グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬のジェイとオオスズメバチ【後編】

犬のジェイとオオスズメバチの出会い、オオスズメバチと私の戦いについての記録です。前編はこちらからどうぞ。

犬のジェイとオオスズメバチ【前編】

後編に続きます。

前編では、ジェイと小型犬くんとわたしが三匹のオオスズメバチから退散して広場を出るところまでをお話しました。このままでは広場が使えないため、オオスズメバチを広場から追い出さなければなりません。

いつも大切なときには何故か現場にいないダンナくんは、やはりこの日もオポハウスを不在にしていました。しかし、夕方になるとダンナくんの弟子としてお手伝いに来てくれているとしちゃんが来ることがわかっていました。30代の男性だから頼りになります。

作戦を立てるために、唐津で農家をしている生徒さんに状況を連絡し、何か秘策があれば教えて欲しいという旨を相談しました。生徒さんはすぐに連絡を下さり、良さげなネット情報を教えて下さいました。

その対策とは、木酢を使うというものでした。木酢をクヌギの木につるしたり振りかけたりするとオオスズメバチが近づかなくなるらしいのです。木酢は様々な虫よけとして日常的に使っており、オポハウスには大量に常備してあります。早速、ペットボトルに木酢を入れて樹木に下げる備品を樹木の本数ほど準備しました。

しかし、現在オオスズメバチが集まっている木に近づくことはできません。夜になればきっと山に帰っていくはずだからと待ち続け、21時くらいになって作戦を開始することにしました。私ととしちゃんは養蜂用にもっている簡単な防御服を着て、念のためにライトを軽く照らして、さらには念のためにスズメバチ用の殺虫剤も準備して現場に向かいました。

オオスズメバチさんたちもこんな時間には山に帰っているはずだと思い見に行くと、なんとまだ同じ場所に三匹のオオスズメバチがいたのです。夜になったのに巣に戻らず、クヌギの樹液にみなで集まっています。これはもう直接対決しかありません。

犬の過ごす場所なので殺虫剤を使いたくないのですが、このままではもっとたくさんのオオスズメバチが集まってきて誰かが大怪我をしてしまいます。今回は仕方なく殺虫剤で追い払った後に、木酢を木にスプレーして、木酢ボトルをぶら下げて、わかりやすいように小枝を切って整備をしました。翌日になるとオオスズメバチはいなくなっており、飛んでくるオオスズメバチも木にとまらずUターンしていく姿を見て、広場の安全を取り戻したとほっとしていました。

しかし、そのさらに翌日にはまた二匹のオオスズメバチがクヌギの木に戻ってきました。樹液がたくさんでているようでいつも同じ木なのです。スプレーした木酢の臭いが薄くなってしまったのかもしれません。その後はオオスズメバチを見つけるたびにスプレーを遠慮なく降って追い払っています。大きいのでスプレーが当たっても死ぬことはないのですが、何もしないと占領されてしまうので防衛としてやっています。

預かっている犬達はスプレーをもって立ち上がる私の姿の方に注目していますが、ジェイのようにオオスズメバチにそのものに反応する犬はいませんでした。オオスズメバチは他のハチと同じように黒いものに攻撃するという習性があります。なぜ黒い色なのかについてはいろんな説があるようですが、この習性は間違いありません。

しかし、防衛作戦が効果を上げているようで、広場には安全と安心が戻ってきました。ジェイもその後は大きな反応をすることはありません。

前編にも書きましたが、野生の生物と犬の関わりにはリスクもありますが学びもあります。どこまでを見守り、どこから管理すべきなのかの判断には迷いがでることもあります。もちろん、預かっている犬達であればリスクよりも管理が重要です。しかし、自分の愛犬となると、管理よりも多少はリスクありの方に振れてしまいます。生物との対話で学ぶことという貴重な体験をすべて奪いたいとは思いません。

オオスズメバチはまだ活動期です。今年から来年にかけて、ジェイがオオスズメバチとどのような対話をしていくのかが楽しみです。しかし、黒いから対話なしに攻撃されてしまう可能性もあるのですが、どうだろうねジェイ。


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犬のジェイとオオスズメバチ【前編】

自然という環境の中で犬といっしょに活動することにはたくさんの楽しみがあります。中でも貴重な体験は、犬が野生の生物たちとどのように関わるのかを見ることが出来ることです。

先日出版したグッドボーイハートの本の中にも、犬のオポがヤマカガシというヘビと遭遇したときの様子について書きました。よくいう「もし犬が○○に出会ったら」とか「もし犬が○○と戦ったら」みたいな感じでいろんな想像をするのですが、その想像を超える現実が目の前にあったら本当にドキドキが止まりません。そして今回は、犬のジェイとオオスズメバチについての話です。

