グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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散歩中の拾い喰い:犬が本当に落ちているものを食べたいのだろうか

犬にリードをつけて散歩しているときに、地面に落ちているものを「拾い喰い(ひろいくい)」するような行動をすることがあります。

犬の「拾い喰い」を止めさせるためには、という情報がネットにたくさんあります。
犬の行動を考えるときには「犬の行動を止めさせる方法」の前に考えることがあります。

「犬の行動の表現する犬の状態について」です。
まず、犬の拾い喰いをよく観察してみてください。

地面に落ちているもの、ゴミのようなもの、枯葉、タバコのかす、小石、ビニールの一部など、
どんなものでも「みつけたもの」を見つけると口の中にいれようとします。

口の中でずっと噛んでいることもあれば、口にいれたり出したりすることもあるし、
噛んでいるうちに咀嚼されてしまったものを唾液と共に飲み込むこともあります。
といっても食べることを目的に口の中にいれているわけではありません。

犬のその行動が人の視点で見たときに「拾って食べている」ように感じられるため、
「拾い喰い」といわれるようになったのでしょう。

拾い喰いとは、地面に落ちている食べものを探す行為ではありません。
お腹が空いているから食べものを探しているわけではないのです。

では、何のための行動なのでしょうか。

口に入れたり出したりしている行動を見て、遊び行動だと思われるかもしれませんね。

行動は全て表現方法ですが、目的のわかりにくいものもあります。
それがストレス性行動という表現方法です。
ストレス状態であることを表現する方法です。

実は犬の拾い喰いは、ストレス性行動のひとつです。

拾い喰いパターンのストレス性行動が強いものになると、地面にはいつくばるようにして土や砂を口の中に入れ続けます。
実際に本当に食べていますが、無心に食べ続けていて声をかけても止まらず、
止めさせようとするとさらに執着を示すようになります。

ストレス性行動には様々なものがありますが、その中に執着行動というのがあります。
犬と同じように、人も執着行動というストレス性行動を表現します。
犬と人は社会性が高い動物だということ共通点があり、行動の共通点も多く見られます。

拾い喰いを、落ちているものに対して執着しているストレス性行動だと受け取れるのは、環境を変えたり、散歩の環境に適応性を見せ始めるとこの行動がなくなっていくからです。

外環境への適応力が育っていなければ、環境を変えても別のストレス性行動を示すだけですが、それこそが拾い喰いが食べ物を探す行動ではなく、ストレス性行動だと理由付けられることになります。

たとえば、もうすこしリードを長くして、リードで拘束しなくても歩行できるような遊歩道を選んで歩いたとします。

環境の変化により、行動が安定してくる場合もあります。

遊歩道という環境でも、外環境への適応力が育っていない場合には、今度はいろんなものに飛んだり跳ねたり、走り回ったりするような行動をすることもあります。

散歩中のストレス行動は、外環境への適応力だけではありません。

散歩という群れ行動が上手くいっているかどうかは、飼い主さんと犬がグループとして協力関係にあるかどうかということも影響します。


まとめるとこうなります。

散歩中の拾い喰いの多くは食べ物を探すことが目的の行動ではない。

そのため、食べ物を食べてはダメと叱るとますますストレスになる。

犬が適応しやすい場所を散歩コースとして選ぶこと。

犬が外環境に適応していけるように、ゆっくりと時間を使うこと。

犬が外環境に適応していけるように、拘束せずに移動できる場所を見つけること。(普段の散歩とは別に準備しなければいけないケースも多くあります。)

飼い主さんと犬が、信頼関係を築けるように、室内での接し方やルールの導入を見直すこと。

散歩中の飼い主の声かけは、犬へ飼い主の存在をアピールする方法になりますが、過剰になると欠点もあります。
散歩中に犬に対してずっと合図を送り続けることは、社会化の機会を奪い依存性を高めてしまうためです。
ストレスが強く、人の号令や合図に頼らなければならない状態や環境もあります。
犬の暮らす環境は厳しいものとなっているということでしょう。

