グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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行動を強化する道具:ごほうびやポイントに弱いのは人間かも

最近、グッドボーイハート福岡のすぐ近くにコンビ二ができました。
オープンセールに通っていたら、たまってしまったものがあります。
パンについているスヌーピーのシールです。

よくあるシールです。
シールを集めるとスヌーピーのお皿がもらえる…という例のキャンペーンです。

こういう仕組みって誰が考えるのかなと思いますが、行動の原理をとらえていますね。

このキャンペーンシールは、犬のトレーニングでいうところの「行動を強化する道具」です。

行動を強化するというのはどういうことかというと、
その行動をする頻度が高まる人がいるということです。

シールを集めるともらえるスヌーピーのお皿が欲しい人は、
スヌーピーのシールのついているパンを買う回数が高くなるということです。

まず、ある一定の人はお皿が欲しいために、パンを買うでしょう。
パンを食べることは目的ではないので、パンは人にあげてしまいます。
なぜかというと、そのお皿はパンを買うお金では買えないため(非売品なので)
なぜか、それを獲得したくなってしまうという衝動にかられます。

不思議ですね。
同じお皿が千円で売っていても買わないのに、
非売品といわれると欲しくなってしまうことがあるのです。

千円というお金に変えられない価値を与えられたお皿だということで
人によっては千円のお皿よりも価値のあるものになります。

このお皿の価値はあなたが決めるのです、という選択権を与えられることに対して
選択するという行動が働きます。

そしてシールを集めます。シールの枚数がたまってくると本来の報酬であるお皿が手にはいります。
シールがたまっていく、という快を与えられる機会があります。
ごほうびを得られる機会が近づいている、という快です。

シールをお皿に変えるのは期間限定になっています。
あと1枚あればお皿をもらえるとなると、パンをひとつ買う方もいるかもしれません。

ここまで具体的な数字を出す予測行動は、犬にはありません。
ランダムにごほうびのもらえる合図を与えた練習をすると、このくらいたったら報酬が出るかなと
予測することはあります。

いずれにしも、報酬の出る方向に行動を強化されていくということです。

そんなことないよ。
いつもと同じようにパンを買っているだけで、たまたまシールがたまって
お皿がもらえたらいいくらいに思っているだけだから、私は特にたくさん買わない、
という方もいるかもしれません。

その方々にはこのシールは行動を強化する道具とはならなかったということです。
強化の道具には個体差があります。
報酬となるものが決まっていれば、それをほしいという気持ちがなければ行動は起きません。

スヌーピーキャンペーンはなんども行われているように思います。
なぜなら、集めたお皿がなぜか私のところにたまってくるからです。
お皿をもらったのだけど、実際には使わないからということで、
「先生、スヌーピー好きですよね、使ってください。」といって
持って来てくれるのです。

このキャラクターのシールキャンペーンは多くの方にとっての強化の道具になった
ということでしょう。
こうやって、実際には使わないのにスヌーピーのお皿を手にいれる人が多いからです。

キャラクターが好きとか好きでないとかは、この行動の強化には多少しか影響しないのです。

犬のトレーニングにも、行動を強化する道具を使う必要のあることがあります。

でも注意して使ってください。

なぜなら、人が犬の行動を操作することになってしまうからです。
犬がいうことをきくようになるのなら、良いことではないかと思われるかもしれません。

このことは関係性に影響します。
犬と対等な関係を築くこと、お互いに尊重しあって認め合える関係をつくることが難しくなります。


トレーニングとして必要なときに適切に使いましょう。
そして、操作するトレーニングを上手に卒業することが大切だと思います。

犬にとってのごほうびは、行動を強化する道具だけではありません。
もっとすばらしいごほうびは、人と良い関係をつくって過ごすことです。





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犬はそのうち吠えなくなる?