黒ラブのジェイは山の学校で暮らし始めてから10ケ月が経ちます。しかしまだ一シーズンも超えていないので、出会う生物も植物もみな彼にとっては新しい対戦相手ということになります。

ジェイは生後一歳九カ月まで訓練施設に入っていました。ジェイの子犬時代について詳しくは聞いていないのですが、ジェイの山に来たばかりの体の使い方を見る限りでは、ジェイは山で過ごした時間はほとんどないのではないかと思っています。都市空間で育ったジェイが山の中で出会う生物にどのような反応を見せるのか、見逃してはなるものかと真剣に見守っています。

先日、オポ広場にジェイと預かりの小型犬の二頭と共に過ごしていました。どちらも草を食べることが多く、この日も地面をくんくんと嗅ぎながらそれぞれにお気に入りの草を探して歩いていました。私は日陰を見つけて腰を下ろし、二頭の様子を伺っていました。

すると、ジェイが数本のクヌギ(どんぐり)の木の下で、突然自分の大腿部あたりに鼻先を向け、次の瞬間には上を見上げました。この反応は、「誰かに攻撃を受けた、しかもそれは上からやってきた」です。そしてくるりと回ってもう一度上を見上げました。

この反応が特に大きな動作だと感じた私は「スズメバチか…」と予測し、「ジェイ、カム」と呼びの合図をかけて私の方に引き寄せました。私とジェイの距離は20メートル位です。何かの虫に集中していたジェイは、一回目の合図には反応しませんでしたが、二回呼ぶとこちらに走ってきました。

犬が虫などの生物に対してやっていることを止めるべきか見守るべきかは、瞬間的な判断が必要です。全てを止めるべきではないが、状況によっては管理も必要です。スズメバチはこちらが攻撃すると反撃に転じることもあります。それが一匹ではなく複数になることも想像されるので反射的は攻撃はデメリットが多すぎると判断した上で、合図での管理をしました。

ジェイが私の元に走ってきたあとに状況を確認しようと立ち上がると、ジェイが再び木の下に走っていきました。そして、木の下で顔を上に向けて回っています。鼻先で危険な何がなんであったのかを確認しようとしています。一旦は私の元に来たもののすぐに戻っていくということは、ジェイは攻撃を受けた何かに執着している状態だったということです。それが何であるかを確認するという作業がまだジェイの中で続いていたということです。

犬が自然環境の中で危険を感じることなどよくあることです。その危険度も低いものから高いものまで様々にあり、危険度の高さは攻撃を受けた度合い、その気配の音や色やにおいなど様々な情報によって決められます。ジェイの頭上で飛ぶ昆虫は樹々の間に隠れて目視することはできません。おそらく音と臭いが気配となって伝わってきたはずです。

これらの対面は、当然のことながら経験の多いものは落ち着いて対応し、経験の浅いものは興奮してしまいます。自然環境での活動が未熟なジェイの動きは、興奮が高い上に執着が強く、これ以上の探索は危険だと私が判断しました。ジェイを再び呼び寄せて、遠くの木に係留しました。

もう一頭の犬はこの全ての状況に全く気付いておらず、草をにおう散策を離れた場所で行っていたので混乱を避けるためにこの犬の方には声をかけずにそっと現場に近づいて状況把握を開始しました。

そして木に近づいてビックリしてしまう風景を見たのです。クヌギの樹木のちょうど私の目線よりと同じくらいの高さに、三匹のオオスズメバチが集まって活動しているのです。オオスズメバチといえば世界最強のスズメバチです。ご親切なことに黄色と黒色のはっきりとしたボティで「危険ですから近づかないで下さい」とメッセージをくれています。

これはまずいです。絶対にピンチの状況です。振動に敏感なオオスズメバチを刺激しないように、すばやくしかも静かにジェイのところへ戻って首輪を持ち、同時に小型犬の名前を呼んで出口の方に移動を始めました。

ところが、いつもはすぐに走って来るこの小型犬くんが草に夢中になっているようで私の合図に気が付きません。オオスズメバチを恐れて大きな声を出せなかったのもありますが、とにかく早く広場を出なければと、念を入れて名前を呼び続けるとはっと気づきこちらに走ってきました。そして二頭とわたしは無事に、広場を出ることができました。

しかし、オポ広場はオオスズメバチに占領されたようなものです。

オポ広場を奪還せよ!

