先日訪問レッスンに伺うためにマンションのエレベーターの到着を待っていたとき
一瞬地面を見ていてその瞬間「ガウガウガウ」とものすごく大きな音がしたのにびっくりして思わず「わっ」と声を上げてしまいました。
小型犬を抱きかかえた飼い主さんが犬の頭を抑えるようにして「すみません」と足早にエレベーターから出て来られました。
視線を上げていて犬だと気づいたらそんなにびっくりした声をあげなかったと思いますが、何しろ油断していたもので先に声が聞こえて驚いた次第です。
慣れている私でこんなに驚いたのですから、犬に慣れていない人や犬が嫌いな人だったらもっと怖い思いをされるだろうなと、改めてそちら側の立場に立って共感した時でした。
抱きかかえて移動できるのが小型犬の便利さではありますが、その便利さに便乗してしまい、解決していない犬の行動が案外あるではないでしょうか。
たとえば、もしこれが大型犬だとして、エレベーターから出てくるときに人をみて立ち上がりガウガウと声を出すような状態だったら、すぐにマンション内で問題になるはずです。
ところが小型犬の場合はこれくらいの吠えは「怖がっているから」という飼い主側の主張で問題となることがありません。
同じようなことは散歩中にも起こります。
人を見てワンワンと威嚇するように吠える小型犬は、抱きかかえられるようにして「大丈夫よ」という声をかけられながら、怖がりで可哀そうな弱者の小犬として吠えることが許されているように見えることもあります。
犬を見てワンワンと吠える小型犬は、「この犬は犬が好きなんです。」と犬に近づけていき犬を目前として吠えることができない状態にもっていく一方的な他の犬への接近も許されてしまいます。
しかし、やはり大型犬ではこれはまかり通りません。
犬が人を怖がって吠えていても大型犬を怖いのはむしろ人の方ですし、犬が犬を見て興奮して吠えていても、通行人は怪訝な顔しかしません。
危険な犬、吠えたり興奮するのを止めるようにトレーニングをすべきだと誰もが思うはずなのです。
なのに、小型犬は怖がって吠えることも興奮して吠えたり飛びついたりすることも、小犬だから当たり前、仕方がないのだと飼い主も世間も思っているのかもしれません。
そこで、勘違いをしているみなさんにお伝えしたいことがあります。
小犬は子犬ではありません。
小型犬は成長して脳も精神も発達する成犬、つまりはおとなの犬なのです。
対して子犬とは生後6ケ月未満の乳歯の間の時期の犬のことをいいます。
小型犬は小さくなりすぎたため、乳歯が抜けきれずに永久歯といっしょに生えてしまうことがあります。
それでも、小型犬も生後6ケ月を過ぎると少年期、青年期を経て立派なおとなの犬、成犬になります。
小型犬のサイズが、小型犬を子犬と間違ってしまうという問題が社会的に生じています。
人にとって問題というよりも、デメリットのあるのは小型犬自身です。
どんなに小さく生まれた犬にも成長して発達し、精神的に安定した豊かなドッグライフを送る権利があるはずなのに、成長をストップされた小型犬は子犬として生涯を送ることになるのかもしれません。
犬を見た目で判断しないで。
小型犬は子犬ではないこと。
小型犬もプライドが高く優秀で凛々しい犬となる権利を持っていることを、忘れないでいてあげて下さい。
Author Archives: miyatake
「子犬」と「小犬」を同じだと思ってはいませんか?
