グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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ヒグマ事件から考えるヒトと動物の境界線とそれを伝える役割について

北海道でクマが人を襲った事件が起きたことで、いろいろと考えることがありました。

ある程度、考えがまとまってからブログに書こうと思っていたのですが、答えがはっきりとでないまま考えを巡らせてしまい今日に至りました。

事件の経緯としては7月12日に北海道でヒグマが新聞配達中の男性を襲って殺害し、同月18日に現場近くで偶然、ハンターにより射殺されたヒグマとDNAが一致したことで同個体であることがわかったというものでした。

ヒグマは体長が2メートル、体重が218キロだったらしく、動物園以外でクマに接したことのなくても、人を襲うには十分のサイズでありその殺傷能力も高いものであることも十分にわかります。

また、このヒグマが4年前に女性を襲ったクマであることもわかったため、このヒグマは繰り返し人に対して攻撃を繰り返していたことになります。

 

ヒグマは人を恐れないのか?

今回の事件で報道されているヒグマの行動についての解説の中で関心を持ったことは二つです。

一つ目は、ヒグマはどういう目的で人を襲うのかということ。

二つ目は、このヒグマが日中も人の居住区をうろつくなどの行動を繰り返していたこと。

動物が人を襲うには何らかの理由があるはずです。捕食のため(食べるため)、自分のテリトリーの中に外的が侵入したと感じたため、脅威を感じたためなどが主な理由です。

ヒグマが人を食べるために人を襲うという可能性もゼロではないようです。ヒグマは雑食動物で木の実や魚を食べるイメージが強いのですが、立派な牙をもち肉食をする消化機能も持っているからです。

しかし、ここでもっと問題にしなければいけないのは、本来は森林に住むはずのヒグマがなぜ森林から離れた人里まで頻繁に降りて来るようになったのかということです。

このヒグマの行動のパターンについて説明するニュースの中に、OSO18と名付けられたヒグマとの比較についてのコメントがあり、興味深く聞き入りました。

OSO18は最初に被害が確認された2019年から駆除される2023年までの間に、66頭もの家畜牛を襲ったクマの個体名です。

OSO18は、多数のわなにもかからず監視カメラで確認できる回数も少なく、非常に警戒心が高いためすることができずに家畜を襲われ続けたということでした。家畜の被害が大変大きかったことから、行政も民間も総力で取り組まれたにも関わらず4年という長い期間を逃げ続けながらも家畜を襲い続けたヒグマの最後は、偶然見つけたハンターによる駆除でした。

OSO18の行動にみることができるように警戒心が非常に高く人の気配を避けて行動するというのは、ヒグマの行動としては普通であるように思えます。ヒグマと人は長い間に渡って衝突を繰り返してきた歴史があるからこそヒグマは人を恐れ、人に近づかないようにすることで人とヒグマの境界線が保たれていたはずです。

ところが、昨月北海道で人を襲ったヒグマは人を恐れることなくなんども目撃されています。日中、人里をうろついていることもあり、また別のヒグマも住宅街をうろつく映像が撮影されています。

ヒグマが警戒することなく人里に近づくようになり、人を見ても逃げることなく攻撃する、人のゴミに執着したり、人を食べる個体がでるなど、ヒグマの人への執着はこうした行動を繰り返すことでさらに激しくなりそうです。

 

何故ヒグマは人を恐れなくなったのか?

警戒してなかなか人の前に姿を現さないヒグマと、人を恐れず日中も市街地をうろつくヒグマ。どちらも問題ではあるのでしょうが、人にとっての脅威は後者の方です。

ヒグマに限らず野生動物は人を恐れなくなりつつあるというのを山暮らしで感じることがあります。山の学校の近くをうろつくもっとも恐るべき動物は、イノシシです。

イノシシは雑食の上に人肉を食べることはないためヒグマとはまた違いますが、予期せぬ接近で人を襲うことないとは言い切れません。

最近はあまりないのですが、以前は犬と山歩きをしている最中に山の中でイノシシと遭遇することがたまにありました。

しかし、イノシシは私と犬に出会うと必ず逃げる、また夜に庭先に姿を現しても人や犬の気配を察知するとやはり逃げるという印象でした。

ところが、最近のイノシシは庭先で人を見てもすぐに逃げようとしません。イノシシは人を見ているようで人という動物の気配に以前のように敏感でなくなったように思えるのです。