ミッションがスタートしました。後編に続きます。

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動物と対話する人「ジェーン・グドール博士」が逝去

当ブログでもなんどか触れ、ホームページの私のプロフィール欄には尊敬する人としてご紹介しているジェーン・グドール博士が、10月1日に91歳で逝去されたとニュースを拝見しました。まずは、深くご冥福をお祈りするとともに、博士の動物に対する愛の深さに感謝いたします。

ジェーン・グドール博士についてあまりご存じない方も、チンパンジーが道具を使うことを初めて野生のフィールドで観察して発表した人だというと覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。もしくは、黄色い枠の雑誌、ナショナルジオグラフィックの表紙で森の中を短パンで歩く、美しく若い女性の姿に覚えのある方がいるかもしれません。

1960年代という時代に、まだ動物の専門家でもない若い女性が単身でアフリカの野生動物の森の中に派遣されるという実話は、信じられないような話でしかありませんでした。

その上、その若き女性はチンパンジーをこよなく愛するばかりでなく、毎日森の中にひとりで出かけていって、人との接触が不可能な野生のチンパンジーと大変長い時間をかけて距離を縮めながら交流を深めていくという物語のような人生です。アフリカの森を全く知らない私もその光景を想像しながら、動物と人の豊かな関係の可能性についてワクワクと心を躍らせました。

ジェーン・グドール博士の繰り返し言う「Hope in action」は、私の中にも根付いています。どんなに素晴らしい考えやアイデア、どんなに美しい動物との関係性も、行動なくして実現することはありません。私の道に大きな力を与えて下さったジェーン・グドール博士に恥じぬよう、どんなに細い道でもどんなにゆっくりとした歩であっても歩き続けていきたいです。

以下のジェーン・グドール博士の活動についての文章は、ジェーン・グドール博士が設立したジェーン・グドール・インスティテュートから送信されたメールの中から抜粋させていただきました。

引用ここから

ジェーン・グドール博士について

1934年4月3日、英国ロンドン生まれ。26歳のときにアフリカの野生動物への情熱を胸にタンザニア・ゴンベへ渡り、チンパンジーの野生研究を開始。彼らの生活に「隣人」として入り込むアプローチは画期的でした。1960年の「チンパンジーによる道具使用」の発見は世界を震撼させ、人間と動物の関係を根本から見直すきっかけとなりました。

1977年にはジェーン・グドール・インスティテュートを設立し、博士の研究と理念を世界に広げました。1991年には「ルーツ&シューツ」を創設し、75か国の若者が思いやりある市民・リーダーとなることを後押ししています。晩年も博士は年間約300日の講演活動を続け、野生動物の危機や環境問題、そして希望の理由を語り続けました。

博士は国連平和大使であり、大英帝国勲章デイム司令官を授与されています。直近では2025年、米国大統領自由勲章を受賞し、科学と地球への尽力が改めて称えられました。

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雨が降ったり晴れたりを繰り返しても淡々と過ごすとき

福岡県、佐賀県に大雨警報が出ていましたが皆様ご無事でお過ごしでしょうか。

三年前に線状降水帯で災害を受けた七山の学校の記憶もまた新しいためご心配をおかけいたしましたが、こちらは斜面の崩れる気配もなく安全、安心で過ごしています。

明日から晴れに向かうようですが、しぶとくも今日もまた雨と晴れを短時間で繰り返す天候が続いています。


晴れた!と思った次の瞬間にはザーっと雨。雨だな、としょぼんているとファーと晴れて来る。慣れるまでは気持ちが上がったり下がったりしますし、犬達を避難させたり広場に出したりと忙しく立ち回るために犬も興奮してしまいます。

こんな風に晴れたり雨になったりと気分次第で変わるのが天気なのだと諦めてしまうと降っても晴れてもどうでもよくなって、むしろ落ち着いて過ごすことができます。

私達の方が気持ちを決めてしまうと犬達も右往左往することもなくなり、激しい雨が降ると木の下や小屋の周辺に塊るように避難し、小雨になると再び活動を始めるという風に落ち着いて過ごしています。


犬の方は私達という管理者がグループを統率していることをわかっていますから、こちらの気持ち次第で犬の落ち着きは違ってきます。こうした管理者の心の動向は常日頃から犬に影響を与えています。

犬を何度も飼育した経験があるか犬についての基本的な知識がある程度身に着いていれば、犬のちょっとした変化にドキドキすることもありません。しかし、犬を初めて飼う方や犬を何度も飼ったことはあるがどう育てたのか記憶にないという人の場合、犬の小さな変化にドキドキしてしまいそのことが犬を負担にさせることもあります。

なんでも始まりというのがありますから、初めから完璧を目指してということではなく、犬という動物は飼い主の気持ちに敏感なのだということを頭に入れておいて、犬に何か異変があったときにもまずは「大丈夫」と言い聞かせてゆっくりと対応をお願いしたいです。


犬はとても自浄作用も高いためちょっとした環境の変化で下痢や嘔吐をすることもあります。人間なら驚くような血便をしたとしてもそれがすぐに大病に結びつくわけではありません。

