グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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<犬のしつけ方>放置しても改善しない犬の分離不安行動

分離不安という言葉をあまり使いたくはないのですが、犬の状態をある程度把握していただくために納得しやすい表現として使用させていただきます。

犬の分離不安行動とは、もっと的確な表現をするなら、次の2つの要素を複合している状態の犬だと思ってください。

2つの要素とは以下のとおりです。

・安心できる自分のテリトリーを持っていない
・飼い主に対して依存執着行動を表現している

特に後者の飼い主に対して依存執着行動を示すことについては、とても分かりやすい行動のため、分離不安行動を特徴づける行動ともいえます。

飼い主が離れると騒いだり、飼い主の気を引く行動をします。

飼い主を自分の要求に応じて行動させるための甘え行動や脅し行動が見られるようになります。

脅し行動の中には、軽い甘咬みや首元に手を近づけると手をなめるといった行動から始まり、しまいには出血するほど咬みつく、あざができるほど咬むといった攻撃性行動にまで発展していくことがあります。

犬によっては、咬みつき行動が少なく甘え行動が中心となりながら、そのうち飼い主が離れると不安定になるパニック行動や興奮行動が見られるだけの場合もあります。

咬みつき行動がでないこうした犬たちは、飼い主が大好きという間違った行動評価を受けながら生涯を終えることもあるのかもしれません。

逆に、咬みつき行動が出た場合は飼い主にとってはとても辛く苦しいことになります。

しかし実際には、咬みつき行動が出始めると飼い主はなんらかの方法でこの問題を解決しようと犬との関係改善に踏み切ることになるでしょうから、こちらの行動の方が飼い主と犬はより良い関係を築く可能性が高まるということにもなるのです。

犬の落ち着かない行動はすべて犬からのメッセージなので、飼い主がどの程度真摯にこのメッセージを受け取るのかで、犬と飼い主の関係性は決まっていくともいえるのです。

とはいえ、飼い主は時には誤った対応をしてしまうことがあります。

飼い主に依存執着する行動からかみつき行動に発展してしまった犬に対して、放置という方法で改善を図ろうとするものです。

分離不安の犬にクレートトレーニングをして長い時間留守番をさせても、犬の分離不安行動は改善されません。

それでも室内犬ではクレートトレーニングが必要なのは、犬に最低でも安全なテリトリーを獲得させることで犬を安全に管理したいからです。

分離不安の犬を外飼いにして数ヶ月もしくは数年にわたって放置したとしても、犬の分離不安行動は改善されません。

犬をひとりにする時間をつくればそのうちに改善しそうな分離不安ですが、外飼いの犬でも分離不安症になってしまうことはあるのです。

保育園や預かり訓練に出しても、犬の分離不安は解決できません。

管理の行き届いた場所で一旦は落ち着いたように見える犬の状態も、飼い主の元にもどればすぐに復活してしまいます。

とにかく犬の分離不安行動は放置しても改善しないということを考えてみてください。

では、どのように改善できるのか。

それは分離不安行動がどのように作られたのかというところに焦点をあてれば見えてきます。

犬のは分離不安行動をつくっているのは、人が飼うという環境の中で起こります。

分離不安行動を作った接し方、環境、犬の性質、思いつくもの全てを書き出してみてください。

分離不安状態に影響を与えている環境を改善すること以外に、解決の道はありません。

そしてその環境の最も強い要因が「飼い主」なのです。


犬は環境にとても敏感な動物で、表面的な接し方ではごまかすことができません。

犬はいつも真実を知っているし、それを教えてくれるすばらしい生き物です。

重度の分離不安行動をかかえている犬がそばにいると、こちらも大変落ち着かなくなってしまいます。

その大変な問題にも解決の糸口があることを、犬自身が教えてくれます。

人として学ぶ機会に犬がいてくれる有難さを十分に感じています。

犬たちが心身ともに健康で朗らかでいるためにお手伝いできることを、飼い主さんといっしょにこれからも取り組んでいきます。

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<犬のこと>犬は湿気に弱い動物:この季節「湿度管理」に気をつけてください!

