7月に七山で開催した友人の現役の盲導犬訓練士、水谷先生による「盲導犬を通して見えた犬との関わり方セミナー」にはたくさんの方にご参加いただきました。
日程が合わないなどでご参加できなかった方のために、ほんの少しですがセミナーの一部としてまとめをいたしましたのでこちらにご紹介します。
たくさんあるセミナーの内容の中でも、受講生のみなさんが「へー」とか「はー」となった部分を強調してお伝えいたします。
まとめこちらから。
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1 盲導犬の繁殖について
歴史的な流れの中で、20年くらい前から計画的な繁殖をするようになった。
現在では人工授精や凍結精液を活用して、世界各国の盲導犬事業を行う団体と協力しながらより可能性の高い繁殖を目指している。
2 品種改良により世代毎に、遺伝的により良い犬の繁殖を目指している。
大体7世代繁殖すると良い質が安定する。
3 遺伝と環境
今ではどちらも大切と言われている。
むしろ環境によって変化する要素の方が高い。
4 遺伝でできること
健康面では遺伝的な疾患となるものを排除する。
性格的なことも遺伝が影響はするが、環境によって変化する。
5 盲導犬の繁殖に求められることは?
落ち着き、作業に対する意欲、体の感受性、環境に対する健全な態度(社会性)
6 盲導犬の育成~パピーウォーカーに渡すまで
トイレトレーニング すぐに覚える
室内環境に様々な工夫を凝らし、立体空間で遊ばせるようにしている。
(特に頭上のものに注意を払えるような遊び道具も準備)
7 パピーウォーカー
2ケ月から1歳までの期間、定期的に講習会を行って指導している。
様々な環境に適応できるように犬と外出してもらっている。
8 盲導犬の育成と訓練
大体1年から2年くらいの訓練を行う。
基本訓練とハーネスをつけた誘導訓練。
基本訓練=服従訓練は2週間で完了するが、その後も毎日10分程度の服従訓練を行う
。服従訓練は盲導犬になってからも毎日盲導犬ユーザー(視覚障碍者が行っている。)
盲導犬になれるのは3割くらい。
盲導犬になれなかったキャリア犬(キャリアチェンジと呼ばれる)はパピーウォーカーの元に戻るか、一般の家庭に家庭犬として迎えられる。
9 盲導犬を視覚障碍者に渡すための共同訓練
期間は約1ケ月、一緒に宿泊施設に合宿して犬との関わり方を学ぶ。
大切なのは犬との正しい関係性。正しい扱い方(ほめることと叱ること)
10 まとめ
遺伝的に良いものを作り出しても、のちの環境や育て方によって大きく変わる。
犬は人が正しく接すれば、人の望む行動をとることができるようになる。
犬にはグレーはない、黒か白。はっきりと伝えること。
犬は群れを形成する動物。ルールを伝えることが犬のストレス軽減につながる。
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ここまでです。
以前このブログでセミナー受講の感想をご紹介しました。
「盲導犬を通して見えた犬との関わり方」セミナーを受講して(感想まとめ)
この感想の中にあるように、犬の性質に与える環境の影響、飼い主の接し方、犬は群れの動物であること、ルールを伝えること、白か黒という伝え方…などが、飼い主として犬と暮らす受講生の皆さんの心に響いたようですね。
盲導犬はあくまで、盲導犬としての適性を目指して繁殖から育成までをコーディネートされている種です。
みなさんと暮らす犬たちは、盲導犬ではなく家庭犬。
ところが、家庭犬として人と暮らす適性を目指して繁殖されていない状態で一般の家庭に販売されていることも多くなっています。
また、保護犬を家庭犬として引き受けた場合、時には今まで人と遠い距離を保ちながらゴミや置きエサで育てられた犬たちの子犬として産まれた犬である場合もあります。
むしろ盲導犬候補犬のパピーよりもずっと難しい犬たちをみなさんは育てられているのです。
だからこそ、大切なのは「環境」です。
生れてしまったものはもう遺伝的に変化させることはできません。
でも「環境」は飼い主によって変化させることが可能です。
みなさん技法を知りたがりますが、一番大切なのは「時間」と「空間」です。
どちらもなければ何もできません。