逆をいうと、犬の方が朝晩ちゃんと排尿、排便をする健康な動物であって、人の方が圧倒的に下痢、便秘、過食を繰り返す病的な動物です。最近読んだ書籍によると、お腹が空いている状態を長く続けてきた動物であるわたしたち人間が短期間で飽食になったことが人が病気をしやすい理由だと書いてありました。全くその通りだと思うのだけど食欲を抑えることは難しいです。

さて、こうして晴れても雨でもどうにでもなれという気持ちでここ数日を過ごし続けた結果、わたしの気持ちも落ち着いてきました。雨に濡れてしまう犬達が気がかりではありますが、タオルは山ほどあるし拭けばいいのです。毛が退化した小型犬にはドライルームも完備してあるし、犬は体温が高いので毛はすぐに乾いてしまいます。


雨は辛かったですが真夏の暑さの中でひとときの涼をいただきました。暑さこそ犬の敵ですから、とりあえずこれでお盆を迎えれば山の学校には秋がやってきます。

福岡はきっと蒸し暑いのだろうなと想像していますが、山の方は涼しい風が通り抜けていき梅雨時期のような湿気を感じることはありません。私が一年の間でもっとも大好きな季節「秋」、ツクツクボウシが鳴き始めたら秋の到来です。

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ヒグマ事件から考えるヒトと動物の境界線とそれを伝える役割について

北海道でクマが人を襲った事件が起きたことで、いろいろと考えることがありました。

ある程度、考えがまとまってからブログに書こうと思っていたのですが、答えがはっきりとでないまま考えを巡らせてしまい今日に至りました。

事件の経緯としては7月12日に北海道でヒグマが新聞配達中の男性を襲って殺害し、同月18日に現場近くで偶然、ハンターにより射殺されたヒグマとDNAが一致したことで同個体であることがわかったというものでした。

ヒグマは体長が2メートル、体重が218キロだったらしく、動物園以外でクマに接したことのなくても、人を襲うには十分のサイズでありその殺傷能力も高いものであることも十分にわかります。

また、このヒグマが4年前に女性を襲ったクマであることもわかったため、このヒグマは繰り返し人に対して攻撃を繰り返していたことになります。

 

ヒグマは人を恐れないのか?

今回の事件で報道されているヒグマの行動についての解説の中で関心を持ったことは二つです。

一つ目は、ヒグマはどういう目的で人を襲うのかということ。

二つ目は、このヒグマが日中も人の居住区をうろつくなどの行動を繰り返していたこと。

動物が人を襲うには何らかの理由があるはずです。捕食のため(食べるため)、自分のテリトリーの中に外的が侵入したと感じたため、脅威を感じたためなどが主な理由です。

ヒグマが人を食べるために人を襲うという可能性もゼロではないようです。ヒグマは雑食動物で木の実や魚を食べるイメージが強いのですが、立派な牙をもち肉食をする消化機能も持っているからです。

しかし、ここでもっと問題にしなければいけないのは、本来は森林に住むはずのヒグマがなぜ森林から離れた人里まで頻繁に降りて来るようになったのかということです。

このヒグマの行動のパターンについて説明するニュースの中に、OSO18と名付けられたヒグマとの比較についてのコメントがあり、興味深く聞き入りました。

OSO18は最初に被害が確認された2019年から駆除される2023年までの間に、66頭もの家畜牛を襲ったクマの個体名です。

OSO18は、多数のわなにもかからず監視カメラで確認できる回数も少なく、非常に警戒心が高いためすることができずに家畜を襲われ続けたということでした。家畜の被害が大変大きかったことから、行政も民間も総力で取り組まれたにも関わらず4年という長い期間を逃げ続けながらも家畜を襲い続けたヒグマの最後は、偶然見つけたハンターによる駆除でした。

OSO18の行動にみることができるように警戒心が非常に高く人の気配を避けて行動するというのは、ヒグマの行動としては普通であるように思えます。ヒグマと人は長い間に渡って衝突を繰り返してきた歴史があるからこそヒグマは人を恐れ、人に近づかないようにすることで人とヒグマの境界線が保たれていたはずです。

ところが、昨月北海道で人を襲ったヒグマは人を恐れることなくなんども目撃されています。日中、人里をうろついていることもあり、また別のヒグマも住宅街をうろつく映像が撮影されています。

ヒグマが警戒することなく人里に近づくようになり、人を見ても逃げることなく攻撃する、人のゴミに執着したり、人を食べる個体がでるなど、ヒグマの人への執着はこうした行動を繰り返すことでさらに激しくなりそうです。

 

何故ヒグマは人を恐れなくなったのか?