梅雨前のこの季節、雨が降りそうで降らない不安定な天候が続きます。

急に体調を崩してしまう犬も増えているようです。


犬の生活管理に注意を怠らない飼い主さんたちは、室内や屋外の飼育場所の温度管理にはかなり気を使われているようです。

犬は人のように汗を書きにくく一年中分厚い毛皮を着ているため、熱中症になりやすいというのは多くの飼い主さんが情報として持っているようです。

ところが、案外気づかれていないことがあります。

それは、温度管理と同じレベルで重要な湿度管理についてです。


まだ5月というこの季節は、真夏ように連日にわたり気温が高くなることがありません。

気温が25度程度であれば、危険性はないように思われます。

気温があまり高くなくとも、犬の息づかいが早くなってきたり、グッタリした様子をみせるようでしたら、湿度の方を確認してみてください。

犬の毛質やサイズによって個体差はありますが、湿度は60%を越えると犬の体には多少のストレスを与えるような環境になってしまいます。

室内にいるから大丈夫ではないかと思ってしまうのですが、実はそうではないのです。


土の上で生活している犬たちは、暑ければ土を掘って冷たい地面の上に体をうずめて冷気をとっています。

また、日陰で風当たりの良いところは湿度が低く保たれており、好んでこういった場所に身を隠しています。

これに反して、室内は風通しが悪く、土のような冷たさもありません。

体を冷すようなアルミ製のシートなども販売されていますが、土は冷却シートよりも冷たく心地よいのです。


風通しが悪く湿気を発しやすい室内には、エアコンという文明の利器がありますから、除湿で対応していただくしかありません。

特にクレートトレーニング中の犬については、クレート内の湿度が上昇しやすくなってしまいます。

除湿をしっかりかけて、扇風機を回して、室内の空気を循環させてあげましょう。


屋外の犬たちもコンクリートジャングルの中で、風を受けることができなくなっています。

地面は固められて大変暑く、熱気は下りてくるため逃げ場を失います。

屋外用の大きな扇風機を使ったり、日中は土間や玄関スペースや家の一部にいれるように練習するなどの配慮も都心では必要になってきているようです。

人為的に繁殖されている純血種犬の場合、自然環境で生きていくように設計されていません。

あくまでも、人が管理することが前提で人がデザインした犬たちです。

呼吸のしにくい鼻、分厚い毛、長くからまる被毛、脂肪のつきやすい体質など、犬はかなり厳重に管理しなければいけないようになっています。それが純血種犬だと理解しましょう。


愛犬に最適な湿度の基準をみつけるためには、温度と湿度管理をしながら犬の状態を把握して、その犬にあった環境を見つけていくことです。

留守中の気温の変化に対する反応は、リモートカメラでチェックできますね。

人工的な場所で、人工的に作った犬たちを飼うこと。

犬に負担を強いていることを認めた上で、エアコン代は必要と割り切ることも大切です。

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<犬のしつけ方>リモートカメラが大活躍の様子

当ブログで留守番中にリモートカメラを活用してほしいという内容の記事を書きました。

ブログ記事 <おすすめのアイテム>犬の留守番中のカメラ観察:連休明けには必須アイテム

留守番中の練習の他、クレートトレーニングの進行状況を確認するためにも、リモートカメラは結構活躍してくれます。

さらに、そのリモートカメラが安くても結構使える商品であることがわかってきたので、ブログに紹介しました。

数名の生徒さんにリモートカメラをお薦めしていたのですが、紹介記事に納得されたのかリモートカメラの導入率がかなり上がりました。

リモートカメラは静止画や動画の保存のできるものもあるため、留守中の様子を詳しく把握した生徒さんたちからその様子を説明してもらいます。

心配していた留守番の練習が、ステップアップしながら進んでいる様子がカメラを通して確認できます。

下の写真は、クレート留守番から、部屋留守番に変更した犬ちゃんの留守番中のひとコマです。

寝る場所はいろいろと変化しているようですが、安心して休んでくれている姿を確認できるとホッとします。

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ですが、中には部屋留守番にして落ち着かなくなったケースもありました。

こちらもすぐにリモートカメラで確認できたので、不安定行動を放置せずに対応することができました。


中には、留守中に以外な行動をしている犬ちゃんもいて、飼い主さんと「えーーーー!!!!」
となったこともありました。

犬にプライバシーがないのは申し訳ないとは思いますが、行動が安定するまでの確認作業なので、
その点は犬たちには受け入れてもらうしかありません。

それにしても人の世界でも犬の世界でも、録画や録音は動かぬ証拠です。

留守中のあんな行動やこんな行動が飼い主にバレているということを、犬たちは知っているのでしょうか。

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<犬のしつけ方>犬の攻撃性の基盤が依存によるときには早急に対応したい