体をリラックスさせてくれる空間が自然の中にあるのはなぜだろう。
ブログの更新が進まずにいる理由は、パソコンの前に座る時間が少なくなっているからです。
それでも、いつも頭の中には「これブログに書きたいな。」と思うことがたくさん浮かんできます。
そのほとんどが日常的に感じたり、起きている出来事から学んだことです。
現在は先日のめまい事件に引き続き、自分の体のバランスについて学ぶことが続ています。
そんな最中の今日、合宿参加の犬たちとともに山の学校にやってきました。
日中はさすがに風が止まり、草刈しなくちゃという感じでため息もでましたが、夕方になると涼しい風が流れていくのを肌で感じられるようになりました。
屋外にいる犬の行動も気温が下がってくると変化が見られます。
自分のバランスのことですが、痛みがあり動かなくなった部位がありまして、車の乗り降りにかなり時間がかかるような状態で山に到着しました。
夜中に床から立ち上がれなくなってしまった私の様子を案じたダンナくんも急遽、時間を割いて同行してきています。
こんな状態でなぜ山までやってきたのかというと、山に来たら体が変化するだろうと思ったからです。
案の定なのですが、今はこうしてパソコンをうちソファからの立ち上がりや座ることも、福岡の自宅にいるときよりも明らかにスムーズに動くことができます。
自分の中に何が起きているのかというと、体がリラックスして堅さが取れたことで血流も高まったと感じられるのです。
昨晩までのあのぎこちない動きが嘘のように動けるようになっています。
明日のトレッキングも無理ではないのかとダンナくんは心配していましたが、私の方はトレッキングをした方が体が元に戻るような気がすると思い明日は山に登る予定です。
いつも同じ選択をするわけではないのですが、自分の体のことがある程度わかるようになってからは、今は山に登りたいという気持ちがあればそれを優先させるようにしています。
まるで犬のようだと思うこともあります。
こういう行動の方向性にも自分の性質が出てしまうのでしょうが、引きこもるくらいならチャレンジしてみてダメだったら諦めるという方向でないと、なんとも居心地が悪いのです。
歩いてみて良くなったということが結構あるのも事実です。
しないという選択肢ではなく、するという選択肢しかないのもまた犬同様ですね。
動物の体や心が癒されるという過程の中で自然環境という大きな力は全く外すことができません、というか自然環境でなければ何をもって自分を癒すことができるのだろうと疑問に感じます。
犬が少しでも自然に近く、自然の中で本来の動物としてのバランスを取り戻す機会を作るために、この山の学校をこれからも大切にしなければと深く思った一日でした。
私もまたこうしてたくさん癒されています。
癒しにはゆっくりとした時間が必要です。
ゆっくりゆっくり、犬もまたゆっくりと変化していきます。

自然の中で涼をとるバロンくん
きんきん王国に帰って行った“きんきん”は、本当の立ち位置を知っているから強いのです。
お預かり合宿クラスを終えて、犬をご自宅に送りました。
「きんきん」という犬くんです。
飼い主さんが迎えに来られたので車からきんきんを下すとなにやらキョロキョロと落ち着かない感じです。
見ている方向はこちらでもなく飼い主でもなく、少しテンションが上がったような感じです。
そこで飼い主さん曰く「今からきんきん王国に帰っていくからですね。」。
きんきん王国とは、きんきんが王様として暮らしている我が家のことのようです。
お預かり中は、どの生徒さんにもびっくりされるほどお利口さんでおとなしいきんきん。
どのくらいトレーニングしたらこんなにお利口になるんですか?とか、
この犬ちゃんはいつからトレーニングされているんですか?とか、
こんなにおとなしい犬なら飼いやすいですよね、など。
きんきんに会った人たちの大絶賛を今までに何度も耳にしました。
それもそうでしょう。
来客や他の犬がいても吠えもせずにじっと待っているきんきん。
リードを全くひっぱらずに人についてあるくきんきん。
私が「フセ」といえば50メートル先でもフセをするきんきん。
