グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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Monthly Archives: 6月 2017

犬語セミナー福岡校開催のお知らせ

グッドボーイハート犬語セミナー開催のお知らせです。

日時 2017年7月30日(日)
   14時~16時 終了後にプチお茶会あります。

場所 グッドボーイハート福岡 博多区住吉

参加費 2500円(税込)当日払い

定員有り 少人数制のセミナーですので、ご参加の方はお早めにご連絡下さい。

連絡先 グッドボーイハート ※初めての方はお問い合わせフォームよりお願いします。


みなさんとの学びの時間を楽しみにしています!


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Posted in お知らせ

犬語セミナーで学ぶ犬の社会性:犬のパーソナルスペースは距離感から生まれる

 週末に七山校で犬語セミナーを開催しました。単純なビデオセッションながら毎回どのような学びがあるかわからないビックリ箱のようなセミナーです。


● 犬語セミナーの学びのひとつ、犬の評価とは

 犬語セミナーは初心者クラスでは犬の行動を観察して読み取りができるようになることからはじめます。参加しているうちによく見ることができるようになると、その行動を分析していきます。それができるようになると今度は犬の性質や状態の評価にうつっていきます。

 一番難しいのが「犬の評価」のところですが、今回は上級者ががっちりを参加されたので遠慮なく質問のレベルを上げて犬の評価について考えるセミナーとしました。犬語セミナーを少人数制のセミナーにしている理由は、参加者の理解の段階を把握することで質問や説明の内容を変えて、ステップアップするプライベートクラスの延長ととらえているからです。

 数十人が集まるセミナーの講師をさせていただくこともありますが、どうしても表面的なことになってしまいます。深く伝えようとすると多くが理解できないままに終わってしまい欲張って未消化セミナーになってしまった反省もあります。おひとりおひとりの理解度を把握するにはやはり直接質問して答えていただくしかないというのが今のクラスの形式につながっています。

 犬の評価についてですが、ここでいう評価とは競技会やテストでの合否とは全く違います。どれが正しくてどれが間違っているというものでもありません。また誰かと競って順位を争うものでもありません。犬はそんなことに関心はありませんが人は競うことに快感を覚える動物かもしれません。

 犬の性質はさまざまです。そのどれもが個性であり、性質に正否はありません。その犬の性質をある程度理解しておくことは、犬の必要性を理解して接し方や環境整備を行う上で必要な情報です。犬の人為的に繁殖をくり返した結果、犬は非常にバラエティにとんだサイズや形に変化していきました。その中で犬に起きている犬の負担についてもきちんと知る必要があります。

 犬の行動評価の中には犬の発達と成長の段階の評価というものもあります。実はこれが一番大切な大切な評価です。飼い主さんがもっとも影響を与えるところであり、飼い主次第でいくらでも発達と成長の速度や内容を変化させていくことができるからです。その成長と発達の中でも重要事項の中にひとつに入る「パーソナルスペースの獲得」が今回のセミナーの焦点でした。


● 犬語セミナでの今回の学びは犬と犬の行動が作る距離感とパーソナルスペース

 グッドボーイハートの生徒さんなら上記の小見出しを見たらまず「えー、私も受講したかった」と思われるのではないでしょうか。犬がどのようなステップでパーソナルスペースを獲得しているのか、犬がパーソナルスペースをつくっていない状態をどのような行動で表現しているのかなど、犬のパーソナルスペースの発達に関する行動は、日々の生活の中でいつも見ることができるからです。

 パーソナルスペースという言葉は、分離不安と同様に人の心理学で使用されている言葉ですが、わかりやすいのでこの言葉を使用しています。動物にとってのパーソナルスペースの重要性についてはいうまでもありません。自分の最も小さな領域ということで、言い換えればもっとも小さなテリトリーということもできます。この領域を守るのは自分を守ることであり、また他者との安定した関係性をつくる基盤にもなります。言い換えれば、パーソナルスペースが獲得できていない犬は、他者に対して依存的になるかもしくは過剰に防衛してしまうのです。

 たとえば、分離不安傾向のある行動がでている犬は、当然のことながら安定したパーソナルスペースを獲得できていません。獲得するというのは成長と発達の中で形成できていないということです。つまり、パーソナルスペースの形成は成長と発達の過程で最重要事項なのです。

 このパーソナルスペースですが、分離不安の例でもわかるように距離感がはかれるかどうかという風に見ていくとわかりやすいのです。犬語セミナーのビデオでは犬と犬の距離感がどのようにとられているのかを見ながら、その犬のパーソナルスペースの形成について学びました。

● 犬のパーソナルスペースが形成されていないのはなぜか

 パーソナルスペースは1才半ころから安定をみせるようになります。もしそのパーソナルスペースが形成されていない状態であれば、うちの犬はなぜそうなったのだろうと思いにふけってしまうかもしれません。それにはたくさんの理由がありますが、一番影響を与えたのは幼少期もしくは現在犬に接している人の接し方にあります。

 接し方といっても普段から犬に接するのをすべて接し方といって漠然すぎるかもしれません。どんなことも接し方です。たとえば、犬を自分の体の上に乗せて寝ている、犬を抱っこする習慣がある、犬を抱きしめたりはぐしたりするのが好き、犬の頭に手を当てて撫でているなど、どの例も犬のパーソナルスペースを侵す方法であり、パーソナルスペースの形成を阻害しています。

 犬が寝ていると犬の近くに寝たり犬の体に触れて寝ようとする人もいます。犬にパーソナルスペースの形成がなされていれば、犬は自分から距離をとって別の場所に寝ようとします。ところが犬も同じように人にべったりとひっついて寝てしまようであれば、犬はパーソナルスペースの形成不全とみなされます。同じく人もパーソナルスペースの形成が不安定というお知らせですので、犬を触る以外の方法で安定をはかれるようにいろいろと工夫をしてみてください。たとえそれが抱き枕であっても、犬に抱きついて寝るよりはよいかと思います。犬の成長を阻害すれば犬は不安定な状態を強いられるからです。

●他のパーソナルスペースについての過去のブログはこちらからご覧ください。

・犬のパーソナルスペース

・犬のパーソナルスペース<つづき>

・犬との正しいあいさつを知っていますか?

犬と犬をオンリードで会わせてはいけない理由

・ゴールデンリトリバーによる子供の死亡事故について:もっと深く考えることで見えてくる犬の姿

・ゴールデンリトリバーによる子供の死亡事故について:もっと深く考えることで見えてくる犬の姿2


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Posted in クラスのこと, 犬のこと

犬とのトレッキングクラスで学ぶ:犬の行動の落ち着きとストレスの区別

 梅雨らしく雨が降らないのも困りますが、週末の犬といっしょの山歩きクラスができたのはありがたいことです。トレッキングクラスのあとは犬語セミナーを開催しました。常連だけのセミナーとなり内容もとても濃いものとなりましたのでほんの少しだけ紹介します。


●犬語セミナー前の山歩きクラスの様子

 植林から10年たって森が急に変化しはじめました。ずっと目的をもって続けていくと何かが途中で急に変化しはじめるのは、犬の成長と同じです。その裏の尾歩山(おぽさん)の手入れをしながら山道を一歩ずつ登っていく犬との山歩きは、一秩序を保ちつつ緩やかにときが流れていきます。好き勝手に伸び続ける木々の混乱した尾根部分の手入れを続けるとやっと風が通るようになり、風を受けてじっと立っている犬の姿を見ているとなんとなくほっとしてしまいます。

 犬との山歩きを山遊びを間違えてしまわれることもありますが、犬が山を歩くときはとてもゆっくりとしています。途中で森の手入れのために立ち止まっても、犬たちも同じように立ち止まっています。休みをとる犬は伏せていることもあるし、作業を見守る犬もいます。倒れた竹が壁となってしまうのでこれらを取り去るためにガサガサをする作業中には、自分の安全をキープしようと構えをとる犬もいます。

 いずれにしても犬はみな協力的でわたしたちの作業を邪魔しようとはしません。犬の行動をずっと観察していると、人の山の手入れによってより環境が安定することを少しの変化で読み取ってくれているように感じたこともあります。もちろん犬により様々ですが、結局犬は人の行動をよく観察するのだなというのをいつもながらに痛感します。山といっても里のすぐ上の山です。

 人はずっと山を利用して生きてきました。食べ物に限らず生活道具にしてもそうです。家だって木と土でできています。人が利用すると山は荒れていきます。だからずっと手を入れ続ける必要があります。そうされていない場所は環境が乱れて混沌としています。尾歩山からはその無残な姿が見える場所もありますが、少しずつですができるところから手入れを続けていこうと思います。そしてその場に犬が共にいてくれることが、本当に心強く感じられるのです。


● どの犬も山ではゆっくりと歩くことができるのか?