警戒してなかなか人の前に姿を現さないヒグマと、人を恐れず日中も市街地をうろつくヒグマ。どちらも問題ではあるのでしょうが、人にとっての脅威は後者の方です。

ヒグマに限らず野生動物は人を恐れなくなりつつあるというのを山暮らしで感じることがあります。山の学校の近くをうろつくもっとも恐るべき動物は、イノシシです。

イノシシは雑食の上に人肉を食べることはないためヒグマとはまた違いますが、予期せぬ接近で人を襲うことないとは言い切れません。

最近はあまりないのですが、以前は犬と山歩きをしている最中に山の中でイノシシと遭遇することがたまにありました。

しかし、イノシシは私と犬に出会うと必ず逃げる、また夜に庭先に姿を現しても人や犬の気配を察知するとやはり逃げるという印象でした。

ところが、最近のイノシシは庭先で人を見てもすぐに逃げようとしません。イノシシは人を見ているようで人という動物の気配に以前のように敏感でなくなったように思えるのです。

イノシシの農作物被害はまだ大変大きなものなので、山のあちこちにわなが設置されていますし、猟期になるとそれぞれの山で猟師がイノシシ狩をしています。

しかし、そもそも山里に住んでいる人間の数が50年前と比較すれば圧倒的に少なく、このあたりも限界集落と呼ばれる地区ですから、いつも設置してあるわなくらいではイノシシも人から狩られる恐怖を忘れてしまいます。

ヒグマと人の境界線も緩くなってしまった理由は、イノシシと人の間の境界線が緩くなった理由と同じではないでしょうか。

 

囲われて生きているのは野生動物なのかそれとも人なのか?

都市空間で行き交う多くの人の活動の中にいると、パソコンの画面に出てくるヒグマの姿は山に閉じ込められた動物という風に間違った感覚に陥ることがあります。

逆に山の家に暮らして感じるのは、囲われて生きているのは山に住む野生動物ではなく都市空間に住む人間の方です。

山の家の敷地や周囲の畑にもたくさんのイノシシ除けの金網が見られます。イノシシ除けの金網のある風景、それが日本の里山の風景です。

人が守る敷地や人が暮らす市街地にはそれを守る物理的な境界線がいくつも作られており、民家の周りは壁や木々で囲われています。

物理的な境界線を設置し、見えない境界線を動物たちに伝えることで自分たちの生活を守っているのが人間という動物だと思います。

見えない境界線については、その境界線を野生動物たちが越さないように、常に境界線越しに野生動物を追い立てる行動を日々繰り返していなければなりません。この野生動物の追い立て役として最も活躍しているのが犬達なはずです。

ところが犬は家畜化やペット化が進んだ結果、人に寄り添う能力は十分に持っているけれど、野生動物を威嚇して追い立てる程の能力や精神力を持ち合わせることがなくなってきました。

特に相手がヒグマともなると家畜化された家庭犬には難しいことは想像できます。イノシシと遭遇しても怯むことのなかった黒ラブの愛犬オポでも、ヒグマを目の前にして対峙することなどはできるわけもありません。

最近ではサルと追わせるモンキードッグもあるように、クマと人の間に生じる問題を解決するために訓練育成された犬をベアドッグとされているそうです。

今回の様々なニュースではベアドッグを取り上げているものを探すことができなかったのですが、このような取り組みはもっと広く認知されるべきではないかと思います。

ベアドッグは犬ではなく狼犬として繁殖された者の中から、ベアドッグとして適性のあるものを育てているということです。

狼犬であることがペット化された犬とは全く違う遺伝子であり、非常に特殊な感性を持つ人々によって育成されていることが想像できます。

きっとすばらしい能力をもつであろうベアドッグの今後の活躍を多いに期待しています。

私の足元にいる犬達は、とてもクマに対抗できるような犬ではありませんが、どんなに小さな犬にも我が身や我が飼い主に危険が迫ったときには、決して相手を興奮させず、しかし必要に応じて吠えて威嚇する防衛能力を発揮して欲しいと思います。

家畜化したとはいえ狼の末裔であることを犬には忘れて欲しくない、そしてまた自分自身を家畜化した人であっても、私自身も戦う動物であることを忘れたくありません。

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グループトレッキングクラスを開催+花木をたくさん植えました。