そんな完璧に人に従うことのできるきんきんですが、我が家では「俺様」状態になることがあるらしいのです。
状況によっては人に従うきんきんですから、そんなにはげしいいたずら行動やマーキングや吠えなどをするわけではありません。
それでも、ちょっと飼い主に対してカツカツと歯をあわせて音を出して挑発するような行動や、こっちを見て的な要求行動、おもちゃを投げろ的な要求行動など、自分に注目をさせるような行動を繰り返すということでした。
そんなきんきんのことを飼い主さんは、とっても可愛らしいとと思いつつも、あまりにも行き過ぎるときんきんがまた荒れてしまうという一線をキープしているようです。
子犬のころからトレーニングクラスを受講しているきんきん、強い犬たちにもまれながら打たれ強く成長しました。
きんきんは小さな我が家の群れよりも、もっと大きな世間の中での自分の立ち位置を知っています。
だから、決してきんきん王国のきんきん大王様は仮の姿であることを知っています。
問題がこじれてしまう他の犬たちは、我が家で王様状態である俺様しか知らないことです。
飼い主におだてられ、調子にのせられ、賢い、できる、えらい、と褒められまくって、たくさんのおやつをもらいながら、抱っこして、ソファに乗って生活をしていて、世間を知知らない犬が、俺が一番偉いのだと勘違いしても仕方ありませんね。
きんきん王国のきんきん大王様。
次回の合宿での再会が楽しみです。

合宿中のきんきん
犬語セミナーは閃く人に役立つ生きたセミナーなのです。
週末の犬語セミナーを終了した当日から翌日にかけて、参加された生徒さんから感想やお礼のラインなどをいただきました。
毎回、犬語セミナーのあとにこうした感想をいただくことが多く、みなさんがセミナーを通して何を感じたり学ばれたかを知るきっかけになり、セミナーを創る側の自分の参考にもなります。
今回のセミナーにもいろんな「犬について考える素材」がありました。
犬語セミナーは犬の動画を見ながら行動を観察して分析していくセミナーです。
セミナーで使用する動画の素材によって、テーマは毎回変化します。
前半では他の犬との対面行動を通して、犬がどのように行動しているのかをよく観察して分析することで犬についての理解を深めること。
後半では「マーキング行動」のしくみやマーキングを通して犬が伝えているメッセージについて動画を見た上で、追加の説明もいたしました。
犬語セミナーを受講されたあとに、なにか「ひらめき」を感じられた生徒さんたちは、それぞれに犬との毎日の生活の中に実践として取り入れられます。
そのひらめきのセンスを持っている方が、犬語セミナーを受講したあとに「楽しかった、また参加したい」と感想を下さいます。
ひらめきのセンスは飼い主さんそれぞれのものですが、ひらめきのある人には開ける世界があって、それが楽しさや喜びにつながっていくのだと思います。
犬について新しく知ることの楽しさと喜び、それが犬語セミナーの楽しさです。
犬語セミナーは家庭訪問レッスンを受講した方や、繰り返しセミナーに参加された方の方にひらめきは増えているようです。
最初は全くよくわからなかったという方が多い犬語セミナーですが、繰り返し見ているうりにひらめく脳が育ってくるのですね。
受講された生徒さんの中にひらめきが生じたということは、何か自分の中で変化が起きているということです。
その変化や犬に対する理解の深まりは、犬との生活や犬との関係作りに直結して影響をしていきます。
講師の私としては、みなさんがどのようなところでひらめきを感じられるのかを予測することはできません。
でも、私もみなさんが感じられたひらめきを感じたことがあったのだということは間違いないことなのです。
そして同時に、人に伝える側のこちらの方も犬の行動を繰り返し見ながら、新しいひらめきを得ています。
皆さんのワクワクひらめきがこれからも続き、犬とのより良い関係を築くきっかけとなるような犬語セミナーを今後も続けてまいります。
7月はスペシャルセミナーとなっております。
次回の犬語セミナーは8月もしくは9月に開催いたします。