 犬のストレスが蓄積されているときには、行動や穏やかではありません。犬はストレスを発散する行動をしてしまいます。山に入ると土や森のにおいに興奮してしまい、走り回ったりリードをひっぱったり飛びあがったり落ちているものを次々に口の中にいれてしまったりします。こうしたストレス行動が出てしまうのは、今の環境があまりにも犬にとって厳しいというお知らせです。ところが山で走り出すのは危険です。木々で目をついたり転んだりすることもあります。もしくは、他の野生動物や昆虫など危険な生き物の攻撃性を引き出してしまい、大ケガをすることもあります。
 
 犬に自由行動の時間を与えるとこうした興奮行動が予測されるため、ドッグランなどの遊び場では障害となるような椅子はテーブルは敷地の脇の方においてあります。ドッグランという名前のとおり、その柵の中で犬のリードを放したら、犬は走り回ってしまいます。そのため、事前に犬にとって危険なものを取り去っておく必要がありです。その運動場のように整備された平坦な地面の上を犬は走り回っているということです。しかし、そもそも犬が円形に走り回ること自体がストレス行動であるのに、そのストレス行動をさせるためにわざわざドッグランに連れて行くのも不思議なことです。

 犬との都会暮らしの経験のあるわたしも月に数回でしたが犬を山に連れてくると最初は興奮を抑えておくことが大変なことでした。長くそこに過ごしているとやっと落ち着きを取り戻して今からというときに帰宅の時間となり、犬にはさらにストレスを与えていたと申し訳なく思っています。いつも犬と過ごす場所で他人や他の犬と出会わないようにと、場所選びにも難航しました。七山校に移った理由のひとつには、生徒さんたちが安心して山での時間を過ごせる場所が欲しいということでした。


● 犬の行動が走り回り行動から落ち着き行動に変化していくために必要なこととは

 日帰りであってもくり返し山歩きを続けていくと、山での過ごし方は変わってきます。歩く速度は飼い主の影響を受けやすいため、飼い主側で安定した速度をキープしてあげるといいのです。頂上や特定の場所に到達することを意識しすぎるとどうしても早歩きになってしまいます。作業をしながらのぼっているのは、その場その場で立ち止まることを犬にわかりやすく伝えるためです。作業をするためにしっかりと地面に足をつけて立つ必要もあり、人が安定して立っていることを犬に伝えることにもなります。

 犬の安心は安定から得られています。その安定に影響を与えているのが人の安定度です。落ち着きといえばもっとわかりやすいでしょうか。どのような時に落ち着いていますか?という答えに対して多いのは、落ち着いている人のそばにいるときというものです。落ち着きは影響を与えやすいのは、時には利点となり時には欠点となります。飼い主が落ち着きを失うと犬も落ち着いてしまうという欠点です。良い方向に影響すれば、飼い主が落ち着けば犬も落ち着きを学び始めます。

 学習というと何かの号令を出してそれに従うことだけと思われがちですが、そういうことでもありません。落ち着く行動をくり返すとそれが気持ちの習慣になり次第に身に付いていきます。犬も同じように、落ち着いた行動をくり返していくと次第に落ち着いた行動をするようになります。それが集団になるとますます影響力が強くなるから不思議です。単位が2から3になるだけでかなり変化してしまうのです。力の法則なのですが本当に不思議だなと感じています。

 話を元に戻します。犬との山歩きで学ぶことはいつもの生活と同じです。ストレス行動はできるだけ管理しながら減らしていくこと、そして落ち着き行動は管理をゆるめながら増やしていくことです。単純なようですが料理と一緒でさじ加減が難しいのですね。もちろんインストラクターであるわたしが指導しています。今は管理のとき、今は少し様子をみるなど少しずつ覚えていただければそのさじ加減も身に付いていきます。犬が落ち着いて山を歩く姿をぜひ見てそして感じてください。ゆっくりした時間が犬の中に流れていることを知ってください。

 次回は、午後のクラス「犬語セミナーでの学び」をご紹介します。

ショコラ尾歩山



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みんなやってるは危険信号:インターネットで犬情報に振り回されない技とは

 いつの時代も情報過多におぼれてしまいそうですが、インターネットが様々な形で普及した今は、情報の嵐なのか情報の波なのかとにかくすごい量の情報が溢れているようです。インターネット情報との付き合いについて考えてみます。

● インターネット情報は本当に役立つのか

 インターネットには「役立つ」と思える情報もあるけど、全くのでたらめと思ういい加減なものもたくさんあります。特に専門の犬の情報になると、本当にビックリするようなことがたくさん書かれているのです。犬との暮らし方や犬をどのように理解するのかは個人の価値観が大きく反映されます。そのため誰もが同じ情報を共有するわけではありません。しかしその中にも、明らかに「自分の犬はこうだった」という程度の内容のものを、全ての犬がそうであるかのように情報として提供されてしまうことがあります。

 こうした個人の情報は、以前なら地域の公園で「うちの犬はねえ、こうなのよー」という程度の聞き流されるべき「うちの犬情報」ですが、それがブログに掲載されてしまうと真実のように語られます。そのブログがコピペで広がり、誰が書いたかもわからないような犬の情報ページに掲載されることで、たくさんの人が同じ情報を共有しているかのように勘違いさせる方向に導いてしまうのです。

 たとえばネットにはこんな情報が掲載されたとします。

質問:うちの犬は排便をしたあとに後ろ脚を蹴るような行動をします。なぜこんな行動をするのですか?
答え:それは犬の遺伝子情報に組み込まれた本能なのです。猫が排便のあとに砂をかけてわからなくするように、犬も後ろ脚で砂を便の上にかけてきれいにしようとしているのです。

どうですか?犬の行動学や行動の見方をきちんと学ぶ機会がなければ、返答のとおり犬は土を後ろ脚で蹴って便の上にかけているきれい好きだと信じ込んでしまう人もいるかもしれませんね。もしそうであったとしても誰も責任はとってくれません。誰が書いたかもわからないし、討論をする機会など与えられていません。情報は垂れ流されているだけです。

 こんなこともありました。ある方が犬が吠えるのを止めるために、空き缶に石ころが入ったものを犬に投げ付けているトレーニングをしているのを見ました。「これを使うとすぐに泣き止むんです。ネットで調べて、みんなが効果があったというので早速やってみました。」という事でした。では、そのあなたのトレーニングが犬の精神状態に与えた影響についてはどう考えていますか?という質問をします。なんのことだろうとキョトンとされてしまうことが大半です。

 インターネットに書いてあることをそのまま鵜呑みにしてしまうのはあまりにも危険です。せっかく知りたくて調べた情報が曖昧であったり、やり方に効果があっても副作用の強いものもあります。


