グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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老犬に安らかな毎日を提供するために:老犬のお世話とケアのための訪問クラス

 老犬と暮らす飼い主さんのご自宅に、老犬のお世話やケアについてご相談を受けてアドバイスをする、老犬のお世話とケアのためのクラスのために家庭訪問に出かけました。


●老犬のお世話は何才位からどのように始まるのか
 
 老犬といっても年齢を特定できるものではありません。犬のサイズによっても個体差がありますが、一般的には7歳くらいからが老化が始まるころ、10歳になると若い老犬という時代、13歳になると老犬の中期、15歳になると十分に老犬の後半期に入るころにあたります。

 どんな動物も年とともに老化が進みます。犬も同じように老化によって体の働き方が今までと違ってきたり、長く使いすぎた内臓や体の一部に負担がかかって養生が必要になってきます。そのため、今まではできていたことができなくなってしまったり、生活の環境やスタイルを見直す必要性がでてきたり、人の手を必要とするいわゆる介護というお手伝いが始まることがあります。

 自分の犬がお世話をする必要がある状態になるのか、いつになったらそれが始まるのかは犬によって違います。飼い主側は不安を抱えやすいものですが、まずは何か変化が見られたら早期に対応の準備を始めるか、対応について相談できるような場所や人を確保しておきましょう。

 老犬の中には初老の時期にあまり手を必要とせずに寝ている間に旅立っていく犬もいます。介護のお世話をしようと準備を始めたときに別れを迎えることもありますが、旅立ちは犬の決めた特別のことなので尊重するとともに、犬の変化に慌てるよりは、備えあれば憂いなしの心構えで取り組まれると気持ちが安定して人の方も落ち着きを得られます。


● 老犬のお世話とケアの仕方を学ぶためのクラスとは

 老犬の介護についてサポートさせていただくためのクラスには3つのクラスを準備しています。犬への手当てヒーリング=ドッグヒーリングの訪問クラス、飼い主さんがご不在や忙しい時間にお世話をする訪問介護クラス、そしてお世話の方法やケアについての質問を受けたり、生活スタイルの提案や飼い主さんができることを提案する訪問カウンセリングクラスです。今回は訪問カウンセリングクラスで定期的に訪問指導をさせていただくためにご家庭訪問をしました。

 老犬のお世話についてのご相談クラスの目的は、犬が状態に応じてできるだけ安らかに毎日を過ごしていけるように環境を整えることです。グッドボーイハートのクラスをご利用した経験のある方であればもうお分かりのとおり、犬のトレーニングのためのクラスの内容も同じことを目指しています。老犬期に入った犬にとっての必要性についてお伝えし、環境を整備するためにできることを飼い主さんと一緒に考えながら提案していきます。

 老犬のお世話については飼い主さんの生活スタイルによってできることと、できないことにかなり違いがあります。ですが、犬が一番近くにいて欲しいのは最後まで飼い主です。飼い主が年老いた犬のそばでオロオロとして不安でいる姿を感じることで犬も落ち着きをなくしてしまいます。飼い主が哀しみを抱えていると犬はそのことも受け取ってしまいます。誰でもが死という旅立ちのときを迎えるように、犬もその日をいつか迎えます。老犬のお世話はその旅立ちの日に向かっていく日々でもあるので、飼い主の気持ちが落ち着かなくなることは当然のことです。残された大切な時間を悔いのないように、お世話を通して会話していただくために、この訪問クラスでできることを提案させていただきます。

 何をやっていいのかわからないとつい言葉がけやさすったり撫でたりする時間が長くなってしまいます。「痛いの?」「どうしたの?」「どうしてほしいの?」「何をしてほしいの?」こういうことを声で話しかけすぎたり落ち着かせようとして慌ててさすったりしすぎることで犬を疲れさせてしまうこともあります。こんな会話が言葉なしにできるようになるのがドッグヒーリングです。


 ドッグヒーラーがヒーリングする訪問ドッグヒーリングクラスとは別に、ご自宅でも飼い主が自分で犬に対してヒーリングができるようになるための訪問クラスを近くに開講いたします。たくさんの方に犬に触れるコミュニケーションとつながりの時間を体感していただきたいと思います。ご案内をご希望の方はお気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。



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犬語セミナーで学ぶ『犬の気持ち』:犬はただうれしく楽しく喜ぶ動物なのか?

 週末にグッドボーイハート福岡で犬語セミナーを開催しました。定員6名くらいのセミナーに対して今回はいっぱいのご参加をいただき、いつもより賑やかなセミナーになりました。


●犬を観察することは案外大変なこと

 犬語セミナーは犬の動画を見ながら犬のコミュニケーションを読み解いていくセミナーです。犬の行動にはうそがないのできちんと読み解く力がつけば、誰でも犬の気持ちを理解することができます。作業はいつも観察することからはじめ、次に観察した行動について分析をしていきます。たとえば、逆毛を立てているという行動を観察したら、その行動がどのような犬の状態を表現しているのかを分析していくのです。

 ところが、この犬語の見方ですが最初は混乱します。まず見ることがこんなに難しいことなのかと思うのです。ビデオを参加者に見せたあとに見たことについて質問していきます。ある人が「犬の逆毛が立っていました」と発言しても、別の人は「全く見えなかった」といわれることがあります。なぜ、こんなことが起きるのかというと、見ているところが違うからです。人はみな関心のあるところを見ているのです。犬の見方を見るとその人が犬のどこに関心があるのかがわかります。

 犬語セミナーは犬の行動を読み解く勉強会なので、まずは自分の見たいところではなく、犬語としてみてほしい行動に注目していくように練習していきます。た、回数を重ねるだけで犬の行動をかなり見ることができるようになります。専門家でなくてもできるところが楽しいところです。特に、この作業が得意なのは、観察力がある人、そして犬への思い込みを断ち切れる人です。犬を見て「かわいい!」と思ったり寄っていって触りたいという傾向のある人は少し時間がかかるかもしれませんが、犬のことを本当に知りたいという気持ちがあれば、この壁を越えるのは簡単です。


●犬はいつも楽しいだけの動物なのか?

