グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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オープンカフェでみるとんでもビックリな犬の光景:欧米と比較して考える都心の犬

 この季節は外でも気持ちよく過ごせるわずかな期間です。国内にもカフェの表部分に広場のように設置されたオープンカフェが目立つようになりました。欧米の映画や映像に登場するようなおしゃれなオープンカフェで、ゆったりと休日にカフェラテを片手に仕事をする人も見られるようになりました。同時に、このオープンカフェは犬連れにとっても休憩場所のひとつになっています。ところが、オープンカフェでビックリするような飼い主の犬の姿を目にすることが多くなってきました。今日は、犬と暮らす文化とはなんだろうを考えるきっかけとして、カフェマナーについて取り上げたいと思います。


●オープンカフェで犬を抱っこするのはマナー違反なのか

 オープンカフェで時折見かけるビックリする犬の光景の一番は、犬を膝に抱っこした飼い主がカフェの椅子に座って飲食をしていることです。これは最近非常に多く目にするようになってきたので、本当にビックリしています。実際にしている方も多く、見ている人の中でも可愛らしいと思われていることもあるかもしれません。このカフェで抱っこして飲食の風景は、欧米ではまず見ることはありません。欧米だからといって、特別マナーが掲載されているということもないのですが、犬は家族同様のペットとはいえ動物です。カフェでの犬のポジションは飼い主の足元というのが一般的です。実際に海外で生活した経験のある方々に尋ねても、カフェで犬を抱っこというのは見たことがないといわれます。
 国内でのカフェでの犬抱っこが増えているのは、日本の都心部の犬が欧米の犬に比べると明らかに小さな小型犬だということかもしれません。抱っこをしていてもあまり目立たないし、小型犬だからいいやという曖昧な基準を飼い主さんが持っていることもあります。現実的には、飼い主の足元に下ろしてしまうと吠えたり、キューキューと鼻をならしたり、抱っこをせがんだり、場合によっては落ち着かないということを排尿をすることで解消しようとします。これらの行動は飼い主にとっても困惑するものですが、何よりも店や他のお客にとて迷惑な行為です。そのため店側も、騒いだり排泄をされたりするくらいなら飼い主に抱っこしてもらっていた方がいいと思ってしまうのでしょう。


●犬がカフェで落ち着いていられない理由とは

 カフェで休憩するときに、犬が飼い主の足元で待機できるようになっていたとしても、カフェでは犬がなかなか落ち着いていられない理由があります。たとえば、これも実際に見かけたことですが、足元に待機している犬に、カフェをウロウロしている他の犬や、カフェの前の道を散歩中の他の犬がカフェで待機している犬に近づいてきます。当然、それらの通行中の犬たちはリードをつけられているのです。ところが飼い主は犬の行きたい方向に歩いていきますので、すぐに待機している犬に接触させることになります。さらに最近はフレキシブルリードで散歩している飼い主もいるため、犬は一目散に待機中の犬に衝動的に近づき、近づいて来られた犬は逃げることもできず、ただストレスを感じる時間を過ごすだけになります。困ったことはこれらのわずかな接触について、犬が犬とあいさつするおりこうさん犬と評価されたり、犬があいさつを楽しんでいると判断してしまうことです。もし、欧米で待機中に無断で接触を計ろうとする犬やその飼い主がいたとしたら、大変なマナー違反として厳しい意見を受けることになるでしょう。
 犬が小さすぎて足元では落ち着けないと感じられるなら、犬用のバッグや犬用のかごバッグに犬を入れてあげてください。犬の周囲に一定のテリトリーを持つバッグやかご類は犬が落ち着いて待てる理由になります。同じ理由でカフェに犬用のマットを敷いて、テリトリーを確保してあげるという方法もあります。

●欧米とは違う、日本独自の犬との文化を思い出そう

 欧米と日本は動物との関わりに関わらず、独自に異なるよい文化を持っています。たとえば、カフェの過ごし方にしても、カフェで休憩中に与えられたスペースをその人たちが安心して過ごせるように周囲が注意すべきだということは、領土を奪いあってきた歴史のある欧米だからこそわかることなのかもしれません。動物の中でも特に犬については、欧米での使役動物としての役割を重要視されてきました。そのため、人のいる空間にも犬が連れられてくることがあり、その中で動物と人を混合しない境界線のあるルールを持ち続けてきました。それが動物を上手に管理する能力でもあります。

 まず、日本と欧米では犬との関わりが歴史的に明らかに違っているということを認めるところからはじめたいのです。少し大雑把な言い方になりますが、欧米では犬は管理する動物として扱われきましたが、日本では犬はその辺をウロウロしている動物として微妙な距離を持ちながら交流を楽しんできた文化があります。日本は欧米とは異なる動物との関係の文化を持ちますが、それは決して欧米に劣っていることではないのです。欧米の犬と人の文化を真似することが、犬との関係を良い方向へ向かわせるわけではありません。日本という地域や日本人という個性ある民族が育ててきた犬との関係性の中にも、すばらしいものがあるということを考えてみてはどうでしょうか。


 さて、犬といっしょにオープンカフェに行かないで欲しいというわけではありません。もちろん、行ってほしいといいたいわけでもありません。犬はカフェに行きたいわけではなく、飼い主さんが楽しいことを感じる能力があるだけです。そしていつも家の中に留守番しているのだから、飼い主さんといっしょにいられる時間があれば、それに付き合おうとします。でも、人本意の過ごし方で犬に負担をかけていることもたくさんあります。何事も度を越すと人も犬も幸せにはなれません。犬が犬として心地よく過ごせる時間に人もいっしょに寄り添ってみる、そんなことから始めてください。



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