● 情報を都合よく使う時のシグナル、「みんなやってる」は危険な言葉

 インターネットの情報に流されている傾向がある言葉とは「みんなやってる」というfれーズです。みんながやっていることは正しい、みんながやっていることは間違っていない、みんながやっていることはわたしもやっていいなど、みんながやっているというフレーズは、いろんな場面で行動を正当化するために使われます。

 こんな風に考えることがあるでしょうか。みんな犬と寝ている、みんな犬をソファにあげている、みんな犬を抱っこしている、みんなプードルを飼っているなどなど。本当はみんなではありません。犬をソファにあげない人もいるし、犬と寝ていない人もいるし、犬を抱っこしない人もいるし、雑種犬と暮らす人もいます。こんな風に使われるみんなは、みんなやっているから私もやっていいこと、みんながやっているから正しいことと自分の行為正当化するための「みんなフレーズ」です。

 これは大変危険です。なぜかというと個人の考える力を奪ってしまうからです。あなたが犬とそうすることがあなたの犬に対してどのような影響を与えるのかを、先の音の鳴る缶という罰が与える影響と同様に考える必要があるのです。
 あなたが今、犬といっしょに寝ることが犬に与える影響について考える必要があるのです。その行動によって犬を分離不安状態にしてしまい、犬が落ち着くことができなくなる可能性があるなら、それは今はしない方がいいのです。

 どんなことも、まず考えて選択するということが必然なのはずなのに、考えたくない傾向が強まると人も動物です。とたんに考えることを止めてしまいます。たくさんの情報は考えるためにあるのではなく、考えないようにするために使われていることがあります。

 フェイスブックなどになると同じ考えの仲間がするにグループになって集まりやすくなります。その小さなネットの世界では、本当にみんなが同じように同じような写真をとり、みんなが同じオヤツを食べて、みんなが同じ種類の純血種を飼っていることもあるかもしれません。でもそれも小さな世界に自分を閉じ込めることになっていないでしょうか。

 みんなと同じ、みんなと一緒で仲良しの世界は、孤独な社会から人を救ってくれる方法のひとつではあります。でもその世界観の中では犬は孤独から救われることはありません。結局はネットの世界なのです。SNSのつながりにも良い出会いはあります。しかしその出会いは目の前にいる家族や生涯に出会うことの限られているわずかな目をみて話せる人に代わるものではないと思います。


● インターネット情報と上手に付き合うための心得えとは

 犬との暮らしにインターネット情報を活用されるときには、情報のひとつとして入手したあとは、まず自分の犬にそれが合っているのか、そのことが犬に与える影響とはどのようなことかをよく考える時間を作ってください。
 そのためには、まず犬の性質(性格)を知るために犬をよく観察する査察を行い、その行動について考える考察という作業をします。その後、得られた情報が犬に与える状態について推測をして、それを犬との暮らしに導入するのかを決めます。しかし、実際にやってみてまだ早いと思うときには、一旦取り止めにして再び時期がきたらそれを行うといいでしょう。

 グッドボーイハートのクラスを受講されているなら、犬に試す前に直接、クラスのときに相談してください。その際に「みんな…」というフレーズがでないように要注意。あなたの犬はみんなの犬と違います。みんながやっているからあなたの犬もそれをする必要はないのです。むしろ、犬とのより良い関係を目指すなら、みんながやっていないような一歩先を進んでください。

 人がやっていないことを最初にやったり言ったりするのは勇気が必要です。人がしていないことを自分がまずやるには度胸もいります。それでも自分が今の時点でこうすることが犬に必要だと信じるのなら、やってみる価値はあるでしょう。

 人から変わっているといわれるようになるとなんだかホッとします。人と比べられることがなくなったことで自分らしく犬と付き合うことができるのだと、少し解放されたような気分になれます。人と違うことをしたいのではありません。あくまで犬という動物と真剣に向き合ってきたからこそたどり着いた場所です。

 このブログに書いてあることも真実かどうかを見極めるのはあなた自身です。正すべくは犬に対する姿勢のみです。情報はいつの時代も間違っていることもあるし正しいこともある、そこはとても不安定なものですし、時代の環境に応じて大きく違うものです。


コロ助8

 このブログは現在、週に3回程度の更新に切り替えています。
生徒さん側から「先生、ブログは2日に1回でいいですよ。消化に時間がかかるんです。」と言っていただきました。消化しようとしっかりと読んでいる方がいらっしゃることに勇気づけられ、さらに質を高める文章を自分にできる範囲で書き続けています。

Posted in 犬のこと

はじめての犬のお泊り体験②:犬が経験から学ぶ自然学習など

 はじめてのお泊り体験をした犬くんのお預かり時の学びをあげながら、犬の経験の中にぜひいれていただきだい自然学習についても触れさせていただきます。


● グッドボーイハートのお預かりクラスで欠かせない体験とは

 一昨日のブログでご紹介したとおりグッドボーイハートでの犬のお預かり場所は七山校になります。七山校に起こしいただいた方はご存知のとおり、西は唐津方面から北東は三瀬方面からどんどんと山の中に入っていきこんなに奥なのかというところにあるのが七山校です。庭はすり鉢上になっていて、庭の一部はほとんど山の斜面のようなものです。10歩進めばそこは坂という感じなので草履で駆け出すわけにもいきません。

 この地形で学べることまずは広いということでしょうか。周囲の人工的な車の臭いのする都心まで車では20分ほどかかります。犬がどの程度の広さを把握するのか実際に知ることはできませんが、野良犬や野犬のような行動力を残す犬であれば数キロ先までの環境をある程度把握することができるのではないかと思います。たとえば人間がある野原や山の斜面から肉眼で見渡して「あああそこに里があるな、家があるな、道路があるな」と思えるようなところまでは十分に把握できると感じるのです。すべての犬ではありませんが過去にわずかな犬の行動を観察しているうちに、犬の一定の環境把握の力は自分たちと変わらないのではないかと感じるようになったのです。

 この七山校は周囲にある人工的な建物は家だけで車の交通量も少なく道路を野生動物が横断することもよくあることです。ここにいればかなり人工物が遠いと感じるのは人だけではないでしょう。お預かりをするうちにわかってきたことですが、特に犬が2才未満のときにはこの環境になじむにはあまり時間がかからないようです。
 犬は1才近くまで脳内のシナプスが伸び続けています。一部には生後4ヶ月でその8割が成長を終えるというデータもあるようですがその成長が1才前後まで続いていくことを否定することもできません。この脳内のシナプスですが、一定の刺激を受けることでその刺激に対応するように電気信号を送るシナプスが伸びていきます。特に重要な情報を受け取るとその伸びはぐんとあるようです。犬にとって重要な情報というのは、犬が本来生きていく環境の中で獲得できるものです。その本来生きていく環境というのが「山」という環境です。

 人工的に繁殖をしてきた犬の姿からすると、犬が自然の中や土の上や草の中にいることに「なんか似合わないね。」という感想をもたれる方もいるでしょう。そうですね。犬は室内のインテリアにマッチするように姿かたちを変えられてきましたので、自然の中に存在する純血種は自然の一部としてはあまりしっくりと来ないかもしれません。しかしそうであっても、犬の外側は変わっても犬の内側はそう簡単には変わらないのです。不自然な体型でも山を歩いて上ろうとする姿、臭いを一生懸命にとって探索をしようとする姿、草を食んだり土を口にいれてみたりして自然から得られる恵を捜している姿など、どの姿も自然とのつながりを模索しているように感じます。


● 自然体験がなぜ特別な体験学習なのか

 自然環境に滞在する自然学習がなぜ犬にとって貴重な体験学習なのでしょうか。実は自然体験は犬にとってだけでなく人の子供にとっても同じように貴重な体験なのです。様々な子供時代に体験させたいことの中に、自然と共に過ごすことという経験があることを子供を育てた経験のある方なら記憶にあることでしょう。山村学校体験、キャンプ、ロッジでの宿泊学習など、危険性が高いことがあって遠ざけられている傾向が強いこうした子供時代の体験が幼い脳に影響を与えるのはなぜでしょうか。

