今月のグループトレッキングクラスと犬語セミナーは以下のとおり開催いたします。
犬語セミナーは2ケ月お休みをいただきましたので、気合を入れていきます!
どちらもご参加希望の場合には、事前にお申込み下さい。
・グループトレッキングクラス
9月25日日曜日 10時集合
・犬語セミナー
同日 12時~14時
参加料金 2500円
犬語セミナーは犬と犬のコミュニケーションを学ぶセミナーです。
身近な犬たちから学ぶことが効果が高いため、お預かりクラスやグループクラスで撮影した動画を教材として使用しています。
他にもみなさんのご自宅で起きてる犬の行動を撮影したものを常時募集しています。
犬語セミナーは犬の行動を自ら観察して分析するための手法を学ぶことが目的です。
繰り返し動画を見てスキルアップを図る機会として下さい。
私も毎回新しい発見があって楽しみにしています。
Author Archives: miyatake
グループクラスと犬語セミナー開催のお知らせ
犬の重大な問題行動も実は小さなことの積み重ねから始まる。
犬と問題なく暮らしていると飼い主たちには程遠いはずの犬の問題行動。
その犬の問題行動がまさか自分の犬に起きるとは、犬と暮したばかりの、もしくは犬を迎える前の飼い主には想像もできないでしょう。
犬の問題行動のご相談は、生後3ケ月とか生後4ケ月という子犬時期であることもあるし、8歳、9歳、10歳という犬ではかなりの高齢になることもあります。
問題となる行動の種類は、犬のもつそれぞれの犬種や性質といった個性によっても違いがありますし、むしろ飼い主の生活スタイルや生活環境によって習慣化された犬の飼育環境は犬の個性よりもずっと犬の行動に影響を与えています。
犬の飼育環境と飼い主の犬に対する接し方や飼い主と犬の関係性が犬の性質を育ててきたといっても言い過ぎではありません。
ですが、ひとつだけ絶対にどの犬にも同じだと言えることがあります。
それは、どんなに重大な犬の問題行動も最初は小さな問題から始まったのだということです。
飼い主に対してかみついたり、散歩中にリードをひっぱって興奮して人や犬に吠えたり、室内で来客に対して吠える、インターホンで興奮するなどいろんな問題行動がありますが、その問題行動にも最初があったはずです。
特にかみつき行動の場合には、最初は軽く人の手に牙をあてる、声をだして吠える、手をなめるといった行動や、人に対するとびつき行動といった行動で始まります。
この最初の人に対する自己主張の強い行動を見逃さずに対応しておけば、急に噛みつくような犬にはなりません。
しかもその行動は大体生後6ケ月くらいまでに出てきます。
犬の生後6ケ月というと犬の乳歯が永久歯に生え変わるころです。
犬の永久歯が生えるころには犬の顎は大変発達しています。
犬は動物を捕食する動物ですから、犬の牙と顎は動物を殺傷することに利用するために発達してきました。
生後6ケ月になり永久歯が生え変わった犬は、刀を腰に差している状態なのです。
その武器を自分が生きるためにも使うと同時に、群れを守るために使うという風に成長していれば問題を起こすような犬にはなりません。
生後6ケ月までを飼い主の甘やかしの中で育てられると、飼い主に対する主張をしたり飼い主は自分を守る存在ではなく自分よりも下の存在となってしまい、吠える、咬みつく、マーキングといった攻撃行動を周囲のものにするようになります。
自分の子供に対しても生じる「まさかうちコが…」という考えが犬の問題解決を遅らせてしまい、問題は悪化し手に負えない状態となってトレーニングスクールにご相談に来られます。
お伝えしておきたいのは、ドッグスクールに犬の相談をされることは決して犬を責めたり悪いと決めつける行為ではありません。
犬の吠える、かみつく、マーキングや破壊行動などはすべて犬のストレス行動です。
一番困っているのは犬自身であるということを理解してあげて、できるだけ早く専門家に相談してください。
飼い主としては「私が一番この犬のことをわかっている」という気持ちですから、相談するのに躊躇する気持ちもわかります。