犬を変えたいと思うなら、自分を変えるしかないのですが、環境改善には制限もあります。
それでも、まだまだ変えられることはあるはずです。
ひとつずつ、毎日発見。

人の変化が犬の変化につながります。

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Posted in 犬のこと

チャリティ犬語セミナー収支報告

10月23日に開催したチャリティ犬語セミナー収益金は、以下の3ヶ所の
動物愛護センターへ寄付をいたしました。
収支報告を添えて報告いたします。

収入の部  227,000円

支出の部  会場費 11,250円
      印刷費  8,570円

収益金   207,180円

 寄付   福岡県動物愛護管理センター 70,000円
      →銀行振込による送金

      佐賀県犬猫譲渡センター   69,630円
      →ペットフード購入しアマゾンより直送

      熊本県動物管理センター   67,550円
      →熊本被災ペット支援ネットワークへ寄付後、物資送付

残金    0円

備考 資金支援、物資支援の選別については、各センターの希望に応じた結果です。

このチャリティセミナーを通して、愛護センターに保護されている犬猫に必要な物資や運営費として使っていただくことができました。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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@大田こぞうさん作

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Posted in お知らせ, ボランティア

里山の冬支度

この季節に山の中で聞こえてくるのが「ウイーン」という音、
七山に来てはじめて聞いたチェーンソーの音です。

秋になると大きくなった山の木を切ったり枝を払ったりして山を活用するとのこと。
人が活用するために植えられた針葉樹がそのままになると、倒れてしまいこともあります。

里山は、人が資源を活用して利用しながら、そして山を生かし続ける場所です。
昔は手作業でやっていたことがエンジン付きのものを使用するようになったりと、
道具の発達でその風景はずい分と代わってきたことは確かでしょう。

野生動物は隠れる場所を必要とします。
茂みや竹藪が里の家近くにあると、野生動物は藪に隠れて近づきやすくなります。
そのため、茂みや藪をきちんと刈り払っておくことが大切です。
そうすれば、身を隠す場所がないため里に近づくときも慎重になるからです。
これも「境界線」です。

犬は寝床や休憩場所として「隠れるスペース」を必要としています。
里山の茂みを刈ることが犬の行動へ影響を与えないだろうかとも考えるのですが、
テリトリーをパトロールする犬は、茂みの中を移動することを好まないようです。
少なくとも私が観察し、犬の行動に照らし合わせて考えた結果ではそうなります。

茂みといっても森のことではありません。
笹薮、竹藪、ススキも藪化しますが、こうした場所を移動のルートとしては選ばないようです。

たとえば、山中にあるイノシシが歩いたと思われる道を犬は歩きません。
けもの道の獣の臭いを追うことを目的とすれば、この道を追うのかもしれませんが、
イノシシと犬では脚の構造が全く違うため、巡回移動するのに得意な場所も違ってきます。

犬はイノシシを捕食することのできる動物のため、イノシシは犬を避けて移動します。
犬の苦手なルートを移動ルートにするという理由もなりたつかもしれません。

犬は嗅覚を頼りに情報を得ながら移動していきます。
そのため藪などの風を妨げる場所では、全体を把握することが難しくなります。
これも犬が藪を好まない理由だと考えています。

犬が藪に入るときには、何かを探していくときです。
藪の中に何か臭いがする、それを探すために藪に入る犬もいますが
探そうとする対象への興味や関心の高さによって、藪に入るかどうかも決まるのでしょう。

人と共に行動する歴史の長い犬は、人にとって移動可能なルートが優先されたという理由もあるでしょう。

家周辺の藪を刈ると犬の動きが変わっていたことは確かなことでした。
飼い主のそばから離れないような犬は、環境による変化を感じ取り行動を変えることは難しいものです。
これらの行動は、環境の中で自律して行動できる犬特有の行動なのかもしれません。

そんなことを考えながらも、今日はたくさん働きました。
お手伝いもしていただき、木々は整理されその中から小さな薪がたくさん生まれました。
次の次にくる冬のための薪なんです。自然の生活は本当にゆっくりですね。

添え木をして育てたという「しだれ桜」をいただきました。
いつころ花が咲くのかを尋ねると「3年くらいかな。」ということでした。
3年か…。いつか見ることができたら、感慨深いものだと思います。

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Posted in 犬のこと, 自然のこと

里山犬との出会い

チャリティ犬語セミナー後半で、里山犬(さとやまけん)と一方的に名づけた
里に住まう犬の話をさせていただきました。

以前、ラジオ番組「月下虫音」でもお話したことがあります。
ブログでも里山犬として紹介したり、別の名称でも登場したことがあるかもしれません。

里山とは、人の住む里と、野生動物のすむ山を分ける境界線の場所に位置します。
里山は、里に住む人が山に出入りして生活に必要なものを活用したり、
食べられる野草や薬の代わりになるような野草もここから採っていたのでしょう。