イノシシの農作物被害はまだ大変大きなものなので、山のあちこちにわなが設置されていますし、猟期になるとそれぞれの山で猟師がイノシシ狩をしています。

しかし、そもそも山里に住んでいる人間の数が50年前と比較すれば圧倒的に少なく、このあたりも限界集落と呼ばれる地区ですから、いつも設置してあるわなくらいではイノシシも人から狩られる恐怖を忘れてしまいます。

ヒグマと人の境界線も緩くなってしまった理由は、イノシシと人の間の境界線が緩くなった理由と同じではないでしょうか。

 

囲われて生きているのは野生動物なのかそれとも人なのか?

都市空間で行き交う多くの人の活動の中にいると、パソコンの画面に出てくるヒグマの姿は山に閉じ込められた動物という風に間違った感覚に陥ることがあります。

逆に山の家に暮らして感じるのは、囲われて生きているのは山に住む野生動物ではなく都市空間に住む人間の方です。

山の家の敷地や周囲の畑にもたくさんのイノシシ除けの金網が見られます。イノシシ除けの金網のある風景、それが日本の里山の風景です。

人が守る敷地や人が暮らす市街地にはそれを守る物理的な境界線がいくつも作られており、民家の周りは壁や木々で囲われています。

物理的な境界線を設置し、見えない境界線を動物たちに伝えることで自分たちの生活を守っているのが人間という動物だと思います。

見えない境界線については、その境界線を野生動物たちが越さないように、常に境界線越しに野生動物を追い立てる行動を日々繰り返していなければなりません。この野生動物の追い立て役として最も活躍しているのが犬達なはずです。

ところが犬は家畜化やペット化が進んだ結果、人に寄り添う能力は十分に持っているけれど、野生動物を威嚇して追い立てる程の能力や精神力を持ち合わせることがなくなってきました。

特に相手がヒグマともなると家畜化された家庭犬には難しいことは想像できます。イノシシと遭遇しても怯むことのなかった黒ラブの愛犬オポでも、ヒグマを目の前にして対峙することなどはできるわけもありません。

最近ではサルと追わせるモンキードッグもあるように、クマと人の間に生じる問題を解決するために訓練育成された犬をベアドッグとされているそうです。

今回の様々なニュースではベアドッグを取り上げているものを探すことができなかったのですが、このような取り組みはもっと広く認知されるべきではないかと思います。

ベアドッグは犬ではなく狼犬として繁殖された者の中から、ベアドッグとして適性のあるものを育てているということです。

狼犬であることがペット化された犬とは全く違う遺伝子であり、非常に特殊な感性を持つ人々によって育成されていることが想像できます。

きっとすばらしい能力をもつであろうベアドッグの今後の活躍を多いに期待しています。

私の足元にいる犬達は、とてもクマに対抗できるような犬ではありませんが、どんなに小さな犬にも我が身や我が飼い主に危険が迫ったときには、決して相手を興奮させず、しかし必要に応じて吠えて威嚇する防衛能力を発揮して欲しいと思います。

家畜化したとはいえ狼の末裔であることを犬には忘れて欲しくない、そしてまた自分自身を家畜化した人であっても、私自身も戦う動物であることを忘れたくありません。

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8月のグループトレッキングクラスの日程

8月のグループトレッキングクラスは以下の日程で開催します。

8月24日 日曜日

9時30分開始

ご参加希望の方はご連絡下さい。

お盆を過ぎると山はもう秋の気配です。

季節の移り変わりを犬と共に感じましょう。

共感こそ最大のコミュニケーションです。

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都会は酷暑でも自然は健やかな暑さの中、グループトレッキングクラスを開催しました。

福岡の都会は酷暑が続いているようです。

私も隔週で家庭訪問レッスンのために福岡に向かいますので、熱中症ではないかと感じることがありました。私達人間ですらこんなに暑いのに、犬達はどんなに辛いだろうと都会の犬達を案じています。