犬のしつけ方やトレーニングを進めるためには、いろいろな視点から犬を理解する必要があります。

犬の習性と本能、犬の行動学、犬の生理学についてはもちろんのことです。

しかし、この分野だけではまだ十分とはいえません。


犬の心理学というと擬人化しているように思われるかもしれませんが、犬の精神構造やその状態を科学的に理解しておくというのは、どのような対応がどのような時期に必要なのかを知る上で重要なことです。

さらに、人に飼われる犬の行動は、人の接し方の影響を強く受けて行動を習慣化したり変化させたりしています。

人の接し方とは、接する人の知識という部分もあります。

たとえば、本に書いてあったからやってみたというものもあるでしょう。

ただ、こうした本に書いてあったからやってみた接し方は、接し方の時間としては短いものです。

犬に最も影響を与えているのは、飼い主がどのような心理状態で犬に接しているのかということの方です。

犬のしつけ方やトレーニングを考えるためには、犬という種を知ることはもちろんのこと、

ヒトという動物について知る必要があるという部分も忘れないでいただきたいです。


さて、ブログの記事を初心者の方にもわかりやすいように書くように努めています。

それでも、言葉が見つからずに専門用語になったり、意味がわかりにくいといったことがあることについては、今後も配慮していきます。

ですが、今日のブログ記事のテーマはあえてわかりにくいと思われる題目にしてみました。


「犬の攻撃性の基盤が依存によるときには早急に対応したい」

この題目に沿って、説明していきます。

まず、犬の攻撃性というのはどのような行動かを明らかにしましょう。

わかりやすいのは「咬みつき」行動です。

しかし、犬の攻撃性に含まれる行動にはもっといろいろな行動があります。

以下にあげる行動は、どのような状況でどのように表現されたかによって、それが犬の攻撃性の表現になるかどうかが決まります。

それをひとつひとつ検証することがここではできないので、あえて単発行動として記しますが、単純に攻撃行動と判断する前に、精細に観察してください。

攻撃性行動の表現として使用される行動にはこのようなものがあります。

吠える、唸る、とびつく、牙を見せる、牙を当てる、咬みつく など。

子犬期に見られる甘噛みは、咬みつきに発展する可能性があります。

まず、今自分の犬に攻撃性行動がどのようなときにどのような表現で出されているのかを観察していきます。


次に、攻撃性行動を毎日表現するような犬の場合には、その行動がどのような環境で作られていったのかを分析していきます。

攻撃性行動がほぼ毎日のように、飼い主や近隣の他人に対して出ている場合には、この犬の攻撃性を育ててしまったのは、飼い主の接し方を含む飼い主のつくった環境にあります。

環境改善や関係改善をしなければ、犬の攻撃性行動を改善していくことはできません。

環境を把握し、適切に整備することは、犬の攻撃性と衝動性を抑えるためにどうしても必要です。

この犬の攻撃性を育ててしまった環境のことを「犬の攻撃性の基盤」としました。

環境というベースを変えなければいけませんよ、ということです。


さらに、この基盤の中に犬が飼い主に甘え行動をとる、つまり依存関係を結んでしまった場合には、即刻対応をしてほしいのです。

この飼い主との依存関係のチェックですが、いくつかあります。

ほとんどのケースで犬が甘え行動として行うのは、以下の行動です。

とびつく、甘噛み、鼻をならす

この三大甘え行動を持ちながら、攻撃性行動もしているのではあれば、大変危険だと思ってください。


この状態の犬が、2才未満で犬の性質に甘えの部分が強く残っているようであれば、時間を稼がずにわかりやすい方法でしっかりと衝動性を抑えておくことも大切です。

わかりやすい方法とは、十分に理解してもらうために飼い主に直接説明させていただきます。

2才未満と区切ったのは、咬みつく行動が頻発となり発作的に咬みつきをするようになるのが2才前後だからです。

人間にたとえると、切れるように咬みつく行動が起きるようになった場合には、短期間で衝動性を求める対応はできなくなります。


犬が2才未満で、攻撃性行動と甘え行動が強く出ていて、しかし突発的な攻撃性が出現していない場合には、なんとか間にあうかもしれないと、早急対応をすることがあります。

人でいうなら、中学生か高校生ころの年齢で、明らかに大人に対して攻撃性の高い行動をとったときに、力のあるものが毅然とした態度で向き合い殴ったとしても、それは虐待には当たらず、生涯その人が攻撃性という衝動をコントロールすることができるようになる貴重な機会なのです。