トレッキングクラスを犬語セミナーを開催しました。
梅雨の合間というよりも、雨の少ない梅雨の一日。
雨不足も困りますが、今日は月に1回のグループトレッキングクラスなのでありがたい晴でした。
標高500メートルの山の広場に集合して、みなさんといっしょに山歩きをスタートさせました。
いつもの散歩コースでは犬を見るとワンワンと興奮してしまう犬たちも、集団行動では落ち着いて行動できます。
飼い主さんの方は「なんで吠えないの?」と不思議な気持ちと、やればできるというモチベーションにもなるようです。
若い犬たちも成長して落ち着いて歩けるようになり貫禄を増してきました。
犬と一体感を持って歩くこと。
そして、みんなで一体感を持って歩くこと。
月に1回のみんなで歩く山の風景は、ひと月たつとずいぶんと違っています。
少しの変化を楽しみながら、いつも変わらない共感を持ちながら、規則性の高い行動をすると、なぜか犬は落ち着いてくるのです。
犬に「大丈夫だよ。」を伝える方法はいろいろとあると思います。
たくさんある「大丈夫」の中でも、土のにおい、山のかおり、小鳥のさえずり、そして規律のある集団行動、これがセットで提供されれば、とてもわかりやすい「大丈夫」になります。
トレッキングクラスに参加するたびに落ち着き成長する犬を見ていれば、飼い主の中にも何か感じることがあるはずです。
犬もゆっくりとしか成長しないのです。
結果よりも、過程を味わうように犬育てを楽しみましょう。
来月もまたお待ちしています。
毎日飽きなくてシンプルな犬とのコミュニケーションが犬と飼い主の関係を作っている。
土井善晴先生の「一汁一菜」を読んで感じたこと
天井が回って見えたという私の状態に対してお気遣いのお言葉ありがとうございます。とても元気に過ごしていて、山とシティを行ったり来たりする活動が続いています。
それでよく尋ねられるのですが「何を食べてるんですか?」という質問。
答えは「玄米ご飯とお味噌汁、あとは梅干しとかノリがあれば…」とだんだんと声が小さくなる私だったのですが、その自信のなさを克服させてくれた本に出会いました。
読んでいるのはあの料理研究家の土井善晴先生の著書「一汁一菜でよいという提案(新潮社出版)」です。
食事は基本だからこそ、毎日飽きない自然に変化するものをいただくこと。
食事のことで考えこまない、あるもの、残り物を生かして食べること。
最後まで読み進んでいくと、季節や自然と対話しながら今日の食事を作る、それが味噌汁とごはんという形になるというのですから不思議です。
犬との関係作りも毎日の飽きない活動の積み重ねにある
これって犬との関係作りにもつながってくるのではないかと考えながらこの本を読み進みました。犬と共に毎日飽きずに続けられる、そして自然の中で対話しながら、季節によって変化するものって何。
そうです。やっぱり「犬との散歩」これにつきますね。
毎日、毎日。単純な犬との散歩。
でも、いっしょに歩きながら風を感じて、今日は暑いね、今日は寒いね。
今日はアジサイが咲いたね。緑がきれいだね。
シロツメクサが増えたね。タンポポが枯れたね。
鳥がよく鳴くね。空が青いね。雨が降りそうだね。
声に出して犬に話しかけなくても、心に感じている季節の移ろいを犬は違った感覚でとらえています。
昨日と同じ道、だけど何か少し違うね。
そんな毎日が、ずっとずっと繰り返されていくのです。
犬と関係を作っていくことがどのようなことなのかわからない飼い主が増えているように思えます。
難しいことや犬を楽しませることばかりを考えすぎてしまうと、基本の基本を忘れてしまいます。
今日はイタリア料理、明日はフランス料理、明後日は中華料理と、日本の主婦は食事に頭を悩ませすぎて大切なものから離れているというようなことを土井先生も書かれていました。
これは犬の飼い主にも同じようなことがいえます。
犬に特別なことをさせたい飼い主が増えているからです。
犬をドッグランに連れていきたい、幼稚園に通わせたい、フリスビーをやってみたい、トリックを教えたい…など。
ところがほとんどの飼い主は、地面をにおいながら歩く犬の後ろをただリードを長く伸ばしてついて歩いているだけです。