盲導犬の基本訓練(服従訓練)が1回10分程度、一日1回と言われて「わー」となりましたが、これは人と暮らしが普通に成り立っていることが前提の、誘導訓練に入るまえのウォーミングアップなのです。
リードを引っ張る、物音に吠える、飼い主に飛びつく、首輪を掴めない、飼い主にかみつく、クレートに入れない、などといった問題を抱えている犬が、10分の服従訓練だけで安定した行動をできるようになることはありません。
現在の日本では家庭犬の育成とは大変なことなのです。
プロフェッショナル家庭犬飼い主になるためにできることをまずはやっていきましょう。
Author Archives: miyatake
「盲導犬を通して見えた犬との関わり方セミナー」から学ぶこと
山の日も山の日じゃなくても犬は山で遊ぼう。
いつからか定められた「山の日」、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日らしい。
自然が身近にあった昭和の時代には必要のなかったものが必要になる。
平成から令和へと、自然から離れていく人間に対する警告としては必要なのかもしれません。
山に親しむという言葉に違和感を覚えてしまいますが、そもそも人も自然の一部だと感じる私にとっては、山は親しむというよりわたしそのものです。
そして犬にとっては、山は自分たちの里、自分たちが生まれた場所、自分たちの祖先がずっとずっと暮らしていた空間です。
犬に山はあなたの何ですか?と質問するのも失礼ですし、何より彼らは山のことをよく知っています。
犬の人為的繁殖によって短い期間に山の生活から離されてしまった犬が多い中、ほんのわずかではありますが、トレッキングクラスなどを通して山が生活の一部となった犬の姿を見るとなぜかホッとします。
山の中で歩く犬を叱ったりほめたりする必要もなく、リードは自然に緩やかに人と共に歩けるようになる犬の姿を今までになんども見てきました。
犬に何も教える必要はなく、ずっとそうしてきたのだから当たり前のことだと犬の遺伝子が思い出すように、彼らは山のなかでふんわりとリラックスして活動をします。
こんな山時間を過ごす犬は飼い主に拘束されていると感じることもなく、飼い主に執着する必要もありません。
ただ忙しい飼い主が自分を連れて山に行く時間をただ待つことだけです。
犬にとっての山の日が非日常ではなく日常になるように、グッドボーイハートで伝えられることをこれからも伝えていきます。
不安を抱える犬にどうやったら「大丈夫だよ」を伝えられるのですか?
トレーニングクラスを受講した生徒さんからグーグルマップへのクチコミの投稿をしていただきました。
チワワのペコちゃんの飼い主さんからの受講の感想です。
グーグルマップのクチコミはこちらからご覧ください。
→チワワのペコちゃんのトレーニング受講の感想クチコミ
トレッキングクラスにご参加でいつもおとなしく吠えることもなく、他の生徒さんからも「あのチワワちゃんは何か問題があるのですか?」と尋ねられます。
散歩中に他の犬や人を見て吠えたり、室内にいるときに周囲の物音に反応したりする行動は、犬が不安を抱えている怯えによる攻撃行動です。
自分ひとりでは自分の身を守ることができない、そして頼みの飼い主との関係はべったりのようで依存的関係というとても脆いものでした。
飼い主さんの気づきの早さについては、口コミの返信に書いたとおりです。
まだまだ若いペコちゃんのこれからの成長がとても楽しみです。

初めて山歩きをするペコちゃん
オポ広場に柵を設置完了!柵ができると犬の管理は前よりも大変になるのです。
オポ広場全体を囲う柵を設置しました。
私ひとりでは到底できない作業でしたが、お手伝いに来て下さった生徒さんたちと一日かけて完成しました。
今まで広場に柵をつけなかったのには理由がありました。
ここに引っ越してきたとき(2007年のこと)、犬の逃走を防止することを考えて山の敷地千坪全体を緑の網で囲ったことがあります。
今考えるとその作業も相当大変だったと記憶しています。
ですが、山歩きをしているとき、この柵になんの意味があるのだろうと考えるようになり、同時に自然の中に存在する人工的な柵に違和感を感じるようになりました。
それで1年たって始めに半分以上を撤去し、その後すぐにすべての山にはった柵を撤去しました。
柵がなかったらもし犬が逃走したらどうする?
