グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬のジェイの初めての博多入りはカフェデビューでした

犬のジェイを今年の2月4日に家族として迎えたのですが、一緒に出掛ける機会がありませんでした。

うちは休業日がないし、さらにここが一番環境が良いのだから、ジェイのために出かける必要がないということもあります。最初に出かけたのは、予防接種のための動物病院の通院でした。

ですが、今回急な要件ができたため、お出かけ知らずのジェイと外出することになったのです。

生徒さんの経営するトリミングショップ“アンドパイン”さんが本日閉店することになり、「ジェイくんも一度連れてきてください!」のご要望にお応えすることになりました。

犬達のお世話もあるため閉店間際にお店に到着しましたが、大型犬のジェイを快く迎えて下さいました。

カフェでスティするジェイ



カフェに入ると、案内されたテーブルに着席して、ジェイは着席した椅子の脇下にダウンステイさせます。

ジェイとカフェ練習をしたことはありませんが、ベースを維持しているので問題ありません。リードで居場所の指定をしてあとは人の用事が終わるまで待つのが犬の仕事です。

すぐ直後にトリミングのお客様が来られたため、ガラス窓からトリミングの様子を見学させていただくことができました。

プロトリマーのトリミング風景を見るダンナくん



敏腕トリマー先生の鮮やかなトリミング風景をダンナくんが見入っています。

あんまり見るとトリミングされている犬が緊張しそうなので私はチラ見でしたが、初めてみるプロのトリミングの技術に思わず注目したようです。そのダンナくんの姿を見てハッと思い出したことがあります。

そうだ、2年前にアンドパインが開店した時に、ダンナくんが見習いになってトリマーになりたいと言っていたのを思い出したのです。それをダンナくんに話すと、そんなこともあったよね、みたいな他人事の感じで流されてしまいました。

ジェイは少しだけ長くなりそうと思ったのか休憩ポーズに入っていました。


ジェイは体重が23キロでラブラドールレトリバーとしては小柄ですが、国内のカフェスペースは割と狭いのでこのくらいのサイズであることが助かりました。

カフェでよく目にする犬を抱っこしていたり椅子の上に乗せることを私は好みません。

お店によっては床の汚れが気になるかもしれませんが、そのときにはカフェマットを持っていき居場所を指定して待機させるのがベストです。犬もその方が落ち着けますし、まずこの状態で落ち着くことのできない犬はご自宅の中でも落ち着かないのではないかと想像します。

アンドパインの前で



お店の前でアンドパインの店長とスタッフの皆様にお礼を告げてお別れしました。

2年間という短い間でしたがご縁をいただきありがとうございました。

そして、私たちはあたふたと都会の博多区から山の学校へとリターンしました。

駐車場までの短い距離でしたが、半年ぶりくらいにタウンも歩いて、ジェイにとっては刺激の多い時間となりました。

タウンを私とジェイが歩いているのをダンナくんが見て「盲導犬みたい」と言いました。そういえばダンナくんは都会でのトレーニングクラスを見たことのないのです。家庭犬はみんなこんな風に歩くのが当たり前な社会がいつか来るのかな。

Posted in Jのこと, 日々のこと

脳のRAS(ラス)システムで眠れない夜のバトンタッチ

当校ではお預かり犬ちゃんたちがお泊りに来ている日があります。ほとんどの犬が連泊で、なぜかリレーのようにやってきます。

Aちゃんが帰る日にBくんが来て、Bくんが帰る日にCちゃんが来るみたいな感じです。そうなるとお預かりの日々が続くことになります。

そんな連泊中の犬たちがいるある日、ダンナくんがこんなことを言いました。「さちこ先生がいるとよく眠れるけど、さちこ先生がいないと何度も目が覚めてしまうよ」と。

なるほど、脳のRASシステムが起動しているわけですね。

RASとは「脳幹網様体賦活系」。こう書くとすごく難しい印象ですが、英語では「Reticular Activating System」とシンプルな感じです。

RASのシステムはAIによるとこういうものです。

引用:脳幹にある神経ネットワークであり、覚醒状態の維持、五感からの膨大な情報の中から自分にとって重要なものだけを選び出し、意識に上げるフィルターとして機能するメカニズム

だそうですが、もっと簡単には「五感から入った情報の中から自分にとって気になるものだけを選択して注意を向ける」ということです。気になるものといってもいろんな方向がありますが、特に「責任を感じるもの」には強く反応することがあるようです。