この酷暑の7月にグループトレッキングクラスを開催しました。

トレッキングクラスの集合風景。日陰に集まる犬と人。



こんな暑い中を歩けるのか、可哀そうではないかと思われるかもしれませんが、山の中は福岡と比較すると10度くらいは気温が低いのです。

一番辛い暑さは梅雨の間の晴れ間であって、梅雨を超えてしまうとからっとした空気となり、冷たい風が山の中を抜けていきます。

室内は一日を通してエアコンを使わなくてよいくらいの気温で、屋外でも日陰では不快感を感じることなく過ごせます。

トレッキング出発前の整列風景。日差しは柔らかいです。



山の中はさらに日陰が増えていき、汗ばむこともほとんどなく歩くことができます。

大型犬もいましたが、みな元気に歩いていました。


歩くコースはとても短いのですが、止まったり歩いたりを繰り返しながらゆっくりペースで進みます。

トレッキングクラスは行って帰ってくることが目的ではありません。グループで行う社会活動であり、一歩、一歩とみなと強調して歩き共感性を高めていくことが目的です。

街中ではリードを引っ張る犬たちも山の中ではゆっくりと歩くことができます。小さな柴犬くんも初参加でしたが、普段の散歩とは全く違ってリラックスして行動していました。

生後5カ月の柴犬くん。



犬が山の中で何を感じ何を思っているのかを私達が全て知ることはできません。私たちが受け取ることができるのは、犬が満足しているのか、リラックスできているか、ワクワクとしているかどうかということだけです。

もし、犬に何かワクワクする雰囲気を感じ取ることができるなら、きっと犬は山の中で何かを感じているのです。その何かを明らかにすることができなくても、犬と山で過ごす価値は絶対にあります。

犬がワクワクしているように、私達人間も山の中で何かを受け取り感じているはずです。時折吹く冷たい風に「ああ、気持ちいいな」と感じることができるだけで、移り変わる山の景色を肌で感じるだけで、山にいる時間は十分に満たされています。

グループトレッキング風景。



トレッキング後は休憩時間をとった後に、生徒さんたちの有志が花壇の整備、ハーブ園の整備、紫陽花周りの手入れなどを行って下さいました。

毎日の犬のお世話でなかなか行き届かない環境整備をこうしてお手伝いして下さる上に、野菜はハーブを植えていただき、私の夢のひとつ「畑」を叶えていただき本当にありがたいことです。

みなで作業を終えた後に、犬達といっしょに川に行きました。貸して下さっている敷地があり、そこで川遊びができるのです。皆で入れるようにと事前に整備も進めていました。

生徒さんたちと川遊び。一番左がジェイ、その横が私です。



川遊びの理由はまた別に書きたいと思いますが、三度目の川でジェイも次第に余裕のある行動ができるようになりました。


自然の中には学びがたくさんあります。

学びというと何かを覚えることだけと勘違いしがちですが、学びというのは答えを出すことだけではないと思うのです。

犬と共に私達も学べる場が自然の中にはいっぱいあって、この活動の場がいつまでも残っていますようにと願うばかりです。

来月のグループトレッキングクラスはお盆が過ぎてからの8月末になります。お盆が過ぎると山はもう秋の気配ですから、あのにっくきブヨはもういなくなっているかな。最近はブヨに変わってアブが出てくるようになり、しばらくは飛び交う敵と戦う毎日です。

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家庭訪問トレーニングクラスの受付についてのご案内

日頃より当校のブログをご覧いただきありがとうございます。

“家庭訪問トレーニングクラス”の受付についてお知らせいたします。

日頃より当校のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

このたび、「家庭訪問トレーニングクラス」の新規受付についてお知らせいたします。

現在、お問い合わせが大変多く、十分な対応が難しい状況となっているため、新規の家庭訪問トレーニングクラスの受付を当面の間、中止させていただきます。

ただし、以下のいずれかに該当する方は対象外となります。


  1. 過去に当校のクラスをご利用いただいたことのある方

  2. アフタークラスの受講をご希望の方

  3. ご紹介者のある方(動物病院・ペットショップ等を含む)