家に来たばかりの子犬は吠えません。
犬はまだ「吠える」という行動をする年齢に達していないからです。

犬が生まれたときに歩かないのと同じです。
生まれたときすぐに歩けなくても「この犬は歩くことができない」とは思いませんね。
そのうち歩くようになる年齢というのがきます。
必要な年齢に達しても歩けるようにならなかったときに、始めて何かの病気ではないかと調べ始めます。

同じように、
子犬は吠えたり、咬みついたりしません。
キュンキュン鼻をならしてウォーンと遠吠えのような声を出すことはあります。
あま噛みという口で何かをくわえるような行動はします。

でも、ウォンウォンと吠えたり、唸ったりはしません。
そのようなコミュニケーションをまだに身に付けていないからです。

唸り声を上げて咬みついたりはしません。
攻撃性が生じる年齢に達していないからです。

子犬といっても生後3ヶ月齢までのことをいい、犬の種類や個体によっては2ヶ月半くらいで
子犬行動から成犬行動へと移行をはじめます。

犬が吠えるようになると、こう思う飼い主さんがいるようです。
「うちの犬は小さいころは吠えていなかった。だからそのうち吠えなくなる。」とか

「成長したら吠えなくなる。」

「そのうちなんとかなる。」

という考え方です。


犬は飼い主にはっきりとした攻撃性を示すようになるのは、早くて生後5,6ヶ月くらいです。
唸ったり牙を当ててきます。
この年齢になると乳歯が永久歯に変わるため、攻撃する道具を身に付けたことになり
攻撃するという行動も生じるようになります。

やはり、飼い主さんは、「そのうちなんとかなる。」と思うことがあるようです。


「このままにしておけば、そのうちよくなりませんか?」と尋ねられることもあります。


そう思われるのがとても不思議ですが、犬は人と時間の長さが違います。

6ヶ月だと中学生くらい、1歳だと18歳くらいとかそのくらいです。

あっという間に行動が変化していくので、つい昨日まで吠えていなかった、問題はなかったと
感じてしまうのでしょう。


そのことが、もともとは吠えないし咬みつかない犬だったんだから、いつかそうなるはずと
思ってしまうようです。

そのうちよくなるわけはありません。

そのうちもっとひどくなる可能性の方が高いのです。


犬が表現する、飼い主が問題としている行動は、
「その真実を見て向き合うことで犬と人の関わりがかわりますよ。」というお知らせです。

向き合うことで、問題としている行動以外にも、いろいろと問題となることが見えてしまうかもしれません。


そのうちよくなる=放置してしまうと、問題はもっと大きくなってしまい、
もう見ることもできなくなってしまうかもしれません。

そうなる前に、取り組んでほしいのです。

犬と良い関係をつくり、犬も人も安心して楽しく暮らしていくために。

犬と暮らす喜びを膨らませてほしいのです。


犬のことでだれかが「そのうちよくなる」といったら
「本当にそう思ってるの?」ときいてください。

犬のことで自分が「そのうちよくなる」と思ったら
「本当にそう思ってるの?」と自分にきいてください。

それだけでも、きっと一歩はすすみます。






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Posted in 犬のこと

犬好きの犬かまれ?:犬のことを知っていると思ってしまうと見えなくなることもある

30日のLOVE FM放送「月下虫音」を聴いてくださったみなさん。
ありがとうございました。

聴くつもりでラジオの前にいたのに、寝落ちしたみなさんとラジオを聴いてくださった方に
今日は、ラジオ放送の一部を復習したいと思います。(勉強に予習、復習は大切です!!)


いつも大田さんとのトークはテーマはなし、というのが原則というか、
テーマ決めても無理よね、という流れなので、なんとなくふたりの赴くままに向かっていきます。

今回は「犬好きのほうが犬が得意でない人よりも、犬のコトバを読み違えるのよね。」という私のふりに答えて
大田さんが「ここでは、犬好きの犬かまれっていってるんですよ。」ということではじまりました。
どうやら、犬が好きな人ほど犬に咬まれるという意味を短くしたようです。

これは事実です。

犬が好きな人ほど犬に咬まれています。
犬に咬まれる対象の一番は「飼い主」です。

「犬好き」の人と「犬に関心のない人」では、犬との距離感が違うんですね。

「犬好き」な人にはこんな特徴があります。(個体差ありです!!)
・犬を見るとキャー、カワイイー!と大きな声を出す。
・急いで犬の方に近づいてくる
・「触っていいですか?」という
・「写真撮らせてください」という
・手を出して犬に触ろうとする、もしくはさわる、抱き上げる
・多いかぶさるように手を出す
・しゃがみこみ「こっちにおいで」という
・じーっと見つめる
・とびつく犬をなでる