日本の国土は狭く山が多いため、かなり高地にまで里が広がっています。
グッドボーイハート七山校のある唐津市七山は、その地域がすべて山の一部のように
ひろがっている山村です。
唐津市に合併するまでは七山村といわれていた地域です。

その七山をずっと奥に進んでいったところにグッドボーイハート七山校があります。
元祖里山を位置する場所にあり、庭は山の一部としか思えない風景です。
この里山に犬と共に引越してきたときに出会ったのが、すぐ下の家の犬でした。

はじめて出会ったときはこちらの敷地の中にふらふらとしていたので、
てっきり迷子犬だと思いました。
手の平に食べ物を乗せて差し出しながらその犬に近づいていきました。
そうすると、こちらが近づいた分、後ずさりしていくのです。

私が「どうぞどうぞ」といってゆっくり進む感じ、
その犬が「いやいや」といって後ずさっていく、そんな風景です。
一定の距離を後ずさってしまうと、くるりと向きを変えて歩き去りました。
そのうち迷子犬だと思った犬が、すぐ下の家の犬であることを知ったのです。

小さめの中型のミックス犬で、とてもゆっくりと歩いていたのをみて、
老犬かと思って観察を続けたのですが、どうやら中年の犬であることも次第にわかりました。

いろんなことがなぞに包まれていて、それまでに出会ったどの犬とも違ったため
犬の観察にも身が入り、その行動のパターンが明らかになってきたのです。

毎日、犬だけでパトロールしていること
うちの門になるシャッターを難なくくぐって出入りしていること
周回のコースが数パターンあること
豪雨のときは、犬小屋に身を潜めていること
車が近くまできても全く動じないこと
猫の威嚇にも反応しないこと
お頭付きの魚を食べているときは形相が変わっていたこと
下道の道路で出会ったときは、少しゆっくりと歩いてすれ違うが
顔をあわせたりしないこと
声を出して近づくと近づいた分だけ離れていくこと

そして何より驚いたのは、
夜中に畑で吠えていること、でした。

山の方に向かってウォーウォーと吠えています。
藪にカサカサを音を立てるイノシシがざわざわしています。
畑にイノシシを近づけさせていません。
その行動の理由はわかりません。
はっきりとしているのは、犬のテリトリーでありまもる必要のあるスペースだということです。

人に命令もされないのに、飼い主が寝ている時間なのに、
夜中に響く声の力強さは、昼間のゆったりした動きとはかけ離れていました。

里山は野生動物と人の暮らしをわける境界線です。
その境界線をわかりやすく野生動物に伝えていたのがこうした犬の行動ではないか。
人の必要性と犬の必要性が重なったことで得られたこと。
人にとってはこんなに有難いことはないでしょうが、このことの利点は、
野生動物たちにとってこんなに分かりやすい境界線はないよね、と思うからです。

今は山に近い畑にはどこにでも見られるイノシシよけの網は、
イノシシが物理的に入れないようにした境界線です。
ですが野生動物にとってはわかりにくい境界線でもあります。
押したりくぐったりして通行できれば境界線は崩れる。
境界線の反対側に人がいても、お互いに驚くことがなくなってしまいます。
人間の作った柵は人に安心感を与えるため、動物を追いたてたりしないからです。
動物は追い立てられる体験をしないと、逃走はしなくなります。
人の里へ近づこうとして追い立てられる体験をくり返すことが野生動物の学習なのです。

接近しようとすると追い立てられるという恐怖を感じる行動をすることで、
人や犬の気配に敏感になります。
それでもなんどもやってきますので、それは面倒な作業であると思います。
本当に根比べですね。

里山の暮らしは「根比べ」の連続です。
暮らしのために根をはった方が勝ちである。
とても単純なルールなんですね。

里山犬との出会いは、犬への価値観を変えるひとつのきっかけになりました。
そして、人と犬の暮らしへの希望の光にもなったように思えます。

そんな里山犬は根比べできる忍耐強い人の暮らしを必要としています。
人の暮らしのそばに、犬の暮らしが寄り添うからです。

人の暮らし方が変わって、犬の生活も変わってきた。

なにがどんな風に変わったのか、少し考えてみる時間も学びのひとつです。



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犬のことを理解しよう!チャリティ犬語セミナー終了しました