再開の際には、当ブログにてご案内いたしますので、ご希望の方は恐れ入りますが随時ご確認ください。

現在、多くの皆さまにクラスをご利用いただいておりますこと、心より感謝申し上げます。

今後も、犬と飼い主さまとのより良い関係づくりと、豊かな暮らしのお手伝いができるよう努めてまいります。

GoodBoyHeart

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7月のグループクラス開催のお知らせ

梅雨明けしたようです。いつもよりずっと早い梅雨明け、活動するには助かりますが雨不足は多少気になります。

長い夏がやってきますが、犬にとっては短い夏です。

犬にとっては十数回のうちの1回の夏を一緒に楽しみましょう。

来月のグループトレッキングクラスは以下の日程で開催します。

7月27日 日曜日 9時30分開始

雨天もしくは気温によっては中止することもございます。

前日までに決定します。

※日程を間違えて記入しましたので訂正いたします。


 

Posted in お知らせ

梅雨の合間にグループトレッキングクラスを開催しました。

梅雨。雨の続く毎日は犬にとっては休息の日々です。

今月のグループトレッキングクラスも雨予報となり、雨天中止としようかなと考えていたのですが、「雨でも参加します!」といつも通り上級者の生徒さんからの連絡を受けてグッドボーイハートらしく雨天決行となりました。

グループトレッキング 皆が気にしているのは入口に作っていただいたオポガーデン



都会から山へとやってくる犬と飼い主の気持ちが届いのか、なんとトレッキングの時間だけ雨が上がりました。

みんな雨を覚悟してレインコート持参で来ていたため、ほっと一安心。それどころか、風がとても冷たくイオンシャワーがあふれる癒しの空間の山の環境でした。

梅雨明けに襲ってくる蚊もまだ出てきていないし、地面も濡れていないし、ほんとにラッキーな山歩きでした。

グループトレッキング



集合場所の地面にはオオバコが花をつけて立ち上がっています。オオバコのある環境は土が肥えているらしいのですが、少しずつ広がったオオバコのあるオポ広場は年々変化しているようです。

久しぶりに参加したので緊張気味の犬ちゃんもいましたが、犬達も慣れてきたようで寛容に対応していました。


ちょっとした環境の変化に敏感な犬は、飼い主の日々の仕事が忙しくなるだけでストレスを抱えることもあります。犬はとてもゆっくりとした動物で、たくさんの時間と空間を必要としている動物ですが、その時間と空間すらも群れがいないと成り立ちません。


山歩きはいつもゆっくりペース。すれ違う樹々の成長を見ながら話しかけながら、手入れをしながら、山の中に入るのは山の中に馴染むということだから、ゆっくりゆっくりと。


写真は休憩場所で水を飲むアルクくんです。飲み水は必要な犬もいるし要らない犬もいます。それぞれの犬の性質や体調を考えて行動するのも飼い主の役割です。


最年長は10歳のクールくんでした。暑さが苦手のゴールデンリトリバーですが、この日は歩きもスムーズでした。


Jも先頭で参加しました。山では大好物の杉の実拾いが始まり、皆に「何食べてるの?」と不思議がられていました。私も杉の実をこんなに食べる犬を初めて見ました。これもまた個性というものなのかもしれません。

グループトレッキング



他の犬との空間共有があまり得意でない犬も、一列に並んで歩く集団の移動はスムーズに受け入れていきます。

他の生物がたくさんいる山という空間だからこそ、何が安心&安全なのかを知っているようです。

これから夏にかけて山歩きはベストシーズンとは言えませんが、厳しい季節があるのは山も同じです。山だから自然だからといっていつも快適を与えてくれるわけではありません。

梅雨が明けたら夏が来る、辛抱の季節をJも初めて迎えます。


ガーデニング部の皆様、素敵な花壇をありがとうございます!

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2025年のGoodBoyHeartオリジナルTシャツが完成しました!