初回の訪問カウンセリングのときに、飼い主さんが愕然とされる姿を今までなんども見てきました。犬のことをわかっていたつもりで全くわかっていなかった、飼い主さんがそう気づかれるからです。
気付かぬうちに犬の問題が大きくなって犬の精神が蝕まれてしまう前に気づいてよかったと思えるようになるのは、犬の問題に対して前向きに取り組んだ飼い主だけです。
そのうちよくなる大した問題ではないと、犬の叫びを聞こえないふりをして問題だけが膨らみすぎると解決できないばかりでなく、犬の体調不良にもつながっていきます。
犬のしつけは犬が来る前から始まっています。
サルにまつわる話題が満載で学んだこといろいろ。
野生のサルと柴犬の小鉄くん
オポ広場の草刈をしようと準備をしていたときのこと、広場で小鉄くん(柴犬、一歳半オス)がワンワンと吠え始めた。正確にはウォン、ウォン、ウォン、ウォン。
澄んだ中音程の繰り返す吠え声。
吠えている方向は広場から山に向かう方、少し高めに顔を上げているような吠え声。
イノシシが栗を拾いに来ているのだろうなと、草刈機を背負って広場に降りて行ってびっくり、上を向いて吠えている小鉄くんの上にサルがいたのです。
サルは広場の栗の木に移動した後に小鉄くんに吠えられたあとに電線に飛び移り、電線を渡って移動しているときでした。
細い電線の上を走っているサルの姿に感動しながら小鉄くんの近くに近づくと、サルは小屋の屋根を伝って柵の向こうへと消えていきました。
小鉄くんの吠える声はテリトリーに来客があったときの防衛的な吠えとは違っていて、何かを発見したことを伝える吠えでした。
その後広場の草刈を始めたのですが、小鉄くんは山の方に顔を向けたまま伏せていたり立っていたりと警戒を続けていました。
草刈を終えてから山の方を見ると樹木の枝が大きく揺れており、サルがまだいることを確認しました。
サルが人や犬を恐れずに行動するということと、小鉄くんの衝動性を抑えた執着しない野生動物に対する吠えに、動物たちのもつそれぞれの距離感を知りました。
サル群れがオポハウスに来たことを移動マップで確認
その2日後に表庭で預かり中の子犬ちゃんとバロンくん(1歳2ケ月オス)が遊んでいてペンキ屋さんと私が話をしているすぐ近くの木にサルがいてこちらを見ていました。なんどか庭まで降りてきたことがあるのですが、ペンキ屋さんは初めて見たとのことでびっくりしていました。
その若いオスザルは木の上で体を掻いたりとなんの用事があるのだろうかという雰囲気でした。
写真を撮影しましたが、わたしたちを見張っているようにも思えました。

サルと私たちの距離は20メートルくらいでしょうか、子犬やバロンくんはサルの存在になかなか気が付きません。
私やペンキ屋さんが撮影したりサルに注目を始めるとバロンくんがサルに気づきワンワンワン。
サルは全く移動する感じもありませんでした。
この日はその後も栗の畑で2匹を見たため、群れで移動してきたのではないかと思ったら案の定、唐津周辺をテリトリーにするサルのA群がここまでやってきたという情報を入手しました。
サルの移動情報をアップしているサイトを生徒さんが連絡してくださったので確認できました。SNSすごいですね。
群れのサルにGPSが装着されているため群れの移動を確認できるマップがあるのです。
サルによる農業被害が深刻だということでこうした活動が行われているそうで、はじめてそのようなシステムを知ることができました。
人とサルの戦いは私のすぐ身近なところで起きていたのです。
毎年、柿の実が赤くなり始めたなと思ったら、ある日忽然と全部の実がなくなっていたのはやはりサルの仕業でした。
大好きな栗の実を拾うことを楽しみにしていたのに、栗畑に落ちているのは栗の皮ばかりです。
日本サルは希少動物のため捕ることを許されていません。農家の方々にとって最強の敵であろうと思います。
爆竹のようなパーンという音はサル除けにも使われるのでしょうが、サルにそんな脅しが効果があるとも思えません。
