週末はグッドボーイハート七山校で犬語セミナーを開催しました。今回は上級者編として開催しました。内容もいつもよりも深いものとなり学びの多い時間でした。
● なぜ、犬語を学ぶ必要があるのか
七山校では毎月、福岡校では不定期に開催している「犬語セミナー」。犬のさまざまなコミュニケーションを読みとる学習をし、犬への理解を深める座学の講座です。そもそも、犬との暮らしの中で飼い主さんたちが最も興味があるのは「犬は何を考えているのだろう」「犬はどういう気持ちでいるんだろう」ということです。
犬が考えていることに対する理解がなかなか進まず行き違いが生じるのは、お互いにこちらはヒトであり、向こうはイヌであることから、“種”のことなる動物だという違いがあるからです。そのため、犬の持つコミュニケーションの表現の中から人側がそのシグナルを読み取り受け取る練習をするのは、犬を飼う上で最優先させるべき学習項目です。はっきりといえば、それは犬にオテやオスワリを教えることよりも、ずっと大切なことです。
ところが、これらのコミュニケーションはなかなか習得することが難しいのも事実です。たとえば、本にも犬の会話を知ろうというものがありますが、図や写真で紹介されるものと、実際のコミュニケーションには差が出てしまいます。比較的わかりやすいシグナルに落ち着かせ行動(カーミングシグナルとも呼ばれる)があります。これらのシグナルは単発で短いシグナルであるために、拾いやすくわかりやすいシグナルです。
しかし、ほとんどのコミュニケーションは動きや音などといっしょに表現されるため、単純に受け取ることもできません。その犬のコミュニケーションをできるだけ正確に受け取る練習をするためのセミナーがこの「犬語セミナー」です。
犬語セミナーを通して犬語を学ぶ目的は、犬がどのような状態にあるのかをまず把握するためなのです。この犬の状態を理解せずに、人の言う事を聞くようにさせるというのは一方的で相互コミュニケーションの機会を失うことになります。
犬は関係性を蓄積させるようにつくっていきます。人と同じですね。相手が自分のコミュニケーションを理解しないと受け取ると、人とのコミュニケーションに不快感を覚え積極的なコミュニケーションをとろうとしなくなります。孤独になり落ち着かない行動をするようになってしまいます。
● 犬語の深読みとはどんなこと
犬のコミュニケーションを受け取るには、受け取り側が人ですから視覚的に理解できる範囲内で、また聴覚的に受け取れる範囲内でということになります。ビデオなのでスローモーションにもなりますから、視覚的なシグナルの分析はかなり細かくできます。ただ、残念なのが臭いのコミュニケーションを受け取ることができないということです。犬たちは様々な臭いを発してお互いのメッセージを交換していますが、その世界に人は入ることができません。しかし、そうした見えないシグナルも、行動を通してある程度は理解することが可能です。
今回は上級者編として犬の行動の読み取りのあとにさらに深読みを行いました。
犬語の深読みとは、犬のコミュニケーションに影響を与えている環境は背景について予測するということです。実際にはビデオを提供してくださった飼い主さんに、環境に関する背景をカウンセリングさせていただければ、細かく環境の影響について説明することができます。しかし、ここは犬語セミナーですから、知らない犬の行動を見て、犬の環境を推測するという逆バージョンでやってみます。
この深読みをする目的は、犬たちの抱えている社会環境についてみなで考える機会を持つためです。自分の犬だけが幸せになればいいと思っている飼い主はほんの一部だと思います。犬と暮らしている人、犬と暮らしたことのある人の多くが、犬という動物から多くの恩恵を受けることから、すべての犬に幸せになって欲しいという願いを持っています。家庭で人と暮らす犬たちはみな、家庭で大切に飼育されています。栄養のある食べ物をたべ、温度管理をされた室内にいれられたり、屋外の安全な場所に居場所を提供され、清潔にしてきれいにして過ごしています。そんな現代でも、犬を取り巻く社会的な問題はたくさん存在しています。
● 現在の犬たちが抱えている複雑な問題について
犬たちの抱えている現代の問題とは、行き過ぎた管理という飼育です。この言葉にはすでに矛盾があります。飼育という「飼い方」がすでに管理環境の中で行われます。犬を飼う上で「管理」という言葉は外せません。これは法律で定められた項目でもあります。昭和48年に議員立法で制定された「動物の愛護及び管理に関する法律」は改正を重ねながらも、犬と暮らすすべての人が守るべき法律として存在しています。
もっとも管理すべきものとして、犬は必ずリードをつけて散歩をすることや、犬を飼育する環境は囲いのある私有地であること、囲いのない場合には係留をするという管理は、犬の飼養管理として義務付けられています。これは現在守るべき法律であることは、疑いもないことです。
しかし、これ以上の犬を管理する方法が国内に普及しています。これらは西洋的な動物を利用することが前提での完全管理の方法です。少なくとも犬の飼育方法については、圧倒的にドイツをはじめとする西洋的なやり方が指示されています。しかし、どうでしょうか。私はこのことにはいつも疑問をかかえています。日本の土着の犬たちにこうした西洋的な飼い方や人との関係を持ち込むことを歓迎しないのです。その理由については、深いものがありとてもブログでお伝えすることはできませんが、グッドボーイハートでご縁のある方々とはこうした問題についても機会のあることにいっしょに考える機会をもっています。
さて、次回の犬語セミナーは9月24日(日)12時~14時 グッドボーイハート七山校で開催します。
犬のことを深く学びたい方はぜひご参加ください。
Author Archives: miyatake
犬語セミナーに学ぶ犬の世界:犬語の深読みを学ぼう
怖がりさんだったリロと飼い主さんの成長の足跡:犬の行動を理解することは飼い主の役割
グッドボーイハートのクラスを受講してくださっている生徒さんたちの感想をご紹介しています。
今回はチワワの2才になるリロくんの飼い主さんからクラス参加についてのお言葉をいただきました。
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・グッドボーイハートクラスを受講するきっかけについて
リロは1才までペットショップにいました。そのためなのか、私以外の人にはなかなかなつかず、すぐに逃げたり隠れたりしていました。特に、主人に対して強く怯えるようになってしまいました。