親や教師が教育として行うことがすべて虐待と受け取られてしまい、人の攻撃性や衝動性が抑制を覚えないままに大人になり、ビックリするような残忍な事件を引き起こしてしまうことは、人として恐るべきことです。

犬も同じように、その年齢や状態でないとできないことというのがあります。

そのことがその犬が生涯を通して、攻撃性を適切に使いながら人と共に社会で自由に生きていくために必要だと感じるときには、自分も毅然とそのように対応します。


しかし、その前に飼い主にお願いしたいことがあります。

犬がどんなに幼くても、その攻撃性行動を見逃さないことと、犬が飼い主に対して甘えと依存を続けるような不安定な状態にさせないでいただきたいのです。

本当はこの部分が一番難しいのだと思います。

人が飼い犬を甘やかしたいという心理を解明すること、これからも続きます。

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<犬のしつけ方>刺激のない生活でストレス満載:犬の環境エンリッチメントを考える

最近、国内の動物園を改革しようという取り組みを紹介しているテレビ番組を見る機会がありました。

番組のテーマには「環境エンリッチメント」の文字があり、興味を惹かれました。

環境エンリッチメントという言葉やその意味をはじめて聞いたのは、20年以上前に出席したセミナー会場であったと記憶しています。

記憶をたどると、当時は多数の犬を収容する施設に勤務していたころでした。

犬を収容して管理する施設では、まず犬の安全を、次に犬のストレスレベルについて、常に配慮しながら動物を管理する必要があります。

訓練所に勤め始めたのは、今から30年以上前のことになりますが、その頃にはまだなかった動物福祉という言葉を聞くようになったのが、20年くらい前からでした。

その動物福祉を実現させる具体的な取り組みのひとつが、環境エンリッチメントです。

環境エンリッチメントとは、飼育管理される動物が刺激の少なさによって受けるストレスを軽減させるために、
動物が本来持つべき欲求と行動を、上手に発揮できる機会を提供しようという環境整備の工夫です。

その機会提供を動物を飼育管理している中で行うというものなのです。

番組の中では、若い飼育員たちがそれぞれの種の動物たちが本来野生で行っている行動を実現できるような環境整備に取り組む様子が紹介されていました。

たとえば、キリンは舌を使って食べ物を取り出す行動をするということで、食べ物が舌を使わなければとれないような入れ物にいれることでキリンの行動欲求を引き出しそれを満足させようという取り組みなどです。

動物園の話となると、そもそも動物園が必要なのかという議論に発展してしまうことがあります。

しかし、現実には人が動物を利用するという行為が存在し、そのひとつに動物園という施設が現存し、
さらに、動物園という施設に現に動物がいるという事実があります。

この現実にいる動物たちにとって、少しでも動物が欲求を行動とすることができて落ち着きを得られる環境を提供することは、前向きな考え方であると思います。

実はこのも表面的なものでしかありません。

犬という動物に関わるのなら、もっと本質的な環境エンリッチメントは家庭犬にも必要です。

すべての家庭犬が、動物園の動物や施設収容されている犬と全く同じとはいいませんが、
ペットもまた人が自らの生活を豊かにするために必要としている動物であると思います。

そのペットである犬たちは、刺激を求める人を満足させるために人に飼われることもあります。

しかし、人の方はよりたくさんの刺激を求めますので、仕事も忙しく飲み会も多く、
趣味や買い物や旅行やテレビを見たり音楽を聴いたりと、何かと一日中忙しくしているものです。