本日、月下虫音の大田こぞうさんと企画した「チャリティ犬語セミナー」が終了しました。

足元の悪いなかご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

動画から犬の行動を細かくひろっていき、そしてそれを行動種別に分け、
犬の状態の情報を明確にしていくという、簡単そうだけど、実はとても地味で
細かいのだけど、でも奥が深い作業を、参加者のみなさんにやっていただきました。

そして、たくさんの情報をその短い動画の中から拾いあげることができていました。
どれだけ参加者が真剣にその動画を見てくださっていたのかが、伝わってきました。

数分の動画の中に、犬のいろいろな行動が出ていて、犬が行動を通して表現していること、
それは全て伝えたいものではないかもしれなけれど、表現されているということは、
受け取り手を必要としている行動であることは間違いありません。

犬がいかに社会的な動物かを知る機会になっていただけたかとも思いますし、
犬の行動の見方をいつもとは少し変えてみることで、見つけたものもあるのではないでしょうか。

動画を見たときに、こうしたらいいのにとか、どうしたらいいのかしらと考えてしまうのは、
犬の行動を問題として捉えるため、解決の手段を模索してしまうためです。

ここは一番最後のところなのです。
実際に動画を通して行動をひろいあげ、分類別することができたら、その次に必要なのは、
犬が必要としているのかは何かを考えることから始めてください。

たとえばですが、非常に距離があって自分を脅かすような存在ではないものに対して、
防衛行動として吠えたり、リードをひっぱって興奮するようなことがある犬に対して、
その犬が必要としているのは何でしょうか。

その必要性をセミナーで聞きたかったという方もいらっしゃったのかもしれません。

ただ、この部分に簡単に触れられないのは、成犬で過去に様々な学習経験をしてきた犬の場合には、
他の行動との関連性を含めて、必要性を定めていく必要があるからです。
ここは、冒頭で見た発達途中の数ヶ月の犬の必要性とは異なる部分も出てきます。

犬に号令によって視線を飼い主に向けさせたり、顔を背けさせたりするトレーニングは、
その必要性を見極めなくても行うことができます。
対処法としてはとても導入しやすく誰でも教えることができるため、他の行動に置き換えるトレーニングは
とても普及しています。吠える行動を早くとめさせるためには有効な手段でもあります。

その飼い主に注目させるトレーニングと、犬の成長と発達の過程での必要性は別です。

必要性がわかれば、「犬の必要性」をどのようにして与えていくのかということを考えます。
いろんなやり方があると思いますが、これにはやはり時間と空間が必要になります。
「間」というのはどんなときにも大切なものであるということです。


犬が行動を通して多くのことを伝達しているということを知っていただく機会になれたのであれば、
今回の犬語セミナーはとても貴重な機会でした。

セミナーの最後に大田こぞうさんがコメントされたように、
動物への理解は人への理解につながっていると、わたしもそのように思います。
動物にとっての必要性は、自分達にとっての必要性ではないかと思うことも多々あります。


自分の思いを受け取ってほしいという気持ちが優先してしまい、相手の思いや状態を受け取れないのであれば、
対等で信頼できる関係性は生まれません。

セミナーでお話できなかったこと、途中までになってしまったことなどをこれからブログにつづっていきます。

チャリティセミナーの資金は、福岡県、佐賀県、熊本県の各県の動物愛護センターへ
資金もしくは物資支援の形で寄付をいたします。
収支報告はブログにアップします。しばらくお待ちください。

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犬の行動を観察する動機:動物行動学を飼い主として利用する意味

動物の生態と行動について知るためには、まず動物について観察して分析することです。

動物の生態には、どんなものを食べているのかなども含まれます。
動物の糞の中に排出されている動物が食べたものを採取して分析すれば、
その動物が何を食べているのかという食性を知ることができます。
またそこから、その食を得られる場所がある程度特定されると、
動物が食を得るために行動している行動圏といわれる範囲が特定されてきます。