「犬が好き」という感情は「興奮行動」を引き起こすためでしょう。

人も動物です。
もちろん全てではないですが、単純な行動、いわゆる「あるある」というものは
ある程度分類して分けることができ、そして状態を知ることも可能なのです。

元にもどります。

興奮しているときには、相手がどのような状態か観察しないで近づいてしまいます。
自分の気持ちが優先してしまうので、こうなってしまうのですね。

自分が犬に近づいていくとき、犬の行動を観察してそのコトバを受け取ると、犬は安心します。
犬は行動が早いですが、見慣れてくるとよく見えるようになってきます。

犬に関心のない方は、犬を動物として接しています。
多くの人が「動物」に簡単には近づかないように、犬にも簡単には近づきません。

犬とすれ違うときにも、犬をよくみながら「咬まれないように」距離をとってすれ違っています。
あまりにも強い緊張感は犬に伝わってしまうため、よい関係を生みませんが、
お互いに距離、という物理的な長さを保てば、お互いに安心が生まれてきます。

犬に近づいたら「犬がとびついて喜んでいますよ。」という方。
飛びついているのを喜んでいると思うのは、どうしてでしょうか。

犬が犬にとびついたら、大変なことになります。
とびつくのは興奮している行動だからです。

人が興奮して近づくから、犬も興奮してとびつかなければいけない。


結局、「犬好きの入る落とし穴」はあるということです。
だれでもはまる可能性があるので、もし今はまっていても心配しないでください。

この落とし穴は結構浅いので、誰でも自力で出ることができます。

出方がわからない!方は、チャリティ犬語セミナーに出席してください。

番組のあとにも、またたくさんの申込みをいただきました。
みなさん忙しいのでゆっくりと決めていただきたいのですが、残席を気にされている方も多いようです。
今のところ、残席はまだ20くらいあります。
お仕事の調整も無理のない程度で、じっくり検討してご連絡ください!


昨日はブログお休みしてしまい、すみません。
毎日更新+ずる休みアリのブログ更新ですが、今後もゆるりとお付き合いください。

ルーク1


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Posted in 日々のこと, 犬のこと

犬と花火大会・花火大会に同伴される犬の表情からみえるもの

犬と花火大会

少し前のことになりますが、帰宅中に渋滞にはまってしまいました。
地域の花火大会を見学する車で車道の一列がふさがれていたため、花火を見ている人たちを横目でみながらゆっくり運転していました。

そこで、こういう間違いも起こりやすいのだなという風景を見ました。

花火見物に犬を同伴させている飼い主さんがいたのです。
散歩の途中なのか、リードをつけた中型犬をそばにして、その飼い主さんは花火に見入っていました。周囲にもたくさんの人たちが花火を笑顔で見ていました。
もちろん、飼い主さんも笑顔で見ています。飼い主さんが座っているので、飼い主さんのすぐ横に犬の顔があるような位置ですね。

犬の表情は、大きく口を開けて舌を思いっきり出しています。
身動きをしようとする感じはありません。視線は飼い主ではない方向に向けられています。

この犬の表情から、犬がどのような状態であるのかを知ることができます。

画像で確認しないと、イメージできないかもしれませんが、少し想像してみてください。犬に関心のある方なら、どこかでこんな犬の表情を見たことがあるかもしれません。

その花火見学をしている飼い主さんと同伴されている犬。
飼い主さんとしては、きれいな花火を犬と一緒に見たいという、犬を大切に思う気持ちから発した行動だと推測されます。
そして、きっとその犬が喜びを表現していて「犬も喜んでくれている」と思って、さらに笑顔になっているのでしょう。

動物の表情の中でも、大きく口を開けている表情は読み違いされやすいのです。
イヌ科動物以外の犬も大きく口を開けている表情を、リラックスしていると受け取られてしまうことがあります。

イヌ科動物、特に犬の場合にはこうした表情は「笑っている」と勘違いされやすいのです。
勘違いが答えになりますが、つまり犬は笑っているのではないのです。

犬は緊張を緩和させたい、緊張しているときにこのような表情を出します。
動物の大きなあくびや、口を開けたままにしている表情も、やはり緊張の強いときに動物が表現する表情です。