犬はマーキングをするために散歩に出ているのではないかと思えるような光景です。
自然を感じて生活の基本を作る犬との散歩はこんな光景ではありません。
人馬一体、散歩とはそのような息の合った活動で、しかも自然とのつながりを深める犬との暮らしの基本です。
犬との山歩き、犬とのトレッキングも、実は散歩の延長線上にあります。
犬との山歩きはイベントではありません。
普段、トレッキングクラスに使っている登山道は、私と犬のオポの散歩コースでした。
散歩とは本来楽しいものなのだということを思い出していただき、自然の中を自然を感じながら歩くことが本当の犬と人の散歩なのだということを、体感していただくためのクラスです。
ですから自然を感じることのできない街中では、犬との散歩は実現できません。
関係作りも難しくなってしまいます。
せめて都市空間に子供たちが豊かに育つ自然空間を取り戻したいものです。

土井先生は「味噌汁とごはんは手抜きではない。」といって下さいました。
今では堂々と「玄米ご飯と味噌汁食」を宣言します。
毎日の楽しみは「犬との散歩」そう言えるようになりますね。
犬が自分の体の異変に気付いたら行動を起こすのかそれとも…。
前回のブログ記事で、犬が自分の異変に気付いても容易には行動できないということを書きましたが、今日はこの記事に対する追伸です。
犬がくるくる回る行動は前庭疾患かそれとも興奮行動なのかを見極める。
まず、犬が自分の中の異変、たとえば自分の体がいつもと違うという異変に対して素直に反応する動物だということは犬を飼った経験のある方なら理解できます。
今日も子犬ちゃんの訪問レッスンに行ったところ、朝からクレートに入ったままで出てこないと飼い主さんが言われました。
私が入室するとすぐにクレートから出てきていつもとおりのご挨拶をしましたが、いつもよりは少し控え目です。
朝ごはんを全く食べずに、クレートの中に引きこもっていたらしいのです。
状況を伺うと、どうやら昨晩いつもより多目にガムをもらったようで、その分量からするとかなりおなかに負担がかかったのでしょう。
おなかの調子がいつもと違うと感じた子犬は、クレートである巣穴に引きこもり自分をケアする行動を選択したのです。
犬が少し具合が悪いときに巣穴であるクレートなどに入って丸くなる行動をみたことがあることもあるでしょう。
これは、犬が自分の異変に対して自分にとって必要な行動を選択したということですし、同時にその選択肢が環境の中にあったということでもあるのです。
もし、子犬が朝ごはんを食べないことに心配した飼い主が、すぐに病院へ連れて行ったり自分の膝に抱っこし続けたりしてしまえば、子犬には自分の選択肢はなくなってしまいます。
犬は人に飼われることで、自分の周辺の環境を整えることができなくなってしまいましたが、それでも自分にとって必要な行動をなんとか選択しようとしているのです。
自分の調子を整えるために必要な基本的なものは、ゆっくりと休める居場所、静かな空間、安心して隠れていられる場所、きれいな空気、そして犬なら土も欲しいですね。
オポもときどき庭の土の上に腹部を下にしてじっとしていることがありました。
そうすることが今のオポにとって必要なことなのだろうと、いつもそれを見守るようにしていました。
簡単には使えませんが、なんだか癒しを求めているような感じがしていたからです。
どんな個体も完璧ではありません。
どんな人も犬も、それぞれに弱点となる心や体を持っています。
バランスを崩したらそれをいかに早く回復させるかということが大切なのかと思います。
そのために必要な場所や時間を犬が自分で得られるのか、もし得られないとしたら犬は葛藤状態に陥ってしまうでしょう。
葛藤とはどちらへ進んだらいいのか分からないという状態のことです。
行き場を失ったエネルギーが攻撃性や常同行動を引き起こすこともあります。
犬を取り巻く社会は、人の社会が複雑になった以上に複雑化しています。
犬が異変に気付いて自律的にする行動を尊重しながら、改めて犬の選択肢が増える環境を整えていけば、以前よりは犬が生きていく環境が豊になったといえるでしょう。