お預かり中の犬たちは、夜は各自のハウスに入ってちゃんと寝てくれています。もちろん、大いびきをかく犬もいるし、寝言をいう犬もいるし、初めてのお泊りでキュンキュンが続く場合もあります。しかし、それ以上に黙って具合が悪くなる犬がでても不思議ではありません。

犬にとっては普段とは違う環境、普段とは違う日中の過ごし方、屋外での遊びや他の犬との接触、また分離不安傾向の犬にとってはストレス値が上昇するなど、預かりの状態は決して日常とはいいがたいのです。

24時間預かりといっても人間も寝るのだから24時間ではないですよね、と言われたこともありますが、私達の脳は24時間ずっとお預かり状態が続きます。ダンナくんは私がいることで責任を私に投げるため、自分は熟睡できるということを言っていたのです。

若いころに盲導犬の育成施設に寝泊まりしていたときも、犬舎まで3歩くらいの部屋に寝泊まりしていた時代がありました。犬の小さな鳴き声や吠え声にもすぐに起きて見に行く習慣があったので、今でも犬の気配には敏感に反応してしまいます。今思えば、若かったからこそできた体験でした。

私自身が体力が限界のときにはそのことをダンナくんに伝え、要するに私は今日倒れるからあなたは熟睡しないでね、ということを遠回しに伝言してから休みます。

とはいっても私の方が親分ですから、お預かりの犬がいるときはいつでも眠りが浅い状態が続きます。ダンナくんのいびきなどで起こされると激昂するのは、そういう背景があるからでもあるのです。

いびきを改善するために、今年こそ鼻の手術を受けると宣言しているダンナくんですが、その日程は今年もとれそうにありません。私達の浅い眠りはまだまだ続きそうです。

しかし、脳のRASシステムが健在であることは、老化を恐れる私達にとっては有益はお知らせです。

ちなみに、犬にも脳幹にRASがあります。犬達はどんな情報を“重要”だと捉えているのかとても気になります。

撮影した写真を確認するダンナくんの背後にいるラーズくんとルージュくん

Posted in 日々のこと

自然の中で出会う木のことをもっと知りたい

オポハウスで育った木のこと

七山の山の学校で暮らし始めて今年で18年になります。山暮らしを始めたときには全く分からなかった木の名前も、少しずつ分かるようになりました。

18年前に引っ越したばかりのときには尾歩山(オポハウスの裏山の名称)は杉の木が植えたまま放置され、山は杉の倒木で真っ暗の状態でした。

とても歩けるような状態ではなかったので、引っ越し後に山の手入れとして杉を伐採して運び出してもらい、苗木を植えて育てる植林を始めました。

そのときに植えていただいた木は、ヤマザクラ、コナラ、モミジ、イチョウ、カキ、ケンポナシ、マユミでした。

最初にこれらの木の名前を聞いたときには全く覚えることができなかったのですが、樹木が成長してくるとともに木の形や木肌や葉や花がそれぞれに違うことがわかるようになり、今では触りながら、これがサクラ、これがケンポナシとやっと言えるようになりました。

不思議なことですが名前を覚えると知り合いになったという感じになり、樹木が身近な存在となりました。

 

身近な木のことをもっと知りたくて

自然空間の中にあるオポハウスで過ごすようになって関心の高かった自然がだいぶ身近にはなったのですが、それでも知らない樹木がまだたくさんあります。

今年になってJ(ジェイ)広場の整備が始まり、J広場やオポ広場に新しく草木を植えようと苗木を販売しているお店に初めて行きました。

植物に詳しい生徒さんに教えていただいたお店は久留米緑化センターです。たくさんの草木を目の前にして知らない草木の多さに圧倒されて買い物酔いしてしまうほどでした。持ち帰った草木には名札を付けて覚えようと頑張っているところです。

そんな草木ブームの最近、読み終えた本の中に素敵な情報がありました。本の名前は「脳と森から学ぶ日本の未来“共生進化”を考える」著者は稲本正先生です。本書の内容は多岐にわたる内容で読み終えたのですが、なかなか難解なものでした。

しかしこの深い本の中にも食いつく情報が掲載されていました。それが「日本人として知っておきたい木…46種」です。

サクラ、モミジ、サンショウ、クロモジ、ユズ、カキ、スギ、ケヤキ、イチョウ、クワ、クス、エンジュ、ツバキ、ツゲ、ウルシ、マダケ、モウソウダケ、イチイ、カヤ、マツ、キリ、ヒノキ、サワラ、ネズコ、ヤナギ、クルミ、カシ、シイ、コウゾ、モミ、クリ、コブシ、ヒメコマツ、アスナロ、カツラ、ホオ、ナラ、タモ、カラマツ、トウヒ、シナ、カバ、ミズメザクラ、セン、トチ、ブナ。