そのため、犬は本当にヒマになってしまいます。

長時間、犬をひとりで留守番させることについて環境が適切であるとは思えませんが、それが現実です。

多くの犬がひとりで、もしくは関係が上手く作れていない同居犬と共に長時間の留守番をしています。

犬は暇であるだけでなく、部屋環境に順応しない状態では、物音や気配に過敏に反応するようになり、ストレスを溜め込み不安症になっていきます。

こうした乏しい犬の環境に工夫を与え、環境エンリッチメントをするとなるとこんなこともそのひとつになるでしょう。

留守中にコングやトリートボールなど探索行動のできるようなものを与える

留守中にシッティングや知人に犬の遊び相手をお願いする

留守の前と後には十分に時間をとって散歩を行い、コミュニケーションに満足を与える

犬専用のベッドやハウスなど柔らかい素材や多少高さのあるベッドなどに登れるような工夫をする

こんな工夫は、ほんの些細なことで犬の高い社会性からみると紙切れ1枚ほどの環境エンリッチメントです。

それでもしないよりはした方が良いのかと思います。

しかし、これらの環境エンリッチメントはとて環境エンリッチメントに取り組んでほしいのです。

犬が飼い主である自分とのコミュニケーションを深める学習を促進できるようにする、

そのためには犬の様々な行動への理解と犬の行動習性を学ぶ必要があります。

犬が環境認知能力を高め、安心して生活できるように導く、

そのためには、最も大きな環境要因である人とどのように関わったかが重要です。

犬が本来の能力を発揮できるような自然環境とのコンタクトを取り持つ、

犬の動物としての脳の正常な発達は、犬の環境を外側から変えることよりもより高い環境エンリッチメントになります。

こんなことに本当に取組もうと思ったら、相当の時間とエネルギーが必要です。

飼い主は少し生活のパターンを変える必要も出てくるでしょう。

犬は自分を満足させるためにやってきたのではない、私こそ犬を満足させるのだと本気の方は、恐れず挑んで欲しいものです。

そんな本気の飼い主さんに出会う機会があるのも、この仕事をしているごほうびです。

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<犬のこと>犬をデザインする現代:犬の幸せは置き去りになるのか?

先日ネット配信ニュースで、科学者の武田邦彦先生が「東大生」について話されている内容に釘付けになりました。

武田先生は他者とは異なる独自の視点で考えたり発言されるので、個人的にとても好感を持っています。

みんな同じ意見を持つ必要はない。
誰かが正しいというわけでもない。
意見をぶつけあうことで生まれる価値のあるものもある。

とわたしも考えるからです。


その武田先生の東大生について話していた内容から発展したコメントは、このようなものでした。

「デザインは人を惹きつける。だから本当に人にとって有益なものでなければならない」そんな内容であったと記憶しています。

デザインといえば、ファッションや美術工芸品的なものが頭に浮かびやすいですが、
実際には、日常で使用しているものや環境のすべてがデザインによって成り立っています。

パソコン、ボールペン、鍋、車、椅子、テレビ、スマートフォンなど、
どんなものも、人工的に作られたものにはすべてデザインがあります。

中には実際に見る機会のないものもあります。
人工心臓、人工血管、飛行機の部品なども、デザイン設計されたものです。

大きなものでは、家、ショッピング街、住宅地、公園もデザインされています。

デザインは機能性が高く、そしておそらく機能性の高いものは美しいのではないかと推測もします。

どのような技術であれ、物を作ったり環境を作るためにデザインが必要なのです。

そして、そのデザインが人を惹きつけてしまうということも納得がいきます。

東大生など、優秀な人材ほど新しいものを人為的に作り出していく、
だからこそ、そのデザインは人にとって本当に役立つすばらしいものでなければならない、ということでしょう。

悪意を持ったものや、人を陥れてしまうもの、人をダメにしてしまうようなものを作ってはいけないという倫理観の大切さを、優れた教師は教えられているのでしょう。


このデザインですが、実は犬にも起きています。

様々な形質を持った純血種の犬たちがわたしたちの周りにいます。

変わった顔をした犬、サイズの小さな犬、もしくは毛が長いとか色が変わっているとか、大きすぎるなど、様々に求めたデザインの方向に人為的に繁殖をくり返している、それが純血種です。

繁殖ではどうにもならないこともあります。

プードルやミニチュアピンシャーの尾は、生まれてすぐに切り落とされます。

人為的な繁殖では限界のあった尾を短くするという行為を、切断という方法で実現してデザインを思ったとおりに完成させるためです。

このデザインされた犬は、やはり人を惹きつけてしまいます。

そのため、多くの人が純血種を欲しがり実際に手にいれて育てています。


人が人為的繁殖によって生み出された純血種犬を欲しがることが間違っているとは思いません。

人はどのようなものでも、手に入れたいと思うものは作り出していく強い欲求があります。

そのことが、人の文化を発展させて生活がよりよい方向に、つまり便利で快適に変化してきたことも事実だからです。

ですが、たまには基本に帰って考える必要もあると思います。

「その犬のデザインは、本当に犬を幸せにするのか?犬はそれを求めているのか?」ということです。


人のデザインセンスによって繁殖された犬たちに不具合はないのでしょうか?