最後にサルと境界線を戦えるのはやはり犬ですね。
境界線を守る犬たちの復活を期待しています。
最後に、お尻がサルのようになった最近の自分。
そしてこの間に家と山間部の間の草刈最中に、キイロスズメバチに刺されました。人生で2回目ですがショック症状はなく、今回は草刈用のガードがあったので刺された場所はなんと尻部です。
刺された場所が幸いしたようで1回目の手のときのように死にたいと思うほどの痛みはありませんでした。
注射+くらいの痛みがあって結構長ーく痛みが続き、夜になると腫れてきて痒いのと痛いので一晩は睡眠が浅くなりました。
いつもうろうろとする場所なので大体このあたりに巣があるということはわかっていたのですが、草刈機を持って上がること自体が滅多にできないことなのでもう少し刈りたいという欲求に負けて踏み込み過ぎました。
時間に余裕があればもっとゆっくりと草刈もできるのでしょうが、犬のお世話の合間なので早く済ませたいと思ってしまうのです。
スズメバチに刺されたらお世話もできなくなってしまうことを考えなければいけませんでした。今回はすぐに動けるような状態でしたので仕事には支障ありませんでした。
スズメバチに刺されることなどは普通の山歩きではありませんので、どうぞ山を怖がらないでください。
山で暮らすとなると、戦わなければいけない、警戒しなければいけない野生動物が出てくるのは当たり前のことなのです。
そのことが嫌だったら山に暮らさなければいいのです。
「怖いからしない」という考え方や行動のパターンもありますが、自分の場合にはいつか死ぬのだからある程度やりたいことはやるという気持ちが強いのです。
犬に対しても、ケガをしたら怖いから…と思ってしまうのであれば、犬をどこにも連れていくことはできません。
犬を室内に閉じ込めておくか、柵のあるドッグランで走らせるのか、そんなことしかできません。
動物にとって危険と好奇心はセットになっていると思います。
リスクのない冒険はありません。
何もしなくて安全だけど退屈な時間よりも、少し危険が伴うけれどその危険すら自分の判断や能力に委ねられていると、自分を試す時間がある方が人生はワクワクします。
犬も同じではないかと思うのです。
ちなみに、スズメバチに刺されたあとも病院には行ってません。この程度なら行かなくても大丈夫という感覚が自分の中にあるからです。
その後も、日本ミツバチを襲撃するキイロスズメバチを駆除したりと、怖いと思うことはありません。
怖いのは動物ではない、動物に対しての自分の行動です。
犬にはなかなか咬まれることない私ですが、思いっきり警戒しているからですね。
今後は野生動物のことをもっと知ってもっと警戒して、そして程より距離を保っていきます。

涼しい山でグループトレッキングクラスを開催しました。
山の学校は一気に秋の感じが強まってきました。
グループでのトレッキングクラスを開催しました。
街中とは違う空気に「涼しい、全然違うね」と言葉がもれます。
夏から秋へと季節が移る変わるこの時期は、動物にとって何か特別な時間のように感じるのです。
秋の訪れとともに山にはたくさんの果実がなり始めます。
オポ広場の後ろ側には栗の木、柿の木があります。
数日前はサルが栗の実をとりにやってきました。
秋は蓄えの時期、蓄えるために活動する季節なのでしょう。
そのサルが電線を渡る姿を見てただすごいなと感動したのですが、動物の持っている能力とは私の想像を超えています。
できるだけ人が扱いやすいようにと改変を迫られた犬たちは、人の能力を超えることを許されない傾向があります。
繁殖や飼育の方法や可愛がりによって「あなたは無力である」と洗脳する最大の方法は、犬のしつけ方の方法としてネットでも堂々と公開されています。
ですが、そもそも人が犬と共に生活をすることを選択したのは、犬のすばらしい能力を自分たちの生活のために役立たせたいと思ったからです。
そして、たくさんの野生の犬の中からある程度協力関係が築けそうな犬のグループと共にやっていくことができたというところが人と犬の始まりではないかと個人的には思っています。