そうならないように教えることの方がずっと大切なことだと信じて、犬と飼い主との関係性さえあれば犬は逃走しないと、そのことを学ぶことの方がずっと重要だと認識したのです。
それ以来、柵を作りませんでした。
この経緯があって、オポ広場に柵を作ることに抵抗がありました。
ところが昨年の冬に今度は山側から入ってきたイノシシにオポ広場の法面を壊されてしまい、かなりの痛手を受けました。
イノシシ対策のために山側にはイノシシ用の取り去った柵を再度つける必要に迫られました。
山側にはイノシシ用の柵をつけることを決めた、では道路側はどうすると考えました。
広場を柵で囲めば、ロングリードをつけなくても犬をリードから解放して遊ばせることができます。
ただそれは山歩きとは違うのです。
山歩きはテリトリーを持たずに移動する行為。
広場はテリトリーを持った状態でその中でどう行動させるか、テリトリーから出ないことを守り切れるか、という行為。
全く違う環境の中で学ぶべきことがあるのです。
広場に柵を作ったら、以前よりも犬の管理が楽になるのかというと全く逆です。
どんなに長いリードであって、犬はつながれていれば自分の行動が制限されていることを知ります。
ところが、リードがないとなると人の管理から逃れる=逃走しようとする行動が生まれます。
柵があって犬が逃げられない状態であっても、犬に自由行動を与えるなら犬が常に管理者の合図(コマンド)に従える状態を作るために練習を繰り返す必要があります。
犬に逃げる選択をさせない、ということですが、広場的なテリトリーでは移動のテリトリーよりも逃げる可能性が高まります。
オポ広場が柵に囲われた結果、預かり犬のうちのできる犬からフリーにするように練習しています。
もちろん、呼び戻しが完璧でない犬がほとんどです。
できないことが繰り返されないように、定期的に呼び戻してつないで、またフリーにする。
この練習の繰り返しになり、結果として以前よりもやることが増えました。
ですが、広場を柵で囲んだことで、生徒さんにも安心して練習する機会を持ってもらえるようにはなりました。
プライベートクラスのときには、ぜひ練習場としてご利用下さい。
またせっかくの自然の景観が崩れるのが嫌だったのですが、アドバイスしていただいた柵を設置したために道路側は網が張ってあるのがほとんど気になりません。
犬たちものびのびと活動していますので設置して良かったです。
みなで練習しましょう。
今月のグループトレッキングのお知らせ
暑さに負けそうな毎日ですが、犬たちはがんばっているでしょうか。
七山ではトレッキングができるくらいの冷たい風が通り抜けております。
・今月のグループトレッキングクラスの日程は以下のとおりです。
8月28日 日曜日 9時30分開始
・今月は犬語セミナーをお休みさせていただきます。
8月19日よりオポハウスの屋根のリフォームのために家の周りに足場が組まれます。
9月第一週まで作業が継続しますのでご迷惑をおかけします。
預かりクラスもいつもと同じような管理ができないため、ご相談の上預かりをさせていただきます。
別日程でもよい場合にはできるだけ上記の日程と重ならないようにお願いいたします。
・同日はトレッキング後にお部屋をランチタイムや休憩時間としてご利用いただいて構いません。終了後より13時までご自由にお使い下さい。
8月を過ぎれば山ではもう秋の気配がやってきます。
トレッキングデビューがまだの方も、ぜひこの秋にはトレッキングにいらしてください。
「盲導犬を通して見えた犬との関わり方」セミナーを受講して(感想まとめ)
先週、友人の盲導犬訓練士である水谷先生による「盲導犬を通して見えた犬との関わり方」セミナーを無事に開催できました。
オポハウスいっぱい+オンラインでもセミナーにご参加がありました。
セミナーに参加できなかった方のために概要をまとめてブログにアップする予定ですが、なかなか座る時間がないため少しお待ちください。
今日はセミナーを受講された皆様からいただいた感想の一部をご紹介します。
皆様の感想を通してセミナーの内容の一部を垣間見ることができますので、参加できなかった方もご一読下さい。
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・とても有意義なセミナーに参加することが出来てうれしく思っております。水谷先生のお話はとても分かりやすく、もっと聞きたいと欲が出てしまいました。