 子供時代の自然学習について提唱している様々な学者の中でも特に有名なのが海洋生物学者のレイチェ・ルカーソンです。レイチェル・カーソンのセンスオブワンダーという本の中で描かれているのは子供の素直な自然の世界に反応する力です。まさに「センスオブワンダー=神秘さや不思議さに目をみはる感性」を大切にすることが人生をいかに豊かにしてくれるのかということを伝えているようです。人は大人になると共にある知識や情報を得る代わりにあるものを失います。脳は何が必要で何が必要でないかを選択していく大人の脳に成長します。自然を感じる力よりも計算が得意なことを良しとするかもしれません。

 犬は人とは違います。犬は動物として人よりももっと自然に近い動物です。そのため自然を感じる力を育てることが犬の生きる力となり、自然を感じる力を育てる機会がないことは犬が犬から遠ざかっていく時間となります。
 科学的にいうと犬の中にある原始的な脳の情報は、自然環境にある刺激を受け取ってその情報から得られる次の情報へと発展していきます。不思議なようで当たり前のことですが、環境がないと学習は進まないのです。育成と教育は異なるという意味で育成という学習は環境なしで考えることができません。自然学習は原始脳を発達させます。その中には環境を把握する力、危険を回避する力、体調を整える力など、犬が言葉では伝承できないかわりに遺伝子という情報ツールをつたって代々受け継いできた犬のお家芸的なものが含まれています。
 
 しかしこの遺伝子情報は生きているうちに犬がそれを体験しないと次にうまく受け継がれません。どんなに情報を持っていてもその遺伝子情報を必要な環境によって引き出されないと生きている上で大切な情報とはみなされないまま、つまり引き出しに鍵をかけたまま生涯しまっておいたということなので、不要なものとして処理をされてしまうのです。


● 犬の自然学習は無理に進めない、だけど決して諦めない

 犬が自然を知ってしまうのを恐れている方もいるかもしれません。あなたは都会の犬なの、何も知らなくていいの見なくていいの、何も嗅がなくていいのと犬にいいたくなることもあるかもしれません。というのは犬が自然を求めていることを知ってしまったら、犬を自然の中に連れて行かなければいけないと思うと面倒を感じられるからです。

 犬が自然を求めていると知っても、なかなか自然に近づくことができないのもわかります。多くの人々が自然は好きだけど虫は嫌い、自然は好きだけど土は汚れるからいやだ、自然は好きだけど山を歩くのはきついと感じられるようです。人間はそれだけ変わってしまったのも事実です。ここであえてそれを否定するつもりも避難するつもりもありません。それが自分たちの住まいから自然を遠ざけた人間という生き物だと思うのです。

 そして無理に自然の中に犬を連れ出さなくてもいいですよともお伝えしておきます。なぜなら人が緊張してあっちはダメ、そっちは危ないといってビクビクして犬を連れ出したら、犬はますます目の前にごちそうを提示されながら食べることを許されないというすごいストレスを与えてしまうことになります。
 
 ということでお預かりクラスのときに飼い主さんに代わって自然学習を促す機会を提供させていただいています。田舎育ちだと思われているわたしも、博多や東京の都心で成長しわずかな昭和の端っこに庭という自然に接しながら育った程度です。その自分を自然と近づけてくれたのはオポという犬の方でした。ここまでは大丈夫、ここからは慎重に、ここではじっとしているなど、様々な行動で自然との距離感を教えてくれました。今は逆に私自身が自然が遠くなった犬に対して、その距離感を伝えながら自然学習の機会を提供しているという訳です。

 お泊りの犬くんも初めての山歩きを体験しました。小さな体バランスの取れにくい体型で上れるところ上れないところを選択しながら草を食みながらすすみました。最初は段差も難しかったのにすぐにゆっくりと進むことを覚えました。興味が進みすぎて呼び戻しが難しいこともありましたがそれも勉強のひとつです。太陽の日差しを求めてひなたぼっこも続きました。いつの間にか体が冷えてしまうのですね。短い預かり時間でしたが、自然の中でその五感を通して得た情報が脳内で活性化していったことでしょう。

 有意義な体験をした後は帰宅した飼い主さんに「ごめんね」を言われることもありません。今度は飼い主さんと一緒に来れるといいね。10年間かけて育った尾歩山の森でお待ちしてます。


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おすすめのアイテム:クレートトレーニンの最後はこれで「ソフトクレートを買ってください!」

 室内犬であれ外飼いの犬であれ、犬との暮らしで何かのときにどうしても必要になるのがクレートです。特に室内犬の場合にはクレートトレーニングは犬の安心と安定のためとても重要になります。クレートトレーニングは犬が安心できる場所を確保するためのトレーニングであると同時に、クレート周りを飼い主がいかに守っているのかを犬に教えるためのトレーニングでもあります。そのクレートトレーニングの最終地点で導入したいのがソフトクレートです。「ソフトクレートを買ってください!」と飼い主さんに言うときには、クレートトレーニングが最終段階に入っていますよ、というお知らせの合図です。

 犬にとっての快適なクレートを考えた上で、おすすめのアイテム「ソフトクレート」についてご紹介します。


● どんなクレートを使うのか?

 クレートトレーニングをするためにはまずクレートを購入する必要があります。最初はプラスチックでできた入り口だけが金属製になっているものを選びます。クレートが頑丈でないと犬が不安定になるからです。いろんなメーカーのものがありますが、入り口の金具が安全であることと、内側に犬が噛んでひっかけてしまうようなものがないことを確認してください。まれに床がデコボコになっていることがあります。重ねるためのデコボコなのかなとも思いますが、床がデコボコでは犬は落ち着きません。床面はフラットなものにし、足元がすべりにくいように中に入れるものを工夫してください。

 サイズは子犬のときには少し大きめを購入しますが大きすぎると失敗します。大型犬でも2回くらいは買い直しをする覚悟で少しずつ体のサイズにあわせてクレートのサイズを変えていってください。なぜなら、大きすぎると犬が落ち着かなくなるからです。クレートは巣穴代わりの場所ですから、体をひっつけることができて広すぎない方が犬が落ち着いていられるのです。

 サイズとしては立ち上がっても頭が天井につかない、伏せているときに前脚先までがクレートに入る、コの字型になって寝ているときに、脚を極端に曲げなくても良い、これがサイズの選び方です。


● ソフトクレートとはどんなものなのか

 クレートトレーニングが進み犬がクレートで安定していられるようになったら最後に準備していただきたいのがソフトクレートです。素材は布とネット生地でできたもので入り口はジッパーで閉まるようになっています。
 名前はいろんな呼び名があり正式名称はありません。ソフトクレート、ネットケージ、ソフトケージ、ネットキャリーなどいくつかを検索するとそれに該当するものがでてきます。形は以下のようなものです。

ネットケイジ
 同じようなものでもメーカーによって若干耐久性が違いますが種類はそれほど多くありません。

 他のクレートやケージの利用のときと同じように、カバーが必要です。しかし、ソフトクレートの場合には中に入っているときの安定感が高いため、置く場所によってはカバーをかけずに利用することができます。たとえば寝室で寝るときや他人の入らないスペースでの利用ではクレートカバーは不要です。いろんな場所で利用できるようにするためにカバーは最初から準備しておく方がいいです。最初はカバー付で練習して、その後に場所に応じてクレートカバーを外すという感じです。