一度にたくさんはできません。
まず何か一つずつからスタートです。
犬がくるくる回る行動は前庭疾患かそれとも興奮行動なのかを見極める。
数日前の夜に天井が回り始めたので「あー、これはまずい」と自分に起きていることをすぐに察知しました。
回っているのは天井ではなく、回っていると誤解してうけとっている私の三半規管の方です。
おそらく疲労などのストレス状態が上がってしまい、自律神経のバランスを崩したようです。
緊急性のこのようなめまいに対する対応法は心得てはいるものの簡単に状態は回復しないため、具合の悪い状態が一晩は続きました。
犬もくるくる回る行動が出やすい前庭疾患という病気というか状態になることがあります。
多くは老犬ですが、若い犬でも見られます。
体や頭を少し傾ける状態でくるくると回りながらあるき続ける行動をします。
回る行動がでない場合でも、目がゆれるような眼振が見られたり、体が左右にふれて足元がおぼつかないような状態になっていることもあります。
しかし、前庭疾患になっていない状態でも犬はくるくると回ることがあります。
前庭疾患とは少し違うなと思う周り方は、体全体は円形を描くように回っているものの頭の傾きが見られない場合や、環境を変えると回るのを止める場合。
例えば犬が関心を示す物や声を出すと、すぐに回るのやめたときにふらつきがなくまっすぐとたったり座ったりして眼振がみられない行動。
後者のくるくる回る行動をする犬は前庭疾患ではなく、単なる興奮性のストレス行動として円形を描くように回ります。
散歩中にリードの範囲でくるくると回りながら歩く犬もいますが、この犬も前庭疾患の場合とそうでない場合に分かれます。
後者の前庭疾患という病気ではないストレス性行動のみの場合は、規則のある管理状態に置かれると回る行動は減少していきます。
経過が進むとゼロに、犬は全く回らなくなります。
いろんな犬の行動を「病気」として見過ごしてしまっていることがあるかもしれません。
当時は「病気」であったものも、どこかで別の方向に向かっていることもあります。
どんな時点でも精査が必要です。
問題の解決方法が薬物療法なのか行動療法なのか、その犬にあったことをしなければ犬はストレス性行動から解放されない、同時に病気を克服できるチャンスを失います。
さて、私のストレス性めまい行動に対する対処は以下のとおりでした。
夜寝るときに気づいためまい、吐き気、ふらつき。
まずはダンナくんに「めまいする」の連絡をいれ万が一に備える。
交感神経に傾ていると判断して胃腸をゆっくりと活動させるために熱いお茶を入れる、胃腸を少し働かせるために少しだけ甘いものを食べる。この日はいただいた黒豆があった。
体をリラックスさせるために足元にブラシをかける。気分が落ち着いたら横になって目を閉じて動かしたい方向に体を動かす。
眠れないのですがこうして自分の体が良い方向に向かっていくのを感じていくことで安心できます。
犬たちが寝ている時間に体調を整えて、朝の5時半には準備を始めなければいけません。
朝はちゃんと起き上がりめまいと吐き気は止まりました。
人間だったら初期状態なら思考で考えつつ行動できるものですが、犬はそうはいきません。
飼い犬は環境を人間に完全にゆだねているために自分で環境を変化させることが難しいからです。
犬の異変に気付いて環境を整えるのは飼い主の役割です。
そのくるくる行動、どこから解決するのか、糸口をまず見つけましょう。

トレッキングクラスでリラックスするサンタくん。
6月26日オンライン犬語セミナーを開催します。
オンライン犬語セミナー開催のお知らせです。
今回のオンラインセミナーは以下の日程でグッドボーイハート七山で開催される対面の犬語セミナーをZOOMで配信するものです。
当日はオンラインセミナー参加者は発言や質問ができません。
・開催概要
2022年6月26日 ㈰
12時~14時
形式 ZOOMアプリを利用したオンラインセミナー
料金 2500円
開催についてのご質問は気軽にご連絡下さい。
飼い主に執着する分離不安傾向の犬たちを最後に救うのは自然環境です。
