毎日多くの犬達と関わっているのに、未だに会話を全て読み取ることができません。
わかることもあるし、わからないこともある、こうではないかなという推測にいたることもたくさんあります。
動物の専門家たちはどのように動物の会話を読み取っているのだろうと常に関心があるため、犬以外の専門家の方々の本に触れることは犬を学ぶ楽しみにつながります。
今回読み終わったのはこの本です。
著者は、山極寿一先生と鈴木俊貴先生のおたりの共著で、ゴリラの専門家の山極先生と鳥の専門家の鈴木先生の対談方式で進む内容になっています。
全く異なる動物の専門家である先生方が、動物って何を話しているのだろうという視点で語られているため、犬ならという見方もできるポイントもたくさんあり楽しく拝読させていただきました。
印象に残った言葉は「暗黙知」。
暗黙知とは「言葉やマニュアルで完全に説明できないけれど、経験や感覚として身についている知識や技術」です。
動物のコミュニケーションの方式は動物の脳の中に入ってはいるものの、それを引き出すためには経験が必要です。
社会的な経験を通してコミュニケーションの感覚も身に着いて来て、それがやがて知識や技術として積み重なっていのでしょう。
本気で伝えたい情報やお遊び的に交わし合う会話、そうしたものが動物の中でも行われていることがあるという雰囲気は私も犬の中に見て取ることができます。
犬と犬の対話、コミュニケーションといったものも単純に音の高さや長さだけでは計算できないこともあります。同じ音をつかったとしてもそのときの表情や動きで違う意味を持っていることもあります。
書籍の一文としてもありましたが、動物たちは人とは全く別の世界を持っていることを忘れてはいけないと思います。
そうなると完全に解り切るということはあり得ないのですが、それでもひとつでも知ることや触れることが楽しくてこうして犬と暮らしています。
鳥の鈴木先生によるとウグイスのホーホケキョは、「ホー・ホ・ケ・キョ」と単語が連なったものであるそうです。春になったら毎日のように聞こえてくるホーホケキョは文章だったのですね。
山極先生も鈴木先生も共通していらっしゃることはどちらもフィールドワークで学ばれるタイプの専門家だということです。実際にフィールドに出て体感することが動物を知る上で一番楽しく有益な活動であることを伝えて下さっています。
私も小さなフィールドではありますが、自然の中での犬の活動体験をこれからも大切にし、犬のコミュニケーションのますます深まる謎にはまり込んでいきたいです。
動物の専門的知識がなくともさらりと読め、かつ深い書籍でした。みなさんにおすすめします。