この順番で紹介されていたのでイチョウあたりまでは調子よかったのですが、その後は知らない木がどんどん出てきて、やっぱりそうかと思い知らされました。

山の学校にあるのは、サクラ、モミジ、サンショウ、ユズ、カキ、イチョウ、ツバキ、ツゲ、モウソウダケ、マダケ、マツ、ヒノキ、クリです。クロモジは七山の別の場所では見たのですが、残念ながらまだトレッキングコースでは見つけることができません。クロモジは爪楊枝として使われていましたが今は森のアロマとしても有名です。いつか会えたらと願っています。

もしかしたら私が気がついていない木が山の中にあるのかもしれません。これからまたひとつずつ出会っていきたいです。

身近なものを大切にしたい、身近なものに敬意を払いたい、身近なものから学んでいきたいです。

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雨が降ったり晴れたりを繰り返しても淡々と過ごすとき

福岡県、佐賀県に大雨警報が出ていましたが皆様ご無事でお過ごしでしょうか。

三年前に線状降水帯で災害を受けた七山の学校の記憶もまた新しいためご心配をおかけいたしましたが、こちらは斜面の崩れる気配もなく安全、安心で過ごしています。

明日から晴れに向かうようですが、しぶとくも今日もまた雨と晴れを短時間で繰り返す天候が続いています。


晴れた!と思った次の瞬間にはザーっと雨。雨だな、としょぼんているとファーと晴れて来る。慣れるまでは気持ちが上がったり下がったりしますし、犬達を避難させたり広場に出したりと忙しく立ち回るために犬も興奮してしまいます。

こんな風に晴れたり雨になったりと気分次第で変わるのが天気なのだと諦めてしまうと降っても晴れてもどうでもよくなって、むしろ落ち着いて過ごすことができます。

私達の方が気持ちを決めてしまうと犬達も右往左往することもなくなり、激しい雨が降ると木の下や小屋の周辺に塊るように避難し、小雨になると再び活動を始めるという風に落ち着いて過ごしています。


犬の方は私達という管理者がグループを統率していることをわかっていますから、こちらの気持ち次第で犬の落ち着きは違ってきます。こうした管理者の心の動向は常日頃から犬に影響を与えています。

犬を何度も飼育した経験があるか犬についての基本的な知識がある程度身に着いていれば、犬のちょっとした変化にドキドキすることもありません。しかし、犬を初めて飼う方や犬を何度も飼ったことはあるがどう育てたのか記憶にないという人の場合、犬の小さな変化にドキドキしてしまいそのことが犬を負担にさせることもあります。

なんでも始まりというのがありますから、初めから完璧を目指してということではなく、犬という動物は飼い主の気持ちに敏感なのだということを頭に入れておいて、犬に何か異変があったときにもまずは「大丈夫」と言い聞かせてゆっくりと対応をお願いしたいです。


犬はとても自浄作用も高いためちょっとした環境の変化で下痢や嘔吐をすることもあります。人間なら驚くような血便をしたとしてもそれがすぐに大病に結びつくわけではありません。

逆をいうと、犬の方が朝晩ちゃんと排尿、排便をする健康な動物であって、人の方が圧倒的に下痢、便秘、過食を繰り返す病的な動物です。最近読んだ書籍によると、お腹が空いている状態を長く続けてきた動物であるわたしたち人間が短期間で飽食になったことが人が病気をしやすい理由だと書いてありました。全くその通りだと思うのだけど食欲を抑えることは難しいです。

さて、こうして晴れても雨でもどうにでもなれという気持ちでここ数日を過ごし続けた結果、わたしの気持ちも落ち着いてきました。雨に濡れてしまう犬達が気がかりではありますが、タオルは山ほどあるし拭けばいいのです。毛が退化した小型犬にはドライルームも完備してあるし、犬は体温が高いので毛はすぐに乾いてしまいます。


雨は辛かったですが真夏の暑さの中でひとときの涼をいただきました。暑さこそ犬の敵ですから、とりあえずこれでお盆を迎えれば山の学校には秋がやってきます。

福岡はきっと蒸し暑いのだろうなと想像していますが、山の方は涼しい風が通り抜けていき梅雨時期のような湿気を感じることはありません。私が一年の間でもっとも大好きな季節「秋」、ツクツクボウシが鳴き始めたら秋の到来です。

