唐津方面から車で戻っているときのことです。中原のバス停を超える付近から左手の山を見上げると一角だけ黄色と橙色がひときわ目立つ綺麗な山があります。あー綺麗だなと思うその山はオポハウスの裏に控える山で、尾歩山(おぽさん)と私が名付けました。
このきれいな山と家の境界線で、先日から野生動物のイノシシとの境界線争いが始まったことを先日のブログでお伝えしました。その後、隠しカメラにその姿を残していたあのイノシシは次第に気配を感じさせなくなりました。
戦いの最中に、もう少しイノシシの行動習性を復習しておこうと自宅にあった本を取り出してみました。その本はこちらです。

野生動物観察辞典(東京堂出版)
野生動物観察辞典「東京堂出版」今泉忠明先生著
今泉忠明先生の本で私がグッドボーイハートの本棚で紹介しているのは「野生イヌの百科」ですが、実はこちらの「野生動物観察辞典」はダンナくんが以前したものです。
ダンナくんがこの本を購入した理由は、猟師の試験を受けるにあたり色々な野生動物の習性を知りたかったからのようですが、本を買って満足したのか本棚に置いたままになっていたのを私が活用しているという次第です。
今泉先生のこの本によるとイノシシの基本情報は以下のとおりです。
分類は偶蹄目イノシシ科、主に夜行性で、本州、四国、九州、淡路島、対馬に分布し、サイズは体長1.3~1.4メートル、尾の長さ約30センチ、肩の高さ約80cm、体重は75キロから190キロ。
体重から想像するとやはり中型犬よりもずいぶんと大きなサイズです。約18ケ月で性成熟に達し寿命や野生では5歳以下とありました。(飼育下では20年)
イノシシが栗林や花壇の近くまで接近していたことを記している蛇行する土を掘り返した後をラッセル痕というそうです。雪の中を滑走するような左右に揺れる独特の痕が土の上に残っています。
また山歩きの最中には牙を樹木や竹に擦り付けた後を見ることができますが、これは牙かけという行動によりつく痕です。他にもヌタ打ちといって体を地面にこすりつける行動をした後にできる沼のような穴を山の奥で発見したこともあります。この行動から起きた言葉が「ぬた打ちまわる」です。
ヌタ打ちは水の流れがわずかにある湿地に見られ、ダニなどの寄生虫を落とすためにすると同時に自分の臭いをつける行動にもなっています。いわゆるマーキング行動ですが、牙かけにもマーキングの意味合いは十分にあるのでしょう。このあたりは犬も同じような行動のパターンを持っているので似ていて面白いです。
牙かけにはもっと重要な意味があるそうで、松の木に牙をひっかけるようにかけて樹液を出すとそれを自分の体にぬりつけてオイルコーティングをするらしいのです。松のねっとりとした樹液をつけたイノシシの皮膚は通常の鉄砲では打ち抜くことができないということで、クマ猟でもおなじようにクマの皮膚は簡単に打ち抜けないというところにつながります。
戦闘情報が満載のダンナくんによると、刺すという攻撃行動にかなうものはないということでした。イヌでいうと牙で咬みつくという行動がこれにあたります。その刺す攻撃である弾も通らないということですから、イノシシの防御機能はとても高いのでしょう。
そんなイノシシの便を犬達は大好きです。イノシシの便は団子状につらなっていて当たり前のことですが独特の臭いを発して、強く発酵したチーズのような臭いです。オポが山の奥からペロペロと舌なめずりをして戻ってきたときに口の臭いを嗅ぐとなんとも言えない臭いがします。こんなときにやっぱり犬は犬だなと思えて、反面はうれしくなります。
犬が好物のイノシシの便の元は、キノコ、タケノコ、どんぐり、卵、木の根、昆虫、山芋、野菜などで場合によっては野生動物の死骸も食べるということです。ジェイの場合はまだそのおとなの味を堪能していないようですが、いつかその日がくるのかなと野生動物たちとの関わりのひとつとして見守っていきます。
「野生動物観察事典」にはその他にも有益な情報がたくさんあります。例えば毒ヘビに咬まれたときの対応などは忘れがちな基本姿勢について触れてあり納得する内容です。
野生動物がご近所さんという生活をすることになったのですから、まずはちゃんと相手を知ることが大切なこと。そうしなければ防御もできないし配慮もできません。日本国内ではオオカミを絶滅させたという記憶がほんのつい最近のことですから、この過ちを繰り返さないように、同時に自分たちの家族や生活をしっかりと守りながら、今後も対策を練ってまいります。
グッドボーイハート生の中には山歩きが日常化されている方もいるでしょう。ぜひ山と山に暮らす動物たちの痕跡に注意を向けながら山に親しんでいただきたいと思います。