 まず、きちんと犬の行動を観察して記録できるようになったら、次にこの行動を分析していきます。分析には犬の行動学についての知識と経験が必要な上に、この分野はいまだ不安定で疑問を感じるような情報も多いため、信頼できる情報を得ながら分析の作業を進めていきます。

 例えば、犬が逆毛を立てているという行動に対して出てきた意見にはこんなものがありました。犬が緊張しているとか、興奮しているのではないか、不安な状態なのではないかというものもありました。いずれの行動も、犬の「逆毛を立てる」状態に該当する可能性が十分にあります。緊張と興奮が入り混じった状態といえることもできるのです。
 次に、そのとき同時に表現された他の行動を組合せをしていきます。同時に、その状態のレベルについても考えていきます。どの程度の時間その行動が続いたのか、その行動の後に見られた行動とはいうふうに問い続けていくことで状態のレベルが上昇するのか降下していくのかも把握することができます。

 こうした行動を観察して分析する犬語セミナーにはじめて参加する方の中には、どの映像をみても「かわいいという風にしか見えない」「喜んでいるように見える」「楽しそう」だという意見に偏りがちです。ディスカッションを重ねていくうちに、普段の犬の様子を見ていても、犬はいつも楽しそうに喜んでいるように感じてしまい、犬が不安だとか緊張しているとか、ストレスを感じているようには見えないという感想も出てきます。
 実は一部の人にとっては、これはとても正直な感想なのです。犬が好きな人は、犬はいつも楽しんでいる、犬はいつも飼い主さんが好きという見方が先行してしまう傾向が高いと感じます。なぜなら、犬がいつも楽しそうで、うれしそうにしていると見えるから自分も楽しく幸せになるからです。逆に犬が走り回っているのをストレス行動だと見るようになると、犬を見ることは辛くなります。特に飼い主は、犬の行動に最大に影響を与える存在なので、犬にストレスを与えているのが自分だと気づいてしまうと、犬を見るだけで癒されるという単純な世界は持てなくなるでしょう。


●犬の気持ちを読み解くための道具としての犬の行動学

 単純に犬のことがかわいいと思っているだけだったのに、実は犬がいろんな状態を表現していることを知ると最初は少しガッカリしてしまう飼い主さんもいます。犬を見るだけで癒される時代は終わりますが、その代わりに犬が行動を通して表現する真実を知り、その真のメッセージに対して飼い主としてできることをする、つまり、応答するというコミュニケーションを返すことができるようになります。

 これはひとつの犬との関係性の変化のときです。犬の行動学はこうして犬の気持ちを読み解く道具として利用する科学的学問であるし、学べば学ぶほど奥の深い犬という動物の深さに触れる機会にもなります。少し難解な勉強はひとりで取り組むことは大変ですが、トレーニングクラスやセミナーを通して勉強を進めると、犬を見る世界が少しずつ変わっていきます。犬を愛することは犬を理解すること、そして犬を理解する力を人は持っているということが、グッドボーイハートの希望です。


 次回の犬語セミナーは6月25日日曜日12時~14時に七山校で開催します。



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<犬のしつけ方・動画>犬にリードをつける時のしつけ:オスワリかマテで落ち着かせることの大切さ

 飼い主が犬にリードをつけるときに犬の行動もつける側の飼い主の行動も百人百様のようです。
実はこうした作業にも、犬と人の関係を見ることができます。そして、そのひとつひとつの行動を見直すことは、「犬のしつけ」もしくは「犬のトレーニング」のひとつです。


●犬にリードをつけるときの行動を観察するとわかること

 まず犬にリードをつけるときの行動をよく観察してみます。自分の犬はどんな状態でいるでしょうか。

 じっと立っている(呼吸もゆっくり)、呼ぶとゆっくり飼い主に近づきオスワリする、呼ぶとゆっくりと飼い主に近づき立ったままリードをつけることができる。このような状態であれば、犬は飼い主がリードをつけるという行動に対して落ち着いているといえます。

 逆に、興奮して落ち着かない行動をする犬もいます。興奮してジャンプをくり返す、左右にも飛ぶ、飼い主にとびつく、飼い主に前脚をかける、飼い主が首輪をつかむと(リードをつけるため)甘咬みする、飼い主が首輪をつかむと前脚をかけてくる、うろうろしておちつかない、飼い主の膝にジャンプしてくる、飼い主に抱っこされるなどが落ち着かない行動の例です。


●リードをつけるときに興奮するのがなぜいけないのか

 まずどのような状況であれ犬の興奮行動については慎重に扱ってほしいことです。犬が飛んだり跳ねたり走り回ったりする興奮行動は、見ている人によっては楽しいと感じられることがあります。人よりも動きが早く躍動力も動物的であることが人を楽しませる理由にもなっているからです。反面、過度な興奮は犬のストレス値が上昇しているというシグナル(コミュニケーション)でもあるので、それを受け取って犬が落ち着くように環境を整える必要があります。そしてその落ち着かせのための環境整備は飼い主の責任です。

 犬がリードをつけるときに興奮したり多動になる理由はいくつかあります。ひとつは犬が「リード→散歩」という連想学習をすることです。つまり、犬はリードを見せると散歩に行くことを知り興奮するということです。この犬の興奮を「うちの犬は散歩が好き」と思っている人もいます。本当にそうでしょうか。
 事実については犬の散歩行動を細かく分析すればわかります。リードを見せると興奮する犬は、社会的に緊張状態にあり散歩を連想して興奮しているか、日常的な拘束時間が長すぎるため外に出る社会的行動に興奮しているなど他にもいろいろと興奮行動の理由を考えることができます。