4月のグループトレッキングクラスを開催しました。

暑さの続く日でしたが、トレッキングの日は朝から曇り空、そして少しだけ雨も降りました。

天候の変りやすい山の天気なので、小雨は気にせずに山歩きを決行しました。


長い時間をかけて作ってきた関係のある仲間たちとの集団行動は犬を落ち着かせていきます。


山道の途中では、ヤギのアールとゼットが草を食べながらお出迎えします。


犬たちももうヤギには馴れたものです。お互いに距離をとって相手を尊重するのが社会性です。


一列になって歩くと長い列になりますが、みんなで一つの群れです。誰かが声をかけると止まる、先頭が歩き出すとみな進みます。


新緑がまぶしくキラキラした山の風景が広がります。


トレッキングの後は対面のクラスを開催しました。

同じ犬との対面も成長とともに変化していきます。

犬のJも参加させていただきました。

クラスの後にいただいたのは、オポハウスのニホンミツバチたちからいただいた蜂蜜で作ったレモネード、もちろん生徒さんのお手製です。

蜂蜜の甘さに香りもあってものすごく美味しかったです。

おぽみつ使用の自家製レモネード



クラスの終了後、この日の午後の作業はオポハウスに花と木を植える作業です。


J広場には赤マンサク、白マンサク、ヤマボウシ、ミモザを植えました。

オポ広場にはキンモクセイ、広場の外には挿し木で育ててもらった紫陽花たち。


入口のガーデンにもたくさんの花を植えていただきました。

クリスマスローズも追加されました。

樹々の成長も一気にというわけにはいきません。それぞれの樹々や花々の成長に応じた環境と育てる人が必要です。そう考えると犬も全く同じです。そして、その成長を楽しませてもらっているのが私達の方です。

思い出すことがあります。この山に移転した十八年前には、山の杉の木を伐採したあとにモミジ、͡コナラ、サクラ、イチョウ、ケンポナシを植えていただき下刈りしながら育ててきたのですが、慣れない山暮らしにてんやわんやで、一本一本の成長を見届ける余裕がありませんでした。

樹々は大きく育ちひとつの山となり毎日の生活に豊かさを与えてくれ、犬との山歩きのクラスではたくさんの癒しを与えてくれて感謝しています。

本日植えた木の中には日陰を作りたくて植えた木もたくさんありますが、結果を求めずに植えた木や花たちの成育のために環境を整え、成長を見守りそれを楽しませていただくことをこれからはもっと大切にしたいと思います。

出会いがすべてのご縁です。どのご縁も大切にしていきます。


 

 

 

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ヤギのRとZ、お誕生日おめでとう!

今日はヤギのRとZのお誕生日、二頭とも二歳になりました。

二年前の春のことを思い出しています。

ヤギを飼おうかなと知人の紹介でヤギのいるカフェを紹介してもらいました。多久市にあるカフェを訪れると、そちらもヤギをもらって来られたとのことで、ご親切に紹介して下さったのが波佐見で古民家を改装したお宿でした。

早速、古民家のoniwaさんに連絡を取ったのですが、残念ながらオスのヤギは去勢術をしてしまったため仔山羊が産まれる予定はないという話でした。今回はご縁がなかったのだな、私にはまだ早すぎたのだろうなとヤギを飼うのを諦めていたところでした。

ところが、二年前の今日の日、4月17日にoniwaさんから「仔山羊が産まれました」と連絡が入りました。妊娠しているかもしれない気配はあったもののまさかと思っていたら…ということで、どうやら去勢手術をする直前に勝手に交配をしていたらしいのです。産まれた三頭のメスのうちの二頭をこちらにお迎えすることが決まりました。

向かって一番右がZ、一番左がR



初めて対面したときには膝の上に乗れるほどの小さかったRとZが、20キロ近いおとなのヤギへと成長しました。小さな山羊たちでしたが草を食べる勢いはものすごく、生い茂っていた登山口もあっという間に芝刈り、笹刈りをされていきました。いまでは小さなすみれが咲く風景となり、ヤギが来る前の写真と見比べると驚きます。

斜面の草刈の大変さをお手伝いしてほしくて迎えた山羊たち、草刈としては十分な役割を果たしてくれていますが、それ以上にヤギという動物について学ぶ機会となったことをありがたく思います。

ヤギのZの方は、賢く逃走傾向もないため最近までフリーで過ごさせていたのですが、斜面の工事やグラスシートの貼り付けをしたことで係留するようになりました。また、フリーにするもうひとつの欠点は、花を全部食べてしまうことでした。紫陽花やつつじの花には関心がないのですが、最近はシャクナゲや生徒さんたちが素敵な花壇を作って下さっていることもあって、しばらくは係留しながらできるだけあちこちにつなぐようにしています。


RとZでは全く知能のレベルが違うため、同胎の上に同じ環境で生育しているのになぜこれほど違うのかと思うのですが、そういえば私の母も「同じように育てたのにどうしてこんなに違ったのか」と憂いていたのを思い出し、それが動物の面白さなのだと納得しています。