短すぎるストップ(鼻先)は犬の呼吸を苦しめていないでしょうか?

尾のない形は歩くことを不安定にさせてはいないのか?

伸び続ける飾り毛は犬の皮膚を守る役割を果たすのだろうか?

抜けない毛は犬を健康にしてくれるのか?


デザインによって変化した犬の不具合を考えるとき、どうせデザインするならもっと内面的に格好良く変化させていってはどうかと考えます。


自然界が環境に応じて作り出した動物は機能性が高いのです。

完璧ではないですが、野生動物はやはり機能性が高く美しいのです。


犬をデザインするなら、機能的で美しいものを求めてほしい。

優れた能力をもつ人間なら、きっとできるのでないかとそんなことを考えていました。

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<犬のしつけ方>ネットワークカメラの使用で注意したいこと

先日のブログでネットワークカメラについてご紹介しました。

ブログ記事 <おすすめのアイテム>犬の留守番中のカメラ観察:連休明けには必須アイテム

ネットワークカメラとか、リモートカメラという名称のこのカメラは、
飼い主の不在時に犬の行動を確認するのには、大変有効な道具です。


外出中にスマートフォンで犬の状態を確認できるだけでなく、室内で動くものがあったり犬が吠えることがあると、カメラの方からスマートフォンに連絡をしてくれて確認できるものもあります。

防犯用に作られていますので、そのようなシステムが備わっているようです。

また、これらのリモートカメラは双方向のコミュニケーション機能を備える優秀なものもあります。

スマートフォンの方からカメラを通して、カメラの前にいる犬に話しかけることができるというものもあるのです。

便利に思えるこの話しかけ機能ですが、絶対に使わないで欲しいのです。

理由は単純です。犬を混乱させてしまうからです。


たとえば、家族から電話がかかってきたときに電話から声を聞かせようとされたことがあるでしょうか?

電話とはいえ、家族の声に似ている音がすれば、犬はその声の主を探そうとしたり、
混乱を生じて落ち着かなくなってしまうことがあります。

リモートカメラでの話しかけも同じような状況を作ります。


犬は、人がカメラという媒体を通して話しかけているというところまでは理解できません。

飼い主が近くにいると思って探すか、状況がわからず混乱するか、
もしくは、状況を無視すべきということで回避行動をとるかもしれません。

いずれにしても、話しかけ機能は犬にストレスを与えるため使用しないで欲しいのです。


さらに、使って欲しくない機能として「フードが飛び出す機能」です。

不定期にカメラからフードが飛び出して留守番を演出するという機能らしいのですが、
これも犬を混乱させます。

犬はカメラからいつフードがでてくるのかと執着を始めるようになり、カメラの前にじっとすることになるかもしれません。

この機能によって犬は心安らかに留守番することができなくなり、日常的な留守番の行動を知ることもできません。

さらに、どんな状態であっても執着行動は動物を不幸にしてしまいます。

この二つの機能がついているカメラはとても高額です。

使用して欲しくないので、機能のないものを選んでいただくようにしています。

どんな道具も、人目線になってしまうと犬に負担を与えます。

話しかけたいという欲求は人側の問題です。

留守番中に食べ物を与えたいという欲求も人側の問題です。

そうなら、1分でも早く帰宅して犬を安心させてあげてください。

一人暮らしで犬を飼うなら、夜の出ごとは最小限にしなければいけません。

共働きの方も、交代で早く帰宅して犬の留守番時間を短くしてあげてください。

大変なんですけど、それが「犬を飼う=犬と暮らす」ということだからです。


犬と暮らすなら、犬といっしょに過ごす時間を作りましょう。

時間と空間を共有して、共通のルールで安心して楽しく過ごす時間をしっかりと持つ。

そうすれば、短い留守番を犬は安心して過ごしてくれます。


リモートカメラが犬にとって快適に使用されるように、工夫をお願いします。




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<犬のしつけ方>案外多い脱走する犬:なぜ自分の家から逃げる必要があるのか。

マンション飼育の方にはあまり経験ないことかもしれませんが、
家庭犬が「脱走した」という話を聞いたことがあるでしょうか。

戸建てでは、門扉がたまたま開いていたために、飼い主の知らぬ間に、門扉や玄関の隙間から犬が「脱走する」ことがあります。

この「脱走」という言葉、いつ頃から使われるようになったのか微妙ですが、犬の家からの逃走行動を多くの人が「脱走した」といいます。

犬が脱走しなければいけない時点で、すでに犬は自宅敷地内に囚われの身だということです。

室内に幽閉されているのか、庭に係留されて拘束されているのか、いずれにしても犬たちはそこから脱走したわけです。

脱走経験のある犬のほとんどは、家庭犬として食べ物と住まいを与えられてた上で、
何不自由なくさらに家族として愛されて育てられている犬なのです。

これらの犬が、自宅を脱走しなければいけない理由はなんなのでしょうか?