先日、天皇陛下がタヌキの食性についての研究論文を発表されたのも、長い期間にわたる観察の結果です。

動物の生態はこのように周囲の環境との関係によって成り立っています。
これらを包括的に捉えていく生態学は、エコロジーといわれます。

これに対して行動を学ぶ勉強の分野をエソロジーといいます。
あくまで学問の分類であり、二つの学びの分野の重なりは常にあります。

動物行動学で行動を知るために行う方法は、とにかく行動を観察することです。

動物行動に関しては、希少動物の行動研究に多くの予算がかけられています。
なかなか見ることのできない動物を観察することのほうが研究も希少ということかもしれませんし、
希少動物はいずれこの環境から絶滅してしまう恐れもあるため、
今のうちに情報を知りえておこうということかもしれません。

そういう意味でいえば「イヌ」はいつでも世界中の非常に多くの地域に生息する
非常に数の多い動物であることから、研究対象とはなりにくい存在です。
イヌは環境への順応性が高く、人と共に行動することが可能であったこととや
人から作業などの役割を持たせられたことで、人と同行する必要性も高まり、
人の移動の範囲の変化に伴って、広域に生息するようになったのです。

こうして、イヌは行動研究から遠ざけられてきました。
しかし、ローレンツ博士など生活の中にいる動物の行動にもその視点を失わなかった学者が
身近にいる動物に対しても研究対象の動物と同じように生活の中で観察をして得た内容が、
「人、イヌにあう」といった本となって出版されるようになりました。

こうした視点は、多くの人の子供のころには行われていたことだと思います。
たとえば、公園や神社で珍しい昆虫や動物を見つけて、それがどのように行動しているのかを知りたくて
長い時間眺めていたということはないでしょうか。

ところが、こうした他の生物を観察しようという意欲は、成長と共に失われていくことが多いようです。
理由はわかりませんが、ひとりで生存する力のない子供にとっては、生きているもの同士のつながりが
環境をつくっているという自然の感覚が生きているのかもしれません。

都市化が進み、子供のころに昆虫や動物たちに自然とふれあえる環境も失われてきました。
特にイヌは子供たちにとって親からあてがわれるオモチャのような存在となりつつあります。
子供たちにとってだけでなく、大人にとってのイヌも同じような存在に変化してしまう恐れもあります。
イヌは人に癒しを与えるために必要な道具になりつつある傾向もあることを否定できません。

イヌはもともと自然界に存在している動物で、長い時間をかけて人のそばに暮らすようになりました。
その間、子供たちの風景の中にいつもイヌは興味のある観察の対象として存在していたことでしょう。
その観察のし方は、フェアで自然な視点によるものではなかったかと想像します。

これを実現させるためには、観察者が観察の対象となるものを利用するという目的を持たないことが必要です。

人が犬をさまざまな理由で利用するという関係性を保持し続けたままの観察では、
観察対象の犬に「こうあって欲しい」という気持ちが優先してしまい、冷静に見る力を失います。
犬という動物に対する好意的な思い込みもその見る力を低下させてしまうでしょう。

見たものに感情が生じるのは単純な人の心理です。
その心理を抑えることは難しいものでありますが、見る力は次第に育ちます。

行動は種により異なることがあるため、行動学は比較行動学といわれることもあります。
ただ、人と犬は生活環境を同じくし、互いに強く影響を与え合っている存在です。
犬の行動を観察してその行動心理を探ることは、実は人の行動心理にもつながっていきます。

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以外と知られていない多頭飼育のストレス行動

犬の小型化が進んだ結果増えたのが、小型犬の多頭飼育です。
小さな犬を2頭いっしょに散歩させている姿をよく見かけるようになりました。

多頭飼育の目的は飼い主さんによって様々です。

なんとなくというもの。犬を飼われている方で多頭飼育の方にはよくあります。
特に理由はありません、ということですが、ショップで見かけてしまってというケースも多いようです。

家族で取り合いになったりモノ化しすぎてしまうと、「だれそれの犬」という分類になります。
この犬はお母さんのもので、この犬はお父さんのものとか娘のものとかいうこともあります。

多頭飼育で一番多い理由は、1頭ではかわいそうだから、というものでしょうか。

確かに犬は犬とのコミュニケーションを楽しむことができます。
ただ、逆に犬との関係性を作ることが難しく、犬と過ごすことや多頭での暮らしが
犬にとって負担になっていることも多々あるのも事実です。