その犬という動物が、山という犬の一番知っている場所を歩く機会を得ることは当然の権利であると思うし、その機会を飼い主が与えなければ得られないのであれば、ぜひ犬に山歩きをしながら探索をする時間を提供して欲しいのです。
だから、こうして山の学校に生徒さんたちが犬とともにきてくれて、またいろんな山に犬と共に出かけて山歩きをしながら飼い主と犬が関係性を築く機会を持って下さることは最高にうれしいことです。
写真にはたくさんの犬たちが移っていますが、普段は他の犬があまり得意でない犬も集団の中ではとても落ち着いて過ごせます。
トレッキングクラスは、飼い主に犬という動物が何者であるのかを考える機会を持っていただくために、犬と山で過ごす機会を持っていただくために、そしてなによりも山を歩いている犬の姿を「これぞ犬、美しい」と感じていただくために、これからも続けていきます。
また来月もお待ちしています。
犬の社会化の失敗、ほとんどは経験不足よりも与えすぎが問題です。
犬の社会化学習とは
犬の社会化学習は、犬が生きるために絶対に必要な学習です。犬の社会化を簡単に説明すると「犬が人との暮らしの中で安心な気持ちでリラックスして生活できるようになるようにするための学習」ということです。
社会性のある犬とは、日常的な生活の中では特に不安を抱えることもなく、安定した生活を送っています。
社会生活が安定した社会性が高まった犬は、吠えたり、咬みついたり、興奮したり、マーキング(トイレのにおいつけをしたりすることはありません。
ところが、社会性が育たずに不安を抱えやすいような精神状態になってしまった犬は、日常的に、吠える、咬みつく、マーキングする、興奮してとびついたり走り回る、などの行動をしています。
不安を抱えやすくなってしまった犬は、社会化がうまくいかなかったということです。
犬の社会化は与えればいい、は大間違いの理由
この犬の社会化学習ですが、実は大変間違えられていることがありますので警告します。それは、犬の社会化とは経験不足によって起きるのだと思い込まれていることです。
経験をさせないと学習が進まないというのは当然のことです。
ですから、ペットショップに長い間おかれることになり、生後6ケ月の犬を購入すれば、当然のことながらその生後6ケ月の犬は何も社会化学習をせずに成長してしまったことになります。
これはこれで問題ではあるのですが、逆の問題も発生します。
生後2ケ月の子犬を自宅に迎えて、犬に社会化学習をさせなければいけないという情報だけを飼い主が持っていたとします。
・来たときから抱っこで人になれさせようとする
・来客を呼んで子犬を触ってもらってなれさせようとする
・公園に抱っこして連れていき、他人に抱っこしてもらって慣れさせようとする
・公園に連れていっていろんな犬にあわせようとする
・犬の幼稚園に入れて他の犬と過ごさせるようにする
・先住犬と室内で走り回らせている
・ドッグランに連れていっていろんな犬にあわせる
・音に馴れさせようとしてテレビを見せるようにしている
ここに挙げたすべての行動は、犬の社会化が失敗してしまう原因になります。
犬の幼稚園についてはプロのいる現場ではありますが、ただ犬に合わせれば犬は犬に対して社会化するのかというとそうではないのです。
人に置き換えてもわかるのですが、みなさんはみんな幼稚園に入るはずなのですが、幼稚園に行けば、人と上手に関われるようになったかというとそうではありません。
幼稚園に行っても人とのコミュニケーションが苦手の人はたくさんいます。
幼稚園でどのような経験をしてきたかということが重要であるということです。
この「社会化の与えすぎの失敗」ですが、私も育成という意味では同じような間違いをしたことがあります。
それは、犬ではなく植物の例になります。
植物を育てた経験のないわたしは、種を植えて、芽が出てきたとしても、何かを与えなければいけないのではないかという不安に駆られるのです。