表情は他のコミュニケーションと同じように、他者へ伝達するシグナルとしての役割を果たします。社会性がつよい犬は、特に社会的なグループの中で常にコミュニケーションをとっているために、表情によって自分の状態を伝える仕組み(機能)を備えています。

では、犬が大きく口を開けている表情を、笑っているのだと勘違いしてしまうのはなぜか。

ひとつは擬人化されることでおこります。
人が口を開けて笑顔を見せる「笑う表情」と似ていることから、犬が笑っていると勘違いしてしまうのです。ですが、人の笑う表情も緊張を緩和させるためにも使われています。
叱られると笑顔を見せる人もいるのをご存知だと思います。
人の表情も進化の過程で少しずつ変化はしているものの、筋肉の使い方、特に顔から上の筋肉の使い方は、緊張緩和のためにはよく使われています。

花火は楽しいものと人が思い込む価値観から、犬も大好きなはずと思ってしまう間違いもあるのかもしれません。
近くを通行する車に乗っている私でもストレスを感じるほどの爆音がしていて、動物が平静さを失うような刺激でした。

犬の気持ちを知る方法はいろいろあります。
表情などのコミュニケーションを上手に読み取ることは、案外練習によってできるようになるものです。

飼い主さんの気持ちをきちんと犬に伝えていくためには
まず犬の表情と行動から、犬の状態(気持ち)を知ることです。

昨日は犬語セミナークラスを開催しました。
ビデオで見る犬の表情と行動。
何度見ても、見逃している小さな部分に気づきます。

知らなかったことは少しだけ悔しいけど、気づいたときはやっぱりよかったと思える。
学び続けるためには、謙虚な気持ちを持ち続けることが大切のようです。


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犬との正しいあいさつを知っていますか?

先日、お家に来たばかりの子犬のご自宅へ訪問しました。
ところが、その子犬は私の姿を見てワンワンと吠えて飛び跳ねています。
大変興奮した状態なので、何か訳があるのだろうなと思い飼い主さんに状況をうかがっていきました。

話しの内容で、子犬が人を見て興奮するようになった理由がわかりました。

子犬が来ることが以前からわかっており、来客の出入りの多い場所であったことから
子犬が来たら見たいという「犬好きさん」たちがたくさん面会に来たようです。

犬を好きな方の多くは、犬とのあいさつのときに興奮してしまいます。

「キャーカワイイー」と大きな声を出しながら接する

子犬を抱き上げて、タカイタカイをする

子犬を抱き上げて、抱きしめる

子犬を抱き上げて、頬ずりする

子犬に抱きつく

子犬の頭や顔を撫で回す

子犬に覆いかぶさるようにして手を出す
※手の甲の臭いをかがせるという方法が広まっていますが、これは犬によります。

子犬に手を出すと子犬がひっくりかえり、その後腹をなでる。


こんなパターンの行動で接する方が多いのではないでしょうか。

こうした接し方は、犬とのあいさつとしては間違っています。

どのように間違っているのかをひとつひとつ説明するにはコトバだけでは不足になりますが、わかりやすくいうと、犬のスペースを侵しているということです。

接し方の基本は子犬も成犬も同じです。

子犬の方がまだパーソナルスペースがきちんと出来上がっておらず、
他者に踏み込ませやすくなったり、また好奇心がつよく、子犬の方から新しい臭いに
興奮したりとびついたりすることが起きるという違いはあります。

でも、最近では成犬になってもこのパーソナルスペースがきちんとできあがっていないため
来客に飛びついたり、体を押し付けたりしてくることもあります。

では、正しい接し方はどのようなものでしょうか。
相手のスペースを侵略しない接し方です。

よい例は「犬にあまりなれていない」人が子犬に接するときです。

犬に慣れていない人でも小さな子犬で興奮度が低い犬でしたら、怖がる人はいません。

そうした人たちは、子犬を見ても立ったまま、まれに座っても、自分は動こうとはしません。
子犬が近づいてくるのを待ち、近づいてきたら臭いをとらせませます。
ごあいさつはこれで終わりです。