Posted in 日々のこと, 自然のこと

ヒグマ事件から考えるヒトと動物の境界線とそれを伝える役割について

北海道でクマが人を襲った事件が起きたことで、いろいろと考えることがありました。

ある程度、考えがまとまってからブログに書こうと思っていたのですが、答えがはっきりとでないまま考えを巡らせてしまい今日に至りました。

事件の経緯としては7月12日に北海道でヒグマが新聞配達中の男性を襲って殺害し、同月18日に現場近くで偶然、ハンターにより射殺されたヒグマとDNAが一致したことで同個体であることがわかったというものでした。

ヒグマは体長が2メートル、体重が218キロだったらしく、動物園以外でクマに接したことのなくても、人を襲うには十分のサイズでありその殺傷能力も高いものであることも十分にわかります。

また、このヒグマが4年前に女性を襲ったクマであることもわかったため、このヒグマは繰り返し人に対して攻撃を繰り返していたことになります。

 

ヒグマは人を恐れないのか?

今回の事件で報道されているヒグマの行動についての解説の中で関心を持ったことは二つです。

一つ目は、ヒグマはどういう目的で人を襲うのかということ。

二つ目は、このヒグマが日中も人の居住区をうろつくなどの行動を繰り返していたこと。

動物が人を襲うには何らかの理由があるはずです。捕食のため(食べるため)、自分のテリトリーの中に外的が侵入したと感じたため、脅威を感じたためなどが主な理由です。

ヒグマが人を食べるために人を襲うという可能性もゼロではないようです。ヒグマは雑食動物で木の実や魚を食べるイメージが強いのですが、立派な牙をもち肉食をする消化機能も持っているからです。

しかし、ここでもっと問題にしなければいけないのは、本来は森林に住むはずのヒグマがなぜ森林から離れた人里まで頻繁に降りて来るようになったのかということです。

このヒグマの行動のパターンについて説明するニュースの中に、OSO18と名付けられたヒグマとの比較についてのコメントがあり、興味深く聞き入りました。

OSO18は最初に被害が確認された2019年から駆除される2023年までの間に、66頭もの家畜牛を襲ったクマの個体名です。

OSO18は、多数のわなにもかからず監視カメラで確認できる回数も少なく、非常に警戒心が高いためすることができずに家畜を襲われ続けたということでした。家畜の被害が大変大きかったことから、行政も民間も総力で取り組まれたにも関わらず4年という長い期間を逃げ続けながらも家畜を襲い続けたヒグマの最後は、偶然見つけたハンターによる駆除でした。

OSO18の行動にみることができるように警戒心が非常に高く人の気配を避けて行動するというのは、ヒグマの行動としては普通であるように思えます。ヒグマと人は長い間に渡って衝突を繰り返してきた歴史があるからこそヒグマは人を恐れ、人に近づかないようにすることで人とヒグマの境界線が保たれていたはずです。

ところが、昨月北海道で人を襲ったヒグマは人を恐れることなくなんども目撃されています。日中、人里をうろついていることもあり、また別のヒグマも住宅街をうろつく映像が撮影されています。

ヒグマが警戒することなく人里に近づくようになり、人を見ても逃げることなく攻撃する、人のゴミに執着したり、人を食べる個体がでるなど、ヒグマの人への執着はこうした行動を繰り返すことでさらに激しくなりそうです。

 

何故ヒグマは人を恐れなくなったのか?

警戒してなかなか人の前に姿を現さないヒグマと、人を恐れず日中も市街地をうろつくヒグマ。どちらも問題ではあるのでしょうが、人にとっての脅威は後者の方です。

ヒグマに限らず野生動物は人を恐れなくなりつつあるというのを山暮らしで感じることがあります。山の学校の近くをうろつくもっとも恐るべき動物は、イノシシです。

イノシシは雑食の上に人肉を食べることはないためヒグマとはまた違いますが、予期せぬ接近で人を襲うことないとは言い切れません。

最近はあまりないのですが、以前は犬と山歩きをしている最中に山の中でイノシシと遭遇することがたまにありました。

しかし、イノシシは私と犬に出会うと必ず逃げる、また夜に庭先に姿を現しても人や犬の気配を察知するとやはり逃げるという印象でした。

ところが、最近のイノシシは庭先で人を見てもすぐに逃げようとしません。イノシシは人を見ているようで人という動物の気配に以前のように敏感でなくなったように思えるのです。