●リードをつけるときに犬が甘咬みしたり腹部を見せるのも問題なのか

 リードをつけるときには首輪に一定時間手を触れる必要があります。首輪に手を触れていることで短い時間であれ犬は動きがとれなくなります。犬が首輪をつけることに対して協力的であれば、犬の方が少しの時間じっとしてくれています。ところが、飼い主がリードをつけるという行為に対する抵抗や、一定時間飼い主が自分の首輪をもって動きを止めることにストレスを感じる犬は、その手を払いのけようとして甘咬みします。甘咬みといっても軽くくわえたり、咬むまねのようなものから、結構強く歯をあててくる犬もいます。こうした犬の甘咬み行動を飼い主は「遊ぼうとしている」といって放置してしまいますが、これはとても危険なことです。こうした行動のひとつひとつが飼い主と犬の関係性をあらわしているからです。飼い主に甘咬みをする犬は、それが抵抗であれ甘えであれ、いつかは衝動的に牙を当てる可能性が十分にあるからです。

 リードをつけるときに犬が腹部を見せたりひっくりかえったりしてジタンダを踏む行動もひとつの興奮行動です。こうした犬のほとんどは、甘咬みをする犬達と同じように飼い主が犬の首輪を少しの時間持ち犬が静止をしているということができません。また、飼い主の膝にのってきたり、飼い主の股下に入り込んだり、体を摺り寄せたりする犬達は、飼い主に依存的な関係を要求しています。こうした関係性は動物にとってストレス値を上げる結果となるため、数年という長い時間を経て自分を攻撃するもしくは他者を攻撃するという攻撃行動や強いおびえ行動につながる可能性も十分にあります。


●落ち着かない行動を叱っても効果はない
※動画で確認する「リードをつけるときは犬も人も落ち着くということ」

 犬が落ち着きをなくして興奮していたり、依存的な行動をしているときに叱っても効果はありません。犬にリードをつけるという行為が必要なら、それについて犬が落ち着きを取り戻せるように練習していきます。そのステップには個体差があり、飼い主さんのできるところからというになりますが、食べ物があったらオスワリするという賄賂的なフードの利用はしないでください。日常生活が問題なく送れている犬ならどの犬も食べ物をちらつかせなくても座ることはできます。
 
 以下の動画は七山校に来ていた柴犬くんに協力してもらって撮影しました。
マテの合図をしなくても動かないのですが、わかりやすいようにあえて「オスワリ」と「マテ」の号令をつけています。
舌なめずりをしていますので落ち着かせ行動が働いています。飼い主さんが近くでビデオを構えていて何かいつもと違う感じは受け取っていたようです。

犬にリードをつけるという平凡なことですが、ご自分の日常と違いがあるのか以下の動画で確認してください。

動画「リードをつけるとき」


 犬のしつけは犬と人の関係性の構築が基本です。それにはごほうびと罰が自然と伴うこともありますが、フードを使ったごほうびトレーニングには落とし穴があります。食べ物は動物にとって強い強化の道具(行動を学習させやすい道具)です。使い方を間違えると、犬のおびえや攻撃性を高める事もありますのでぜひ注意してください。


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犬語セミナーで学ぶ犬の世界:保護犬たちの抱える問題と社会背景

週末に七山校で犬語セミナーを開催しました。
今回は保護犬の成長過程のビデオを見ました。
毎回学びの多い時間ですが、保護施設からの譲渡犬については社会的な問題でもあり、一般飼い主さんにもこの問題をいっしょに考えていただく機会として貴重なセミナーになりました。

●犬語セミナーで学べること
 犬語セミナーは犬の動画を見ながらディスカッションを中止に進めるセミナーです。犬の動画にはいろいろな状況のものの中から、比較的分かりやすいものを選んでいます。犬と犬が過ごしてるビデオや犬と人が過ごしてるビデオはよく題材として取り上げています。

 ビデオの動画を見ながら犬の行動を観察するという作業を参加者に行ってもらいます。観察の仕方や記録の取り方についてはいっしょに学びながら進めますので、回数の多い方ほど観察力がついてきているようです。観察を事実に近づけていく際にはできるだけ「感情を伴わず」にみる力が必要です。犬の専門家にも求められる力ですが、感情的な目線では犬の行動を正しくよみとることができません。感情をいれてみてしまうと、見えるはずのものが見えなくなってしまうからです。人の情報処理能力というのはとても不思議なもので、自分にとって受け入れのできる情報しか受け取れないという情報収集の限界があるのでしょう。ビデオを見て犬の行動を知るなんて簡単と思われるこの作業が、犬語セミナーの中で最初の難関です。

 その後、その観察内容を行動別に分析していきます。行動学では行動を犬の状態の種類に応じて分別します。分別という作業は、どのような仕事にも取り入れられています。みなさんも仕事中になんらかの形で分別をしているでしょう。パソコンのフォルダもこのひとつです。情報を種類別に分別していますね。分別は内容を整理して分かりやすくするための最初の手順なのです。
 動物行動学には共通の行動の分別がありますが、全く勉強をしたことがなければこれらの分別はわかりにくいものになるかもしれません。たとえば、まちがった分別は「よろこんでいる」「遊んでいる」「わたしのことが好き」などです。これらは分別とはいいません。特に感情的な評価はまずゼロにして考えていきます。これも行動学になじみのない方にはつまらないと思われるかもしれません。このことが犬を理解することにつながっていくのです。行動の理解は犬の状態と性質の理解へとつながります。


●保護犬にかかわる問題について
 今回ビデオで使用許可を得た生徒さんの犬は今年保護施設から保護された保護犬くんです。生後6ヶ月ころに飼い主として譲渡を受けたあとすぐにレッスンクラスに入られています。保護犬に限らず、生後6ヶ月までの成長期に犬がどのような環境で飼育(生活)していたのかは、犬の性格形成、行動形成に大きく影響しています。三つ子の魂百までは犬の世界でも同じなのです。
 どのような保護施設であれ施設という形式ととる限り、犬達は一定数を収容という方法で管理されています。家庭での飼育状態とはちがいます。保護施設に限らず、訓練所や訓練施設などでも同じように多数の犬を収容管理しています。行政では保管という言葉を使います。あまり好ましい言葉ではないですが、施設の目的をきちんと伝えるためにはこの言葉が一番分かりやすいでしょう。