主人になついてほしくて、いろいろと試してみたのですが、さらに怯えがひどくなってきているように思えました。主人も自分になつかないためか、リロのことをまったくかわいいと思えないと言い出してしまい、どうしていいのか分からなくなって、グッドボーイハートに相談しました。
主人や他人になつかないというこの他に、散歩をこわがって全く動こうともしないし、自分もどう接していいのかわからなかったのです。他にも不思議に思える行動がたくさんありました。
最初に家庭訪問のカウンセリングクラスを受講したときに、自分が思っていたことがずい分違っていることに気づきました。もっとリロのことを知りたいし、リロと主人が仲良くなって欲しかったので家庭訪問トレーニングのレッスンをはじめました。
・家庭訪問レッスンを通して得た学びと気づき
レッスンを受けるたびに、犬の一つ一つの行動にはそれぞれに意味があることを知りました。そのリロの行動の一つ一つを少しでも理解してあげることも、飼い主の大切な役目なのだということに気づきました。
リロがやっていることを見てわからないことがあるたびにレッスンの時に先生に質問しました。そのたびに、犬の行動にはこんなにいろんな意味があるのだということを知りました。それで、ますますリロをよく観察するようになりました。
観察していると、リロのやっていることにはいろんなメッセージがあることに気づきました。今までは笑って過ごしていたようなことも、リロのメッセージとして受け取ることができるようになりつつあります。
・レッスンを通して変化したリロのこと
レッスンを重ねるうちに、リロにもいろんな変化が起こりました。まず家の中でのトイレの失敗がなくなったことです。最初はペットシーツでさせていましたが、ときどき違う場所でしてしまうこともありました。トイレはすぐに室内ではしなくなり、庭に出てするようになりました。庭でのトイレも最初はリロを誘ってしていたのですが、今はひとりでトイレに行って戻ってくることができます。
庭でのトイレをさせるためにペットドアをつけました。リロがひとりでは庭には行かなかったのですが、次第にひとりでも行けるようになってきました。ペットドアも最初は通ることができず、リロがペットドアを通れるようにいろんな工夫をしてやっとできるようになりました。
庭におりるためには階段があります。階段はリロが来る前に作っていたので段差が高くてリロはなかなか下りることも上ることもできませんでした。でも、これも克服できました。こうしてひとつずつリロがいろんなことができるようになってきています。
朝起きたときに走り回るような行動をしていました。留守番の後にも同じようにしていました。その走り回り行動は最初は喜んでいると思っていたのですが、それはストレス行動であることを教えてもらいました。レッスンを続けていくと、朝部屋の中を走り回る行動もいつの間にかしなくなっていたのです。
家の中でいろいろと教える練習もしました。最初はオスワリを教えて、フセやマテもできるようになりました。ベッドに行く事も覚えました。お手も最近できるようになりハイタッチも教えました。とても元気にしてくれます。
散歩に行けるようになったのことも喜びのひとつです。最初は怖がって歩かなかったりリードをひっぱっりしていましたが、今ではとても上手に歩けています。特に散歩は主人と行くのが好きで、散歩や外出のときには、自分よりも主人にべったりになっています。
室内ではいつもクレートに入って出てくることがなかったのですが、少しずつクレートから室内に出ていられるようになりました。そしてついに、リビングで横になってリラックスして寝ているのを見てビックリしました。それも、グッドボーイハートのトレッキングクラスで、そのときお泊りにきていたボーダーのワンちゃんといっしょに山歩きさせてもらってからのことです。こうした変化がいきなり出るので驚く同時にとてもうれしく思います。
・これからもリロと良い関係作りを
家の中ではリロはまだ多少、主人に警戒しているようですが、家の外へ一歩出ると、主人が大好きになってくれたことがとてもうれしいことです。散歩もとても上手いなって、リードをたるませていても、ロングリードを使っているときでも、ちゃんと主人の右横にいてペースをあわせるようにして歩いてきてくれます。いっしょに山歩きにもいけるし、野原で元気に遊ぶこともできるようになりました。宮武先生のレッスンを受講するたびに、リロが良い子になっていくことを感じています。
リロが家の中でも主人と良い関係を気づいて、今少し怖がっていることを克服できるようにしていきたいと思っています。そのために、リロが上手に自分でテリトリーを作れるようになってほしいですし、リロも私達もいっしょに落ち着いて過ごせる空間作りをしていきたいと思います。
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この時代に人と暮らしている純血種犬の多くの犬たちは、人為的な繁殖や販売といった過程を子犬のころに経験しています。これもすべて人が犬に与えている影響のひとつですが、この経験の中には犬の発達や、性質形成に強い影響を及ぼすこともあります。
リロちゃんは1才までペットショップで過ごしていたようです。その経験はリロちゃんの人に対する社会性の発達について一定の影響を及ぼしています。これは特別なことのように思われるかもしれませんが、実は自分の犬たちも多少なりともそうした人の及ぼす影響を受けてきています。犬を飼うということは、こうしたことも含めて理解して飼うということです。
犬を迎えたあと、思ったようになつかないとか、思っていたように言うことを聞かないというフラストレーションをかかえることがあるかもしれません。でも、ピンチはチャンスなのです。これらの犬の抱えている問題を、どうとらえていくのかという飼い主力が人と犬の関係を変えていきます。
リロちゃんの飼い主さんは、最初は困ったと感じた問題を、リロと自分たちのためになんとか解決していこうと取り組みを始めました。実際に取り組んでみると、今まで思っていたことがずい分を違っていたことに気づきます。気づいて接し方を変えたり、リロちゃんの生活に必要なものを整えていくと、次第にリロちゃんに変化起きてくるのを観ることができます。
その犬の変化は、ある日突然できるようになるというものもあるし、ゆっくり改善するというものもあります。どちらにしても、毎日犬をきちんと観ることが習慣づくと、なかなか変わらないといって不満を漏らすことがなくなるのは不思議なことです。犬のしつけや犬育ての際に、犬がなかなか思ったように変わらないと思われるなら、すでに犬を変えようとしていることに無理がありますよとお伝えします。