イノシシの農作物被害はまだ大変大きなものなので、山のあちこちにわなが設置されていますし、猟期になるとそれぞれの山で猟師がイノシシ狩をしています。

しかし、そもそも山里に住んでいる人間の数が50年前と比較すれば圧倒的に少なく、このあたりも限界集落と呼ばれる地区ですから、いつも設置してあるわなくらいではイノシシも人から狩られる恐怖を忘れてしまいます。

ヒグマと人の境界線も緩くなってしまった理由は、イノシシと人の間の境界線が緩くなった理由と同じではないでしょうか。

 

囲われて生きているのは野生動物なのかそれとも人なのか?

都市空間で行き交う多くの人の活動の中にいると、パソコンの画面に出てくるヒグマの姿は山に閉じ込められた動物という風に間違った感覚に陥ることがあります。

逆に山の家に暮らして感じるのは、囲われて生きているのは山に住む野生動物ではなく都市空間に住む人間の方です。

山の家の敷地や周囲の畑にもたくさんのイノシシ除けの金網が見られます。イノシシ除けの金網のある風景、それが日本の里山の風景です。

人が守る敷地や人が暮らす市街地にはそれを守る物理的な境界線がいくつも作られており、民家の周りは壁や木々で囲われています。

物理的な境界線を設置し、見えない境界線を動物たちに伝えることで自分たちの生活を守っているのが人間という動物だと思います。

見えない境界線については、その境界線を野生動物たちが越さないように、常に境界線越しに野生動物を追い立てる行動を日々繰り返していなければなりません。この野生動物の追い立て役として最も活躍しているのが犬達なはずです。

ところが犬は家畜化やペット化が進んだ結果、人に寄り添う能力は十分に持っているけれど、野生動物を威嚇して追い立てる程の能力や精神力を持ち合わせることがなくなってきました。

特に相手がヒグマともなると家畜化された家庭犬には難しいことは想像できます。イノシシと遭遇しても怯むことのなかった黒ラブの愛犬オポでも、ヒグマを目の前にして対峙することなどはできるわけもありません。

最近ではサルと追わせるモンキードッグもあるように、クマと人の間に生じる問題を解決するために訓練育成された犬をベアドッグとされているそうです。

今回の様々なニュースではベアドッグを取り上げているものを探すことができなかったのですが、このような取り組みはもっと広く認知されるべきではないかと思います。

ベアドッグは犬ではなく狼犬として繁殖された者の中から、ベアドッグとして適性のあるものを育てているということです。

狼犬であることがペット化された犬とは全く違う遺伝子であり、非常に特殊な感性を持つ人々によって育成されていることが想像できます。

きっとすばらしい能力をもつであろうベアドッグの今後の活躍を多いに期待しています。

私の足元にいる犬達は、とてもクマに対抗できるような犬ではありませんが、どんなに小さな犬にも我が身や我が飼い主に危険が迫ったときには、決して相手を興奮させず、しかし必要に応じて吠えて威嚇する防衛能力を発揮して欲しいと思います。

家畜化したとはいえ狼の末裔であることを犬には忘れて欲しくない、そしてまた自分自身を家畜化した人であっても、私自身も戦う動物であることを忘れたくありません。

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ヤギのRとZ、お誕生日おめでとう!

今日はヤギのRとZのお誕生日、二頭とも二歳になりました。

二年前の春のことを思い出しています。

ヤギを飼おうかなと知人の紹介でヤギのいるカフェを紹介してもらいました。多久市にあるカフェを訪れると、そちらもヤギをもらって来られたとのことで、ご親切に紹介して下さったのが波佐見で古民家を改装したお宿でした。

早速、古民家のoniwaさんに連絡を取ったのですが、残念ながらオスのヤギは去勢術をしてしまったため仔山羊が産まれる予定はないという話でした。今回はご縁がなかったのだな、私にはまだ早すぎたのだろうなとヤギを飼うのを諦めていたところでした。

ところが、二年前の今日の日、4月17日にoniwaさんから「仔山羊が産まれました」と連絡が入りました。妊娠しているかもしれない気配はあったもののまさかと思っていたら…ということで、どうやら去勢手術をする直前に勝手に交配をしていたらしいのです。産まれた三頭のメスのうちの二頭をこちらにお迎えすることが決まりました。