子犬は成長と共に、人を観察するようになり、どのように近づいていくのか
どのように人が自分を認識して受け入れるのかを学ぶようになるのに数ヶ月は必要です。

あいさつのあと、もっとコミュニケーションを深めたければ、オモチャなどの道具をもって
遊んであげるのがいいでしょう。

でも時間が必要です。

遊びとなると関係性を深めていく段階に入っていきます。
なんどもその犬とこれから会う可能性があって、その子犬にとって大切な存在となる人とは
回数と時間を重ねて、少しずつ関係性を高めていってください。

その他の人は、通りすがりの人です。
子犬が臭いを取りにいけば、ごあいさつはそれで終わり
その後は子犬にかまう必要はありません。

犬のスペースを侵さないように配慮してくださればそれで十分です。

犬とのあいさつの仕方は、コトバ伝えることはむずかしいですが、
実際に接しているのをみていただけるとわかります。

レッスンを受講していらっしゃる方は、少しずつ身に付けていかれます。

実はこうした学びは、犬に号令を教えることよりもずっと大切な学びです。

もっとわかりやすく理解していただけるように、イラスト化を企画してます。

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Posted in 犬のこと, コラム

「尻尾を振る犬は喜んでいる」は迷信ファイルへ

「犬が尻尾を振っているのは喜んでいる」と思いますか?

先日クラスのときに、飼い主さんからこんなことをいわれました。
「尻尾を振っているのは喜んでいると思っていたけど違うんですね。今までずっとそうだと思ってました。みんなそう思ってますよね。」

今までずっと、それも何十年にもわたってそうだと思っている事は、自分の中では常識化してしまいます。
それを「そうではない」と知ったときの衝撃は大変強いものでしょう。

「みんなそう思っていますよね。」という世間の常識が違っていた、ということが衝撃が強さを後押しします。

「尻尾を振っているの犬は喜んでいる。」は、犬の行動を説明するには不十分です。
「尻尾を振っているの犬は興奮している」というのが、犬の習性を捉えた表現方法です。

その興奮の中に、喜びが入っていることは否定しません。
ただ、その喜びは人のものと同じであるとは限りません。それは犬にしかわかりません。
そして、興奮行動の中には、もっと違う種類の行動も含まれています。
たとえば、攻撃行動です。

犬が尻尾を振って近づいてきた→手を出して咬みつかれた
という経験をしたことがある人もいるでしょう。尻尾を振っている犬が、咬みつくことは珍しくありません。なぜなら尻尾を振っていたその犬は興奮していたからです。

「犬が尻尾を振っているのは喜んでいる」という迷信から抜け出せない人は、次のような説明をします。
犬が尻尾を振って喜んでいるときに近づいたら、豹変して咬みついた
犬が尻尾を振って喜んでいるときに近づいたら、急に嫌なことが起きて咬みついた

カウンセリングのとき、飼い主さんの複雑な状況説明を聞くことがあります。
「尻尾を振っている犬は喜んでいる」という迷信から抜け出せないため、このような状況説明になってしまうのです。

ではどうしたらいいのでしょうか。

犬のことを理解するのは難しいのでしょうか。

そんなことはありません。
犬の行動は一定の環境ではとても分かりやすくシンプルです。

他のことはともかく、犬のことに関する「常識」は、改めて「犬の習性」として、よく観察しその行動を分析すれば、犬の状態を正しく知ることができます。

実はわたしも、犬のことを学び始めた当初、常識が崩れる経験をしてきました。最初に数回の「常識崩れ」が起きると、その後からはいつも「今自分が知っていることは本当のことではないかもしれない。」というように、常に自分の持っている知識に曖昧さを残せるようになります。
この行動はこのケースではこう、別にこう見ることもできるという風に行動の分類わけもでき、いくつもの側面から見ることができるようになります。受け取り方に柔軟性が出て、もはや知ることこそ楽しみになるという風に変わってきます。

すぐに正しい答えがでないと落ち使いない飼い主さんもいます。
わからないことをそのままにしておくことは、ストレスになります。そのため一旦、こうだと固定してしまい、それが常識化してしまうということでしょう。
ネットですぐに検索して、わからないことを解決する習慣がついている今の社会で、曖昧さを残すことは、慣れない習慣なのかもしれません。

犬のことを知りたい気持ちを継続させて学び続けることは、実はとても楽しいことです。

迷信ファイルというコトバも、ある生徒さんが作ってくれました。
犬の行動学セミナーのときに「あれって迷信なんですね。迷信ファイルに入れておきます。」といって、そのときいくつもの犬の迷信を拾われていたようです。