 収容管理施設での時間は動物にストレスを与えることはいうまでもありません。施設管理者はできるかぎりこのストレスが軽減されるようにそれぞれの努力をしています。ただ保護施設の場合には、その施設の建物があまりにも地域によって偏りがという現状があります。多額の資金を集めて立派な保護施設を管理運営しているところもあれば、狭い敷地の中で犬舎ももたずに集めたケイジやクレートをつかって多数の動物を収容している施設もあります。施設のハード的なつくりと管理方法は犬のストレスに直結していて、子犬たちは当然周囲の成犬たちのストレスの状態に影響を受けて成長していきます。

 同じ問題は行政の施設だけでなく、保護ボランティアにも発展しています。多数の犬猫を保護しているボランティアの家庭や団体では、もはや家庭犬のレベルを超えて犬を収容状態で飼育しているケースはみなさんの周囲にも見られることでしょう。保護犬の状態は悪化しなかなか譲渡に結び付けられなくなったり、おびえの強い犬を一般家庭に譲渡すれば、生涯にわたってその犬がおびえのつよいストレス状態で過ごさなければならなくなる問題も生じてしまいます。こうした難しい行動への対応や回復にふさわしい環境を整えるのは専門家でも難しいことがあります。知識や経験はもちろんのこと時間や空間が必要なため、忙しいという理由が最も実行できない理由になってしまうからです。


●保護施設などの犬を管理する施設を評価すること

 保護施設など資金のかかるハード面を作り上げていくためには、多くの方の理解と協力が必要です。しかし、現に今ある保護施設や収容管理状態の団体でも、犬のストレスレベルが高いと感じられる施設は存在しています。ひとりひとりが正しく見る目を持って、きちんと評価をできることによって犬にとって安心で犬の成長にも機能的な施設が残ったり、また新しく建設されることにもなるでしょう。
 そのために、保護犬を評価すると同時に、保護施設そのものを細かく評価する必要があります。評価というと上から目線的だと感じられるかもしれませんが、これはそうした意味ではありません。評価というのは自らが正しくその状態について把握するという意味での評価であって、悪か良ではないのです。評価を通して改善すべき点も見えてきます。
 だれでもできる簡単な評価基準がふたつだけあげられますので参考にしてください。以下の2点です。

1 臭い
2 騒音(動物の声)

保護施設や犬を保護されている場所でこれらの二つについて違和感を覚えたら、犬のストレスレベルは高いというお知らせです。臭いにおいは犬のストレスレベルを表現するという理由と、犬の声は同じように犬のストレスレベルを表現しているからです。犬は吠える動物だと思われていますが、きちんと整備されて管理されている施設では犬の鳴き声は一切聞こえません。それは犬を抑制させているからではなく犬達が安心して過ごしているからです。犬をただかわいいといって通り過ぎず、犬が適切に保護され管理されているかどうかを知ってそこに支援の目や手を向けてください。


 そしてまたこの二つの評価はご家庭でも同じことです。庭が臭い、部屋の中が臭い、犬が吠えている、という状態であれば、犬は同じように高いストレス状態にあります。簡単なことですが見過ごしがちなことです。犬が気づいてほしいことをまず気づき実践すること、それが犬を尊重したい自分にできる最善のことではないかと思っています。






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山歩きに見る犬の行動:行動観察から得られる犬の性質と特徴について

お山のクラス「わんげるミーティング」を開催しました。5月も末だというのに、湿度も低く風通しもよく絶好のコンディションのゆったりの一日となりました。


●山歩きにみる犬の歩行の特徴

 山を歩いている姿を見るとその犬についていろんなことがわかります。まず体のことです。体の小さな犬たちは自分のできる器量にあわせて歩く場所を決めていかければいけません。飼い主が踏みあげる高さの段差も、犬にとっては飛びあがりが難しいことがあります。飼い主便りにならず、端の方の自分の歩ける場所を見つけていくことを最初はあまりできないことが多いです。しかし回数を重ねていくと犬も学び始めます。自分にとってよりよい環境を見つけようとすると、飼い主の歩く方向には進みますがより自分の歩きやすい位置を決めていきます。
 バランス感覚の育っていない犬は飛びあがりが多くなります。一定の場所に立っていることができないからです。山はどの地点をとっても坂です。坂といってもアスファルトのような坂ではなく、4つの脚を置く場所の高さが全て違います。左右が横並びならないこともあります。そうしたところで歩いては止まり歩いては止まりができる犬は慎重でバランスをとることを重要としていることがわかります。反対にジャンプして上ったり下りたり、走ったり(走るのもジャンプです)、左右にウロウロとしたりするのはバランスをとることが苦手だからです。不安定な場所にいることで犬は体にストレスを感じます。それを落ち着かせることができる自律タイプの犬と、興奮してしまう自律が不安定な犬では行動の安定感がまるで違います。

●歩く位置に見る犬の特徴

 犬は飼い主の前を歩きたがる場合には、いつも飼い主から見てもらい管理されていることが日常になっている場合です。散歩でも家でも、飼い主はいつも犬を見ています。飼い主よりも後ろを歩かせようとすると抵抗をすることがあります。飼い主が自分を見ていないと落ち着かなくなるからです。こうした犬ほど飼い主よりも後ろを歩かせるように練習する必要があります。歩く位置はその関係性の現われです。不安定な犬は飼い主の後ろ、つまり飼い主に従って歩くということです。この位置関係を受け入れさせるだけで、犬は飼い主に服従しているという関係を作ることになります。多くの小型犬はこの飼い主との服従関係をつくっていくのが得意ではないようです。すぐに飼い主の膝の上に乗ってきたり居場所を主張したり、ときには鼻をならして赤ちゃん行動をしたりする犬が多いですね。赤ちゃんは社会での役割を与えられないので、服従関係は結べません。犬の中でいう服従関係とは役割分担という意味です。言い換えれば飼い主と対等に社会に属しているということが前提の関係性です。