向かって一番右がZ、一番左がR



初めて対面したときには膝の上に乗れるほどの小さかったRとZが、20キロ近いおとなのヤギへと成長しました。小さな山羊たちでしたが草を食べる勢いはものすごく、生い茂っていた登山口もあっという間に芝刈り、笹刈りをされていきました。いまでは小さなすみれが咲く風景となり、ヤギが来る前の写真と見比べると驚きます。

斜面の草刈の大変さをお手伝いしてほしくて迎えた山羊たち、草刈としては十分な役割を果たしてくれていますが、それ以上にヤギという動物について学ぶ機会となったことをありがたく思います。

ヤギのZの方は、賢く逃走傾向もないため最近までフリーで過ごさせていたのですが、斜面の工事やグラスシートの貼り付けをしたことで係留するようになりました。また、フリーにするもうひとつの欠点は、花を全部食べてしまうことでした。紫陽花やつつじの花には関心がないのですが、最近はシャクナゲや生徒さんたちが素敵な花壇を作って下さっていることもあって、しばらくは係留しながらできるだけあちこちにつなぐようにしています。


RとZでは全く知能のレベルが違うため、同胎の上に同じ環境で生育しているのになぜこれほど違うのかと思うのですが、そういえば私の母も「同じように育てたのにどうしてこんなに違ったのか」と憂いていたのを思い出し、それが動物の面白さなのだと納得しています。

犬のJは圧倒的にZに関心を持っていて、Zにまとわりついては頭突きをされることを繰り返しています。近づくと右往左往するRと違って、ちゃんと対面して頭突きをするZのコミュニケーション力の高さと自立性の強さに、いつも尊敬の念を抱きます。


Rの方は無駄な行動が多いのですが最近は個性として楽しむようにしています。山羊柵に頭を突っ込んで取れなくなるのを何度も繰り返しているので、柵の周りを木枠で囲む作業が終わったところです。

突っ込んだから取れるはずなのですが、しかも突っ込んで取れなくて鳴くなら学習すればいいのになと思うのですが、そうならないのがRです。道をなんども間違えるように「やったことを覚える」という基本学習を繰り返すのでなんども突っ込んでしまうので、見つけたときは“やぎのアールさん”というようになりました。逃走傾向の高いRが落ち着いて草を食べているときはほっとします。

ヤギと暮らすなど考えたこともなかったことが起きてヤギたちは2歳に。ヤギの寿命は犬と同じくらいですが、ヤギは医療の処置を受ける機会がなかなか得られないのです。しかし想定した以上にヤギという動物は強いことがわかりました。

RとZの毎日に安心が生まれるようにこれからもできることにトライしていきます。


多久市のスローカフェさんはこちらから→https://www.instagram.com/slowcafe_taku/?hl=ja

波佐見町のお宿oniwaさんはこちらから→https://oniwa.fun/

 