水を与えなければいけないのではないか、肥料を与えなければいけないのではないか、太陽にあてなければいけないのではないか、と何かを与えることはとりあえず良しとしてしいます。
ところが、植物は与えすぎるとうまく育ちません。
植物が安心して育つ環境というものがあって、この植物にはこのような環境が適しているというものがあるのですから、それを人工的にどのように準備する必要があります。
つまり、犬の社会化も同じなのです。
犬になんでも与えれば犬はそれに慣れて安心すると思ったら大間違いです。
犬が安心だと思っていないのに自分の前に他の人が近づいてきて体を触ろうとしたら、興奮してとびつくようになり社会化(安心)を得ることはできないのです。
子犬の社会化を成功させるための方法とは
私の植物育ての失敗例にあるとおり、子犬のうまく社会化させるためには、子犬が安心できる環境を整えるというところから始めなければいけません。それは、いきなり外に連れていって他人に会わせることでもないし、犬の幼稚園に通うことでもありません。
子犬といっても犬という動物なのです。
犬という動物が本来ならどのような環境で安心して生活をしているのか、犬の習性やコミュニケーションをよく学び、人工的にその環境を整えていくこと、これが子犬の社会化のスタートです。
日本では犬の室内飼育や集合住宅での飼育も当たり前になりつつあります。
しかし、あまりにも早い速度で犬の飼育環境が変化してしまい、犬の遺伝的な変化はそれに追いついていません。
良い意味で、どの犬もやはり自然の中の動物、犬なのだなと感じることが多々あります。
犬を犬だと理解して、私たちの暮らしの中で安心できる生活をしていけるようにするために、子犬を迎えた方は早目に良い社会化トレーニングをスタートさせてください。
また、社会化に失敗して成長してしまった犬たちも、できるだけ早い年齢で「社会化学習のやり直し」をされることをおすすめします。
飼い主のためでもあり、なによりも犬のために必要な学習なのです。

犬たちの長い夏休みの預かりクラスが終わります。
今年はずいぶんと長く夏の間に七山に滞在することになりました。
いろんな犬たちがトレッキングクラスや預かりクラスを利用して学びに来てくれたからです。
この長い七山夏休み合宿クラスも明日で一旦終了します。
暑い暑いといいながらも、エアコンをつけなくても過ごせるような環境です。
土の上や冷たい風のとおる樹木の下で、ずいぶんと長い時間を犬たちと共に過ごしました。
お預かり回数が増えていくたびに落ち着いて過ごせるようになった犬もいます。
お預かり回数が少ないために落ち着くのに数日を要する犬もいます。
預かり犬の出入りが増えて、関係性や空間も変わってしまいます。
難しいことはたくさんあるけれど、結局最後はこの七山の自然の環境に助けられながら、何か気分の良い時間を犬たちが感じてくれればと思っていました。
どんな経験や学習も、情緒が伴わなければ学びにならないのではないかと思うのですが、私の尊敬する神経学の先生の本にも同じようなことが書かれていました。
自分たちの経験学習の中には、楽しかったとか、心地よかったとか、気持ちよかったとか、ワクワクしたとか、何かの情緒が伴ってこそ自分にとって価値のあるものとして記憶されます。
人では学校の勉強や数学の数式を解くことですら、解ったときのワクワク感があるからこそ学ぶことが楽しいと感じられるはずなのです。
自然の中にはこうしたワクワクした学びがたくさんあるということは、犬の様子を見ていればわかることですが、それが犬のしつけと何の関連性があるのかと尋ねられることがあります。
すでにしつけが終わっている犬が、遊びの場所として自然を必要としているという前後関係があると思われているとしたらそれは違います。
犬にとって飼い主が学んでほしいこととは、「飼い主の言うことをきくお利口さんの犬になること」でしょう。
「飼い主の言うことをきく犬」であれば、犬を飼うことで人の生活が脅かされることもないし、安全であるからです。