この意味では、非社会的動物である猫の方が、社会的関係を築く必要がなく
室内を分離して住み分けることがうまくいけば、多頭飼育でも問題はおきにくいのかもしれません。

犬は社会的な動物です。人とも社会的な関係を築きます。
犬という同種であれば、一層社会的な関係を築くのか否やということになります。

多頭飼育で関係性がうまくいっていないお知らせは、犬のいろいろな行動によって表現されます。

わかりやすいのは排泄行動です。
いままでうまくいっていたトイレ場での排泄ができなくなり失敗が多くなる。
新しく迎えた犬がなかなかトイレが上手にできない。
食糞をする。などです。

散歩中の行動にも変化があわられることがあります。
多頭になったことで2頭での散歩をするようになるかもしれません。
先住犬が散歩に行きたがらない、歩きたがらないという行動もそのひとつです。

犬と犬が直接的に関わっている行動はもっとも分かりやすいものです。
興奮して2頭が走り回る。プロレスをするように歯をあてあって興奮している。
どちらもくり返し腹部をみせあって興奮する。
など、犬と犬の直接的なコミュニケーションにはいろいろなパターンがありますが
興奮が激しいと感じられたり、歯を相手に当てる行動が多くなるようでしたら注意が必要です。

よく先住犬をたてればいいというような対処法の紹介があります。
先住犬に先にゴハンを与えるとか、オヤツを先に与えるとかですね。
序列を教えるためにこのようにすればいいというアドバイスなのかもしれませんが、
犬は本質がわかるためこのようなことで関係性がごまかされることあはりません。

多頭飼育でよく読み違える、2頭の興奮を遊び行動だと思ってしまうこと。
ケンカ行動にまで発展すれば飼い主も気づきやすいのでしょうが、
興奮行動は喜びと受け取られやすいため、気づきも遅くなってしまいます。
子犬化している犬たちは実際の攻撃をせずに、興奮行動をすることで回避し続けることにもなりかねません。
同じテリトリーの中にいる動物を攻撃することは、自分のテリトリーを奪われる行為にもつながるからです。
来客が入ってくるときと出るときには吠えるのに、室内に居座ると吠えなくなるのも同じ状況です。

今まで問題がないと思っていた行動を、問題があるかもと思ってみることには勇気がいります。

たとえば病気ではないと思っていたことが、もしかしたら病気かもと思ってしまうと
不安になってしまい、どうしたらいいのか思い悩みますよね。
病気の場合には病院にいけばいいというのが解決への道になるので、気持ちも楽になります。
ところが、犬の行動療法は、動物病院ほど一般的ではありません。
知ってしまったり、気づきの兆候があってどきどきしてしまうかもしれません。

それでも、犬の行動から得られる気づきを大切にされることをお勧めします。
気づいて知ることは、犬と犬の関係ばかりでなく、犬と人の関わりをも大きく変えてしまいます。
それは、新しい関係作りへの一歩といえます。
気づいたときは扉が開いたとき、勇気を出して一歩を踏み出してください。













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犬の無駄吠えに対処する前に考えること

グッドボーイハートのある博多区の中心部とその周辺は集合マンションがほとんどです。
博多区の事務所で作業しているときに、昼夜を問わず気になるのは、犬の無駄吠えです。

「犬は無駄に吠えることなどない」といいたいところですが、
これは明らかに無駄に吠えていると思われる声が聞こえてきます。

犬の行動から犬の状態を理解する場合には、犬の吠えるという行動もその中に入ります。
声は遠くまで情報を飛ばすことができます。
吠えている犬の姿を見ることはできない環境でも、犬の吠える行動から得られることがあります。

犬が吠えることについては、他の行動と同じように、なぜ吠えているのかということよりも先に、
どのように吠えているのかに注意を払ってみましょう。

吠える声の質というものがあります。
声の質とは、声の高さ、長さ、他の特徴です。1回の吠える声の長さですね。
ワンなのか、ワォーーーーーンなのかでも、違いがあります。