時代により変化する犬の問題行動
犬の問題行動って昔と何か変わってきてますか?とある生徒さんに尋ねられました。
私が家庭犬のトレーニングに取り組み始めたのは2000年なので22年前。
それまでは誰もができないと思っていた集合住宅での犬の飼育が始まり始めたころのことです。
同時に特定の小型犬が流行り始めました。
小型犬といえばそれまでもシーズーやマルチーズが「お座敷犬」と呼ばれて特定の趣味の世界として飼われていましたが、小型犬のスタイルももっと違ったものとなりつつあったのです。
屋外に飼育されている犬も雑種から純血種に変わり始め、庭のある家庭でも犬を室内飼育するような犬の飼い方が広がっていきました。
室内飼育が広がると当時に犬の排泄の失敗に悩む方が増え始め、そのことでトレーニングの依頼が増えたように感じます。
質なし飼育の広がりと同時にワクチン接種が一般的になると、子犬の屋外活動が遅れてしまい社会化不足の犬たちが散歩中に吠えることになります。
散歩中にリードをひっぱったり吠えるという問題に対するトレーニング。
インターホンに吠えるという犬の行動問題に対するトレーニング。
そして飼い主にかみつくというご相談も、犬のサイズを問わずに増えてきました。
そして何よりも最も増えたのは間違いなく、飼い主に執着する分離不安行動による吠え、自傷行動、失禁、いたずら、留守番ができないなどのご相談です。
犬の問題行動の変化には、様々な犬を取り巻く変化が影響をしています。
犬の飼育環境、繁殖、流行りの犬種、飼い主の価値観、飼い主の生活スタイル、犬のしつけやトレーニングに関する情報などです。
ですから、自分の犬が飼い主に執着する分離不安行動を起こしていたとしてもそれをすべて飼い主自身の問題だとする必要はありません。
いろんな環境要因によって犬はそのようになってしまったということに過ぎないのです。
ですが、大切なのは執着という行動のパターンにはまってしまい苦しんでいる犬を救ってあげることができるのもまた飼い主の自分しかいないということを自覚してください。
どうしてこうなってしまったのだろうということに囚われるよりも、どのように改善していけば犬が楽になるのだろうかということを考えることが問題を解決します。
犬が飼い主に執着する行動とはどういう状態なのかを理解する。
犬の分離不安行動は犬の飼い主に対する執着行動です。自分の犬が分離不安傾向にあるかどうかは行動チェックをすればある程度わかります。
このブログにもチェック項目がありますので確認してみてください。
犬の分離不安行動は、犬の脳が何かに執着している状態だと考えるとわかりやすいです。
脳が何かに執着するというのは、脳が快楽を追い求めている状態です。
といっても、私も脳科学者ではありませんから具体的な脳の仕組みはわかりません。
私がそう思っているのは、様々な脳科学や心理学の本を読み、犬の行動を照らし合わせながら考えた結果、今のところそうであろうと思っているということです。
快楽というのはある脳内物質(ホルモン)によって起こるらしいのですが、その快楽ホルモンもはじめは行動の意欲につながります。
何かをしよう、そして習慣化させようというホルモンですから、犬が獲物を追い続けるときなどにはこのホルモンが出ていると推測します。
しかしその活動ホルモンが過剰にですぎると興奮ホルモンとなり、何かを追い求めることでこの興奮ホルモンが出続けることになります。
快楽を追い求めることを止めない活動、それが執着です。
飼い主を追い続ける犬を見ると飼い主のことが好きだという風にも見受けられます。
しかし「好き」と「執着」には違いがあり、脳内的にも違いがあるということを理解してあげる必要があるでしょう。
見方としては犬の「興奮性」「攻撃性」が高まってきたときはすでに犬の執着はかなり高まっている危険信号なのです。
飼い主に執着する犬にこの行動だけはやってはいけない。
興奮しやすい犬の飼い主がやってしまいがちな間違いとして、興奮すると犬を抱っこしたり撫でたりすることです。興奮する犬を抱き上げれば犬が落ち着く、だからすぐに犬を抱っこする飼い主がいます。