なぜなら、変わるべきは飼い主であって犬ではないからです。
その変化の中で、リロちゃんの飼い主さんは、犬をちゃんと観て理解することは自分の飼い主としての役割なのだと気づき、そして自分を変化させてこられました。犬のすばらしいところは、この飼い主の変化を敏感に感じ取り、そこに安心と安定を見出すことです。
先日もクラスの中で、リロちゃんの以外な一面を見ることができました。まだまだ隠された部分もたくさんあり、表現できていないこともたくさんあるのでしょう。これからも一歩ずつ、リロちゃんが自分を表現できるように成長していくことが楽しみですね。
本日ラジオ出演します。:月下虫音で大田こぞうさんと
本日のラジオの生出演して犬のことを話します。
今晩10時から、ラブFMの「月下虫音」という番組です。
月下虫音(げっかちゅうね)の大田こぞうさんは、グッドボーイハートで学んで下さった生徒さんです。過去形になっていますが、今でもときどきセミナーなどを受講して、まだまだ犬のことを学ばれています。
虫の世界について特別に知識や情報を持っている大田こぞうさんですが、実は虫よりも犬が好きらしいのです。好きというレベルを超えているみたいですね。
過去にも月下虫音になんども出演させていただきました。
特に昨年一年間は毎月のように出かけていたような気がします。
その過去の放送は残念ながらこちらではご紹介できないのですが、大田さんがグッドボーイハートに来たときにおしゃべりしたものを録音したものがあります。
以前ブログでご紹介しました。まだ聴かれたことのない方はこちらからどうぞ。
犬のこと話そう<大田こぞうさん編>第1回:録音ファイル付
グッドボーイハートの録音部屋、通称「犬小屋」で録音したものですが、大田さんのラジオとは違う素顔を少しだけ感じることもできます。
ラジオだとなかなかいえないこともあります。
たとえばその一遍だけを伝えてしまうと、誤解されることもあるのです。
その誤解から避難を受けることもあり、それがだれかの責任になってしまうこともあります。
グッドボーイハートのブログでの紹介であれば、ブログを通して追記で説明もできますし、ここはグッドボーイハートの責任の場所でもあります。そんなことで録音をお試しでやってみたのです。
さて、明日のラジオ方法の内容についてです。
実は、大田さんとメールで2回くらいの簡単な打ち合わせしかしていません。
というのも、いつも打ち合わせのときにすごくいい話になってしまい、本番のときにはなかなかその話が出てこないのです。
ラジオ放送という枠を意識しすぎて言葉が詰まってしまうというのは本当のことです。
深い話ができないといいますか。
今回は、大田さんから「ゴハンの話とかどうですか?」と提案されました。
これに対して、どんなゴハンがいいとかいう情報に偏った話にしようと返しました。
つまり、情報を伝えるのではなく、犬に必要なものとは何かを考える機会を持とうという提案です。
それで、今回は「犬に必要なものとは何か」という漠然としたテーマで始まります。
むしろ音楽も楽しんでください。
毎回、わたしが好きそうな音楽や、犬たちに関連するものなど、大田さんの選曲を楽しめるのが月下虫音の大きなたのしみなのです。
そして、みなさんも番組に参加してください。
番組宛のメールはすぐにその場で回ってきます。
それで、ブログをご覧いただいている方からの、番組中に番組へのメールをお待ちしています。
メールアドレス→ 761@lovefm.co.jp
楽しみにしています。
ペンネームで大丈夫です。
質問でも感想でも、気軽に送ってください。
<犬のしつけ方・動画>ベッドトレーニング:犬用ベッドは犬の室内生活に必須です
犬のしつけやトレーニングをいつ頃から始めたらいいのかという質問に対する答えは、犬がどんな年齢であろうと「今」です。犬と暮らしていなくても、学ぶべきは「今」なのです。
学ぶにはなによりも時間が必要です。今学んだことを理解できるようになるのにまず時間を必要とし、そしてそれを実際に身につけるようになるためにさらに多くの時間がかかります。さらに、それを人に伝えようと思ったら、その数倍の時間がかかります。
テレビの洗脳なのか、世間の思い込みなのかわかりませんが、犬のしつけとトレーニングは生後6ヶ月を過ぎないと始められないと思っている方もいるようですが、とんでもありません。むしろ犬ができるだけ小さな年齢のときから、犬のトレーニングを開始してください。
ここでいう犬のトレーニングとは、飼い主が犬のことを理解するための勉強のことであって、犬を訓練学校に預けるという意味ではありません。長期間の預かりトレーニングは一般の犬にはおすすめできません。
子犬期にどんなトレーニングをすると思いますか。犬の日常生活に必要なしつけの多くは生後1才くらいまでに、ステップアップを重ねて教えていくことができます。
今日はグッドボーイハートのパピートレーニングのカリキュラムのひとつでもあり、成犬のトレーニングにも必須項目のルールをひとつご紹介します。
「居場所を指定するトレーニングのベッド編」です。
● 居場所を指定する「ベッドへ」の意味と様子
室内飼育の犬の場合には、犬だけのスペースを確保して生活環境の安定と安心を獲得させることは必須の犬を飼うための環境整備です。犬だけのスペースというのは、犬の立場からいうとそのスペースを他の誰かに侵されることのない安全地帯のことをいいます。また、個体のスペースを主張できるスペースでもあります。
この物理的なパーソナルスペースは、人間も日常的に利用しています。自宅にあるダイニングの椅子、リビングのソファ、座敷の座布団、そしてベッドや布団といったものです。これらは、屋外の外敵から身を守るための場所というよりも、室内の限られた空間(テリトリー)を、家族(群れ)内の集団で上手に利用し、そのことで関係性を安定させるために役立ちます。
では実際にどのような行動をするのかを動画で確認してみましょう。以下の動画は家庭訪問レッスンのときに撮影させていただきました。飼い主さんの「ベッド」という指示で自分たちのベッドに犬が移動するシーンです。
動画 「ベッド」の合図で自分の居場所に移動する子犬たち
飼い主さんの「ベッド」という声の合図と手の指示で、それぞれの指定された犬用のベッドに犬がいきます。「ベッド」合図はしばらくそこで待機をするようにという時に使用しますので、ベッドの合図があったらフセの姿勢になれるように誘導していくと、ベッドでの行動がさらに安定してきます。