● ソフトクレートの利点とは

 犬のクレートトレーニングの進み具合に応じて、今まで使っていたハードクレートの代わりにどのようなシーンでも使えます。室内で、車の中で、移動のときにも利用できます。

1 涼しくて快適  夏の間はプラスチック製のハードクレートでは温度が高くなり犬も不快です。ソフトクレートなら涼しくて快適です。

2 軽くて楽ちん  クレートよりは軽いですし、何よりも折りたたんで移動させられるのは助かります。

3 洗えて清潔  ほとんどのソフトクレートが拭いたり洗ったりできます。清潔さもキープできるのもうれしいです。

4 緊張しない  入っているとき、入るときに頭は体が硬いものにぶつかると緊張します。ソフトクレートなら急いではいっても体を中で動かしてもあたるのはソフトな感触、寝ているときもあたっているのはネットのソフトな部分です。ときどきネット側によりかかってネットが膨らんでいることもあります。体を土に預けるような感覚で気持ちがいいのでしょうね。

5 なぜか安心できるソフトクレート  
 これは個人的な感覚ですが、実際にケージ、ハードクレート、ソフトクレートの3つに入ってみたことがあります。もちろん入り口は閉めてもらいました。入っている方はどんな感じなのだろうと思ったからです。一番落ち着いたのはソフトクレートでした。面側がネットの網でできているためか、内側からはわりと外が見えるのに、外側の人は中の犬がはっきりと見えません。その外側から見えてないという感じが犬にも伝わっているのかもしれません。だからでしょうがクレートの表越しに目が合うようなことがソフトクレートではないのです。
※実際にソフトクレートに入ってみたいという方は七山校の方にありますので申し出てください。


● ソフトクレートの購入先

早速ソフトクレートを準備しようと決意された方への参考情報です。

ネットショップの方が比較的安く購入できるようです。以下に参考ページを添付しておきます。当校とは関係のないショップなので購入者責任で選んでください。

アマゾンの購入ページ

楽天市場の購入ページ

 クレートトレーニングは今まで関心がなかったけどやってみようかなと思われた方はお問い合わせフォームからご連絡ください。


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はじめての犬のお泊り体験①:犬のお預かり先をどう選ぶのか

週末ははじめてのお泊りとなる犬くんをお預かりしていました。犬を預ける側の飼い主さんもドキドキ、犬の方も新しい経験にドキドキワクワクの時間を少しだけご紹介します。


●犬を預けるのはどういう時なのか

 犬を飼っている間に犬の生涯を通して一度も犬を人に預ける経験をしたことがないという方もいるとは思いますが、生活スタイルの変化と共にこの可能性というのが高まっているという事実は把握しておく必要があります。犬と生活する上で起きるかもしれない様々な可能性について、できるだけ犬に負担のないようにその状況を乗り切れるように準備することも飼い主の責任のひとつです。

 そのひとつが犬のお預かりです。家族の数が少なくなって誰かが常に自宅にいるという生活スタイルはすでに昔のことになりつつあります。特に都心部では年齢を経ても働く人が増えている上に趣味や付き合いなど、いろいろと忙しいというのが人の生活スタイルになりつつあるように感じるからです。

 犬をペットホテルや知人に預ける理由は状況によって様々です。その多くはビジネスでの出張、家族旅行、遠方に暮らす家族の不幸や事故など止むを得ない理由がほとんどです。中には犬は自宅に留守番させて旅行に行くのが趣味だという方もいるかもしれませんが、犬という動物の習性をある程度理解できる方なら留守番が犬に負担をかけてしまうことは事前にわかることです。犬を飼う前に趣味が旅行、出張が多い、転勤が多いという生活スタイルは、犬を飼う環境としてはあまり適切でないと判断されることを願います。

 旅行に行くときはいつも犬を一緒に連れて行くという方も増えているようですが、こちらも実際には犬に負担をかけていることが多々あります。犬という動物にとっては、新しい場所に連れて行かれることはひとつのストレスであるという認識を持つ必要があります。それが、自然環境溢れる場所であれば利点もあります。普段は都心の臭い環境の中にさらされている犬にとっては自然の空気と臭いだけで十分に満喫できるでしょうし、犬が本質的に求める環境であるからです。 
 一方であちこちをドライブしてなかなか落ち着けず人はいろんなものを見て楽しむ間に犬はバッグに入れられたり抱っこされているという状況下では、犬がどのような状態であるのかを再度考えてあげる必要があります。犬といっしょに楽しめない場に出かけるなら思い切って犬を留守番させていった方が犬にとってはずっとリラックスして過ごせるはずです。

 どちらにしても犬を人に預ける必要になったときにどこにもしくは誰に預けるのかについて、犬を飼ったらすぐに考えておきましょう。そして必要のある信頼できる犬の預かり先を確保しておきましょう。


● どこに犬を預けるのかという選択は飼い主の責任でもある

 そこで犬の預かり先を探す必要があります。もちろん犬にできるだけ負担のかからない預かり先を見つけたいものです。その選択は飼い主に委ねられていますが、選択の仕方についていくつかのアドバイスをあげてみます。

 まず犬の預かり先として最適だと思うのは、家庭環境で犬を飼っていない環境です。これは犬のテリトリーと関係性について受ける社会的なストレスを回避できるという理由です。このことが犬にとってとても重要であると同時に、重要であるだけに受けるストレスも多いということです。社会的な関係が社会生活の中で最も影響が強いのは同じ社会生活を送る人も同じですので、自分に置き換えると理解しやすいでしょう。

 犬を飼っていない家庭環境で庭のある戸建てで、犬を預かってくださる方がその犬についての行動の理解をしているというのがベストの預かり先です。もし自分が犬を預けるなら、こうした知人宅を預かり先として依頼したいと考えます。
 ただ、犬もいきなり預かり先に連れて行かれると適応するまでに時間がかかります。そのため犬を暮らしている間に定期的にその知人宅に立ち寄らせてもらいます。知人は犬についての理解を深めて犬との関係性を築く時間を得られるし、犬は環境についての理解を深めて安定した時間を過ごせるようになります。犬にとっては周囲の環境をきちんと把握できていることがその安定性を引き出す術なのです。

 逆に犬を飼っている知人宅での預かりについては注意を必要とします。普段よく会っていて仲良しだと思われている犬達も、テリトリーを共有するという時間が長くなると緊張感が高まってしまいます。元のテリトリーを持つ犬としては、遊びに来る犬が自分のテリトリーを荒らさずに帰宅してくれることで縄張りについて不安を感じずに済むのです。
 ところが宿泊となると一泊するだけで犬は食事や睡眠をその場所で得るという経験をします。この経験を通して自分のテリトリーをそこに獲得しようとします。そこが別の犬のテリトリーであれば、この犬と社会的な関係を結ぶ必要があります。それができなければマーキングをしてその犬のテリトリーを奪おうとする行動が出ることもあります。逆にテリトリーを作ることができず逃走傾向が強くなることもあります。こうした状況は犬の様々な行動から知ることができます。

 最近はちょっと違った状態も予測されます。犬の愛玩化が進みすぎ犬は特定の場所からあまり移動しなくなり室内飼いの猫のように一定の場所にいて、特定の場所に排泄をするという行動をする犬も増えているからです。狭い室内で特定の場所に滞在してペットシーツの上に排泄し、食べ物の気配を感じてウロウロし後は寝る生活なら、預かり先については別の場所がいいかもしれません。犬は環境を把握する力もなく、テリトリーを獲得する力も失い始めています。完全管理された室内だけで預かりをするペットホテル式で犬の預かり数がとても少ない場所がこうした犬には適切です。犬がこうして変化していくことについてはとても残念ですが、これも人が望んだ結果であると受け入れるしかありません。
 