お互いの安心できて豊かな生活のために、犬の生活環境を整えて犬にしつけをちゃんとする。犬に飼い主という群れがあることを教えてあげるためにです。
犬の立場からみれば、従う価値のある飼い主との暮らしであれば、犬は安心感を得て安定した生活を送れます。
ただ、人の言うことに従う犬になるためには、しなやかに発達した脳が必要になります。
その脳の発達は、囲われた室内やコンクリートの上だけではなかなか難しいのです。
拘束された狭い室内では犬の中にワクワクを生む素材がありません。
食べ物を見せれば犬はワクワクすると勘違いされているようですが、食べ物を使ってしつけをすることに偏りが生じると、犬は何かに執着することを覚えてしまうだけです。
オスワリ、フセは上手にできるでしょうが、空間の中で人や他の犬と自然と関わる社会性を身に着けることは食べ物で教えることができません。
合宿期間中にできるだけいろんな体験ができるようにと、オポ広場に柵を作ってみたり、草刈りしたり、トレッキングにつれていったり、工夫を凝らしました。
犬たちのワクワクの情緒とともに経験したことが学習となることを願いつつ。
この経験を活かして、次は飼い主さんとまた日常生活+アルファの楽しい生活を送っていってほしいです。
まだ預かり経験がなく、訪問レッスンを続けていらっしゃる皆さんも、ぜひいつかこのびっくりする山奥までお越しになって何かを体感してください。
「盲導犬を通して見えた犬との関わり方セミナー」から学ぶこと
7月に七山で開催した友人の現役の盲導犬訓練士、水谷先生による「盲導犬を通して見えた犬との関わり方セミナー」にはたくさんの方にご参加いただきました。
日程が合わないなどでご参加できなかった方のために、ほんの少しですがセミナーの一部としてまとめをいたしましたのでこちらにご紹介します。
たくさんあるセミナーの内容の中でも、受講生のみなさんが「へー」とか「はー」となった部分を強調してお伝えいたします。
まとめこちらから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1 盲導犬の繁殖について
歴史的な流れの中で、20年くらい前から計画的な繁殖をするようになった。
現在では人工授精や凍結精液を活用して、世界各国の盲導犬事業を行う団体と協力しながらより可能性の高い繁殖を目指している。
2 品種改良により世代毎に、遺伝的により良い犬の繁殖を目指している。
大体7世代繁殖すると良い質が安定する。
3 遺伝と環境
今ではどちらも大切と言われている。
むしろ環境によって変化する要素の方が高い。
4 遺伝でできること
健康面では遺伝的な疾患となるものを排除する。
性格的なことも遺伝が影響はするが、環境によって変化する。
5 盲導犬の繁殖に求められることは?
落ち着き、作業に対する意欲、体の感受性、環境に対する健全な態度(社会性)
6 盲導犬の育成~パピーウォーカーに渡すまで
トイレトレーニング すぐに覚える
室内環境に様々な工夫を凝らし、立体空間で遊ばせるようにしている。
(特に頭上のものに注意を払えるような遊び道具も準備)
7 パピーウォーカー
2ケ月から1歳までの期間、定期的に講習会を行って指導している。
様々な環境に適応できるように犬と外出してもらっている。
8 盲導犬の育成と訓練
大体1年から2年くらいの訓練を行う。
基本訓練とハーネスをつけた誘導訓練。
基本訓練=服従訓練は2週間で完了するが、その後も毎日10分程度の服従訓練を行う
。服従訓練は盲導犬になってからも毎日盲導犬ユーザー(視覚障碍者が行っている。)
盲導犬になれるのは3割くらい。
盲導犬になれなかったキャリア犬(キャリアチェンジと呼ばれる)はパピーウォーカーの元に戻るか、一般の家庭に家庭犬として迎えられる。
9 盲導犬を視覚障碍者に渡すための共同訓練
期間は約1ケ月、一緒に宿泊施設に合宿して犬との関わり方を学ぶ。
大切なのは犬との正しい関係性。正しい扱い方(ほめることと叱ること)
10 まとめ
遺伝的に良いものを作り出しても、のちの環境や育て方によって大きく変わる。