そして吠える声の回数です。
ワンなのか、
ワン、ワン、ワンなのか
ワン、ワン、ワン、ワン、ワン、なのか。

それから全体の吠え続けている声の長さです。
数十秒吠えている、数分吠えている、数時間吠えている、など。

数時間など吠えることがあるはずないと思うこともありましたが、
実際に何時間も吠えている声を聞いたり、吠えている姿を目視したこともありました。

犬の行動は、吠えることを含めてコミュニケーションの手段です。
犬の行動を理解できない人に対して吠えるという行動は、人の関心を引きやすいものです。
そのせいか、犬は人との暮らしで吠えるという方法を活用してきました。
オオカミは吠えず、犬は吠えるというのも、人が動物の生活に関与して与えた影響のひとつでしょう。

その活用の仕方によっては、人に利益を与えることもあるし、
人に不利益と受け取られるものもあります。

ただ、吠えることはコミュニケーションとして受け取られていないことも多々あります。
連続して数十分以上にわたり単調に吠え続けることはコミュニケーションではありません。

では、こうした行動は何かというと、同じ行動をくり返す常同行動というストレス性行動です。
ストレス性行動にはストレスの段階に応じてさまざまな行動があります。
中でも常同行動は、ストレス値の高い状態で表現されてくる行動です。
吠えるという行動が受け取り手のない、くり返し行動として変化したのかもしれません。

常同行動には音を伴わないものも多くあります。
ただ、吠えることがくり返される場合には、吠え声は周囲に届いています。

「犬の様子がおかしいですよ」というお知らせでもあるので、飼い主が気づかれるか
周囲の方が気づいてあげることで、改善を望むこともできます。
犬の吠えは飼い主に注意を促すと「苦情」と捉えられてしまい、ご近所付き合いが難しいという一面もあります。

犬たちのことも、人と人の日頃の関係によって影響を受けてしまうものだと思います。
犬という動物への理解が進むことが、人と人の暮らしをもっと豊かなものにするものだと信じています。









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動物愛護管理センターを訪問

福岡市東部動物愛護管理センターを訪問しました。

移動になっている熊本県センターの犬猫のことと、
しばらく施設に伺っていなかったため、動物の施設管理や
譲渡のシステムなどについての現状を知るという目的でした。

以前、他の動物管理施設でお世話になった方が現場にいらしたため、
忙しい中、丁寧に案内していただき説明を受けることができました。

収容された動物は、健康チェックや性質チェックのための必要期間を経た後、
譲渡対象となる犬猫には不妊手術が行われます。
ほぼ100%不妊手術を行っているとのことで、幼少でも可能とのことでした。

健康や性質の状態を経過観察するためには、それぞれに個別に管理する必要があり、
スペースも管理をする人も必要となります。
福岡県と同様に福岡市の施設も、動物を単期間管理して処分する施設だったものを、
長期間収容管理して経過観察とケアを与え再び家庭犬猫として譲渡する施設へと変わったため、
施設の利用については、今ある空間で工夫しながらなされている様子が伺えます。

盲導犬育成施設に勤務していた自分自身の経験から、
施設の構造が、犬の収容管理し観察とケアを与えることについて、
仕事を効率よくまた動物の状態への影響についてもも身に沁みて知っています。

そのため、こうした工夫しながら努力されている職員のみなさんの労力と共に、
動物たちの負担を感じえることもできます。
現在ではボランティアが施設の清掃などの手伝いをしてくださるとのことで
外部からの現場を尊重する協調した力が、この活動の希望のひとつであることも感じました。

収容されている犬は、ミックス犬が多く、子犬はいません。
現在、どの動物愛護センターも同じような状況になっています。
子犬を飼いたいという気持ちは、過去ブログ記事「人になつくきにくい犬」でご紹介したとおりです。
子犬はすぐに貰い手がつくため、施設にとどまるのは成犬ばかりです。

犬は1歳前後になるとエネルギーの上昇とともに興奮行動も多くなります
吠える、とびつく、リードを引っ張るなどです。
攻撃的行動も見られるようになります。

動物は同種間で、こうした社会的行動が見られるのです。
犬の場合は犬に対してです。
犬に吠える、犬をみると近づいていく、犬にとびつく、歯をあてるなどです。

人は同種ではありませんが、テリトリーを共有する同種に近い存在として
社会的行動が向けられる対象となります。

成犬との関係性やコミュニケーションが改善されないと
これらの行動は問題行動として犬との生活を苦しめるものになります。
苦しいのは飼い主だけではありません。
犬も関係を築けない人という動物との暮らしを苦痛に感じます。

