グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬の断尾

トイプードルを散歩している方がとても増えました。
トイプードルの子犬のトレーニングにうかがったときに飼い主さんとお話ししたことで、是非にたくさんの方に知っていただきたいと思うことがありました。

トイプードルの生徒さんの方からこういわれたのです。
「このコの尾っぽって切られてるってこと、知らなかったんです。」ということでした。
「尾だけではありませんね。」と私が答えると、
「指も切られているんですよね。生まれて数日で麻酔もしないで切ってしまうんですよね。痛かったでしょうにね。かわいそうに。」と子犬の体をさすられていました。愛する子犬が自分の元に来る前にそんなひどいことをされていたと知った飼い主さんは、「知らなかった。かわいそうに。」とみなさん言葉を詰まらせます。

犬の尾を子犬の頃に切断することを「断尾」といい、犬と関わる仕事をする者であれば誰でも知っている事実です。みなさんの中にも断尾をされた犬を飼っている方が多いのではないかとおもいます。では、なぜ人間は犬に対し「尾を切り落とす」という行為をするのでしょうか。今日飼い主さんからも、なぜこんなひどいことをするのですか?と尋ねられました。

一般的にいわれている主な理由のひとつは、犬種標準に基づくものです。犬種標準とはドッグショーなどで純血種の形を人の好みによって定めたもので、数十種類の純血種に対して「断尾をしていること」という基準が定められています。トイプードルやミニチュアピンシャー、ミニチュアシュナウザーなどはこの中に入ります。犬種標準はあくまでも人が恣意的に定めたもので、犬にとっての利点欠点は全く考慮されていません。

他の理由のは犬以外の家畜についても行われるもので、作業上支障があるという場合です。牧畜犬として繁殖されたコーギーはこの中に入ります。闘犬として繁殖された犬、ネズミ捕りのための様々なテリア種、スポーツ猟に用いられたスパニエル系の犬。ですが、現在これらの仕事を必要とされている犬種は断尾をされている犬の中にはいません。断尾をしなければいけないような作業は、そもそも犬に負担があったり、また作業としては無理であったりして、現在では行われていないものばかりです。

その証拠に、実際に地域に根付いて昔から人のそばで共に働いている犬には、みな尾があります。尾はただついているのではありません。犬という動物が行動するためにはかかせない道具なのです。働く犬についていうと、尾は行動をするための舵取りのための道具です。尾がないと左右前後にバランスをとって行動することができません。猟犬だと思われている尾を切られた犬たちは、実際には猟師と行動を共にしていません。スパニエル種の犬たちは、スポーツハンターと共に山を歩いていただけのことです。貴族の趣味の遊びのお供だったということです。

他に断尾をされる理由は特に見当たりませんが、実際に断尾をしている人に会う機会があるわけではないので、もしかしたら別にも理由があるのかもしません。もし他に理由があったとして、犬にとって苦痛を伴うこの尾を切るという経験をさせなければいけないほど、大切なことなのかを考えてほしいと思います。

断尾については、生後数日の子犬のころであれば痛みは感じないということを主張されることで、断尾は今でも行われています。これについては、痛みを感じるという人と、痛みを感じないという人が対立する形で平行線をたどっているようです。私は痛みを感じると思っています。自分が同じことをされたら、きっとトラウマになってしまうと思うほどの辛いことだと思えます。

では、痛みを感じないとして、尾が存在することの必要性についてはどうでしょうか。上記の体のバランスや平衡感覚を保つことのほかに、コミュニケーションの手段としても尾は使われます。尾のない犬たちのコミュニケーションは人にとっても読みづらく理解が遅れることがあります。痛みを論ずる前に、犬にとっての尾の必要性を考えると、尾を切るという行為はとてもできないことのように思えます。

しかし、これだけたくさんの方が断尾をした犬種を愛していながら、犬に施されている断尾自体も受け入れてしまっているというのはなぜかという疑問が残ります。これは「血統書」が犬の価値をあげるという思い込みによって生じています。犬種標準に満たなければ血統書がつけられません。なので繁殖者はこれをクリアするために断尾を行います。ですが販売する方からすると「消費者が血統書付きの犬を求めるから」という理由なのです。

ヨーロッパの犬の福祉団体では多くの国が断尾に反対する姿勢をとっています。その中でもまだ断尾は古い習慣として残されています。数年前にイギリスのコーギーを飼育する人による団体が「コーギーの断尾を禁止するのは、犬の文化を無視するものだ。」という抗議を出したというニュースを見ました。人が犬に一方的に決めたことを「犬の文化」と呼ばれてしまうとは、犬が聞いたらビックリするようなはなしです。「犬の文化」とは、犬という動物が犬自身で作り上げたもので、それだったらはなから犬という動物には尾はないはずなのです。ですが、実際には犬は尾のある動物です。

日本では断尾を禁じる法律や条令はありません。これは犬と暮らすみなさんの選択にゆだねられています。わたし自身も、断尾をした犬種と暮らしている飼い主さんはみなさんこの事実をご存知の上で犬を求められたのだろうと思っていました。ですが、まだまだこうした事実が広がっていないことを知り、知らないことはひとつでも知る機会を得られるようにと、今日はこのことを話題にしました。まず真実を知り、誰かを非難するよりも、自分で考え自分で行動を起こすことしかできることはありません。人を変えることはできなくても、自分を変えることはできます。ぜひみなさんも犬の断尾について考えて自分の考えにあった選択をしてください。


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