・犬を正しく知ること、理解することがいかに大切なことか、今回のセミナーでも学ぶことができました。
・「盲導犬」の繁殖について人口受精がされていることも初めて知りましたし、DNA解析を用いていることも驚きでした。長きにわたる盲導犬の育成・繁殖に基づいた経験によるもので感服いたしました。
・最新の技術だけでなくトレーナーの力量も必要というところに「犬と人」を感じることができました。またユーザーさんも盲導犬との関係づくりに努力が求められていることも初めて知ることができました。日々継続の訓練。とてもグッとくるものがありました。
・正しい接し方をすれば犬は人が望む行動をしてくれる。犬が群れを形成する動物であることを忘れない。ルールを教えることが犬のストレス軽減につながる。規則ある群れ、、安定、やはりそこに行きつくのかと納得しました。
・セミナーを通していつもとは違った視点で犬について考えるきっかえをいただけて感謝いたします。
・犬を育てる環境の大事さを改めて感じました。
・飼い主の変わらぬ態度と根気強さで犬は変わっていくのだなと、クラスで教えていただいたことを改めて感じました。
・結局のところ、人間次第「犬はいつでも正しい」ということを再認識できました。
・もっと自分の犬をよく観察し、もっと信じてあげようと思います。「する前に叱る」家族全員で徹底します。
・盲導犬について否定的な話を聞くこともありますが、それも結局は人次第だなぁとと思いました。
・正しく犬を知ってそれを正しく伝えていくことって本当に大切ですね。でもそれは、とてつもなく労力を使うし大変だと容易に想像できます。
・訓練の理由付けを改めて確認できたのであとは実践あるのみです。
・盲導犬についてはメディアからはいろいろ目耳にしましたが直接関わられた方からの生のお話をお聞き出来てとても興味深く拝聴しました。
・盲導犬にちうての歴史や育成の仕組みなど、くわしくまた系統だって教えていただき、とても興味深かったです。
・水谷先生のお話、すごく心に響きました。盲導犬というほんとに人に寄り添えす犬を指導されているから人にも寄り添えるんだなと感じました。白黒はっきりとする、ダメなことはダメ。自分のことを再認識する機会になりました。
・うちの犬は雑種犬の保護犬ですからもうどうkねとはかけ離れた存在ではありますが、遺伝より環境やトレーニングが重要であることが聞けて励みになりました。
・盲導犬は歩行の前にも必ずフセやオスワリをさせるとのお話も改めて基礎をおろそかにしないことが重要なのだなと思いました。
・本当に大切なのは人間が基本を守ること、グレーゾーンを作らない、白黒はっきりさせること。盲導犬は特別だから当たり前ということではなく犬と暮らすための基本を改めて学ばせていただきました。
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他にもたくさんいただきましたが一部は省略させていただきました。
「犬と飼い主の関係」はどれが正しいということはなく、自分がどうしていきたいのかをまず考えるところからです。
そして「関係」なのですから、犬はどうして行きたいのかを考える必要性があります。
そのためには、犬はどのような動物なのかを知る必要があります。
いろんな人がいろんな視点から見る「犬」という動物。
私もまだまだ完全にわかっているとは言えません。だからこうして毎日学んでいるのです。
学びながら「犬との信頼関係」を築いていくために何をすればよいのかを気づき実践していくただそれだけです。
今回のセミナーですが、友人が多忙な中で時間を作って準備してくれ、ボランティアとして講師を引き受けてくれました。
20代のころからふたりともずっと「犬が好き」という共通点を持ちながら、共に犬にはまった人生を送ることになりました。
彼女は盲導犬を育てるために街中を歩き続け、私は犬を育てる飼い主を育てるために山を歩き回っています。
どちらも同じ犬という動物、犬は本当に奥が深いのだと思うのです。
そして犬はやっぱり素晴らしい生き物ですね。
犬の「心」はどのようにして生まれたのか。
「ヒト」と最も近い「チンパンジー」の違いにみる社会性
先日、動画配信で東京大学の公開講座を拝見しました。東京大学の長谷川寿一先生の「ヒトの心はどのように生れ、進化してきたか?」という題目の口座で2015年に講演されたものです。