子犬を迎えたからといってこの問題が生じないわけではありません。
むしろ、子犬の方がずっとこうした問題を生じる可能性があります。

動物保護施設から成犬を迎えることを喜びとするためには、
犬と関わるために必要な時間と空間の確保をまずしてください。
あとはゆっくりと観察して知るという理解という過程を経ること。
そして、学ぶことも大切なことです。

いよいよ次の日曜日はチャリティ犬語セミナーです。
みなさんとの学びのための準備のため、少しだけ走ります。

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※福岡市東部動物愛護管理センターで譲渡されている犬猫の情報は
こちらでご覧いただけます。
わんにゃんよかネット


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どうすれば犬は落ち着くのか、の迷路

犬の落ち着きについてのブログ記事の続きです。

犬の落ち着きのない行動について飼い主さんがまず思うことは、
「どうすれば落ち着くのか」ということでしょう。

どのようにすれば犬が落ち着けるようになるのかということについては、
犬の生活環境、飼い主の接し方など、飼育環境によって異なるというのが答えです。

居場所やテリトリーの作り方など、環境が犬の落ち着きに関与していることは
言うまでもありません。

さらに「犬の落ち着かせ」については、社会性が影響しているということを、
11日のラジオ出演のときにお話しして、ブログ記事でも紹介しました。

社会性が影響しているというのを、自分たちに置き換えて考えてみましょう。
それは「誰といると落ち着きを取り戻すのか。」ということです。
ラジオでは大田こぞうさんが、
「私は先生といると落ち着いてきます。」とその例をあげてくれました。

「落ち着き」という行動が、周囲に関係性のある存在との影響によって起こることを
誰もが体験したことがあると思います。
誰とどのようにして過ごすのかという「人と犬の関係性」が表出されます。

だからこそ、犬の落ち着きについては注意を払いたいのです。

人と犬がそのような社会的関係を作っていくには多くの時間と空間が必要です。
人の犬への本質的な理解や価値観の影響も強く現れます。

そうなると人によって犬を落ち着かせることが(実際には犬は自分で落ち着くのですが)
なかなかできないため、問題を回避するために対処法を用いる必要が出てきます。

犬のしつけ方や犬のトレーニングのテクニックを用いて犬の行動を抑える、
つまり落ち着いているような状態に見せることはその対処法です。

たとえば、他の行動に置き換えるというトレーニングもこうした手法のひとつです。
犬の落ち着かない行動による問題行動を抑えるには効果的です。

犬にオスワリ、フセ、私をミテ、マテといった合図に従わせることも、
落ち着かない行動を一旦止めることができます。
犬が飼い主の要求にこたえることが日常化してくると、常に飼い主の望むように行動し始めます。
オスワリやフセをして飼い主さんをじっと見ている犬を見かけます。
吠えたり、とびついたり、ウロウロすることもありません。
しつけ練習をされた犬なのだろうなと思います。

ただ、これらの行動は犬の自律的な行動ではないということの区別は必要です。


動物病院や、狭い道で他の犬と遭遇してしまったときや、移動の際など、
犬にとって日常ではない状況や他者との接近では、人による行動管理が必要とされることもあります。

人の生活は刺激に溢れているため、その生活に犬が少し入り込むだけで、
どのように行動したらいいのか犬には判断がつかないこともあります。

こうした状況で犬に合図を出して行動させることは、とても役立ちます。
都市環境では犬の行動管理が必須になるので、犬の自律性は育ちにくいのです。

自律して落ち着ける犬と、人の合図に従って行動する犬は異なるということです。

犬が自然に落ち着きを取り戻す環境や関係性を築くには時間を必要とします。
犬の成長は1~2年くらいで、人と比べればわずかな時間です。
それでも、その間を親犬のように始終いっしょに過ごすということは実現されにくいようです。
仕事や子育てで忙しい飼い主や、都市部の限られた環境の中では限界が生じます。


できるかどうかは別として、大切なことなのでお伝えします。

犬の落ち着かせは「犬の本性」の一部です。
犬が備えている貴重な社会的機能を、動物として継続して引き継いでいくには、
その機能を今生きているこの犬生で活用することです。

犬の自律した落ち着かせ行動や、落ち着かせによる社会的な能力を発揮できるような成長の機会を、犬を育てる方がつくっていただければと思います。



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