犬の迷信もある一定の役割を果たしたのかもしれません。
でも、そろそろ、本当のことに気づいてもいい時期でもあると思います。

犬の行動学は分かりやすく楽しいです。特にご自分の犬の行動について知ることは特別な時間です。行動学の専門家が見るあなたの犬の行動について知りたい方は、ぜひカウンセリングクラスを受講してみてください。

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犬の夏の暑さ対策

福岡は残暑が厳しいですね。山と比較すると夏の入りは同じ時期なのに、夏の終わりは都市では遅いと感じます。山ではもう秋の風が吹き降ろしてきているというのに、それが福岡の都市環境には届きません。

これだけ暑さが長引くと、犬は体力を消耗します。
暑さにより生じる犬の行動の変化はいくつかありますが、その中でも気をつけたいのは「食欲の低下」です。

食べものを消化することは体力を使います。夏の季節に食が細くなることは、犬の自己調整力でもあります。食べることを少なくして体力を温存させているのですね。
少し食欲が落ちる程度でしたら、犬の調整力と思って見守ることができます。
ですが場合によっては、本当に食欲が落ちていると感じられる状態になることがあります。

たとえば、夜の暑さで睡眠を十分に取れないと、朝ゴハンを食べません。犬の個体差や状態によりますが、いつも半分くらいは食べるのでしたらまだしも、全く食べないとなると睡眠の質は大丈夫だろうかと考えてあげた方が良いでしょう。

睡眠は消化機能や体力を高めるために必要な時間でもあり、脳の機能を休めるためにも大切です。犬は浅い眠りで長時間寝続けますが、夜の睡眠を十分にとることは体力回復のためにも役立ちます。暑さのために日中も体力を使っています。屋外飼育の場合には、若いときは大丈夫な犬も、10歳を超えたら夜の環境整備を考えてあげてください。

郊外にお住いの場合には、都市開発によって毎年暑さや風の流れが変わっています。昼間でも昨年よりも暑くなったなと感じられるときは、犬小屋のある外環境も同じように悪化していることもあります。離れたところでの環境の変化が、犬の環境にも影響を及ぼしていることにはなかなか気づきにくいものです。

屋外飼育の犬の場合は、室内の涼しい場所で過ごせるようにすることを犬が受け入れることができるなら、そのような工夫もあってよいでしょう。他にもそれぞれの環境の中で工夫できることがありそうです。犬が受け入れる形で少しずつ変化させていくことも、犬とのコミュニケーションのひとつです。

あとは秋を迎えるだけ。
秋風が早く犬たちを元気にしてくれることが待ち遠しいです。

※犬の暑さ対策については過去ブログ「犬が暑さを乗り切るコツ」でもお伝えしました。参考にしてください。

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犬の不自然な行動を知ること:限定される環境が犬に与える影響について

昨日のブログ「犬の行動範囲の真実」につづけていきます。

犬が日常的に過ごしている家庭訪問トレーニングクラスでは、状況に応じた犬の行動について飼い主さんから話を伺うことは、犬の状態や抱えている問題の質を知る上で大切です。

また、実際に犬と接して「人との生活の場」の中で犬の行動を見るとき、その中に不自然な行動をたくさん見ることができます。それは限られた環境に飼われている動物が多く見せる行動なので、もはやそれを「不自然な行動」と感じられる人が少なくなっています。

限られた環境に飼われている動物として動物園の動物をあげます。もちろん、動物園で生きることと、人に飼われて生きることは全くことなる環境です。環境が限られるということが動物に影響した結果、行動が変化してくるということを示す例としてはかけ離れています。

それでも、犬が人に飼われる環境の不自然さが進んだ結果、動物園の動物の行動と同じような行動を、犬が実際にしているという事実もあります。たとえば、サークルの中に長時間入れられている犬が、サークルの前で左右にいったりきたりする行動もそのひとつです。同じ行動をくり返すストレスを表現する行動です。