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災害で崩れたオポハウス裏山の工事が始まりました。

水害にあったのは2年前、令和5年7月11日のことでした。

この日の朝5時過ぎてからテラスに出ると裏山の土砂がテラスになだれこみ家の壁で土砂が止まっている悲惨な風景を目にしたのです。

線状降水帯が七山周辺を通過したため、七山地区の一部は河川も道路も山の斜面も壊滅的な状態となりました。

その復旧作業は約一年前から河川の工事がはじまり、そして道路が整備される形で少しずつ元の機能を取り戻していきました。

ですが、家屋の裏となると個人の使う場所ですからなかなか工事の順番が回ってきませんでした。

土砂災害のあとにボランティアの皆様のヘルプによって湧き水の処理はできたものの、その工作のためにさらに山を削ることになりました。

裏山といってもうちにとっては表庭が悲惨な状態であることが日常となり、時間のあるたびに土砂を運び出す作業も限界に達していました。

そしてようやくです。

行政と個人が共同で取り組む復旧作業の順番がオポハウスに回ってきました。


家の裏側にユンボが入って成型を開始されました。

成型のためにまた余分に山を削ることになるのですが、残念ですが仕方ありません。

そもそも家が山の斜面に立っているような環境なので人の場所と山の場所の攻めぎあいになっています。


土砂撤去の作業を手伝って下さった皆さんには懐かしい光景かと思います。

この木の柱の色の変わっているところ、大体半分くらいまですべて土砂と石で埋め尽くされていました。

それを人力で撤去して住める状態にして下さったことを思い出して目頭が熱くなりました。


裏にわずかに残った石垣もすでに傾いていたため一旦壊して再度作り上げる作業をされているところです。

石を積み上げていく作業は職人技で見とれてしまうほどでした。


この場所に重機が入ってきてるっていうことを想像できるでしょうか。

人類というのはかなりすごい存在です。

山羊のアールとゼットは重機があるとすぐに近づいてくるのでどちらも係留されておりしばらくつまらない日々を過ごしています。


工事はしばらく続きそうですが、どのような仕上がりになるのかとても楽しみです。

今まで進まなかったことがこうしてひとつ進むと、またいろんなことが進んでいくような気がして明るい気持ちになりました。

重機の大きな音に犬たちは快適とは言えないと思いますが、また過ごしやすい空間を作っていきたいと思います。

完成までの道のりを楽しみたいと思います。

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笹林を刈りながら生まれる「何故?」。何故があるから毎日が楽しい。

山の学校の横の敷地にあたる笹林は、これまでもなんどか刈込に挑戦してきました。

途中まで刈り込んだかと思って少し休憩するとまたあっという間に元の笹林に戻ってしまうということを何年も繰り返してきました。

ですが、今回こそは絶対に笹林に負けるもんかと夏を超えた時期から取り組みはじめ、みんさんのサポートも得ながら徐々に刈り込みスペースが広がりつつあります。

最近は着実に進んでいることを確認できるようになってきたので、七山に戻ったら数本であろうと必ず笹林と向き合う時間を作るようにしています。

 

この笹林を刈り始めると必ずやってくるのが山羊のゼットです。

刈り終わった笹や刈っている最中の笹、また笹の上に這うカズラは大好物のため見つけるとものすごい勢いで口の中に吸い込んでいきます。

ゼットは人がいなくてもときどきこの場所に訪れますが、誰かが笹を刈り始めるとものすごい速さで近くにいるのが「なぜだろう」と不思議でなりません。

私が笹を刈っていても刈っていなくても、彼女が笹やカズラを食べる機会とは無縁なはずなのです。

笹を刈るのを邪魔するわけでもなく、手伝っているようにも思えないのですが、作業をしているかなり近い距離にうろうろとしています。

草刈作業中に慣れていてフリーにしている犬が近くに来ることもよくありますが、犬が近くにいるとケガをするのではないかと心配になり、あえて遠ざけた場所に係留することもあります。

しかし、山羊のゼットに関しては、私の激しい笹を刈る作業でもゼットがケガをする雰囲気は全く感じられないため、こちらも安心して作業を続けています。

カットした笹がゼットの頭の上に落ちてきても、足場に少し背の高い切った笹があったとしてもゼットならケガをする心配もありません。

ずっと屋外で活動をするゼットなので、屋外慣れしているというか野生動物に近いというか、室内でぼんやりと過ごしている犬たちとは強さが違うと感じます。

犬であれ山羊であれ、「なぜこれをするのだろう?」という疑問が生まれることで、相手を理解したいという気持ちに繋がります。

笹を刈ると近づいてくるゼットの行動が不思議な反面、笹を刈りに行くときに「今日はゼットが気づくだろうか」という期待もするようになりました。

この時代、何故?にはスマホ検索で瞬時に答えが出てしまいます。

でも、こうしたゼットとのやり取りに簡単な答えはありません。

犬であれ山羊であれ、何故が広がるからワクワクが止まりません。

私に何故を与えてくれるゼットに感謝。犬たちに感謝です。

右がゼットで左がアールです。

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「公園の犬Tシャツ」が生れた経過~異種間コミュニケーションより難しかったAIとの対話について~

ことの始まりはあのノージャンピングTシャツでした。

アンドパインの店長さんに素敵な「ノージャンピングTシャツ」のイラストを作っていただいたときに、このイラストがなんとAIが作ったと聞いてすごくビックリしました。

例のチャットGPTを駆使して作ったイラストだということを教えてもらいました。

AIがこんなに身近なところまで来ているのだと知らない私は、時代に置いて行かれてる感を強く覚えました。

そんな私に対する、誰でも作れますよという簡単な慰めの言葉を本気で受け止めてしまい次作は自分で作ろうとさっそくチャットGPTのアプリをダウンロードしました。

チャットGPTでイラスト作成の開始です。

次作のテーマのメッセージは「犬を触らないでください」だと決めていました。

公園にいる犬のイメージから入ろうとまずAIにお願いしたのは、

「公園にいるミックスの和犬のイラストをアニメ風に書いて下さい。」

ワクワクと期待してイラストができるのを待ちました。

そして…。


茶色の犬が描かれています。ということだったのですが、これは犬と認識ができないレベル。耳と脚がない!