犬は人が正しく接すれば、人の望む行動をとることができるようになる。
犬にはグレーはない、黒か白。はっきりと伝えること。
犬は群れを形成する動物。ルールを伝えることが犬のストレス軽減につながる。
・・・・・・・・・・・・・・
ここまでです。
以前このブログでセミナー受講の感想をご紹介しました。
「盲導犬を通して見えた犬との関わり方」セミナーを受講して(感想まとめ)
この感想の中にあるように、犬の性質に与える環境の影響、飼い主の接し方、犬は群れの動物であること、ルールを伝えること、白か黒という伝え方…などが、飼い主として犬と暮らす受講生の皆さんの心に響いたようですね。
盲導犬はあくまで、盲導犬としての適性を目指して繁殖から育成までをコーディネートされている種です。
みなさんと暮らす犬たちは、盲導犬ではなく家庭犬。
ところが、家庭犬として人と暮らす適性を目指して繁殖されていない状態で一般の家庭に販売されていることも多くなっています。
また、保護犬を家庭犬として引き受けた場合、時には今まで人と遠い距離を保ちながらゴミや置きエサで育てられた犬たちの子犬として産まれた犬である場合もあります。
むしろ盲導犬候補犬のパピーよりもずっと難しい犬たちをみなさんは育てられているのです。
だからこそ、大切なのは「環境」です。
生れてしまったものはもう遺伝的に変化させることはできません。
でも「環境」は飼い主によって変化させることが可能です。
みなさん技法を知りたがりますが、一番大切なのは「時間」と「空間」です。
どちらもなければ何もできません。
盲導犬の基本訓練(服従訓練)が1回10分程度、一日1回と言われて「わー」となりましたが、これは人と暮らしが普通に成り立っていることが前提の、誘導訓練に入るまえのウォーミングアップなのです。
リードを引っ張る、物音に吠える、飼い主に飛びつく、首輪を掴めない、飼い主にかみつく、クレートに入れない、などといった問題を抱えている犬が、10分の服従訓練だけで安定した行動をできるようになることはありません。
現在の日本では家庭犬の育成とは大変なことなのです。
プロフェッショナル家庭犬飼い主になるためにできることをまずはやっていきましょう。
山の日も山の日じゃなくても犬は山で遊ぼう。
いつからか定められた「山の日」、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日らしい。
自然が身近にあった昭和の時代には必要のなかったものが必要になる。
平成から令和へと、自然から離れていく人間に対する警告としては必要なのかもしれません。
山に親しむという言葉に違和感を覚えてしまいますが、そもそも人も自然の一部だと感じる私にとっては、山は親しむというよりわたしそのものです。
そして犬にとっては、山は自分たちの里、自分たちが生まれた場所、自分たちの祖先がずっとずっと暮らしていた空間です。
犬に山はあなたの何ですか?と質問するのも失礼ですし、何より彼らは山のことをよく知っています。
犬の人為的繁殖によって短い期間に山の生活から離されてしまった犬が多い中、ほんのわずかではありますが、トレッキングクラスなどを通して山が生活の一部となった犬の姿を見るとなぜかホッとします。
山の中で歩く犬を叱ったりほめたりする必要もなく、リードは自然に緩やかに人と共に歩けるようになる犬の姿を今までになんども見てきました。
犬に何も教える必要はなく、ずっとそうしてきたのだから当たり前のことだと犬の遺伝子が思い出すように、彼らは山のなかでふんわりとリラックスして活動をします。
こんな山時間を過ごす犬は飼い主に拘束されていると感じることもなく、飼い主に執着する必要もありません。
ただ忙しい飼い主が自分を連れて山に行く時間をただ待つことだけです。
犬にとっての山の日が非日常ではなく日常になるように、グッドボーイハートで伝えられることをこれからも伝えていきます。
不安を抱える犬にどうやったら「大丈夫だよ」を伝えられるのですか?