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●未熟な犬の行動の危険性について

 それでも楽しそうに走っていくからいいじゃないかと思われる方もいるかもしれません。実際にそうしていらっしゃる方もいるでしょう。これは事故につながります。未熟な犬は何か事が起きたときに衝動的に走り出してたり吠えたり、パニックを起こしたりしてしまうからです。ガサガサという音がしたらそちらに走り出してしまうかもしれません。
 また、未熟な犬は環境を把握することが得意ではありません。周囲の全体を捉え前進すべきか立ち止まるべきか引き返すべきかを判断する前に、目の前の茂みにヘビがいることに気づくのか鼻先をつっこんで怪我をしてしまうことの方が多いからです。
 ということは未熟な犬は世界が小さくなるということです。何も変わることのない柵の中に入れられて遊んでいるように見えながらただ興奮している犬達の姿を見ると、犬は人間から提供されたもの以外を楽しむ自由はもうないのだろうかと感じることもあります。
 環境を把握して行動ができるという自律性は動物の精神を安定させるベースのようなものです。実際に自分に当てはめて考えてみても、環境を把握しこれから起きることを予測できることが自分にとっての最大の安全確保になっています。予測といっても将来のことを予測するような力はだれにもありません。それでも動物は一歩先のことを知りながら時間と空間を進んでいるのではないかと思うのです。その一歩を踏み出すべきか止まるべきか、判断を誤るなら出きるものの後ろをついたほうが懸命だということです。

●下刈り中にみる犬の行動
 今回のクラスでは歩く距離を調整したあと庭で下刈りをいっしょにしてもらいました。下刈りとは山を育てるための作業で、小さな木々の間に生えてくる草や萱や木々を刈り取っていく作業です。
 人々が庭で下刈りをしているときの犬の行動もそれぞれに違います。飼い主の近くをずっとついてきて草の臭いを嗅いでいる犬、飼い主の近くに居場所を獲得して飼い主の作業を待っている犬、飼い主の方をみて鼻をならしたりする犬、それぞれに飼い主との関係性と犬の性質を表現しています。
 山歩きのときと状況は似ているのですが、移動という行動を伴っていません。作業をしている飼い主は土の方を見ているわけですから犬の方は見ていません。飼い主に依存している犬は(大半の犬は依存していますが)、いつもと違う状況に不安な状態に陥ります。犬によってはテラスにおいてあるクレートの中に入って出てこなくなったり、車の下にもぐったりすることもあります。飼い主が見ていないと行動が不安定になるため最小のテリトリーに戻ってしまうためです。
 こうした犬の行動を見ることで飼い主さんが気づくこともたくさんあります。なぜ犬はテラスに帰ってしまうのだろう、なぜ犬はこちらを見て鼻を鳴らしているなろう、なぜ犬は落ち着きなく動くものを常に追っているのだろう、そんな疑問が生じることが大切です。
 犬のトレーニングやしつけというと、何か犬に問題がないと関心をもたれないことがまだまだあります。犬に問題を感じたらすぐに対応をしてほしいとは思いますが、もし犬に問題を感じていなくても、犬の行動に少しでも「なんでだろう?」を見出せたら、それはもう犬のことを学ぶチャンスです。もう何十年も仕事をしている自分でも、犬に対するなんでだろう?はいつも存在します。そしてその疑問についてまず仮説をたててじっくりと時間をかけて納得するまで追い続けていくことを楽しいと思っています。犬の行動でいうところの追跡作業ということでしょうが、よほど関心がなければこれほどの追跡はないでしょうから、自分ながら本当にはまってしまったという他ありません。

●おまけ

 下刈りは庭のほんの一部でしたがそれでもすっきりとして風通しがよくなりました。里山の境界線なので藪にしてしまうようなことがあったら境界線を預かる身として面目がありません。お手伝いには心から感謝しています。お昼タイムはいつもは自宅で作らないものということで、博多駅周辺ではよくみかけるパンケーキにしました。しかも玄米粉でつくったパンケーキに豆乳ベースの生クリームをのせたものです。
 七山は水が本当においしいので安いコーヒー豆でもゴハンでもなんでも本当においしいです。水はすべての基本ですね。パンケーキを食べながら日本の山は水の宝庫、海外の人たちが山を買い取ってしまわないように山を守っていく必要があるねという話をしました。山を守るためには里山に住むしかありません。そして山の手入れを汗水たらしてして、山のおいしい水をいただきます。山があれば動物たちが住めるし、空気がきれいになるし、健康な土がたくさん育ちます。そして命もまたそこから生まれます。


dav

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アナグマと犬が遭遇したら:山の中で野生動物を見たときの犬の反応でわかること

 お天気続きでつい山に脚が向いてしまいます。梅雨時期になるとさすがにトレッキングも難しくなるので、暖かなこの季節はトレッキングクラスでステップアップをはかる短いチャンスでもあるのです。

●アナグマとの遭遇

 そんな気持ちよいトレッキングクラスのときに、珍しくアナグマと遭遇しました。
トレッキングクラスでよく出会う野生動物といえば、鳥とかヘビとか、うさぎくらいまでは比較的多いのですが、四つ足の哺乳動物にはめったに出くわすことはありません。見晴らしの良いトレッキングコースでは人の声や犬の動く気配も伝わりやすいため、警戒心が高い四つ足の哺乳動物の方も接近しないように気をつけているのでしょう。

 出会う可能性のある四つ足の哺乳動物の具体的な動物名は、タヌキ、キツネ、イタチ、アナグマといったところです。このうち、タヌキとキツネがイヌ科動物で、イタチとアナグマがイタチ科動物です。それでこの2つのグループは大きく違います。
 イヌ科動物は警戒心が高いためなかなか姿を現しません。それと比較するとイタチとアナグマは活動が活発なのかよく目にします。野生動物を見る機会がない人でもペットのフェレットは見たことがあるかもしれませんが、フェレットはヨーロッパのイタチ科動物で家畜化されたペットです。イタチはフェレットによく似ています。アナグマはフェレットというよりはタヌキの方に少しにている形をしています。

 このアナグマですが、このあたりの福岡、佐賀周辺の山々では日中でもわりと見かけることがあります。七山のグッドボーイハートの裏側にはよく昆虫の幼虫をとりにきているようで、穴を掘っては何か食べているのを見かけることもあります。地面に落ちたサクランボを食べているのも見たことがあります。梅雨前になったら野イチゴを食べにくるので日中の接触率はぐんとあがります。