犬のJは圧倒的にZに関心を持っていて、Zにまとわりついては頭突きをされることを繰り返しています。近づくと右往左往するRと違って、ちゃんと対面して頭突きをするZのコミュニケーション力の高さと自立性の強さに、いつも尊敬の念を抱きます。


Rの方は無駄な行動が多いのですが最近は個性として楽しむようにしています。山羊柵に頭を突っ込んで取れなくなるのを何度も繰り返しているので、柵の周りを木枠で囲む作業が終わったところです。

突っ込んだから取れるはずなのですが、しかも突っ込んで取れなくて鳴くなら学習すればいいのになと思うのですが、そうならないのがRです。道をなんども間違えるように「やったことを覚える」という基本学習を繰り返すのでなんども突っ込んでしまうので、見つけたときは“やぎのアールさん”というようになりました。逃走傾向の高いRが落ち着いて草を食べているときはほっとします。

ヤギと暮らすなど考えたこともなかったことが起きてヤギたちは2歳に。ヤギの寿命は犬と同じくらいですが、ヤギは医療の処置を受ける機会がなかなか得られないのです。しかし想定した以上にヤギという動物は強いことがわかりました。

RとZの毎日に安心が生まれるようにこれからもできることにトライしていきます。


多久市のスローカフェさんはこちらから→https://www.instagram.com/slowcafe_taku/?hl=ja

波佐見町のお宿oniwaさんはこちらから→https://oniwa.fun/

 

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雪山ならではの探索行動:犬といっしょにトラッキング遊び

今回の雪は結構長引きました。

2日間降り積もったことと気温が上がらなかったため、真っ白の風景をそろそろ見飽きたところです。


本日は雪のかすかに残る山でプライベートのトレッキングクラスを開催しました。

トレッキング途中に山羊のアールとゼットを柵から出すと、決まったルートなのか山の方へとゆっくりと上がっていきました。

私達も後ろから追いかけるように歩いていきました。

雪の積もった山にはいろんな動物の痕跡が残っています。


パッドと爪痕が見える足跡、おそらくアナグマではないかな。


こちらはアールとゼットの足跡です。

アールの方は補助リードを付けているのでリードを引きづったあともついていました。

この雪の期間はずっとフリーで活動していたので、どこまで行ったのかなと想像していましたが、まだ痕跡が残されていたので山羊の歩いたルートも判明しました。


トレッキングコースの第一休憩場所までかと思いきや、もっと奥まで歩いていました。

テント場という第二休憩所まで行ったのかと思ったのですが、一つ手前の杣のところで折り返していることがわかりました。

この杣はオポが具合が悪いときに休んでいた場所でもあります。

動物たちにとってひとつの境界線がこの部分なのだなと思いながら足跡を追いました。

山の中にはウサギの足跡も無数にありました。

最近はウサギを見ることもなくなっていたので、まだウサギが山の中にいることを知って嬉しい気持ちになりました。

こんな足跡の風景を犬たちはいつも彼らの鼻を通して見ているはずなのに、私には全くみえない風景です。

雪の日だからこそ見ることのできるこの風景が特別に好きなので、今年もこれを見ることができてほっとしました。

犬くんは寒くなって活動が活発になったということでした。

雪は今日一日であっという間になくなっていきました。

次の雪の日はいつになるかな。

降ると勘弁してくれと思うのですが、降らないといつ降るのだろうと待ち続けてしまう。

本当に身勝手なことですが、自然は楽しみも辛さも与えてくれます。

どちらがいいということでもなく、どちらも自然ということでしょう。

雪の日のトレッキング、楽しく歩いて戻りました。


さて、帰りにはアールとゼットの姿は山にはなく、いつも通りにどこいったのかなという感じ。

なんと、夕方に道路の工事をしているお兄さんたちが仕事を終わって戻ってくる集団の中にアールとゼットの姿がありました。

本当に、なんでやねん。

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「アメリカでオオスズメバチ絶滅に成功」のニュースにうなったこと。

