困った行動を起こしてしまうシチュエーションは、飼い主さんが犬の相手をしていないときです。たとえば、犬がそばにいるのに家族と話している、散歩中に人とお話する、他の犬の相手をする、電話をかける、パソコンをする…などですね。飼い主さんが犬をしっかり見ていて、「オスワリ、おりこうさんね~。」とか「フセ、イイコだね~。」といっているときは、ちゃんと言う事を聞いてくれます。犬は「わたしを見て!」「ボクに声をかけて!」という状態ですから、相手をしなくなると、ものを破壊する、吠える、マーキング、テーブルの上にのる、などと、飼い主が止めに入らなければいけない状態をつくっていきます。飼い主の気を引く行動をしてしまうのです。

では、どうしてこんな問題が起きるのでしょうか。

犬のしつけとトレーニングについて誤解されていることがあります。それは、犬のしつけやトレーニングは犬のしつけ方教室に通って犬にオスワリやフセを教えることだと思われていることです。同様に犬に合図を言って行動をさせる芸やトリックのトレーニングは、一定の目的を果たしてくれることがありますが、やりすぎると本来の目的を見失ってしまいます。
なぜかというと、たとえば「オスワリといって犬が座るように教える」というトレーニングは人から犬に話しかけ相手が聞くというコミュニケーションではありますが、一方通行のコミュニケーションなのです。犬が人に話しを聞いてもらえる対等性のあるコミュニケーションではありません。
そのため犬はいつまでたっても感情が満たされず、犬の方から飼い主に関心をむけさせるようなコミュニケーションをとろうとします。そしてそのやり方は激しく非常にイライラとしたもので、飼い主さんをも苛立たせるものになっています。他の犬にも同じように働きかけますので、他の犬をイライラさせたり遠ざけたりするような結果になってしまい、犬はますます孤独になってしまいます。
それが一時的なものであれば、こちらの接し方を変えるだけで自分を取り戻し正常なコミュニケーションが復活します。ところですが、成長過程で一方通行のコミュニケーションを受け取り続けると、成長期にきちんとしたコミュニケーション力が育っていない、つまり社会性が未熟な状態となり、問題は多少複雑になっています。

ここまで、理解していただけたでしょうか。

で、どうすればいいの?というのが一番知りたいところでしょう。
まず、合図を出して反応させるトレーニングを終了してみてください。そして、犬の行動について勉強してください。犬の行動はすべてがコミュニケーションや表現方法であり意味のないものはありません。どんな行動も関心をもって見守りその意味を知ってください。行動の意味がすぐにわからないこともあります。そのときは一旦「わからない行動ファイル」にいれておいて、引き続き観察を続けます。そうすると他の行動と結びうつきその行動の意味がわかるようになります。ネットや本の情報に頼りすぎないでください。犬という動物として本来はでにくい行動を、人との生活の中で身に付けています。その環境の中で生じたコミュニケーションは個性の高いものになっています。飼い主さんの影響をたくさん受けているのです。

問題があっても、すぐに解決しなくても大丈夫です。自分の犬を知りたいと思う気持ちがあれば、きっとそういう人たちとの出会いが増えていき、犬への理解につながる輪ができあがっていくと思います。

期待はするなかれ、でも希望は大きく持ちたいものです。

わんこ山いちご0531


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