このような興味深い講演が無料で配信されているのはありがたいことです。
長谷川先生の講義では「ヒトの心」について考えるにあたり「ヒト」とはというところに焦点を当てられています。
ヒトとほぼ同族とみられいてるチンパンジーとの共通と相違。
大変近い動物であるにも関わらず、社会生活の主軸ともなる部分で違いも見られるとのこと。
例えば、夫婦関係を築くヒトと異なりチンパンジーは繁殖時だけの関係性であることや、子供を育てる方法として女性たちが社会集団としてみなで子育てをするヒトと異なり、チンパンジーはメスがひとりで子供を育て上げることなど大きな違いがあることなどとても興味深いことです。
「ヒト」は異なる種「イヌ」と似ているところが多い
ヒトとチンパンジーが近い関係にある動物としているのはDNA配列が生物学的に近いことだということです。イヌとオオカミが近いと言われるのも、上記と同じ理由です。
生物学的には非常に近いヒトとチンパンジーですが、社会構造はむしろ、全く別の種である動物の方が近いというのが面白いところです。
講義の中でも鳥の種の中には生涯「一夫一婦」を貫くものもいるそうで、仲睦まじい夫婦をオシドリ夫婦という由来ですね。
夫婦関係でいえばオオカミはオスとメスの関係性が深く一夫一婦にあたります。
また、オオカミの子育て方法はオスも子育てに参加し、子供を産まないメスもいっしょに子育てをするというまさにヒト族ヒト科の私たちとよく似ています。
イヌとなると繁殖に人間の手が張り込んでしまうため、どのような形で繁殖を行っているかで、オスとメスの子育てに関する行動はかなり変わってしまいます。
人工的な繁殖下におかれたイヌは、子犬のために食料をとってくることもないし、メスといっしょに暮らしていない繁殖用のオスは交配後にメスや子犬を守ったりすることもありません。
イヌの行動が人の作った環境の中でどんどん変化していくことに人側は無関心でいるようですが、このことはイヌのコミュニケーションの能力にも強く影響してきていると思います。
犬の「心」はどのようにして生まれたのか。
長谷川先生は「ヒトの心はどのように生れ、進化してきたか?」の題目の答えらしきものを講義の中では話していません。私も同じような講義をするのでわかりますが、答えはまだない、だから考える過程を教えて下さっているのだと受け取りました。先生の講義を聴きながら「ヒトの心」は社会的集団の中で生まれているのだと考えました。
さらにその社会的集団は、集団行動を維持しようするための目的とコミュニケーションを必要としています。
社会的集団から外れ、集団行動を維持する目的を失ってしまうと、コミュニケーションはなくなり心もまた失われるのではないかと考えるのです。
「心」と「感情」を同等にすることはできませんが、常に定まらずに動く「心」を安定させているのもまた結束の高い社会的集団に所属して活動をすることにあるのではないかとまた発展して考えました。
これはヒトの話でもあるし、本来はオオカミとして野生で社会生活を送っていたイヌのことでもあります。
イヌはヒトの捨てたゴミを拾う生活をするようになって社会生活を捨てました。みんなで生きるよりひとりの方が価値が高いからです。
危険と戦うなら集団がいいけれど、逃げるならひとりが良いでしょう。
イヌは一匹オオカミになってしまったということです。
そして一部のイヌは今、ヒトの家族という社会集団の中に入って生活をしています。
ゴミを拾うよりもヒトから食べ物をもらい、同時に集団に所属できるというオオカミへと復帰できる行動の変化が促されます。
人に飼われている犬は、家族という社会集団に入って群れとして活動し、コミュニケーションを発達させ、そして心を宿していくのではないでしょうか。
そんなことを考える機会を長谷川先生にいただき感謝いたします。
明日はグッドボーイハートの山の学校に講師をお迎えしてのセミナー開催です。
講師をお迎えするのは久しぶりなのでとてもドキドキしています。
犬について共に学びましょう。
まだまだ知らないことばかりです。

7月24日トレッキング&セミナーにご参加の皆様へのお知らせ
今週末7月24日㈰の天気予報が晴マークになってホッとしました。
セミナーにはたくさんの方がご参加予定で、あわせてグループトレッキングクラスも頭数うが多めとなっております。