しかもほとんどのケースでは犬は小型なので、容易に抱っこできるし犬も飼い主の膝に上がりたがります。
中型犬や大型犬では犬が人の股の間に入ってきたり膝に犬の頭を乗せたり、飼い主が撫でている間中おとなしくしているようになりますがこれが依存の始まりです。
依存は共依存といって不安定な飼い主側にも一時的な落ち着きを与えてくれます。
これもまた本当の落ち着きではなく、依存という関係性の上になりたつ安定で大変もろいものです。
抱っこする飼い主、犬を撫で続ける飼い主の方もまた、快楽物質を出すようになり分離不安行動は共依存として犬と人の離れがたい距離感を作ってしまいます。
恐ろしい犬の執着行動を解決するためにできることのはじまりとは。
飼い主である自分のことが好きなのだと思っていた犬が、興奮しやすいとか攻撃性を見せるようになると、飼い主は何かが間違っているのかと感じるようになります。それが排泄の失敗といった自分のテリトリー内を荒らす行動であれば飼い主はすぐに警笛を鳴らします。
犬の行動のパターンが興奮性となると、普段から興奮している犬のどこが興奮しているのかに気づかない飼い主も多いのです。
興奮性行動が屋外や環境の変化によってみられるようになると、散歩中に吠える、興奮する、旅行先で落ち着かないといった、犬と飼い主の社会生活を狭めるようになり問題に気づく飼い主もいます。
犬の行動を解決したいと思った時点からすぐに解決が進めばよいのですが、執着行動は根が深くなかなか思うように元には戻りません。
ほとんどの問題行動が子犬の脳の発達の段階から繰り返されたことなので、生後6ケ月未満に築いた飼い主との依存関係を改善するのはなかなか大変なことです。
犬を飼い主の執着から解放させるためにできるスタートは当たり前のことですが、問題の本質を見極めることです。
犬の行動全般を客観的に評価することができなければ、専門家のアドバイスを求めて下さい。
次の準備は、生活環境や飼い主の接し方、犬の分離不安行動を引き出すような要因をすべて解決することです。
これは飼い主側ができることなので、やる気があればだれでもできることです。
ただ人も習慣性の動物なので、新しい習慣を身に着けるまでに時間がかかります。
形を理解し、頭で描き、行動に移す。
トレーニングはこの繰り返しですが、まずはここからスタートします。
しかし、これだけでは不十分です。
上記のトレーニングと同時にやらなければいけないのは、犬の脳内を立て直すことです。
執着した脳からリラックスできる脳へ。
快楽を求める脳から、活動をする脳へ。
そのことを実現するためにどうしても必要な素材があります。それが「自然環境」です。
脳は全体でできています。
全体の中で自分がどのように活動するのかを考えているのが脳です。
その全体とは、犬という動物を取り巻く全体のことです。
自然環境というと大がかりな気がしますが、土があって緑があって生物がいる豊かな環境といえばいいでしょうか。
屋外の庭でも、人工芝や砂利石の庭であれば土もない草もない生物もいません。
人間ですら原始的な生活から離れてまだ間もないのに、犬という動物はほんのつい最近まで土の上で暮らしていたはだし族なのです。
分離不安状態となり様々な不安定行動をするようになった犬たちが、自然環境のここ七山に長く滞在していると自然と不安定行動がなくなっていきます。
ずっと室内で自分の手をなめている犬が、七山での預かり期間にその姿を見ることはありません。
犬の感覚が戻ってくるまでにはかなりの時間がかかりますが、犬たちの行動の変化を見てやっぱり自然しかないとなんども思い返しています。
飼い主のみなさんに自然の中で生活するという選択をしていただければ本当にうれしいのですが、もしすぐにはそうならないとしたら私が変わりに犬を自然環境に触れさせよう、それが七山のオポハウスでの犬との合宿です。
自然の猛威を回避するための毎日の草刈、笹刈、犬たちが見守る中で今日も頑張りました。
犬の分離不安行動は犬の脳の問題だということ、いっしょに考えいっしょに解決していきましょう。
犬たちの健やかな生活のために。