スマートフォンは私に関心のあることをすぐに教えてくれます。

今日は「アメリカでオオスズメバチが絶滅に…」というネットニュースが流れてきてビックリしてすぐに記事を読みました。

最初に驚いた理由は、オオスズメバチが脅威になる昆虫であるとしても絶滅はあまりにもひどいではないかと思ったのです。

絶滅といえば、ニホンオオカミ絶滅の歴史を思い出し胸が痛くなるのです。

ニホンオオカミが森の中で生存していた時代には、最も力の強い動物であったことは明らかです。

そのニホンオオカミは自然消滅したのではなく、人の手によって絶滅させられてしまったのですから恐ろしい歴史です。※一部にはニホンオオカミ生存説もあり。

ところが、記事を読んでもっと驚いたことがありました。

なんとその記事には「外来種であるオオスズメバチが…」と書いてあったのです。

外来種か、アメリカ大陸にはオオスズメバチはいないのです。

オオスズメバチは日本古来の種であることは知っていましたが、アメリカにはいないということを知りませんでした。

しかも外来種であるオオスズメバチがアメリカに入ったのは2011年ということでつい最近のことです。

オオスズメバチによってアメリカのワシントン州では養蜂業に大きな痛手があったとのことです。

外来種が自然界で突然広がることはどの種にとっても脅威となりますからそれは大変なことだったでしょう。

その外来種であるオオスズメバチを国をあげて絶滅に追い込んだということでした。

どの種もアメリカ大陸は日本よりも強い生物が存在していますので、きっとオオスズメバチよりも大きな種がいるのだろうと調べてみました。

しかし、どうやら蜂の種のなかで最強のものはオオスズメバチであり、オオスズメバチは日本などのアジアにしか存在しないことがわかりました。

しかもオオスズメバチは日本原産です。

世界最強のオオスズメバチが自分の生活圏の中を飛び回っているのをいつも見ていたことになるのです。

恐ろしいというか素晴らしいというか、感動してしまいました。

そのオオスズメバチをやっつけるオニヤンマという最強トンボもいるのですから、昆虫界の強い戦いをいつも身近に見られるわけです。

危険生物であっても人の手による絶滅は望みませんが、外来種の急激な繁殖には人の手が必要だと思っています。

オオスズメバチも絶滅を望みませんが、うちのニホンミツバチに手を出したら全力で戦います。

戦うといえば、戦い続けていた笹林にやっと打ち勝ちました。

坂の上にある桜の樹々をレスキューしながら最後まで到達しました。

お手伝いいただいた皆様、本当にありがとうございました。

運動場の整備はこれからです。

戦いはまだまだ続きますが、体力と気力をつけて年末年始は引き続き環境整備に勤しみます。

グッドボーイハートにはクリスマスも年末も正月もありません。

犬や生物たちとの変わらぬ日々があるだけです。

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笹林を刈りながら生まれる「何故?」。何故があるから毎日が楽しい。

山の学校の横の敷地にあたる笹林は、これまでもなんどか刈込に挑戦してきました。

途中まで刈り込んだかと思って少し休憩するとまたあっという間に元の笹林に戻ってしまうということを何年も繰り返してきました。

ですが、今回こそは絶対に笹林に負けるもんかと夏を超えた時期から取り組みはじめ、みんさんのサポートも得ながら徐々に刈り込みスペースが広がりつつあります。

最近は着実に進んでいることを確認できるようになってきたので、七山に戻ったら数本であろうと必ず笹林と向き合う時間を作るようにしています。

 

この笹林を刈り始めると必ずやってくるのが山羊のゼットです。

刈り終わった笹や刈っている最中の笹、また笹の上に這うカズラは大好物のため見つけるとものすごい勢いで口の中に吸い込んでいきます。

ゼットは人がいなくてもときどきこの場所に訪れますが、誰かが笹を刈り始めるとものすごい速さで近くにいるのが「なぜだろう」と不思議でなりません。

私が笹を刈っていても刈っていなくても、彼女が笹やカズラを食べる機会とは無縁なはずなのです。

笹を刈るのを邪魔するわけでもなく、手伝っているようにも思えないのですが、作業をしているかなり近い距離にうろうろとしています。

草刈作業中に慣れていてフリーにしている犬が近くに来ることもよくありますが、犬が近くにいるとケガをするのではないかと心配になり、あえて遠ざけた場所に係留することもあります。

しかし、山羊のゼットに関しては、私の激しい笹を刈る作業でもゼットがケガをする雰囲気は全く感じられないため、こちらも安心して作業を続けています。

カットした笹がゼットの頭の上に落ちてきても、足場に少し背の高い切った笹があったとしてもゼットならケガをする心配もありません。

ずっと屋外で活動をするゼットなので、屋外慣れしているというか野生動物に近いというか、室内でぼんやりと過ごしている犬たちとは強さが違うと感じます。

犬であれ山羊であれ、「なぜこれをするのだろう?」という疑問が生まれることで、相手を理解したいという気持ちに繋がります。

笹を刈ると近づいてくるゼットの行動が不思議な反面、笹を刈りに行くときに「今日はゼットが気づくだろうか」という期待もするようになりました。

この時代、何故?にはスマホ検索で瞬時に答えが出てしまいます。

でも、こうしたゼットとのやり取りに簡単な答えはありません。

犬であれ山羊であれ、何故が広がるからワクワクが止まりません。

私に何故を与えてくれるゼットに感謝。犬たちに感謝です。

右がゼットで左がアールです。

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