動画に協力してもらったラブラドル・レトリバーの2頭の犬たちは、胴胎犬(兄弟犬)で、生後5ヶ月になります。トレーニングの際にオヤツは使用していません。報酬はもっと別のところに設定されています。
● 犬に「ベッドへ行って」のトレーニングがどのように役立つのか
室内で犬の居場所を指定するトレーニングは生活の中で大変役立ちます。犬がどのスペースにいていいのかがわからないときに、ここに居なさいといわれることは、犬たちにとて居場所を獲得したという価値のある合図です。価値の高さは「居場所」という特別なスペースの存在が影響しています。
人を例にして考えてみましょう。たとえば、家族の関係性によって、室内の家族が過ごす場所では細かく場所が指定されていることがあります。特にダイニングの椅子はそうです。
食事をするときに利用するダイニングの椅子には、指定席というのがあります。みなさんのご家庭にもないでしょうか。自分はそこに座る権利があるというものです。食事をしようと思ったときに、兄弟間で席の取り合いになるのは、弟の席に兄が座ってしまうときです。お父さんはここ、お母さんはここという風にですね。いつもの自分の居場所に他の人が座っていると違和感を覚えるでしょう。時にはお父さんの椅子は格別立派ということもあります。昔は父親は上座に座るのが基本でした。居場所は家族間の序列を明確にするものでもあったのです。
犬に話を戻します。犬はもともと屋外にテリトリーをもつ動物です。イヌ科動物が巣穴の近くで過ごすときには、かれらにはダイニングテーブルも椅子もありません。しかし、ある程度の配置がされています。あるのは巣穴とテリトリーの境界線だけです。巣穴には子犬たちが、巣穴の前には巣穴を守る犬たちが、そして境界線を外敵から守る犬は境界線を確認しながら配置されます。群れの中心的な存在のものは、少し高いところや全体を見渡せる中心地点にいます。
そして一部の犬は、人といっしょに室内で暮らすようになりました。飼い主という人が管理する生活スペースです。寝る場所や隠れる場所としてクレート(もしくはケイジ)を与えられています。リビングで人とスペースを共有するときには、飼い主の居場所である椅子には上がらないように教えられるでしょう。
最後に、リビングでくつろげる犬の居場所として犬用のベッドが必要なのです。犬用のベッドを室内に置いてある家庭はあります。犬は自分の好きなときにベッドの上で寝たり遊んだり、休憩したりしています。
しかし、飼い主の指示で犬用のベッドに行ける犬はあまり多くありません。その理由の多くは、教える必要性の高さがわからないということ、日常的な犬との暮らしでのその合図の使い方が分からないとか、また、教え方がわからないというものでしょう。
この合図の必要性の理由についてはたくさんあります。簡単に説明すれば、人と共有するスペースに自分の居場所を獲得すること、そしてその居場所は誰にも侵害されないものであるということ、そのことは、犬が自らの安全を確認できるということと、さらに群れの中での精神的な居場所の獲得にもつながっていきます。
ひとつの状況を例にあげます。来客が来たときに来客に興奮したり警戒するシグナルを見落とされることがよくあります。吠えたりとびつくという犬の行動はわかりやすいですが、そうでないものもあるのです。
来客時に落ち着かないシグナルとしては、部屋をウロウロとする、自分の体をなめたりかじったりする、おもちゃをもってウロウロする、床をなめる、来客に体をくっつけてくる、飼い主のうしろをついて歩くといったものも入ります。
自分のテリトリーに、家族以外の動物が入ってきたのですから、落ち着かなくなるのは当然のことです。飼い主にとって日常であることが、犬にとっても同じようになることはなかなかありません。イヌ科の動物の生活では、他の社会的な対象となる動物が自分の生活圏に入ってくるのはとてもまれなことなのです。
このときに犬にベッドにいくことを指示します。最初はクレートで練習をしますが、クレートとベッドは違いがあります。ベッドのテリトリーはもっとゆるいものです。クレートの中には人が手をいれられませんが、ベッドにいるときには簡単に犬に触ることができます。そのゆるい境界線の中に犬は居場所を獲得し、来客を多少の警戒心をもって観察していたり、環境全体の安定性についての情報を取得していきます。
子犬のころはこうした観察や環境把握に時間がかかりますが、生後3ケ月もなると犬は自分の周囲の環境に対して強い関心を持つようになっています。少しずつ環境を把握させる練習もさせていく必要があるのです。もちろんそれは、たくさんの場所につれまわして、たくさんの人や犬に会わせることではありません。
犬用ベッドに犬を行かせることは、犬を社会的に排除することではありません。むしろ犬用ベッドに行く練習をすることで、犬は安心を獲得し、自分の役割を理解し始めます。このベッドトレーニングは犬がインターホンに反応する前にできるようになることをおすすめします。
少ない犬との時間でたくさん教えることがあるでしょうから、優先順位は決めていかなければいけませんが、少なくとも、犬にお手などを教えるよりはずっと重要なトレーニングです。
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おすすめの本:「岐路に立つ自然と人類」今西錦司著、生物の見方が変わり世界が広がる本
今日お薦めする本は、日本に生き物たちと暮らすすべての日本人に読んでいただきたい今西錦司先生の本です。
書籍名 岐路に立つ自然と人類
著者 今西錦司
発行 アーツアンドクラフツ
● 今西錦司先生という生態学者
生態学という学問はもちろん専門分野なので、ノーベル賞でもとらない限り世間から注目されることはありません。ノーベル賞は科学的な裏づけがあって評価されるものです。今西先生の研究は細かくみるのではなく、生物全体を抽象化しておおきく全体からとらえるという視点から立っていると感じています。そのため、抽象論だとして見逃してしまうこともあるかもしれません。しかしその見方や考え方にはひとつの哲学があり、ほんとうに惹かれてしまうのです。
今西先生の専門分野や生態学、文化人類学ということらしいですが、生態学から文化人類学へ以降した経過についても、この本の中に述べられています。また人のことを知りたいと思って入った文化人類学という学問さえ、西洋の細分化やその偏った見方に対して常に警笛を鳴らしていらしたようです。