●アナグマは怖い動物なのか

 アナグマを凶暴と思われているようですが、人間ほど凶暴ではありません。どんな動物も恐怖を感じて逃げることができないとなると、その行動は逃走行動から闘争行動へと変化してしまいます。アナグマを追いかけたり追い詰めてしまい、アナグマが逃げることができないという判断を下すとその瞬間に攻撃に転じることがあるでしょう。攻撃といっても最初は唸ったり牙を見せたり口を開けたりする威嚇行動です。威嚇行動は犬と同じように、「そっちが攻撃するならこっちだって戦うぞ」という戦いの意志を表現するもので、動物の表情をよく見れるようになれば、ここまでは怖くありません。威嚇行動は相手に分かりやすく伝えるために表現方法がオーバーになっています。歌舞伎のようなものですね。特に相手が異種間の場合や距離がある場合には、はっきりと伝えて相手を遠ざけるためにその表現方法はわかりやすいものになります。人から見るとそれが「こわい」という印象を受けるのかもしれません。


●アナグマに遭遇したときどうするの

 動物たちだったらアナグマに遭遇したときにどのようにすればいいのかといったことを考えて練習したりはしませんね。若い年齢の動物は衝動に負けてしまい動物に向かって走り出し大ケガをすることがあるかもしれません。ただ、きちんとした社会的関係を持つグループに所属していれば、衝動に負けて少し走り出しても途中で停止することができます。それは、走りすぎることでグループ=群れを離れすぎてしまうというゴムのようなストッパーがかかっているからです。群れから離れることは自分を最も危険にさらすことでもあるし、群れそのものを危険にさらしてしまうことでもあります。社会的な力というのは、自己利益だけでなく、自己にとって有益なという理由であっても群れの利益になるように、一定の行動のルールができあがっています。
 こうした行動は、考えて行われてないというのが不思議なところです。走り出したら飼い主さんに怒られるとかそんなことを犬は一切考えていません。社会性が未熟な時期には野生動物との遭遇には十分に注意をする必要があります。お互いのテリトリーを侵さず、脅かさず、安全と安心を保っていられるようにするための距離感を身につけることは、動物としてとても大切で利益のあることです。実は犬がこの社会的距離感を一番学習してるのは、対人間に対してなのです。人との関係や距離が近すぎると、一定の距離を他者ととりながら関係性をつくることはとても苦手です。特定の人には甘え、他の人には遠ざかるという傾向がどうしても強くなってしまいまうようです。

 動物との距離感は野生動物との距離にも現れるのです。いろんな体験から犬を知り、自分を知り、そして世界を知ることができます。山の環境はやはりすごいなと感じる一日でした。


dav

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犬とテントで過ごしたときに見た夢:今度はたくさんの犬が出現する!!

 ゴールデンウィークはどのように過ごされていたでしょうか。
たくさんのお休みでマンションを脱出して自然の中で犬とゆっくり過ごした方もいたでしょう。
ご自宅のお庭で日向ぼっこする犬とまったりと過ごされた方もいたことでしょう。
 グッドボーイハートの七山校でも晴れのひとときを犬たちがそれぞれにゆっくりと過ごしていました。自分もテントクラスに参加して、犬たちの今年はじめてのテント泊をしました。

●テントでふたたび見た不思議な夢のこと

 犬と寝るテントクラス(ドギー・テントクラス)の夜に、また不思議な夢を見ました。わりと夢を覚えているほうらしく、今までにも何回も現実なのか夢なのかわからないほどの感覚のある夢を見たことがあります。テント泊のときにもなんどか同じ経験をしたことがあります。
昨年のテントのときに見た夢については以前ブログで紹介しました。
 こちらです→犬とテントで過ごしたときに見た夢:動物の楽しい化かしなのか?

 そして、また不思議な夢を見ました。その夢はこんな内容でした。

 テントの中でいっしょにテントにはいった飼い主さん1名といっしょに座った状態で体を起こしています。わたしたちが身を潜めてみているのは、山の下からゆっくりと人の道を上がってくるいくつかのライトの光でした。身を潜めているのでお互いに言葉もなく、テントに入っていた犬たちも伏せていますが静かにしています。ライトはどんどんテントに接近してくるのがテントの中からすけるように見えます。レースのカーテン越しに見ているような感じです。

 接近してくるとより詳細に様子がわかりました。ライトを持っていた人が7,8名くらいいて大人から子供まで横一列にならんだようにたっています。服装はぼんやりとしたブルーっぽいカモフラージュのような色で少し古い雰囲気のもんぺと羽織のようなものに見えました。
 声が聞こえてきました。「こんにちわ、何かご迷惑をおかけしたでしょうか。」というようなあいさつのようなものでした。声の主はとなりのテントに犬と入っていた飼い主さんのものでした。わたしたちが身を潜めている間に、声をかけられたのかと思って聴いていました。ほどなく声は消え去り、再び静けさだけが戻ってきます。

 そして、テントの布越しに透けて見える姿が少しだけはっきりしてきたような感じがすると、その人々の前にやはり大小の年齢の白い犬たちがしっかりとこちらを向いてたっていたのです。脚が長くスラリとしていて、大きなものは背丈が人の腰下くらいでした。毛は短毛ではなかったですが、長毛でもなく、少しだけ毛足がある白い色の毛でした。洋風のオオカミほどの幅はなく少しやせていてそれでもしっかりとこちらを見ていたことだけを覚えています。その犬たちが見えると後ろの人々の形が少しぼやけてきました。夢はここで終わりました。

●この夢を引き出しかもしれない前の日の談話

 テントでは熟睡はしていないので、途中で人の気配や犬の動き、野生動物の気配などで目が覚めることが普通です。このときも、途中で目が覚めて「あれ、さっき見たライトがさして人と犬がいたあの光景は夢だったんだ。」とぼんやりと考えてしまうのです。頭は半分寝ていますのでこのときは、その夢の意味を考えることはできません。ただ、覚えておきたくてどんな夢だったのかをもう一度頭にイメージさせてから再び眠りました。夢の中に出てきたテントのパートナーも実際の飼い主さんといっしょでした。隣で声を発した生徒さんも全く夢と同じ状況でテント泊をしていました。みたもの以外の状況は、その日のテント泊のままなのです。