同じ行動をくり返す行動として、長時間の「毛づくろい行動」もあります。動物保護施設のネコ舎で、ずっと毛づくろいをしているネコたちを見たことがあります。これも同じ行動をくり返すストレス行動です。犬は毛づくろい行動をしないように思われていますが、自分の手や足をなめたり、毛をかんだりするという、毛づくろいのように見える行動を行っていることはよくあります。ただ、これが不自然な行動であることに気づく人が少なくなっています。

犬の状態を知るためには、その行動の意味を知る必要があります。
犬が習性として行う行動を人の都合で止めさせたり、逆に犬が不自然に行っている行動に気づかず対応していないということを知ることからはじまります。
そのことが、飼い主が犬に必要な環境を整える準備が始まった、ということなのです。

犬の行動について知りたい方は「チャリティ犬語セミナー2016.10.23」に参加してください。
犬の行動は犬が表現するもの、犬のコトバそのものなのです。
受け取る人がいるから表現がある。
受け取る人はわたしたちひとりひとりです。
ぜひいっしょに犬のコトバを受け取ってください!

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犬の行動範囲の真実:犬の安心は本当に獲得されているのか

七山校が里に位置するところにあります。里というよりはどちらかというと山裾といった方がいいかもしれません。相棒の草刈機1号がついに修理となり、重量のある草刈機2号で茂った山裾を少しだけ刈り込みました。
野生動物の行動範囲は、山から里にかけてその環境に影響するため、その環境に影響を与えている自分が介在する作業との関連性に、関心が続きます。

建物の近くまで来るアナグマは、草がきれいに刈り込まれている環境でもゆっくりとやってきて、家の周囲の土の中から幼虫を食べては山へ帰っていきます。アナグマの行動も環境だけでなく、その個体の性格によって違いが出ているのだろうと感じます。

犬にも行動範囲が広い個体と狭い個体がいます。その行動も犬の周囲の環境によって異なります。ところが、犬の活動の範囲が広い方なのか、狭いほうなのかということを知るために犬の日常過ごしている行動のパターンをみても、正しい情報が得られないことがあります。

なぜなら、これらの個体情報は犬があくまで「自然に」活動していることで知ることができるからです。現代の都市周辺環境での犬の活動は動物としては「不自然」に限りなく近いです。理由は、家や庭などの囲いのある場所でのみ活動しそこから出ることがない、出るときにはリード(ひきづな)をつけているため自由行動がない、リードから解放されるのはドッグランなどの囲いのある犬用の施設の中、という環境で過ごしているからです。

冒頭の野生動物から見る行動の範囲を考えるとき、動物が行動をするのは自分の安全を確保できる信頼を重ねた上でその範囲を広げていきます。危険だと感じられるところには近づかなくなり、身を隠せるような場所があると里に近づきやすくなります。動物の行動は常に自分自身の安全の確保と関連しています。

犬の場合には、その安全を常に人が提供しています。小さな庭には危険が襲うことがなく、自由に庭内を行き来することになり、リードをつけているときには飼い主という管理者がそばにいるため多少危険な行為だと思われることがあっても、飼い主が犬を守るという行動で片付けられます。

たとえば、散歩中に力のない犬が力のある犬に吠えかかっていっても、リードがついている限り相手が反撃することもなく、吠えかかった犬がその危険性を知ることもないということです。

自らの安全を確保してそしてそれを行動として広げていくという動物の基本姿勢を、犬は身に付けるチャンスを失ってしまったように思えます。

犬が安心して行動しているのであればいいではないか、という意見もあるかもしれません。
ただ、こうした依存的に行動するようになった犬は、決して「安心して」行動していないことを証明する行動がいくつも現れています。

突然、何かに遭遇したときにパニックを起こして奇声を発したり、飼い主がいつも自分に関心を示したり要求を聞くことを試す行動を毎日くり返し行っています。

これも飼い主という存在が犬という動物に与えているひとつの環境ではありますが、その関係性にお互いの自律を見ることができるようになれば、もっと犬の行動は自信にあふれたものへと変化していきます。

そんな犬の姿をときどき見る瞬間があると、なぜかホッとしてしまいます。

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犬に「天罰」はいらない

犬育ての基本姿勢は昔からあまり変わっていないように思います。

時代に応じて、いろいろと変わっていくのは「犬のしつけ方・トレーニング法」です。
犬のトレーニング法は犬育ての基本姿勢とは違う面を持ちます。
「しつけ方・トレーニング法」の中に手法などのテクニックを含んでいるということです。