「私は人類学をやろうと思って、生物学をやったのではない。生物学をやっているうちに、人間のしていることも、現象的にはどうであろうと、また人間がこれに対して、どのように好き勝手な理屈をつけようと、その根底には、生物の生活を支配している法則が、やはり人間だの生活も支配しているのではなかろうか。つまり、人間だけが、他の生物から切り離された特異なものでなくて、生物といい、人間といっても、それらはともに、同じ地球のうえで、同じような運命にしたがわなくてはならないのではなかろうか、というように思われだしたのである。」(本文より抜粋)
というように表現されているのですがこれはあくまで抜粋です。このあとに続くまた最もだ思われる今西先生の持論にワクワクすると同時に、この時代にこのようなことを述べられた先生の言葉に対して、大勢は耳をかさなかったのだろうかという不思議な気持ちにもなりますが無理もありません。当時は、といいますか今でも、学問については西洋に習えの姿勢が強いのです。実験室の中で起きていることがすべてで正解で、実験室の中で起きていることは再現性が高く科学的に評価されてしまうからです。そして、研究の目的が自分が本来知りたいことではなく、他者や多くの人たちに評価されることに変化してしまえば、みな実験室に帰っていくということでしょう。
● 「岐路に立つ自然と人類」カバーコメント
この「岐路に立つ自然と人類」は今西錦司先生の著作やコメントやらを集めて一冊の本としてまとめられています。発行が2014年で先生が他界されてから、22年もたったあとに出版されました。そのカバーコメントにはこのようにあります。
「実験室のなかの生物(生命)ではなく、自然に生きる生物を、生物全体社会として環境もふくめ思考した今西錦司ー。
21世紀の科学の閉塞的な状況を予想した今西錦司は、登山家として自然に関わるなかから、細分化・専門家する生物学に対して、自然に生きる生物自体を対象とする「自然学」を唱えた。本書では、その「今西自然学」の主要論考とエッセイを収載する。」
今西錦司先生のいろいろな考え方の側面に浅く触れ、自然や生物といったものに対する見方に幅を持たせるための導入書としては、とにかく多くの方に読んでいただきたいという内容です。
たとえば、ダーウィンという名前は多くの方がご存知です。生態学を学んだことのない方でも、生物に興味がなくても耳にしたことがあるでしょう。そのダーウィンが唱えた生物の進化論についてあらたな見方を提唱されています。また、ダーウィンの進化論が持てはやされたあと、実験室の中の科学で行われた進化を研究する遺伝子的な学問の中で、遺伝子が突然変異して進化するという見方についても厳しく論じられます。
「だからダーウィンのように、進化は現在も進行中であるという見方に、そのあまま賛成しがたいばかりか、遺伝学者のように、実験室内で突然変異がおきるからといって、それをそのまま自然でもおきているかのように要請するのは、事の順序を誤るものとしなければならない。とくに、その突然変異がでたらめなものである、というにいたっては、もはや自然を侮辱し、これを冒涜するものであるといっても、過言ではない。われわれの自然は、好きこのんでそんな無駄な気まぐれをしない自然である。自然には、自然によってたつ経済があり、種社会にはまた種社会で、それを維持していくための、経済というものがあるかである。」
と最のことを、整然と述べられていて感嘆してしまうわけです。
● 登山家の今西錦司先生
本の中には、今西先生は一時自然に対置されるものとして人工を選んだけれども、西欧流の考え方では、自然に対置されるものは人間であるといわれています。全くそのとおりだと思います。そしてその上で、先生は「しかし、私は、人間もまた自然である、と思うようになった。」と続けられています。
今西先生は学者としてすばらしいだけでなく、生涯を通して山を愛した登山家でした。山に対する言葉や山で感じたことなどの言葉も紹介されていることで、今西錦司先生という方が自然とどのように過ごしてこられたのかを知り、感動を覚えます。先生は、自分は長く自然の中ですごしすぎたかもしれないがともの述べられていました。自然に過ごす時間がながければ、思ったり知りえたことがあってもそれを著作として残す時間はなくなるのです。しかしそうした自分と自然の時間を削ったところで、机の上で何が学べるというのでしょう。
蒙古の遊牧民族の家畜化と西洋の家畜化の違いや、人が人として育つことの環境についてなど、犬との暮らしに絶対に役立つ見方や考え方が満載です。これは一度に読める本ではありませんが、手元においていつも見返して今西先生を感じられる本の一冊です。
愛犬をしつける本や、ほめて育てる犬のしつけなどという本をもう捨ててください。そして、犬や動物、そして人間を自然のひとつとしてみる、今西錦司先生のような本に触れていただければ、きっと今日からのあなたと犬の関係は確実に変化していきます。
・グッドボーイハートのお薦めの本はこちらからもご覧いただけます。
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人に吠えたことがない犬に吠えられるのは何故なのか:犬が見ている世界とは
たまにというよりも、犬と会ったときに度々起きる不思議なことがあります。
レッスンで訪問したり、偶然通りかかったドッグランの中にいる犬や、ときには散歩中に近付いてきた犬が、普段人に対してしているのとは違う行動をすることがあるらしいのです。
● 人には吠えたことがないんですといわれたこと
たとえば、こんなことがありました。あるご家庭へ訪問レッスンに伺った初日のことです。わたしはまだ飼い主さんとも顔をあわせていません。インターホンを鳴らすと中からワンワンと犬の声がします。
その声は、ワンワンというよりはガウガウという風に、戸口の向こうなのでこもった声ではありますが、多少の緊張感もあわせて伝わってきます。中から飼い主さんが「どうぞー開けてください。」といわれるので、戸口を5センチくらい開けてみます。5センチしか開けられないのはその後の犬の行動を多少なりとも予測しているからです。
ドアを少し開けたとたん、玄関の框から玄関の戸口の前まで中にいる大きな犬がガウガウいいながら突撃する姿をみました。それで戸口を5センチから3センチ程度にせばめます。
「すみません!犬にリードをつけていただけますか?」と大きな声でお願いします。戸口の向こうで飼い主さんが犬にリードをつけたのを確認します。飼い主さんがそのまま犬に引きづられないことを見ながらようやくドアをはっきりと開けると、犬はますますガウガウと今にもとびかからんばかりです。