以下のことにご協力いただきたくお願いいたします。
・駐車スペースについて
駐車場の代わりとして以下のスペースをご利用下さい。
トレッキングクラスにいつもご参加の方で、過去にご利用いただいた場所も大丈夫です。
ゴミ捨て場付近、消防署斜め前の格納庫の前、バス停周辺の空きスペースなど。
駐車スペースがない場合にはお声かけ下さい。
・トレッキングクラスについて
いつもと同じように最初は広場に集合してください。
家周辺はお預かりの犬たちがいるため、待機される場合も広場でお願いします。
トイレは混み合うことが予想されますので、近くのお店や観音の滝のトイレをご利用下さい。
トレッキングの順序はいつもとおり上級者が半分より後ろとなりますのでよろしくお願いします。
トレッキング後の対面クラスは時間の都合で件数を限らせていただきます。
季節の虫対策は各自で行って下さい。
携帯の蚊取線香をご利用の場合には周囲の方へのお気遣いをお願いします。
・トレッキング後の犬の待機場所について
小型犬はできるだけクレート待機でお願いします。
クレートの貸し出しを希望される方は事前にご連絡下さい。
クレートを持参される方は、廊下スペースに配置しますので犬をクレートに入れたあとにお声かけ下さい。
係留を希望される方は事前にお声かけ下さい。日陰で休める場所に準備したいと思います。よろしくお願いします。
・お昼休憩について
室内に椅子が配置されておりいつもよりスペースがありません。
昼食場所としてご利用いただいて構いません。
他に各自のお車で昼食をとられても構いません。
12時10分前までにお部屋にお戻りください。
・セミナー料金について
釣銭のいらないようにご準備下さい。
クラス代金と別にしてお持ち下さい。
セミナー開始前に受付をいたしますのでお支払下さい。
・講師への質問について
質問時間を設けますので、個人的にご質問されることはご遠慮下さい。
講師も休憩時間が必要なのでご理解下さい。
・その他
当日はオンラインセミナーも同時並行しております。
マスクは各自の判断でご使用下さい。
その他ご不明なことは事前にお問い合わせ下さい。
みなさんとの学びの機会をとても楽しみにしています。
当日は宜しくお願いします。
大きく成長した木は根が張って強い!犬の脳も根が伸びると安心&安定するから原理は同じ。
枝が広がったように根が張ったクヌギはすごく強い
山の学校のオポ広場の整備を行っています。やっと登記申請が終わったので本来の目的にあったように計画を形に変えていくことになりました。
それで、植樹した木々は山の方に植え替える作戦を実行しようとスコップをもってとりかかったのですがここで大事件。
人の背の高さほどに成長したクヌギの木々の根を掘り出そうと掘っても掘っても根が長く伸びています。
愕然として少し遠巻きに見ると、どうやら木の高さや枝の広がった方向と同じように根も張っています。木の高さが160センチくらいだと枝ぶりは2メートル以上、つまり横に4メートルは根が張っていることになります。
私はすぐに「無理」を宣言。俺にもやらせてくれとダンナくんがチャレンジしたけれど男二人でも無理、それほど木の根が張っていたということです。
根が張った木々は頑丈で全く引き抜ける感じではないのです。すばらしい安定力これこそ犬の脳の発達と同じ仕組みだと改めて感動しました。
犬の脳の発達は根を伸ばすこと
犬の脳の最初の発達は子犬期の脳の発達です。子犬期の脳の発達とは、脳内の神経が根を張るように伸びていくことから始まります。伸びた根はそれぞれが地面との連携をとりながらいかに効率よく養分を吸い上げようとしているのがわかります。
根が張って地面から栄養を吸い上げているために若木の枝にはたくさんの蟻が活動をしていました。すごい栄養分なのですね。
犬の脳でも子犬のころに脳の神経が安心&安全をリターンにしながら自律的な活動を繰り返すことで根が順調に伸びていきます。
樹木の生長と犬の成長は同じなはずなのに、植物のようにはいかないのが犬の成長を支えることです。
ここには植物と動物のしくみの違いがあるからです。
犬の脳は発達できないのに犬の体は成長していく
もし子犬の脳の神経が健やかに発達することができなければ、犬は生後数ケ月もするとそれを様々な行動で表現します。発達不全の犬は不安を抱えて行動できない、不安を抱えて依存的になる、多動になるなどの行動が起きるようになります。