その手法のひとつ、忘れかけていた言葉を生徒さんから聞きました。
「犬に天罰を与えるように教わったことがあるのだけど、上手くいかずに結局しませんでした。」
というものでした。

「天罰」というトレーニング法をわたしも覚えています。
最初に犬のトレーニングを学んだのが訓練所に勤め始めたときで、もう30年以上前のことです。
訓練所では、先輩方からそのやり方を学んだり、やっていることの意味を教えてもらいました。
その中に「天罰」という手法がありました。

今ではほとんど使われることはない古い手法のため、ご存知ない方のために説明します。
犬のトレーニングやしつけ方で用いる「天罰」とはこのようなものです。

犬に「罰」を与えたい状況になったとき、たとえば、犬が食べ物を盗み食いしたとか
家具をかじっているとか、サークルの中で吠えているとか…そういった状況です。

そのような状況に、犬に対して罰を与えるというものです。
ただし、その罰は自分(=人)が与えていると犬に思われていはいけない、
それを「天罰」として与えるのだという手法です。

その「天罰」の与え方も様々であるようですが、たとえば空き缶に石などをいれておき
投げて音を出す、その際にも空から降ってきたように投げることで、犬には「天罰」だと
思わせるというものです。

ではなぜ、犬に罰を与えているのが自分(=人)だと思われてはいけない理由はいくつかあります。
人を嫌いにならないように、人を怖がるようにならないように、という理由だったり
人が見ていないと罰を与える人がいないため、それらの困ったことを人がいないときに犬がするというのが主な理由です。

なんとなく「なるほど」的な感じがして、天罰を試したことがある人もいるかもしれません。

でも、よく考えてみてください。
これらの中にはいくつもの矛盾があります。

そもそも、やってはいけないことを「いけない」と飼い主が叱責することで
嫌われたり、怖がられたりするようなら、そもそもその飼い主と犬の関係性に問題があります。
叱責ができるのは、群れの順位が上のもの、わかりやすくいえば親的存在です。
してはいけないことを叱責されたことで、親のことを一瞬は不快に思ったとしても、
お互いに尊重しあえる必要な存在であれば、関係性に問題はなくむしろ関係性はより深まります。
このとき、犬に善悪の判断を理解させる必要もありません。子供とて同じことですね。

まずはルールを一貫して決めている役割のものがいるので、そのものがルールをわかりやすく
伝えるというだけのことです。
もちろん、そのためには犬と人が関係性をつくる必要があります。
関係性は罰を与えることでは作れませんが、犬にはグループに所属し服従するという能力があります。

天罰という考え方は人の中にあるものです。
たとえば、人のものをこっそり盗んだあとに、転んで怪我をするようなことがあったときに
自分に嫌なことが起きたのは、自分が人に嫌なことをしたからだ、これは天罰だ。
そのような内容ではないでしょうか。
こんな因果関係で物事を考えるのは、人、それも大人であって犬には起こりません。

そして、敏感な犬はその「天罰」が飼い主が与えた罰であることをすぐに理解します。
なげたものから臭う飼い主の手の臭い、それが動かぬ証拠です。

万が一「天罰」が成功したとしても、その結末はこんなものでしょう。
犬は何か行動を起こしたときに恐ろしいことが起きたため、他の行動も制限がかかる
突然恐ろしいことがときどき起きる、犬はその環境に対して不信感をもつようになる

場合によっては、犬がとても神経質な性格になる可能性もあります。
神経質になった結果、犬はいつも人について回るようになり、「犬がお利口さんになった」と勘違いする飼い主もいるかもしれません。

犬は社会性の高い動物で、ルールに敏感です。
それが犬が群れ=家族というグループに所属している証です。
ルールを決めている人が誰かを知りたいと思っています。
止めさせたいことを犬にわかりやすく伝えるために「天罰」は不要です。

もし天罰法を使ったことがあるとしても、悔いる必要はありません。
犬は忘れ去ることの上手な動物です。
前向きな関係作りを望んでいます。
今日から、今から、犬のよき理解者としてひとつずつ学べばいいのです。

犬育ての基本姿勢は、犬と向き合う心の持ち方です。

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