そこで飼い主さんがひと言「今まで人に吠えたことはないんです。」といわれました。
同じようなことはなんどもありました。ドッグランの横を歩いていたら、中からウォンウォンと太い声で大型犬が私の方を向いて吠えています。周囲には犬も人もいませんから、わたしに対して吠えているのだとは思います。
飼い主さんは犬を抱きかかえるようにしてなぜかわたしをにらんでいます。そして「人に吠えることなんてないのに」とひと言。もちろんその犬とは初対面で、犬との距離は10メートル以上は離れている上に、間には高い柵もあります。
● 他のパターンの「他の人と違う」といわれた犬のこと
他にも普通の人とは反応が違うといわれたことがあります。歩道を歩いていると散歩中の犬がわたしのそばをとおりかかるときに衣類の臭いをとるような形で立ち止まってしまい、そのあとわたしの後を追うように数歩ついてきます。
このときなぜか飼い主さんもついてきてしまう上に、このような状態で自分の背後を見せるとトラブルが起きることもあるので、一旦止まって相手の犬が下がるのを待つようにしています。
犬は入念に臭いをとったあと、少し顔をそらして立ち止まりじっとしています。それをみながら飼い主さんは「他の人とは違いますね。犬を飼っているのですか?」とたいてい尋ねられます。
犬と暮らしてはいないのだけど仕事で犬に接することがありますのでとお答えすると、飼い主さんの方は納得します。せっかくだから「他の人に対するのとどう違うのですか?」と質問させていただきます。「他の人にはとびついたり、体を寄せたりするんです。」とのことでした。なるほどですね。
こんなことの積み重ねで、当然家庭訪問レッスンでも飼い主さんや他の人とは違う行動を犬たちが見せてくれます。犬のトレーニングクラスの訪問レッスンでは、インストラクターであるわたしが直接的に犬を訓練することはありません。少しだけやりかたの説明などをするときに犬に接するというだけのことです。
しかし、ほとんどの犬は他の人とは違う反応や行動をするようになります。大人しくなったり、飼い主さんいわくいつもと違うおりこうさん、今日はできるモード、従順にしているなどといった行動になる犬たちがいます。
しかし逆もあるのです。前述した「人には吠えたことがないのに吠える犬」と同じように、他人に対する反応がいつもより過剰になることがあります。
こういう激しい行動が出たときには「わたしの後ろに100頭の犬がいるような感じですから」とか「他の犬に対する反応を同じ反応をされますから」という冗談ともつかないような説明で一旦は納得してもらいます。
この不思議な犬の行動に注目されすぎると今日やりたいレッスンが不十分になるからですが、本当はこの犬の反応は犬の社会性を表現する大切な行動です。他のトレーニングを進めるうちに、この不思議現象も次第に理解できるようになります。
● 犬が感じているのは何なのか?
タイトルには犬が見ているとしましたが、正確には犬が感じている世界は何なのかということです。もう少し科学的にいうと、犬が感知している環境は何なのかということです。その感知した環境の因子のひとつがわたしという“人間”です。
もちろん、犬たちはわたしのことを人として間違いなく感知しています。まさかゴジラだと思っているわけでもないし、未知の生物と感知したわではありません。そして、一番疑いをかけられる「犬と間違えているのではないか」というわけでもありません。
犬は臭いの動物です。確かにわたしは日常的にいろんな犬の臭いを衣類につけています。毎日洗濯はしていても、わずかに残った犬の臭いがついていることは間違いありません。犬が衣類の臭いをかいでいるときは、わたしに関心があるのではなく、今つけてきた犬の臭いに関心があるのだなということはわかります。だからといって、わたしを犬と勘違いしているということはありません。
遠くで吠えられることもあります。逆毛を立てられることもあります。臭いがとどかないような状況でも、瞬時に吠えられることもあることです。犬に関心はありますが、凝視して相手を挑発するような行為をしたわけではありません。戸口の向こうにいてまだ会ってもいない相手に吠える犬は、一体なにを感知しているのでしょうか。
こういうときに「オーラが見えてるんですよね!」といわれることがあります。気のようなものですね。戸口の向こうにいる相手に対してただならぬ気を感じて吠えているというのでしょうか。いやそこまで強い気を発するほどの人間でもありません。いたって普通の人間なのです。
犬の先生が来ると飼い主さんが意識していたため、その飼い主さんの意識が犬に働きかけたのかもしれません。ただ、そうともいいきれません。同じ仕事なのにスタッフの訪問ではこうした行動が見られなかったからです。
● 犬の隠れた社会性を観ること
こうしていろいろな状況を冷静に考えてみても、今まで人に吠えたこともないという犬が、まだ会ってもいない状況下で吠えるのでしたら、それはかなり高い犬の環境を感知する能力であると思います。オカルト的な意味ではなく、どのように感知しているのかは不明だとしても何かを感知したのでしょう。
対面したときに明らかに犬の反応が他の人と違うことについては、ある程度説明ができます。なぜなら、自分が見ている犬というのは、見るではなく観るです。しかも、外側のかわいい容姿や形を観ているのではありません。知りたいのはその犬の性質について、特に社会性についての情報です。
もしかしたら、犬はわたしが何を観ているのかを感知しているのかもしれません。そして慌てふためいて吠える犬は、何かを見透かされてるのを恐れているのかもしれません。自分にとって一番怖い相手は、自分のことを見透かしてしまう人です。犬という動物は、人に対して表面的にはお利口さんに言う事をきいているように見えても、実際には本来の社会的な服従関係にはないこともあります。それは観ればわかることです。
ということで、もしカウンセリングに伺ったときに犬が他の人とは違う反応をしたとしても、決して驚かないでください。あなたの犬は環境がいつもと異なることを感知する能力を持っていて、それをあなたとの関係の中にも使ってきたということです。それは安定した関係を築く能力でもありますが、バランスを崩せば不安定な依存関係に発展していることもあります。
こうしたなんでもないけどいつもと違う行動には、犬を知る上での重要なメッセージが隠されています。そのメッセージ受け取っていますか?