トレーニングクラスを受講した生徒さんからグーグルマップへのクチコミの投稿をしていただきました。
チワワのペコちゃんの飼い主さんからの受講の感想です。
グーグルマップのクチコミはこちらからご覧ください。
→チワワのペコちゃんのトレーニング受講の感想クチコミ
トレッキングクラスにご参加でいつもおとなしく吠えることもなく、他の生徒さんからも「あのチワワちゃんは何か問題があるのですか?」と尋ねられます。
散歩中に他の犬や人を見て吠えたり、室内にいるときに周囲の物音に反応したりする行動は、犬が不安を抱えている怯えによる攻撃行動です。
自分ひとりでは自分の身を守ることができない、そして頼みの飼い主との関係はべったりのようで依存的関係というとても脆いものでした。
飼い主さんの気づきの早さについては、口コミの返信に書いたとおりです。
まだまだ若いペコちゃんのこれからの成長がとても楽しみです。

初めて山歩きをするペコちゃん
オポ広場に柵を設置完了!柵ができると犬の管理は前よりも大変になるのです。
オポ広場全体を囲う柵を設置しました。
私ひとりでは到底できない作業でしたが、お手伝いに来て下さった生徒さんたちと一日かけて完成しました。
今まで広場に柵をつけなかったのには理由がありました。
ここに引っ越してきたとき(2007年のこと)、犬の逃走を防止することを考えて山の敷地千坪全体を緑の網で囲ったことがあります。
今考えるとその作業も相当大変だったと記憶しています。
ですが、山歩きをしているとき、この柵になんの意味があるのだろうと考えるようになり、同時に自然の中に存在する人工的な柵に違和感を感じるようになりました。
それで1年たって始めに半分以上を撤去し、その後すぐにすべての山にはった柵を撤去しました。
柵がなかったらもし犬が逃走したらどうする?
そうならないように教えることの方がずっと大切なことだと信じて、犬と飼い主との関係性さえあれば犬は逃走しないと、そのことを学ぶことの方がずっと重要だと認識したのです。
それ以来、柵を作りませんでした。
この経緯があって、オポ広場に柵を作ることに抵抗がありました。
ところが昨年の冬に今度は山側から入ってきたイノシシにオポ広場の法面を壊されてしまい、かなりの痛手を受けました。
イノシシ対策のために山側にはイノシシ用の取り去った柵を再度つける必要に迫られました。
山側にはイノシシ用の柵をつけることを決めた、では道路側はどうすると考えました。
広場を柵で囲めば、ロングリードをつけなくても犬をリードから解放して遊ばせることができます。
ただそれは山歩きとは違うのです。
山歩きはテリトリーを持たずに移動する行為。
広場はテリトリーを持った状態でその中でどう行動させるか、テリトリーから出ないことを守り切れるか、という行為。
全く違う環境の中で学ぶべきことがあるのです。
広場に柵を作ったら、以前よりも犬の管理が楽になるのかというと全く逆です。
どんなに長いリードであって、犬はつながれていれば自分の行動が制限されていることを知ります。
ところが、リードがないとなると人の管理から逃れる=逃走しようとする行動が生まれます。
柵があって犬が逃げられない状態であっても、犬に自由行動を与えるなら犬が常に管理者の合図(コマンド)に従える状態を作るために練習を繰り返す必要があります。
犬に逃げる選択をさせない、ということですが、広場的なテリトリーでは移動のテリトリーよりも逃げる可能性が高まります。
オポ広場が柵に囲われた結果、預かり犬のうちのできる犬からフリーにするように練習しています。
もちろん、呼び戻しが完璧でない犬がほとんどです。
できないことが繰り返されないように、定期的に呼び戻してつないで、またフリーにする。
この練習の繰り返しになり、結果として以前よりもやることが増えました。
ですが、広場を柵で囲んだことで、生徒さんにも安心して練習する機会を持ってもらえるようにはなりました。
プライベートクラスのときには、ぜひ練習場としてご利用下さい。
またせっかくの自然の景観が崩れるのが嫌だったのですが、アドバイスしていただいた柵を設置したために道路側は網が張ってあるのがほとんど気になりません。
犬たちものびのびと活動していますので設置して良かったです。
みなで練習しましょう。