● 犬のお預かりクラスを始めた理由

 わたしも犬の一飼い主であった時代があります。ひとり暮らしなので自分が事故や病気になったときにという不安は常にあり、預かり先についてはすぐに考えはじめました。
 犬の預かり先には犬のことを理解してくださる知人宅をお願いするか、いっしょに仕事をしていたスタッフに自宅に泊まりに来てもらうという選択をしていました。知人宅には共に暮らす犬たちがいたため、知人宅へ預ける場合にはその犬達への配慮を必要としました。一泊が限界かなと感じながらも別に預けられる場所もなかったためまずは自分の出張を控えるというのが先決でした。

 グッドボーイハートでお手伝いする犬のお預かりクラスは、生徒さんの犬たちに安心して過ごして欲しいという理由で始めました。オポがいる間はお預かりをすることはできませんでした。理由は先に書いたもので、犬の預かりが自分の犬に負担になるからです。

 今のところ犬を飼っていません。しばらく犬と暮らす予定もありません。それで自分にできることを考えたときに「犬の預かりクラス」の開講が決まりました。飼い主としての不安を解消して安心して犬との生活を続けてほしいという理由、そしてグッドボーイハートならではの理由も別にあります。それは、預かりの時間を通して犬のことをもっと理解できたらという思いです。普段は飼い主さんが管理する環境の中で見る犬の行動ですが、自分が管理する環境の中で犬がどのような行動をするのかと知ることで、犬の性質についての情報や様々な犬の可能性を知ることができるのではないかという欲求も盛り込まれています。

 そのため、グッドボーイハートの預かりクラスにはちょっとだけ「冒険」や「学習」の素材もプラスされています。一時的な飼い主として面度を見るのがドッグインストラクターを勤めるわたしですから、犬にとっては飼い主のように思い通りにはなりません。きっと一筋縄ではいかないことでしょう。預かり中は飼い主さんの飼い方を基本にしながら、しかし犬に自律を促す姿勢はどの犬に対しても変わりません。これも犬にとってのひとつの学習の機会になります。

 また、預かり場所は原則として七山校の方でお願いしています。飼い主さんが不在の時間に犬にはいつもできない体験や学習を促す機会としたいという目的でお預かりをしています。マンション暮らしで都会の固い公園の土しか踏んだことのない犬にとっては、フワフワで虫がたくさんいる草むらの中を歩くのは始めての体験になるでしょう。こうした体験を得られることが、都心の限られたスペースでの完全お預かりのペットホテルとは違うところです。

 今回はじめてのお泊りの犬くんはどんな体験をしたでしょうか。明日引き続きます。



dav

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犬に寄り添い自然に近づいた人のこと:昭和の犬の映画「ベンジー」のドッグトレーナーとの出会い

 映画やドラマの中に犬を含めて動物が登場すると、ついその動物の行動の方に注目してしまいます。注目する理由は、映画の中で動物がどのように使われているのか、その映画の撮影中に動物がストレスを感じていないかどうかを読み取ろうとしてしまいます。

● 子供のころに見た忘れられない犬の映画

 もちろんこうした見方をするようになったのは犬のトレーニングを仕事にするようになってからです。それまでの学生時代に見たものはただ脚本を通して擬人化もしくはヒーロー化した犬を見て単純に感動していました。小学生時代に見た犬が登場する映画の中で最初に感動した画があります。アメリカ映画の「ベンジー」という映画です。
 1960年代の映画であったと記憶しています。映画「ベンジー」のストーリーはいたって単純なもので、ベンジーがヒーローとして子供たちと自身の彼女犬を助け出すという子供にはわかりやすいものでした。ベンジーの主役だった俳優犬(フィルムドッグ)は、カリフォルニアのアニマルシェルター(保護施設)で子犬のころに保護された犬で、ヒギンスと名づけられていました。
 考えるとすでにこの時代にはアメリカでは保護施設が犬で満杯になり、保護施設から請出して再び家族として迎える保護犬というものが存在していたことになります。曖昧な記憶ですがベンジーを演じたヒギンスが捨て犬だったのにスクリーンのヒーローとして活躍したことは、映画の宣伝に多いに使われていました。当時小学生の自分にとっても、とても衝撃的なことでした。そのヒギンスですがテリア種のミックス犬でそれまでにヒーローとして知られていたシェパードなどの立派な犬とは容貌が明らかに違うことも新しい価値観として注目されたのかもしれません。

 犬のトレーニングの仕事をするようになってからは一度だけベンジーの映画を見ました。レンタルビデオショップにあったのかと思います。ドッグトレーニングとして見ると、その行動の正確さは本当に見事でどうやって教えたのかといつも不思議でした。それは、犬の芸当に関心があるからではありません。家庭犬にお互いの楽しみを越した芸が必要だも思ってはいません。ただ、このヒギンスとトレーナーはどんな関係だったのだろうかという関心が高まってしまったのです。


● ベンジーのトレーナーとの出会い

 そのベンジーの映画でフィルムドッグトレーナーのひとりとして参加したドッグトレーナーと福岡で会う機会があったのです。経過としてはこうでした。グッドボーイハートの博多駅南校があったころに、博多でフィルムドッグのセミナーを開催したいので場所を貸していただけないかという相談を受けました。生徒さんたちも楽しめるような内容であればという確認をして、セミナー会場として使っていただくことになりました。一般の方とグッドボーイハートの生徒さんも数名参加されていたと思います。そのセミナーのドッグトレーナーのうちの一人がベンジー(ヒギンス)のトレーニングを担当していたと紹介されたのです。ヒギンスはとても学習能力が高く積極的に取り組む特別な犬であったようです。とても楽しい時間だったと語られていました。
 フィルムドッグセミナーでは行動を起こしたら報酬を与える正の強化法が使われていました。ヒギンスも同じように報酬で行動を強化されていたのかどうかはわかりません。ただ、担当のトレーナーがその犬からたくさんのことを学んだといわれたのは印象的でした。
 会場を提供した者ということで個人的にそのトレーナーの方に紹介されました。紹介の際に知人が「オポという犬を飼っていらっしゃるんですよ。」と伝えてくださいました。「オポ?あのイルカのオポですね。」という返答をいただきました。それまでオポという名前を聞いて「イルカのオポ」と返されたことは一度もありませんでした。そのトレーナーさんがイルカのオポのことをご存知だったことを知り、それだけで本当にうれしくなりました。


● 犬と寄り添うことで出会った世界への共感

 そのベンジー担当のトレーナーさんがお昼休みにいくつかの民芸品を販売されていました。通訳の方によると先日結婚されたばかりだとのことで、その家族がこの民芸品を作っているということでした。写真を見せていただくとそのご家族は衣服を一部しかみにつけていないような部族の方だったのです。トレーナーの彼女は白い色のアメリカ人だったので少し驚きました。おみやげの民芸品の中から、いろんな動物の顔をしているお面というのを購入しました。お祭りのときに部族で使うらしく運気もあがるよといわれた物です。現在はグッドボーイハート七山校の玄関ホールに飾ってあります。

 個人的に深くお話しできなかったのは残念でしたが、犬に対する気持ちや姿勢、犬を通して学んだ時間、そんなことが新しい世界のパートナーとの出会いにつながったのではないかと思います。セミナーが終わって帰られる間際に「ヒーリング用のベッドが置いてあったけど、あれは何に使うのですか?」と尋ねられました。控え室に使っていただいた部屋に折りたたんだ人用のヒーリングに使うベッドを立てかけてあったのを見られたようです。「わたしが飼い主さんにヒーリングをさせていただくためのベッドです。」とお伝えしました。彼女は「本当にすばらしいこと。いつかいっしょにセミナーをしましょうね!」と言って立ち去られました。

 犬のトレーニングの仕事をしているのに、犬のヒーリングや人のヒーリングまでするようなったことで、人によってはわかりにくいと感じられることもあるとは思います。しかしこのとき、犬を通して学び同じ道を歩いている人がいるのだという心強さを得たのです。ありがたく不思議な出会いでしたが、ベンジーという犬が引き寄せてくれた貴重な出会いであったと感謝しています。
 

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犬のごほうびトレーニングの落とし穴:「どうやって褒めたらいいのかわからないんです」という方は必読です

 昨日のブログ<犬のごほうびトレーニングの落とし穴:「ごほうびがないとしないんです!」という方は必読です>に続いて、ごほうびトレーニングの大きな落とし穴についてお話します。
 今回はよくある質問「どうやってほめたらいいのかわからないんです」についてです。この疑問をいだいている飼い主さんは、おそらく犬のこと、そしてトレーニングの仕組みをかなり誤解していると考えられます。


●ごほうびトレーニングの報酬は何なのか?