今年もTシャツを作らないのですか?という言葉に乗せられて、またオリジナルTシャツを作ってしまいました。簡単にオリジナルTシャツが作れる時代になりましたので、日々を楽しむためのちょっとした遊び心に大切なメッセージをのせました。

昨年は「ノージャンピング&ノーマーキング」とか「ドントタッチ ドッグ」といったNOメッセージだったので、今年はDOメッセージへと転換しました。

グッドボーイハートのDO!といえば、やはりこのメッセージです。



アレンジもあります。


グループトレッキング風景をTシャツに。


トレッキングだけでなくてキャンプにも行こう、ということで。


このTシャツにはフランス語バージョンもあります。

キャンプTシャツはいろんなものを作りました。

 

Tシャツの色違いはこんな感じです。


 





プリントのバリエーションがあるのは「犬とキャンプ」のみです。

Tシャツの生地色は選べます。

詳しくはこちらのページでご確認下さい。

グッドボーイハートのTシャツショップ

グッドボーイハートでもご注文が可能です。

在庫はなく入荷までに4日ほどかかりますのでご了承下さい。

料金 

ホワイトシャツ 2717円(グッドボーイハートでは2700円)

カラーシャツ 3157円(グッドボーイハートでは3000円)

今年は私のチャットGPTもちょっとだけ活躍しました。

「公園にいる犬」の制作から一年が経ち成長を感じることができました。

 

犬と山を歩こう!どんどん歩こう!

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犬が成長することの難しさとは…

J(ジェイ)を迎えてから4ケ月が経ちました。

迎えた当時のジェイは走るのもおぼつかない、ジャンプ力もお粗末なものでした。それが、数ケ月で軽くジャンプするようになり、ぼとぼとだった体型はシャープに引き締まり後ろ脚にははっきりと筋肉が見えるようになりました。

そんな変化したジェイを見て「ようなったな~」と微笑むダンナくん、我が犬の成長を喜ぶ飼い主の気持ちを共感できるようになったようです。

どの飼い主さんも「うちのコ、成長しましたよね。」とか「うちのコ、成長していますか?」と我が犬の成長に関しての関心度は高いものです。

どの犬も適切な環境の中で育てば、生後三歳位までは成長を続けます。なぜかというと、肉体的な発達のピークが生後三歳頃に訪れるからです。

子犬の成長は身体の成長と発達です。毎日どんどんできることが増えていきます。筋肉と骨が発達してジャンプしたり回転したり走ったり止まるという動きの能力が優れていくのが目に見えて解ります。成犬であるジェイも今月で2歳を迎えますので、まだまだ身体的に発達する要素があったのでしょう。

もちろん、生後三歳までに発達するのは体だけではありません。完全な保護を求める子犬期から保護や安全を離れていこうとする発達の動きを見せる青年期へと向かっていく過程で飼い主や成犬との関係性にも変化が見られます。

保護と安全を望むことと、成長を求めて行動をすることには対立が生れます。保護の殻を破って歩き出せばそこには危険が存在するからです。卵の殻を割って出る小鳥のように成長はリスクを伴うものです。

野生動物の中には巣立ちという親元を絶対に離れなければいけない時期がくる動物もいますが、イヌ科のオオカミを基本とする種類の動物には親元を離れる巣立ちはありません。そこにあるのは、依存から服従へと変わる関係性だけです。

犬は個体の性質(個性)によって、自立を望むものと依存の継続を望むものに分かれます。肉体的には成長するが精神的には成長を拒むのは後者の方です。

依存を望む性質の犬は、体は成犬となり成長をするため三歳くらいまでは成長していると感じられるのですが、三歳を過ぎても精神的には子犬のままとなり体と脳の間では常に葛藤が起きます。

犬の中にある成長欲求が途絶えてしまえば、その犬は活動性を失いほとんど寝ている大人しい犬となるかもしれません。成長の中で生まれる服従性を引き出されることもないため飼い主とは長い依存関係を続けることでしょう。

また、自立を望む性質の犬も成長を望むが飼い主との服従関係を拒む自立は孤立を生みだします。昭和なら逃走を繰り替えす犬や放浪生活を好んだ犬がこちらの部類に入りますが、今はそんな気ままな生活は許されません。国内では全ての犬が「飼う」ことが義務付けられているからです。

犬の服従性の発達について熱心に語るのは、それが犬がグループ(群れ)で自らの適性を発揮する場を持つということだからです。

適性というと何かの役割を特別に求められるだと思われがちです。たとえば、盲導犬になるためには盲導犬になるための適性が必要です。では盲導犬にならなかったジェイには、何の適性もないということなのかというと、そういうことではないのです。