悪循環が始まり、活動が広がる犬の脳は周囲の新しい出来事を拒否するようになります。
脳の神経は伸びることもできず、縮んだままになり小さな脳になります。
ところが、困ったことにというのも変ですが犬の体だけは成長するのです。
植物だったら根が伸びなければ木は育たないし大きくならないのですから、根が伸びていないことが外からみてもわかります。
犬の場合には体だけはどんどん大きくなっていくので「犬はちゃんと成長している」ようにしか見えないのです。ここのところが難しいところですね。
体は大きくなっていっても脳内の神経が発達していかなければ、犬は不安定な行動つまりストレス性行動を日常的にするようになってきます。
犬の体重が増えていくことは気にしても、犬の行動が安定しているかどうかをチェックすることは一般の方には難しいでしょう。
犬にかかわる仕事をしている方の中にも、犬の行動を適切に評価できる人は数少ないようです。
最近では犬の社会化学習のために犬の幼稚園を利用する方も増えていますが、結局社会化がうまくいかったというケースもよく耳にします。
他にも他の犬に会わせるためにドッグランに通い続けて社会化がうまいかなかったということも増えています。
犬の脳が安心&安定を積み重ねながら根を伸ばして脳内に神経細胞という地図がしっかりと根付けば、子犬が成長の過程で出会う困難に対して簡単には倒れない心を持てるようになります。
それが本来の犬の社会化です。
ですが、オポ広場のクヌギが大地に根を張ったように犬の脳の発達を促すためには「育つ環境を整える」ことが大切です。
子犬が育つ環境、犬の脳が発達する環境、犬が社会化する環境について、深く深く考えていきましょう。

木の根を掘り返す手伝いをするバロンちゃんときいろちゃん。犬は穴掘りが得意です。
明日は追い山「速く動く山は形がきれい」集団行動について考える。
コロナ禍で開催できなかった博多山笠の追い山が明日の早朝に行われます。
直接見に行くことはできなかったけど、ラジオやテレビから流れてくる走る山の音や声を聴きました。
博多っ子である私にとっては聞きなれた季節の音、日常が戻ってきたようでうれしく思いました。
さて、その追い山ならしの映像を見て解説を聞きながら考えたことは「集団行動について」です。
集団行動は一定の数の集団(グループ)がある規則にのっとり動く行動のことをいいます。
幼稚園のときから集団行動は練習していますが、小学校、中学校となるとその集団行動のレベルも高まってきます。
追い山も移動中に舁き手が次々と持ち場を交代し持ち場に応じて役割が決まっていること、とても高度な集団行動で一トンという重さある山が動かされています。
追山ならしの動画を見ていると、タイムの速い曳山の特徴は形と動きがきれいであることです。解説者の方も速いタイムの曳山の動きを「美しい」と評価しました。速く動こうとする目的に形が応じると美しい形になります。
この原理は犬にも当てはまります。
一定の速度を保って少し早く歩く、散歩という行動。
見ていて美しいと感じられるものは、犬と人がその機能性を十分に発揮している行動です。
一方でゆっくりとした速度で歩く山歩きという行動。
山歩きには前後ではなく上下という空間も加わりますので、前に進むと同時に上に進む行動が出たり、下に進むという行動も伴います。
移動するたびに人も犬も個体の形は変わっていきますから、なかなか美しいと感じられるのには時間がかかるのですが、これが美しいとみられるようになると、全体の動きはとてもバランスがとれてきます。
犬と人という二つの個体がいっしょになって集団となった場合も、やはりバランスと集団化という二つの機能性を発揮できている山歩きはとてもきれいだなと思います。
犬とのより良い関係性を求めるために、犬と向き合ってボールを投げていても何か結果がでていないと感じられることはないでしょうか?
群れの美しさとは、集団で移動する機能美の美しさ。
それを実現するために身体的な能力は当然ながら必要ですが、あわせてお互いの存在を意識して、同じ目的をもって結束して行動することが何よりも大切なことです。
明日の追い山笠でコロナや不幸な事件や不安な思いが吹き飛んで、みなが明るい気持ちを取り戻すことができますように。
最後は結局のところ神頼みとなりますが、小さな存在である私は私なりに日々の勤めに励むだけです。

オポ広場で遊ぶ犬たち