 実は、このテント泊の夜の会食のときに生徒さんたちと犬の繁殖による行動の変化についていろいろと話をしていました。ブログに書いたカフェのマナーのこと(ブログ記事:オープンカフェでみるとんでもビックリな犬の光景:欧米と比較して考える都心の犬)がテーマとなり、ずい分深くお話したのです。日本は純血種を飼うことが当たり前のような傾向がありますが、欧米と日本の犬の文化の違いや犬のサイズの違いなどは比較すればするほど、以下に日本が独特であるのかがわかると思います。日本の飼い主たちがどのような犬を求めているのか、そしてその求める犬が繁殖されることで、犬はずい分犬らしくなくなったと感じることがたくさんあります。
 日本には、日本の国土が育てたイヌもしくは犬はいなくなってしまうのも時間の問題かもしれないという危機感があるという話をしていました。この話が、テント泊での夢を引き出してきたのかもしれないと感じました。

 「山怪」という本にも記されているように、山では不思議なことがよく起きるのです。その夢は室内では見ることはできなかったでしょう。そして、その夢の意味を自分がどう受け取るのかも自分次第です。ですが、こうした不思議を体験できることは、自分にとっては人生を少しだけ豊かにしてくれるものとして有り難く思います。

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犬といっしょに山で過ごそう:犬とのデイキャンプクラス「わんげる・ミーティング」開催しました

山のはまだ寒暖の差がはげしく、朝夕は冷え込みがきびしい分昼間は暖かな日差しが差し込むようになりました。

そのせいなのでしょうが、土色は一気に緑色に変化しています。この緑の分量の多さには驚きます。
簡単にとらえるとエネルギーは分量ですから(太っているからエネルギーがあるということではありませんが)、緑の多さには大量のエネルギーが宿っているように感じます。


●山の中でみる犬の色

緑が多くなると、動物は姿を隠すことが簡単になります。森の中から空を見上げると、木々の間からわずかに空が見えるくらいになってきました。

犬の色は黒白茶色。本来なら日本の犬は茶色と白です。
自然の中でいかにカモフラージュするのかは動物の安全につながります。
山に住む動物である「イヌ」は、山色に近いのです。山面の土の色、茶色ですね。
季節によってもこの茶色が微妙に変化していきます。動物と自然のつながりを感じられるナチュラルな色の変化です。

飼い主さんが犬を見つけやすいようにと思って、オレンジやピンクの洋服を着せてしまうことは、犬にとってはあまり歓迎されないことかもしれません。色のついた洋服は都会の中だけで活用されることをおすすめします。


●季節と動物たち

繁殖を終えて活動をはじめた動物のこどもたちも、親から離れて個別に活動する時期にはいってきます。
犬も春と秋は活発に活動です。この時期に山で過ごす時間を持たないなんてもったいないことはありません。犬は太陽の動きと共に生きています。季節はどの動物の体の変化にも影響を与えます。この季節にしか起きないことをたっぷりと堪能したいものです。

今日は慣れ親しんだ数頭のグループで一日中を山でゆっくりする「わんげる・ミーティング」というデイキャンプ風のクラスを開催しました。なんども山歩きをしている飼い主さんと犬なので、山のことはよくわかっています。

同じ気温や風に対しても犬のサイズが違うだけで、暑いと感じたり寒いと感じたり、その感じ方も様々です。グループで移動するというのは大変なことですが、どの犬にもできるだけ負担がかからないように、長さと場所を調整しながら安全第一でゆっくりと移動することが大切です。


●山で過ごすこと
犬が「山で過ごす」というと走り回ったり飛びまわったりするイメージをお持ちかもしれませんが事実は全く違います。山に親しんだ人々が山を歩いている姿をイメージするとどうでしょうか。山で駆け回ったりはしゃいだりせずに、静かにゆっくりと歩みを進めていきます。それは雪山のような体力を使う場だからではなく、山のリズムと一体になれるからです。

動物たちも同じです。山に住む動物が山の中を走り回っているわけではありません。走るのは逃走行動が起きるとき、そして捕食行動が起きるときです。捕食というと草原でライオンが草食動物に向かって走り出ししとめるシーンの方が印象的かもしれませんが、山の捕食行動は少し違います。どちらかというと追いつめていくという感じかもしれません。

山のリズムを身につけるといつもとは少し違った感覚を得られます。山に入るとソワソワする犬たちも、ちょっと抑制がすすむと下山のときにはゆっくりと落ち着いた雰囲気になっているのは不思議な風景です。


●お昼は飼い主さんたちもお手伝い

お昼は薪生理班と昼食班にわかれて作業を行いました。木をきったり整理したりと原始的な行動のために体を動かすたびに、こうやって人は暖をとり食べ物を加熱して生きてきたんだろうなと感慨深い思いになります。そしてなによりうれしいのは、そのすぐそばに犬という動物がずっと昔からいたであろうことです。


いつもとおり、写真は撮影していません。そんなことよりも大切なことを優先させました。犬の生きている時間は人と比較すると7分の一くらいです。犬が生きるには十分な時間なのに、わたしたちにとっては本当に少なく感じてしまいます。そして、犬といっしょに充実した時間を一緒に過ごせるのはもっと少ないのではないでしょうか。犬が犬として人が人として過ごせる時間を共に大切にしたいものです。

dav

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トレッキングクラスで学ぶこと:犬と共に山を感じる感覚を養う

犬といっしょに山歩きをするトレッキングクラスは、ただの山遊びクラスだと思われがちですが、実はとても奥の深いクラスです。

このクラスは七山校で始まったと思われている方もいらっしゃるのですが、実はとてもグッドボーイハートではとても古くからあるクラスです。グッドボーイハートが開校翌年くらいからは開催していました。