ジェイには家庭犬としての素晴らしい資質があります。その資質の中に服従性質も含まれています。私達がジェイを群れの一員として迎え、毎日の活動を通してその服従性が引き出されるような環境を整えていけるかどうか、それがジェイの成長に繋がっていきます。

ジェイが肉体的に発達していくことはとても嬉しいことです。だからこそその発達した身体能力を持って役割を発揮することができるように共に過ごす時間を大切にしています。

人間なら青年期に自分が何に合っているのかが分からなくて自分には合わない仕事について悩むこともあると思いますが、犬には服従性という大きな適性がありますので悩むこともありません。愛玩犬も立派な服従関係で成り立つ仕事です。それは依存関係とは大きく異なります。

犬を見ていて子供らしくていいなとか自由でいいななど、ペットに自分を投影して喜びたいという気持ちが起きることも起こりやすい現象ですが、犬は飼い主の求めたように振舞う性質を持っています。犬が自然に成長できる環境を整えるためにも、犬に自分の投影を求めないこと、つまり飼い主自身が幸せであることは何よりも大切なことです。

本日は考えながら書いた記事となり、まとまりがなくなりました。また追記をしていきたいと思います。

尻尾が太くなり高くあげるようになったジェイ

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オンラインクラス受講生がトレッキングクラスに初参加。

オンラインクラスの受講について

福岡にもたくさんあるドッグスクールは、どのスクールも「人と犬の豊かな暮らし」を目指していると思うのですが、スクールによって価値観や特色が違います。

グッドボーイハートの特徴あるクラスといえば、自然と関わるクラスです。犬と山歩きをするトレッキングクラスや自然環境の中で活動するお預かりのクラスがあります。

また当校の特徴として、どちらかというと犬の立場にたって考えるという姿勢を大切にしています。犬の習性や本能という機能ができるだけ発揮されることが犬の幸せにつながり、犬と人の関係を深めてくれると考えているからです。

このような特徴に共感して下さり当校でのクラス受講を希望される方からのお問い合わせをいろんな地域からいただくのですが、時には本州や海外といったこともあります。

遠方の方が最初に受講できるのはオンラインクラスです。オンラインクラスでは環境整備や犬の習性などについての座学はお話しできるものの、大切な犬との接し方やリードの使い方などを上手く伝授することができません。

 

本州でオンラインクラスを受講するロクちゃん

実は数ケ月前にも、本州にお住まいの飼い主からオンラインクラスの受講依頼を受けたのですが、上記の理由からカウンセリングは受講できるがトレーニングについては地元のトレーナーを探すことをおすすめし、その上でカウンセリングクラスを受けていただきました。

しかし、カウンセリングクラスを受講後にやはり当校でトレーニングを受講したいというご連絡を受けたため、再度、手技については対面でないと説明が十分にできないことをお伝えした上でオンラインクラスをスタートしました。

そして、クラスは進行してきたのですが、予想したとおりリードの使い方のところでお互いにフラストレーションを抱える時がやってきました。受講生はもともとバンに乗って旅行をしたり山歩きをしたりするのが趣味だとお聞きしていたので、「夏休みにロクちゃん(受講生の犬ちゃんの名前)と一緒にお出かけをされるのならぜひ九州にいらしてくださいね」と軽く口にしたのですが、なんとその後すぐに「九州行きます。」と連絡があったのです。

 

ロクちゃんのお預かりクラスと初めての山歩き

5月の連休終わりにロクちゃんは飼い主さんと一緒にオポハウスに到着しました。今回受講するクラスはお預かりクラスとトレッキングクラス、そしてクラスの途中でリードの使い方について説明することになりました。お預かりクラス中は飼い主さんたちは九州の山へと向かうという計画です。

この期間に数頭の犬達がいましたが、どの犬もオポハウスを定期的に利用している犬だったので対面はスムーズに進みました。

右がロクちゃん、左がジェイ、手前が菜々ちゃん、オポ広場にて



ロクちゃんは兄弟犬と少し関わったことがあるものの、地域では対面できる犬がおらず久しぶりに犬と交わることになりました。生後6ケ月で子犬から成犬に向かっていく変化の多い時期ですが、犬と強く関わりたいという欲求の高いロクちゃんにとっては一日はあっという間に過ぎたのではないかと思います。