タッチヒーリングクラス(人用)リンパマッサージのオプションができました。
ドッグヒーリングクラスは飼い主さんもいっしょにタッチヒーリングを受けていただけるペアクラスがあります。
犬は飼い主の鏡なのですから、癒しを必要としている犬の飼い主さんにも癒しの時間を持っていただきたいからです。
その飼い主さんのタッチヒーリングクラスのオプショナルコースに「リンパマッサージ」が加わります。追加料金は700円(税込)です。
実はリンパマッサージは数年前にアロマ整体クラスを運営されている先生の下で指導を受けて学びました。その後自分のケアで練習し、セルフケアのひとつとして少しずつクラスの中で生徒さんにご紹介してきました。七山校で調子の悪い方には短時間ですが無料でさせていただいたこともあります。
飼い主さんのセルフケアというのはとても大切です。飼い主さんのストレス状態は犬に直接的に影響をするからです。犬は飼い主さんの状態にはとても敏感です。人は時代とともに発達して豊かな生活を実現してきたはずなのに、なぜかストレス過多の社会になってしまいました。ストレスを緩和させるためにペットを飼う人も多いのです。しかし飼い主のストレスはペットにとってはとても強いストレスになります。
癒し=リラクゼーションではありませんが、リラクゼーションがストレスケアをすすめてくれるのは確かです。リンパマッサージは皮膚に直接的にアプローチし、リンパの流れが改善されるのを助けてくれます。もちろん医療行為としては行いません。健康ケアとして、気持ちよいと感じていただければ、セルフケアとして覚えて帰ってください。リンパマッサージならご自宅でも気軽に自分でやっていただけます。
今までヒーリングクラスで無料のオプションで提供していたものですが、「サービスとして加えてほしい」というご要望があったので、ヒーリング料金+700円でご提供することにしました。
リンパマッサージは、デコルテ、フェイス、膝から下のあし、脇からしたの腕のみです。タオルなどが必要なので来校の方のみとさせていただきます。また、お顔の化粧などとれますので、フェイスをされる方は化粧品もお持ちください。
使用しているオイルはニールズヤードレメディーズのグレープシードオイルをベースオイルとして、飼い主さんのお好きなアロマオイルを使っています。アロマの種類もそれほどたくさんはありませんが、ニールズヤードのオイルなので香りは絶品です。700円はオイル代として頂戴します。
専門家の方のようにはいきませんが、七山に流れる自然のリズムがマッサージの緩やかさを支えてくれます。みなさん、よく寝てくださいます。お気軽にご利用ください。
お盆の犬のお預かりクラス:犬たちの夏のお昼寝は体調管理のために
お盆に入り七山校周辺はますます涼しくなってきました。福岡佐賀方面では雨も降りました。一雨ごとに涼しくなれば、犬たちが活発になるあの秋がやってきますので、雨もまんざら悪くはありません。
このお盆の間に帰省する飼い主さんたちから離れて、七山の季節を楽しみにやってきた犬たちが数頭います。その犬たちの姿を見ながら、あることを考えました。
● お昼寝してますか?
まだ秋が深まるまでの間、どんな犬にも、そして多分人にも大切な時間といえば、お昼寝です。日中休みなく働いていらっしゃる方々には申し訳ないのですが、みなさんはお昼寝されるでしょうか?
お盆のある日、数頭の犬たちがお預かりでいっしょになることがありました。2頭は数年来のおつきあいで気のおける仲間、そのうちの1頭と子犬の方もなんどか顔を合わせて距離を保てる関係ということで、テラスや室内に犬たちをセパレートして過ごしましたがとても静かに過ごしていました。
交代で散歩や相手をしたり、草刈をいっしょに過ごしたり、それぞれにお昼のオヤツを食べたりしてまったりと過ごしていたのですが、昼過ぎの13時くらいになるとなんとなくわたしを含める全員が活動停止モードに入りました。
それぞれの場所でそれぞれに始めたお昼寝です。昼寝のポーズも時間を経て少しずつ変わってきます。立ち上がって部屋の中を歩いても犬たちの方は起きませんが、少し気配が大きくなると起きてしまうので睡眠の深さはそれほど深くないようです。犬たちのうちの一頭はおちびさんだったので、寝言を言っていました。
● 犬の昼寝の機能とはなんだろう
犬という動物をいろいろと観察していると、もしくは日々観察する飼い主さんに話しを聴いてみると、犬とひなたぼっこが切り離せないように、犬と昼寝という関係もかなり深いつながりがあるようです。確かに動物の活動時間は、陽が上っている間、陽が沈んでいく間の朝夕です。夏場は太陽が高いところにある時間が長いため、その時間は活動を停止しています。
動物は自分の内側の作用、つまり欲求に対して純粋に反応しています。人に飼われる犬ですから、飼われていることがストレスになるのですからストレスによる欲求の変化や行動の変化というのはある程度あります。その犬にかかるストレスを少し横に置いて考えると、犬の活動性は太陽や気圧によって左右される犬の中にある自律神経による調整によって行われているように感じるのです。
たとえば、太陽が出ているときは自律神経の交感神経が活発になります。交感神経は活動の神経なので、太陽がのぼっていれば活動が高くなるように思えます。しかし実際には熱帯低気圧が迫ってくるこの季節は気圧が下がるため副交感神経が活発となります。副交感神経は休息の神経なので活動が低下します。そのため、犬たちも低気圧の多い夏の季節、特に気圧の下がる日中には昼寝が多くなるという仕組みのようです。
● 睡眠の質を高めるためによいお昼寝をしよう
人は行動を情報操作によって左右され考えて決めてしまうことがほとんどです。たとえば、テレビでこれが老化防止に効果があると紹介された食品がその日のうちにはスーパーに山積みされています。つまり売れるからです。
睡眠についても同じような傾向があります。昼寝は短い方がいいとか長い方がいいとかいろいろと情報がたくさんありますね。情報によって正否を決めてからでないと行動できなくなってしまった人と違って、犬の方は自然体です(ストレスの低い犬のことです)。
自然体の犬は昼寝の時間を決めていません。好きなときに寝て好きなときに起きています。言葉を変えると体の要求に応じて寝ますし、体の要求に応じて起きています。ただ、犬が自然に寝たり起きたりしたいと思っても、周囲の環境が不安定だと動物は寝ることはできません。