次のリクエストは「犬を入れ替える リアルに」で、少しだけドキドキして返事を待ちます。


やっと耳がでてきましたが、まだ脚がない。

伏せているということなのだろうかともう一度リアルな犬を要求します。

そしてまた少し不安な気持ちになって返事を待ちます。


やっと脚が出てきた。でも脚が四角形。

ちゃんと「詳細な描写で犬を表現しています。」という説明もついています。

AIとのコミュニケーションは上手くいっているはずなのに全然自分のイメージと違うイラストが出来上がりました。

もっと突き詰めていきたいという気持ちもありましたが、これ以上の発展性も感じられないこの段階で使用量に達して終了。

できあがったのがこれです。


題して「公園にいる犬」。

初めてトライした作品がこのレベルとなりました。

家族から生徒さんまで数名に訴えたところ「なかなか可愛い」と言われて調子に乗って作ったTシャツが「公園にいる犬Tシャツ」です。

人生の最大の興味が“異種間コミュニケーション”なのですが、AIとのコミュニケーションはなかなか簡単ではなさそうです。

その後も、ローレンツ先生の著書「人、イヌに会う」の要約などを聞いてみましたが、こちらは素晴らしくまとまりがありました。

さらに「犬語セミナー」についても聞いてみたのですが、こちらもものすごくまとまっていました。犬語セミナーを知っているだけでもすごいと関心しました。

AIから学べない感受性で受け取るコミュニケーションこそ、犬との対話に必要なものなのかもしれません。

公園にいる犬Tシャツ

Posted in メッセージTシャツ販売, 日々のこと

ゴールデンウィークに見た風景もまた犬…犬…犬。

今年のゴールデンウィークもあっという間に、いや…やっと終わりが来ました。

オポハウス合宿クラスに参加する犬たちが入ったり出たりを繰り返して、ひとときも息つくことなく過ぎていったゴールデンウィーク。

とても長い時間を犬たちと過ごしました。

合宿スタートで緊張気味の犬たち



土砂撤去の作業を見守る犬たち



ワンプロを始める若い犬たち



トレッキングクラスに同行した犬たち



天候の変化に右往左往しました。



久しぶりの合宿参加の犬
も。



少しずつ変わる季節を感じながら。



山のにおいを思い出しながら。



日向ぼっこもたくさんして。



お得意の鼻を使って探索行動。



暑い時間には日陰が最高。



犬同士も他の動物も社会化の勉強時間に。



地面にコロコロの下はきっとミミズの死骸かな。



陣地取りはお決まりの勝負事。



新しい「何か」の制作もスタートしました。



そして、犬たちに付きまとうヤギのゼットはみなに「ゼットくん」と呼ばれるようになりました。(ゼットはメスなんだけど)



緊張している犬の表情が時間とともにとけていくのを見るのが楽しいです。

犬同士のやり取りの中にたくさんの個性や社会性を見ることができ、昼休みや夕方には一緒にお世話をしているダンナくんと「○○ちゃんはこんな行動をした」とか「○○くんはこんなことをしていることが多いね」などとお互いに情報公開をしています。

数ケ月のときには遊んでばかりいた犬が3歳になると全く違う行動パターンを示すようになったりと年齢による変化も見ることができます。

人よりも7倍速で成長する犬たちですから、成長の変化はあっという間に起きてしまいます。

4月から5月にかけては日々の気温の変化はあるものの比較的過ごしやすく、一日外で過ごしてもあまり体力を使いません。

暖かな日差しの中での日向ぼっこの姿をたくさん見ることもできました。

普段は都会の喧騒と臭いにおいの中でストレスの多い生活をしている犬たちに、少しでも自然の空気と土のにおいを嗅ぐ時間があればと思ってこのクラスを続けています。

飽きることなくずっと見ていることができるのですが、同時にはしゃぐ犬がケガをしないかとハラハラする気持ちももちろんあります。

なのでお預かりの犬がやっと帰る日は気持ちがほっとします。

夜も熟睡することができないためかなり疲れてきたのですが、しばらく預かりさんたちが続きそうです。お昼休みをしっかりとって気力も体力を充実させる心構えです。

トレッキングにも良い季節です。

ぜひ山へお出かけ下さい。

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