手前がロイくんで奥がろくちゃん



お預かり期間が4日目になりやっと落ち着いてきたなというときに、お迎えの飼い主さんが到着しました。

最終日は予定されていた平日のプチグループトレッキングクラスに参加しました。まだリードを上手く使えない状態での参加となりましたが、山歩きに慣れていてバランスの取れる飼い主さんでしたので、なかなかいい具合にロクちゃんとの歩行が進みました。

グループトレッキングに参加したロクちゃんと飼い主さん



お預かり中の犬とのコミュニケーションの最中にフセの練習や止めといったら止めるなどの抑制の練習も自然としていたことも、自制を働かせる練習として効果があったようです。

トレッキング後は一緒に山歩きをしたグッドボーイハート生たちとお話をしたことで、ロクちゃん飼い主さんは「心が軽くなりました」と言われました。共に歩む仲間がいること、共感できる仲間がいることは新しいことを学んでいくなかでとても大切なことです。

今はインスタグラムといったお互いの活動を紹介する場もありますので、自慢しあうのではなく励まう道具としてSNSを活用し、お互いに学びを深めていかれるでしょう。

ヤギのアールとゼットを見つめるロクちゃん(黒い犬)


グッドボーイハートで学べること

今回のようなケースは例としては少ないです。やはり地域のスクールの方が利便性が高まり参加する頻度が高くなります。ドッグスクールは他のいろんな学びの学校と同じように、一度来て終わりというものではなく、長く続けて学ぶほど身に着くものは多くなります。

しかし、こうして遠方からオポハウスに来て下さった飼い主さんは、その行動力とその行動を起こすための原動力を発揮することで、きっと人以上の多くのものを持ち帰られたことと思います。

お預かり期間中に毎晩、こちらから送信した報告と写真や動画を見て、ロクちゃんの今までには見たことのない行動や変化に驚かれていました。預かり期間で犬たちが経験したことは犬にとっての学びにはなります。楽しいことだけでなくむしろ上手くいかないことや我慢を強いられること、犬と犬の関わりは表面的でないので対立は常に起きているからです。でもクラスを通して変化を促していきたいのは犬というよりも飼い主の方なのです。

例えば、お預かり期間中の動画を見て、自分が思っていた犬とは違うということを知ることや、自分が犬についてまだ何も知らないのだということに気づくことが一番大切なことです。その上で、犬に社会的な、特に犬と犬が接するという社会的な活動を与える習慣や環境がなければ、是非定期的に預かりクラスを利用していただきたいと思います。

犬と山を歩くクラスは、飼い主さんが犬と自立して活動をするためのきっかけを作るものです。またその上で、集団で山歩きをする仲間や環境が身近になければ当校のグループクラスでその活動を補っていただければと思います。自然の中での集団活動は犬には刺激ある活動となり、結束すればするほど引き締まるものです。そんな引き締まる経験が犬には良い刺激剤になります。

車もクレートも苦手な状態で本州から来てくれたロクちゃんと飼い主さんたちと貴重な時間を過ごさせていただき感謝いたします。この学びをまた次の学びへとつなげていきます。

追記になりますが、ロクちゃんの飼い主さんはカヌー犬の岳(がく)ちゃんに憧れて、という話を聴きました。わーと私が大きく反応すると「ご存じですか?」と聞き返されてしまいました。

ご存じもなにも、冒険家の野田知佑さんのカヌーに乗っていたミックス犬の岳ちゃんは犬大好き少女だった私にとっては憧れの存在でした。物凄く懐かしく、椎名誠先生の探検隊シリーズでアウトドア体験に憧れた幼少のときの記憶がふんわりと浮かんで消えました。

ロクちゃんの飼い主さんはものすごく若い世代なのに、時代を問わずに影響を与えている岳ちゃんの存在の素晴らしさに感嘆しました。ロクは麓、山麓からついた名前だそうで納得します。ロクちゃんはとても素敵な飼い主さんと巡り合ったのだなと深く思いました。いつの日かの再会を楽しみにしています。