犬の周りでは常に人間が活動しているわけですし、その人間が環境の安全の確保した状態で、部屋に閉じ込められているとかつながれているとか柵の中に入れられているのです。環境を飼い主などの管理人に委託しているといえばいいでしょうか。
ところが人はなかなか日中にゆっくりとすることがありません。行動は止まっていても脳内は常に活動しているのが人という動物です。妄想も含めて人の脳はなかなか止まることができません。一番できることは、自分も昼寝をしてしまうことですが、今度は人が昼寝をすると犬よりも熟睡しすぎてしまうため管理人として不十分となり、犬の方が起きてしまうことがありますね。人もいっしょにお昼寝はおすすめしますが、犬の気配ですぐに起き上がる程度のちょっと横になって浅く眠ったり起きたりするという術を身につけるといいでしょう。
実はわたしは大変長い間このタヌキ寝入り状態で過ごしてきました。犬を管理する施設で働いていたので夜でもいつも犬の気配で犬舎を確認しに行ったからです。若いからできたことですがとても疲れる仕事でした。当時は人手がなく毎日のことでした。しかしこの術は今とても役に立っています。犬たちの昼寝のときにタヌキ寝入りでうまく休息をとることができます。夜も短期間ですからこの状態で寝ています。ちょっとした犬の気配でも起き上がることができます。
夏の昼寝は犬の疲れを回復させてくれます。お留守番中には犬は十分に休めていません。たいていの犬は緊張して過ごしています。前脚や後脚をずっとなめている犬もいます。体をかき続けている犬もいます。雨の日や太陽の高い日にお出かけの予定がないなら、お昼は犬のお昼寝につきあってあげてください。今年も犬の夏が終わっていきます。あと少し体をゆっくりと休めて、活動期を迎えましょう。
ラジオ出演します:久しぶりに月下虫音で大田こぞうさんと犬のこと話します
昨年からたびたびお誘いを受けていたラブFMのラジオ番組「月下虫音」に出演する事が決まりました。
出演というと大げさですが、大田こぞうさんと犬のことを話しますので、ぜひ聴いてください。
放送予定日 2017年8月24日木曜日 22時~
番組 ラブFM 月下虫音(げっかちゅうね)は22時~23時30分まで
毎週月曜日~木曜日まで放送されています。
パーソナリティは大田こぞうさん。グッドボーイハートで学んだ生徒さんで、今でもたまに勉強に来てくれています。
大田こぞうさんの番組は昨年からグッドボーイハート生にも人気があり、
たくさんの方が聴かれていますね。
紹介は不要とは思いますが、昆虫のことならお任せくださいという昆虫博士でもあり、絵の才能もすごいです。
音楽のことはよくわかりませんが、自然のセンスの強い心地良い音楽がたくさん流れるので、わたしもよく大田さんの番組を聴いたあとにCDを購入することがあります。
さて、今回のテーマは「犬が必要としていること」みたいな内容になりそうです。いつもとおり打ち合わせなしのぶっつけ本番なので、姉妹漫才みたいになりそうですがぜひ楽しんで聴いてください。
どの季節を生きているのか:犬との暮らし時間の差を越えるために
先日あるご家庭で「一番暑い夏は越えましたね。もう秋ですからね。」というと
「少し季節が早いのですか?」と尋ねられました。
お尋ねの理由はわかります。福岡では、また夏まっさかりというほどの暑さなのに、
もう秋ですからねというのは不思議ですね。
理由は、週の半分くらいを七山に戻って過ごしているからです。
実はわたしも七山に来たばかりのとき、山の手入れについて土地の方とお話しているときに
季節の違いを知りました。
自分が夏だと思っていた8月の中旬は、山の人にとっては秋の始まりなのです。
単なる価値観の違いではなく、肌を通して季節の違いを感じます。
8月7日に立秋を過ぎて、七山ではすっかり秋の風を感じられるようになりました。
まだ蝉の声が一日中響いてはいますが、ツクツクボウシの声が聞こえるようになりました。
この声を聴くと秋が近付いているというお知らせを受け取ったような気持ちになります。
棚田の稲穂は頭をしっかりと下げています。
栗や柿の実は枝がたわむほどになり、いくつかは青いまま落ち始めています。
雑草は夏枯れを終わり、まだまだ最後のひと葉を広げようとします。
山の斜面にオオスズメバチが巣を作ってしまい、山歩きのコースの変更を迫られました。
これが最近の一番の山の悩みです。
ハチは10月にかけて巣を大きくしていきますので、ハチの数が増えるのはこれからです。
これも季節の流れです。
この季節の移り変わりは、街中のファッション店の季節の先取りと同じ速さですが、
肌を通して伝わってくる感覚は全然違います。
この季節感を全身で味わえるようになって、やっと私も8月のこの季節に秋が始まったと
思えるようになるのに何年もかかりました。
犬たちが季節を情緒的に受け取っているのかどうかはわかりません。
ただ、犬たちが太陽や風の移り変わりを毎日感じていることは確かです。
過去にも未来にも執着しない犬という動物ですから、冬のことをうらやむこともありません。
早く涼しい秋になればいいなと思うこともありません。
ただ、今日の一日を体で感じることが彼らのできる最大のことであり、そして最も有意義なことです。
こうして外気にあたって季節を感じることが動物の幸せであると思えるようになったことは、
七山という土地で過ごす時間をいただいたことで体が学んだ大切なことです。
考えると自分にとっては約50回(ここは曖昧に)の夏を越したということ。
犬たちは多くて10数回の夏を越すだけです。
犬の寿命を考えると、犬によっては6回、7回、8回の夏だけだとしても不思議ではありません。
しかし、これはやはり回数ではないと思うのです。
どんな夏をどういう風に過ごして越したのか、やっぱり毎日の生きる質を思います。
人と比べるとほんのわずかな回数しかない犬たちのそれぞれの季節が、
自然とともにあり、季節を体感できるものであるための環境作りは決して簡単ではありません。
でも、どんなことも思わないと変わりません。
まず、犬にとって大切なことは何かを思い、考え、そしてそれを実現しようと願い、行動する。
できなくても今日できることをひとつやってみる、そのくり返しです。
犬の生きる時間の短さを思うと、なかなか人の成長は追いつかないのですが、
気づいて変化しようとする飼い主と共にいるだけで、犬は気持ちが楽になるのではないでしょうか。
活発なハチを横目に、秋はやっぱりお山のシーズンです。
体験トレッキングクラスも行っていますのでお気軽にご連絡ください。