 ごほうびトレーニング(陽性強化トレーニング)を取り入れている飼い主さんからの質問に「どうやって褒めたらいいのかわからないんです。」という質問があります。これはトレーニングの手順が曖昧になっているために起きる間違いです。

陽性強化法の方程式はこうです。↓

  犬にオスワリという → 犬が座る → 報酬を与える


この報酬の部分に「褒める」を置き換えるとこうなります。

  犬にオスワリという → 犬が座る → 報酬を与える=褒める

 どのように褒めたらいいのかわからないという飼い主さんは、報酬として褒めるという行動を使っています。ごほうびが「褒めること」なので、犬が褒められていることを喜んでいる場合でなければこの方程式は成り立ちません。

 これは正の強化(陽性強化)法を用いた行動修正や行動学習における報酬の原理です。つまり報酬=ごほうびとして使用するものは、動物に行動を起こさせることができる「適切なもの」であるという原理です。報酬が行動を起こさせる動機にならなければ学習は成立しません。
 さて、そこで質問ですが、報酬として飼い主が褒めるという行為を与えることは、報酬として適切なのでしょうか?褒める行為を報酬に使った結果、犬がオスワリといっても座らなくなったのであれば報酬としての効果はなく適切ではなかったということになります。


●なぜ飼い主は大げさに犬を褒めるのか?

 しかし、飼い主はこう考えるのです。自分の褒め方が足りないのだと、犬にわかるように褒めなければいけないと思ってしまうようです。飼い主は「褒めるというごほうび」をもらって喜んでいる犬の反応を得ようとして大げさな褒め方をします。大きな声で「おりこうさんね~~」とか「グーッド」といいながら犬の顔をくちゃくちゃになるまでなで回します。この飼い主の興奮に対して当然犬は興奮します。ハアハアいったり、とびついたり、走り回ったりすることもあるかもしれません。この犬の反応を見て飼い主は犬が喜んでいると思います。飼い主の「褒める」という報酬を喜んで受け取ってくれたのだと勘違いするわけです。

 しかし、そのうちにオスワリといっても犬は座らなくなります。むしろ、犬の方は座るともみくちゃに撫でらるという嫌なことをされるわけですから、警戒して座らなくなることもあります。撫でられたあとにブルブルと身震いをすることもあるでしょう。飼い主の興奮にストレスを感じ自分を落ち着かせるシグナルまで出しています。ところが飼い主は褒め方が足りないから犬が座らないのだと思って褒め方はもっと大げさになります。それでも結局のところ犬はオスワリをしなくなり、今度はオヤツを手にもってオスワリをさせるという形に変えます。報酬の種類を変えて対応をするわけです

 報酬を食べものに変えるとオスワリする確率は高まります。飼い主に褒められることよりも、オヤツの方が犬にとっては座る行動を起こす動機が高まるからです。ところが犬によってはオヤツを見せてもオスワリをしなくなります。この流れについては昨日ブログに書きましたので復習してください。
 

● 飼い主が犬を大げさに褒めるようになった理由は他にもある

 大げさに褒めるやり方が広まってしまったのは他にも理由があります。それは、本やネットの情報です。本やネットやテレビで紹介されるしつけ方について質問されることがあります。その多くはいい加減で曖昧なものばかりですが、その中には「犬が行動したら(オスワリしたら)大げさに褒めることが大切です」というものがあります。

 なぜこのような情報が広がってきたのかというと、トレーニングのある現場では大きな声で犬の胸を軽く叩きながら褒めるような仕草を交えて犬に声をかけているドッグトレーナーを見かけることがあるからではないでしょうか?この手法は正の強化ではなく、多くは負の強化のトレーニングのために使われています。

負の強化(陰性強化)法の学習過程は次のようになります。

  犬にオスワリという → 犬に嫌なことが起きる→ 犬が座る → 犬の嫌なことがなくなる

犬のトレーニング(訓練)に使用される、鉄製のチョークチェーンやハーフチェックという犬に一定の刺激を与える道具を使用してオスワリを教える場合にはこの負の強化法が使われています。

 犬にオスワリという → 犬の首がチェーンで一瞬締まる → 犬が座る →チェーンが緩む

この原理が負の強化トレーニングです。国内でも正の強化(陽性強化)トレーニングが普及する前は、この負の強化(陰性強化)トレーニングで犬の訓練やしつけが行われることも多くありました。現在でもこうしたやり方は学習の方法のひとつとして使用されています。

 このトレーニングは犬の性質やトレーニング道具(チョークチェーンやハーフチェックの首輪)の使う技術によって犬のダメージがかなり違ってきます。犬は首にショックを与えられるという嫌なことを体験します。犬によっては精神的なダメージを受けてしまい、オスワリどころか他の行動を起こさなくなるほどへこんでしまうことがあるからです。オスワリのあと全く動かなくなってしまう犬もいます。ところが、他の行動もこの方法で教えていくためには犬に何かの行動を起こしてもらう必要があります。そのため回復を図るために大げさに犬を褒めることで回復を図ろうとしてするようです。

 もちろん、大げさに褒める必要があるのは技術のないトレーナーです。チョークチェーンなどを使った負の強化法のトレーニングの技術が高ければ、どの道具が犬に与える影響も予測できるので選択を間違えることも少なく、またチェーンの締め方と緩め方も調整できるため犬のダメージも少ないのです。ということは大げさに褒める必要はないということです。一般の飼い主さんにはあまり向きません。自分の技術が上がるまでに犬に与えるダメージが大きすぎるからです。


● 褒める報酬がいらないなら犬はどうしてオスワリするの?

 犬を褒めてあげることは大切なことです。しかし、犬を大げさに褒めている必要はないのです。
報酬としての褒めることは必要ありません。かといってオヤツで釣ることを推奨もしません。では報酬は必要ないのかということですが、オペラント条件付けの正の強化(陽性強化)の枠を抜け出れば犬に報酬を与える必要はありません。ところが犬の側には報酬があります。それを動機付けといいます。

 犬にとって、いや人にとっても大切な報酬は内的な動機付けによって成り立っています。つまり、できるということ、やったということ、もっと深くいえば社会に所属しているということです。犬はとても感受性が高いため、飼い主の反応によって自分の行動が適切であり飼い主に認められたことを理解できます。もちろんここには関係性が影響します。お前なんかに認められたくないよという人の前では協力的な態度は示しません。それは社会的な行動として当たり前のことです。

 人間の中は誰にでも好かれたいしよく思われたいという気持ちもときどきはもしくはいつもあることを否定できません。しかし、そういう表向きの社交性は犬にはありません。そこがまた犬の魅力でもあり信頼できる動物でもある理由です。犬の場合は好かれたいという自分の評価を気にするような行動ではありません。社会的な関係を重要視できれば、犬は必要なときに自ら協力的な態度を示してくれるでしょう。飼い主が犬に甘える行動をとっているならこの関係はなかなか獲得できません。犬を甘やかしたいという気持ちは、犬に好かれたいという気持ちの裏返しであることもあります。犬はその社会性を通して感じたことを行動で表現してくれます。そして人に成長の機会を与えてくれます。そう思うととてもありがたい存在だと思います。

 犬を侮るなかれ。犬はシンプルでわかりやすく正直なだけなのです。


2017.3.19-3

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犬のごほうびトレーニングの落とし穴:「ごほうびがないとしないんです!」という方は必読です

 トレーニングクラスのときによく聞かれる質問にはこんなものがあります。「ごほうびを見せないと犬がオスワリをしないんです…」

 ごほうびトレーニングの落とし穴にはまったようです。ごほうびトレーニングはきちんと理解して使わなければ、罰を使ったトレーニングと同じように危険性があります。今回はこのごほうびトレーニングついてお話しします。


●ごほうびトレーニングって何?