最初は私が愛犬のオポと山に遊びに行くだけだったのですが、飼い主さんの中で山行きに関心を持たれそうな方を連れて、一緒に山を歩く練習をしていました。

当時はわたしと犬のオポにとっては、博多の都会暮らしが日常で山の中は非日常の世界でした。
山歩きが必要かどうかなどと行動学的に考えることもなく、ただ山に入るとオポがいつもとは全くことなる表情をするため、犬であるオポにとっては必要な時間なのだと軽く思っていた程度です。そして、その時間は自分にとっては都会でたまった疲れのガス抜きくらいの気持ちでした。

ところが、生徒さんの犬といっしょに山に行くようになり、いろんな角度から見て知ることができるようになりました。
一飼い主としてオポという犬の変化を楽しんでいたときから、家庭犬インストラクターとして生徒の犬や飼い主さんが山で歩く姿を観察するようになる体験に変わったことで、ますますトレッキングをグッドボーイハートのクラスとして開催したいと思い、その後は定期的に開催するようになったのです。


それでも、都会暮らしの自分にとって山は不思議な非日常の世界。
きちんと見えているようで見えていないものがあることを知ったのは、オポと山裾に暮らすようになってからです。

見えていなかったものが見えるようになる、聞こえなかったものが聞こえるようになる、臭わなかったようなものが臭う、考えなかったようなことを考えるようになる。
そして、味わえなかったような感覚を味わうようになるのに、少し時間がかかりました。

都会で育ったわたしが、山の中をただ歩くという単純な時間の中でこれらの様々な知覚の変化を得られるようになったのは、オポという自然に近い動物がその機能性をわたしよりもずっと早く開花させて山の一部になってしまったように思えます。


飼い主さんとのトレッキングを通して、犬の感覚が少しずつ開いていく姿を見ることは感慨深いものです。やっぱり犬だなと感じられることが、なによりもうれしいのです。



dav

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犬語セミナー開催しました:人に対する行動を科学的に分析することで見えてくる犬の社会性

グッドボーイハート七山校で毎月1回開催している犬語セミナーが行われました。

犬の行動のビデオを見ながら観察した結果をリストアップしていきその行動を細かく分析します。最後にその犬の性質や必要としていることについて考えるためのセミナーです。

ビデオの素材にはみなさんからの提供されたものもありますが、主にはレッスンのときに撮影したものが中心となっています。犬語セミナー参加者の中に飼い主さんがいることも珍しくありません。むしろ、自分の犬の行動を飼い主さんに他の方々と一緒に見ていただくことで、客観的に犬の行動について考え理解を深めるための機会としてこのクラスを利用していただきたいと思っています。

今回素材として利用したビデオの中にもレッスン中に撮影したものが含まれていました。
ビデオ素材の中から人に対する社会的行動の観察と分析に焦点をあてながら、犬の社会性についてみなで考えました。

犬が犬に対してする行動と、人に対してする行動では行動の種類がかなり違います。
犬にとっては犬も人も同じように社会的対象になるのはずですが、犬と人では種が異なるという明らかな違いがあります。でも違いはそれだけではありません。

人と距離を保って生活をする野生動物であれば、種の異なる動物とは距離を置いてお互いを刺激しあわないように生活しています。その関係が捕食関係=食べるものと食べられるものという関係になるとまた別の距離感を持って生活をします。
いずれにしても動物を飼うという関係性をもつ人は、動物と動物の境界を大きく越えた関係を持ちます。家畜化というのは人の他の特定の動物に対する独特の行為であり人の文化なのです。

犬が人の家畜となった歴史は人と犬の関わりを変えるひとつのきっかけになりました。家畜という言葉にはあまりいいイメージがないかもしれません。しかし、冷静に考えても一定の敷地など決めれた範囲内にいれられて食べ物を与えられ飼育される動物は家畜化された動物です。
犬の場合には人の家族同等の権利を与えられてることもあるため、動物の中でも伴侶動物やコンパニオンドッグという名前で呼ばれ、人と変わらないように大切にされて飼われているという事実もまた間違いではありません。

ただ、犬と人の距離感が大変近くなってしまったという事実と、そのことが犬の人に対する行動を変化させているのもひとつの事実です。犬は人との距離感が近まっても犬が他の犬に対して行う行動を人には行わないように思えます。ですが、これらの対犬、対人に対する行動はそれぞれに全く異なる行動の種類であるのに、犬の状態としてはかなり同じ内容であると感じられるものがたくさんあります。

そのため、ある犬の人に対する社会的行動をきちんと読み取れるようになれば、その犬が他の犬に対してどうような社会性を持っているのかを比較的近いところまで知ることができます。

本来なら犬は他の犬に対する行動の方がシンプルです。受け取っている他の犬の反応がシンプルで間違いのないものだからです。犬に2本脚をかけられて飛びつかれた犬が、「わたしのことが好きなのね」といって喜ぶことはないのです。飛びつかれた方の犬は威嚇の声「ガウ」を出して相手を遠ざけるか、軽く咬みつくか、逃げるなどの拒否的な行動をします。

ですから他の犬に対するビデオをみればその犬の社会性の多くは見ることができます。かといって、普段から他の犬と接触する経験のない犬を簡単に他の犬に対面させることもできません。そういう場合でも、その犬の人に対する行動を細かに観察して分析できるようになれば、犬の社会性に関する多くの情報を得ることができるようになるということです。

犬語=犬のコミュニケーションを読み取るときのヒントは、感情の話は横においておくこと、好き嫌いのことは横においておくこと、そして何よりも大切なの先入観を捨てる勇気をちょっとだけもつことです。

その動画から今まで思っても見なかった犬のことについて知ることになったとしても、深く理解することが犬にとっての最大の愛であるという事実は変わることはありません。
飼い主さんたちの貴重な時間をこうしたセミナーに費やしているのは、少しずつでも犬を理解する眼を養っていくことが犬が一番望んでいることだからです。
そして、そのことがひとりの人間がある犬に対する接し方を変える機会になります。
その変化は犬の行動の変化に直結していることをぜひ体験してみてください。


5月の犬語セミナーは以下の日程で開催予定です。

28日日曜日12時~14時 七山校で開催

福岡校での開催をご希望の方は曜日の希望を添えてお申し出ください。
2名以上でいつでも開催いたします。



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