手前がロクちゃんで奥がジェイ



 

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住み始めて約三ケ月でテリトリー(生活圏)が安定してくる

犬のJは私にとって大人になってから飼う二頭目の犬です。

犬の育て方を教える立場として、犬についてのたくさんの知識や経験が必要となりますが、人生でそう何度も犬を飼うことはできません。

自分が持っている経験は、他者が育てた犬のこと、訓練所で接した犬のことで、知識は実際に起きていることを裏付けするために役立ちます。

ですが他者が育てた犬はどのような環境でどのように接しているのかを知るのに完全ということはありません。完全に掌握できるのはあくまで自分が作った環境と接し方、つまり自分の犬のことです。

今回Jを迎えたことで貴重な実体験をする機会を得たことになります。

ブログには「Jのこと」としてJの成長を記録するためだけでなく、知識として蓄えていたことが本当だったのかを確認して発表していきます。忘れることも多くなりましたので忘れる前に…ということで早速はじめます。

広場で左から小鉄くん、J、バロンくん20250502



今回は「引っ越ししてどのくらいでテリトリーを獲得できるのか」についてです。

Jが自宅に到着したときにダンナくんから「どのくらいの時間でJはこの家が自分の家だってわかるようになるのか」という質問を受けました。

一般人らしい質問ではありますが、馴れるのに時間を必要としているということを理解しているという意味ではまずは理解が進んでいる質問です。

答えとしては「Jは成犬なので、三ケ月位でテリトリーを獲得する」です。

知識として学んだことはありませんが、大きな環境の変化に対する順応する比較的短い単位としては三ケ月ということです。

環境の変化の内容であったり、その犬の経験値、社会性、受け入れ側の準備や対応によってもその長さは変わってきます。

そのため、この三ケ月というのは私達がきちんと準備して環境を整えていくことが前提になります。

Jの受け入れ場であるここは、定期的に預かり犬が宿泊するという家庭犬としては非日常的な空間になります。

そのことでJが生活圏を獲得するのに三ケ月という時間で足りるだろうかという思いもありました。

例え、生活圏の獲得にもっとたくさんの時間を要したとしても悪いことではないのですが、生活圏の獲得は犬のベースになるものなので飼い主の努力によって早く安定させられるのならそうしたいという気持ちがあります。

他の犬達が出入りする不安定な環境で不安を抱かせないようにするためにできることは、日々の生活の中で私という飼い主との関係性を深めるための時間をもち、同時にその質を上げることです。

幸いなことに仕事の合間にすぐにJと豊かに活動できる場がここにはあります。

そんな思いを抱きながら共に暮らしを作ってきましたが、本日5月4日でちょうどJを迎えて三ケ月になりましたが、昨日今までにはない行動がまた見られました。

今まで部屋で吠えることがなかったJが、室内で2回吠えることがありました。(外で吠えたのは2回くらい、これもワンという単発でした)

1回目は朝、お手伝いのトシちゃんが到着したときで、このときは足音が庭先に聞こえてJはリビングにいたときでした。

2回目は、同じくJがリビングにいたときに、軽トラをバッグで上げる音がしたときです。

どちらも警戒吠えで、ウォン、ウォン、という低い声、多少緊張しているのか体は窓側とドア側の両方になんども向けられています。

どちらも私が室内にいたため「フセ」の合図で待機させて、窓から外を確認しました。これで警戒吠えは収まりました。

警戒吠えというのは「テリトリーに異変が起きていますよ。」というのを周囲に知らせる音です。

もっと引くバフバフというささやきのこともあるし、唸り声のこともあり、このようにウォンということもあります。

状態がもっと安定してくれば、いつも来ている人は仲間と見なして吠えることはなくなります。

Jが初めての室内で吠えたことにダンナくんは驚いていましたが、「ちょうど三ケ月たったからね」と私が言うと納得した様子でした。

生活圏を獲得するというのは単なる馴れとは違います。Jがこの家を自分の家として私達と共に守ってくれるポジションを獲得したのですから、とても嬉しいことでした。

Posted in Jのこと, 犬のこと