 10年以上前になりますがグッドボーイハートで満席御礼になったセミナーがあります。たしか「ごほうびトレーニングの落とし穴」という名前で開催しました。当時は犬にごほうびを与えるトレーニングが流行っていた時期だったので、当校でも報酬を用いたトレーニングを導入していました。しかしこのごほうびトレーニングは注意して使わないと、大変な落とし穴にはまってしまうという危険性についてお話したものです。

 好評だった理由の中には単純に「ごほうびトレーニングに違和感を覚える」というものもありました。確かにこのトレーニングは一部の方にとっては違和感のあるものなのです。その違和感を大切にして、なぜこんな風にざわざわした感じになるのだろうと思ったら、ぜひこの機会にごほうびトレーニングの真実について考える機会としてください。

 ごほうびトレーニングとは、犬に行動を起こさせるために「報酬」=「ごほうび」を用いるトレーニングです。行動学の分野での正式名称は「正の強化トレーニング」、心理学の分野では「陽性強化トレーニング」と名づけられています。この報酬を用いて行動をさせる学習の心理について分かりやすく説明したのはBFスキナーという行動学者でした。スキナーが流行った時代はまさに行動主義の全盛期です。もちろんこれらの学問は人に対して起きたものです。しかしどのような学問もその学問を定義づけるためには状態を再現させるためのくり返しのテストが必要です。このテストにはたくさんの動物も使われています。たとえば古典的条件付けの実験に犬が使われていたのはご存知の方も多いでしょう。そう、パブロフの犬のことです。

 スキナーの学問の中でこのごほうびトレーニングに当てはまるのが、オペラント条件付けという学習過程です。オペラント条件付けによる学習は、行動の後に「報酬」もしくは「罰」が出たりなくなったりする原理によって成り立ちます。学習の過程は以下の四つです。

1 正の強化
2 正の罰
3 負の強化
4 負の罰

このうちの、正の強化のことを陽性強化=ごほうびトレーニングといわれています。
陽性強化トレーニングでは、犬が行動を起こすと報酬が出ます。こんな方程式になります。

  犬にオスワリという → 犬が座る → ごほうびを与える

上記のオペラント条件付けの陽性強化法を実践の行動トレーニングで使うためには、いくつかのポイントをくわえる必要があります。たとえば、ごほうびは時々与えるにすることとか、行動を起こした後にごほうびの出る合図(特定の音)をくわえておくことなどです。ここではごほうびトレーニングを実践していただく説明ではないので、これらは割愛させていただきます。


●ごほうびトレーニングの落とし穴のひとつ「オヤツがないとしないんです。」

 このごほうびトレーニングの落とし穴のひとつめは、犬がオヤツを見せないと行動を起こさなくなるというものです。自己流で始めた方の多くがこの落とし穴にはまっています。たとえば、オスワリといっても座らないがオヤツを手に持つと座るとか、オスワリといっても座らないがオヤツをポケットにいれる様子を知ると座る、オスワリといっても座らないがオヤツの臭いを感知すると座るなどもこの例です。

 これらはごほうびトレーニングの鉄則である、ごほうびを時々にするという約束と、ごほうびを見せずにするという約束、ごほうびを直接与える前にほうびの出る合図を与えておくというポイント制にしなかったことが失敗の理由です。ごほうびを見せてもしなくなるパターンには、報酬のランクを吊り上げていくような状態になっていることもあります。最初はドッグフードでしたがそのうちしなくなる、次はジャーキーを見せるとするがそのうちにしなくなる、次はチーズを見せるとするがそのうちにそれも効果がなくなるというものです。

●なぜ、ごほうびがあるのに行動をしなくなるのか?

 こういう落とし穴にはまってしまう明らかな理由は、もうすでにごほうびは報酬ではなくなくなっているという事実です。この段階になるとすでにこれは報酬ではなく賄賂です。事前に千円札を見せられてそこに座ったら千円を上げるよといわれたら最初は誰もが椅子に座るかもしれません。そのうち千円では座らなくなり、一万円札を提示されると座るようになります。しかしそのうち一万円札も価値がなくなってしまうことがあるのです。自分の身に置き換えて考えるとわかりやすいのです。

 中には、一万円ももらえるならなんどでも椅子に座るよという方もいるでしょう。ですが、これを関係性と捉えたらどうでしょうか。あなたに一万円を見せてなんども椅子に座るように申し出る人に対して信頼関係を結ぶ自信がありますか?むしろ、一銭もお金を持っていないのだけどどうしても今必要なことなのでこの椅子に座ってほしいと頼まれ、椅子に座るとありがとうといわれるほうが物事を頼んだ人との関係性を重要視したことになります。

 それは人間のはなし、犬はいくらでもごほうびをもらいたがると思うかもしれません。確かに犬の中には大変拘束されている状態が強く、人との関係性についての関心を失っている犬もいます。完全管理の状態が犬にとっては人の奴隷のような状態になるため、非常に不安定でただ欲求が食に偏ってしまうからです。しかし、犬の中には人との社会的な関係に関心を失っていない犬もいます。これらの社会的欲求をある程度備える犬達は、報酬を提示されて行動を起こすことや、報酬の予想させて行動を起こさせるどのようなごほうびトレーニングにも異質な行動をとるようになります。わかりやすいケースでは行動をしないというもの、微妙な反応ではそのごほうびトレーニングのあとにストレス行動を行うという場合もあります。若干の拒否反応や人への関心を失い始めるのもその傾向を示しています。

●大切にしたいのは何か

 さて、そこでもう一度考える必要があります。犬にオスワリやマテを教えて行動を起こさせたいのはなぜでしょうか?犬におりこうさんになってもらいたいから、人におりこうさんな犬だと自慢したいからでしょうか。逆に、犬と良い関係を築いていきたいからでしょうか。もし、あなたが犬に何かを教える理由が、犬とより良い関係を築いていきたい、自分の犬にとっての最大の理解者でありたいと思うのならお伝えしたいことがあります。

 ごほうびトレーニングの落とし穴にはまってしまい、ごほうびを見せないとしない、ごほうびの合図がないとしない、ごほうびで行動をさせたあとに違和感が残るのなら、それは犬の方もあなたとより良い社会的な関係を築いていきたいという高い欲求を残しているシグナルです。あなたの犬はまだ報酬の奴隷には成り下がっていません。だからぜひそのことを喜んで新しい関係を築くチャンスを掴んでください。

 ごほうびトレーニングは犬の学習過程の中でいつの間にか導入されています。人もいつのまにかごほうびで強化されていることがあります。ポイントカードなどはごほうびトレーニングの良い例です。しかしそれが関係性に影響を与えるとなると抵抗を示すのも社会性の高い動物である人としてはナチュラルな反応なのです。ごほうびトレーニングで社会的関係は築けません。会社で一定の給与をもらっていても、その仕事に没頭してがんばれるのは、仕事を通して何かを身につけたり人との関わりを通して自分の中に得られる内的動機付けがあるからです。そうでない場合は仕事はただお金を得るだけのつまらない時間になってしまいます。

 ごほうびトレーニングの落とし穴、まだまだありますので少しずつ紹介していきます。


カレン0612

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