この自宅からの脱走という逃走行動ですが、案外多いのです。

この行動によって迷子犬が増えてしまうため、犬の首輪には名札や鑑札をつけることが条例によって義務付けられています。

もし、あなたが戸建てに住んでいたとして、玄関の門扉が開いていてあなたがそれに気づかずにいたとしたらどうでしょう?

あなたの犬は自宅から脱走するのでしょうか?

もし、自分の犬はその門扉の隙間から逃走する可能性があると思うのなら、犬の日常の行動について観察してその理由を探していただきたいのです。

過去になんども自宅の庭や玄関から逃走した経験を持つ犬を飼っているなら、今すぐその犬がなぜ逃走するのかを考えてください。

犬はただふらりと遊びに行きたくて逃走しているのではありません。

犬の逃走行動には理由があるのです。

家庭犬として愛情を持って可愛がっているのだから、うちの犬が逃走するなんて考えられないという飼い主もいることでしょう。

希望と現実は別です。

犬たちが抱えている問題は、すぐ目の前にあってさまざまな行動によって示されています。

それは、飼い主が犬に対して解決しなければいけない問題が今目の前にありますよという、わかりやすくてありがたい犬からのメッセージなのです。

犬の安定性は人の愛情だけでは達成できません。

こんなに愛しているのに何故?といって泣き崩れても仕方ありません。

愛しているなら理解するしかないのです。

それが真の関係作っていく方法になります。

種が違うのですから、本当のところはその犬に成り代わってみないとわかりません。

でもそれは人と人も同じことです。

本当の気持ちは、その人になってみないとわかりません。

だから100%を分かりきるということはできないのです。

それでも、理解しようと努めることは相手に伝わると信じています。

犬も同じだというと「動物なのに?」と違和感を感じれるでしょうか。

それなら試しに真剣にやってみてください。

あなたの犬は脱走すると思いますか?

そうだとしたらそれはなぜでしょうか?

日常にあるちょっとした行動を、犬だからと済ませないこと。

犬のしつけ方はただそれだけのことです。

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<犬のこと>あなたの犬のクローンドッグが必要ですか?

美容室に行くと自分では購入する機会のないセレブな雑誌が置いてあります。

ご縁のないものとはいえ、好奇心の強さからか、もしくは知らないもの見たさなのか、つい目を通してしまいます。

それで見つけたのが「クローンわんこ」という記事でした。

国内の美術造型を行っている会社が、自分の犬にそっくりの犬を作ってくれるというのです。

いわゆる遺伝子学的なクローンではなく、クローンとおもわしきほど本物に近い人為的に製作された人形というです。

体型や毛質など、飼い主と細かく打ち合わせして作られるそのクローンわんこの代金に驚きました。

小型犬で300万円、大型犬になると450万円もするのだとか。

どのような飼い主がこうした人形を必要としているのかわかりませんが、ペットビジネスということで必要な人には必要ということなのでしょう。

趣味の世界として楽しまれている飼い主もたくさんいるのだなと、知らない世界を垣間見た感じです。


クローンといえば、少し前ですがNHKのBSドキュメンタリーでイギリスのBBCテレビが製作した番組で「クローンドッグ」を取り上げたものを見ました。こっちは本当の犬のクローンです。

韓国のク韓国企業「Sooam Biotech」社のクローン研究チームが、イギリスの愛犬家をターゲットにし、コンテストに入賞した犬のクローンドッグを無償で提供するというものでした。

コンテストとは、わが犬のクローンを希望する愛犬家たちが「なぜ、この犬のクローンが必要なのか」ということを、研究者たちに打ち明けて犬を体面させていくものでした。

同研究チームはすでに500頭以上のクローンドッグを作り出しています。その技術がどのような用途で必要とされているかはわかりませんが、犬を食用とする韓国であれば良い食材の提供としてクローンドッグを活用されるもかもしれません。

イギリスの愛犬家たちはもちろん全く別の視点です。

韓国で犬が食用にされることに嫌悪感を抱く発言を出しながらも、その技術を用いて自分の愛する犬のクローンドッグが欲しいという願望がむき出しにされます。

クローンドッグについては、倫理的にいかがなものかという反論も当然出てきます。

番組内でも「絶対に反対だ」という意見も少数でしたが紹介されていました。


クローンドッグは本当に必要なのでしょうか?

この犬のクローンが欲しいということと、この犬の血を残したいから繁殖させたいという気持ちとどのくらい違うのでしょうか?

この問題は、犬と暮らす飼い主のひとりひとりが真剣に考えるべき問題だと思います。

技術はまだまだこれから進化し続けるのです。

クローンドッグが当たり前の世界はすぐそこに来ています。

ほんの数千円とか数万円でクローンドッグが作れるとしたら、あなたはどうしますか?

犬という動物の未来は人に委ねられています。

犬を愛するとはどういうことなのか、真剣に自分自身に問うこともときには必要なことです。

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Posted in 犬のこと

<犬のしつけ方>犬の執着行動:囚われた犬たちを解放するためにできることは?

物や人などの生き物に執着する行動を見られたことはあるでしょうか?

犬にはこの執着行動が多く見られ、そのほとんどが「遊び」や「好き」として片付けられています。

執着行動にはいろいろなパターンがありますが、比較的多いものをあげてみましょう。


まず、飼い主に対する執着行動というのがあります。

多くは分離不安行動として表現されています。
飼い主が犬から離れると鼻をならしたり奇声を発する、部屋の中をついて歩く、ひとりになると破壊行動や排尿、排便などの生理的反応を起こす、いわゆる「留守番ができない」状態になるなどもこの中に入ります。

他には、ボールなどの特定のオモチャに対する執着行動があります。
一人遊びのようにオモチャをずっと追い回す場合もありますし、人にオモチャを投げてもらい倒れるまでボールを拾いにいくような犬もいます。

ガムに対する執着行動もありますね。
一旦ガムを口にくわえるとなかなか放すことができず、唸ったり攻撃したりすることもあります。

食べ物に対する執着行動では、食べ物を常に探すような行動をします。

性的な執着行動では、特定のクッションなどのマウンティング行動が常習化してしまうことや、飼い主に対してマウンティングすることが頻繁に起きることもそのひとつです。

執着行動という言葉の意味合いをよく理解するために、類似語を調べてみました。

良い意味合いではくじけないとか、あきらめないという表現もありましたが、
犬の執着行動の場合は、ストレスが上昇している状態としていますので、その意味合いに該当しそうな言葉を上げてみます。

しつこい
頭がいっぱい
陰にこもる
溜め込む
深くうらむ
頑固な
偏執

不安がる
固執する
こだわる

どれも切羽詰った感じになります。

犬の執着行動もよく観察すると、楽しそうに遊んでいる行動には見えません。

犬は執着行動によって心身共に疲れてしまいます。

いつも活発すぎる犬がグッタリと寝ていると、疲れて寝てくれてよかったと思うかもしれません。

でも、動物は人と違って本来は疲れることなど必要ないのでは?という見方もあります。

執着する行動が、楽しみではなくストレスから生じていると判断するのは、
犬の表情が厳しく、体の使い方は硬くなっているからです。

犬がこれらの執着行動から解放されるために、何をしたらいいのでしょう。

ストレス行動は叱るなどの行為で一瞬とめることはできても、またすぐに始まってしまいます。

ストレス行動は根本治療が必要な行動なのです。


犬が固着した状態から抜け出し解放されるためにできることといえば、自然環境の中で過ごすことしかありません。

臭いや広さ、空気の透明感は、犬だけでなく人という動物にも開放感を与えてくれます。

実際、執着しているのは犬ではなく人の方ではないかと思うことも多々あります。

自然環境で過ごすことで本当に解放される必要があるのは、まず人かもしれないのです。

わたしたちヒトという動物と共にいることで起きるたくさんの犬のストレス行動を見ながら、人社会のストレス度の高さを考えてしまいます。

とはいえ、とりとめもなく考えても仕方のないこともあります。

犬のために何か行動を起こしてくださる飼い主さんであれば「いっしょに山歩きしましょう」とお誘いしています。

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Posted in 犬のこと