グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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<犬のしつけ方>刺激のない生活でストレス満載:犬の環境エンリッチメントを考える

最近、国内の動物園を改革しようという取り組みを紹介しているテレビ番組を見る機会がありました。

番組のテーマには「環境エンリッチメント」の文字があり、興味を惹かれました。


環境エンリッチメントという言葉やその意味をはじめて聞いたのは、20年以上前に出席したセミナー会場であったと記憶しています。

記憶をたどると、当時は多数の犬を収容する施設に勤務していたころでした。

犬を収容して管理する施設では、まず犬の安全を、次に犬のストレスレベルについて、常に配慮しながら動物を管理する必要があります。

訓練所に勤め始めたのは、今から30年以上前のことになりますが、その頃にはまだなかった動物福祉という言葉を聞くようになったのが、20年くらい前からでした。

その動物福祉を実現させる具体的な取り組みのひとつが、環境エンリッチメントです。

環境エンリッチメントとは、飼育管理される動物が刺激の少なさによって受けるストレスを軽減させるために、
動物が本来持つべき欲求と行動を、上手に発揮できる機会を提供しようという環境整備の工夫です。

その機会提供を動物を飼育管理している中で行うというものなのです。

番組の中では、若い飼育員たちがそれぞれの種の動物たちが本来野生で行っている行動を実現できるような環境整備に取り組む様子が紹介されていました。

たとえば、キリンは舌を使って食べ物を取り出す行動をするということで、食べ物が舌を使わなければとれないような入れ物にいれることでキリンの行動欲求を引き出しそれを満足させようという取り組みなどです。

動物園の話となると、そもそも動物園が必要なのかという議論に発展してしまうことがあります。

しかし、現実には人が動物を利用するという行為が存在し、そのひとつに動物園という施設が現存し、
さらに、動物園という施設に現に動物がいるという事実があります。

この現実にいる動物たちにとって、少しでも動物が欲求を行動とすることができて落ち着きを得られる環境を提供することは、前向きな考え方であると思います。


実はこの環境エンリッチメントは家庭犬にも必要です。

すべての家庭犬が、動物園の動物や施設収容されている犬と全く同じとはいいませんが、
ペットもまた人が自らの生活を豊かにするために必要としている動物であると思います。

そのペットである犬たちは、刺激を求める人を満足させるために人に飼われることもあります。

しかし、人の方はよりたくさんの刺激を求めますので、仕事も忙しく飲み会も多く、
趣味や買い物や旅行やテレビを見たり音楽を聴いたりと、何かと一日中忙しくしているものです。

そのため、犬は本当にヒマになってしまいます。

長時間、犬をひとりで留守番させることについて環境が適切であるとは思えませんが、それが現実です。


多くの犬がひとりで、もしくは関係が上手く作れていない同居犬と共に長時間の留守番をしています。

犬は暇であるだけでなく、部屋環境に順応しない状態では、物音や気配に過敏に反応するようになり、ストレスを溜め込み不安症になっていきます。

こうした乏しい犬の環境に工夫を与え、環境エンリッチメントをするとなるとこんなこともそのひとつになるでしょう。


留守中にコングやトリートボールなど探索行動のできるようなものを与える

留守中にシッティングや知人に犬の遊び相手をお願いする

留守の前と後には十分に時間をとって散歩を行い、コミュニケーションに満足を与える

犬専用のベッドやハウスなど柔らかい素材や多少高さのあるベッドなどに登れるような工夫をする


こんな工夫は、ほんの些細なことで犬の高い社会性からみると紙切れ1枚ほどの環境エンリッチメントです。

それでもしないよりはした方が良いのかと思います。

しかし、これらの環境エンリッチメントはとても表面的なものでしかありません。


犬という動物に関わるのなら、もっと本質的な環境エンリッチメントに取り組んでほしいのです。

犬が飼い主である自分とのコミュニケーションを深める学習を促進できるようにする、

そのためには犬の様々な行動への理解と犬の行動習性を学ぶ必要があります。

犬が環境認知能力を高め、安心して生活できるように導く、

そのためには、最も大きな環境要因である人とどのように関わったかが重要です。

犬が本来の能力を発揮できるような自然環境とのコンタクトを取り持つ、

犬の動物としての脳の正常な発達は、犬の環境を外側から変えることよりもより高い環境エンリッチメントになります。


こんなことに本当に取組もうと思ったら、相当の時間とエネルギーが必要です。

飼い主は少し生活のパターンを変える必要も出てくるでしょう。

犬は自分を満足させるためにやってきたのではない、私こそ犬を満足させるのだと本気の方は、
恐れず挑んで欲しいものです。

そんな本気の飼い主さんに出会う機会があるのも、この仕事をしているごほうびです。

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<犬のこと>犬をデザインする現代:犬の幸せは置き去りになるのか?

先日ネット配信ニュースで、科学者の武田邦彦先生が「東大生」について話されている内容に釘付けになりました。

武田先生は他者とは異なる独自の視点で考えたり発言されるので、個人的にとても好感を持っています。

みんな同じ意見を持つ必要はない。
誰かが正しいというわけでもない。
意見をぶつけあうことで生まれる価値のあるものもある。

とわたしも考えるからです。


その武田先生の東大生について話していた内容から発展したコメントは、このようなものでした。

「デザインは人を惹きつける。だから本当に人にとって有益なものでなければならない」そんな内容であったと記憶しています。

デザインといえば、ファッションや美術工芸品的なものが頭に浮かびやすいですが、
実際には、日常で使用しているものや環境のすべてがデザインによって成り立っています。

パソコン、ボールペン、鍋、車、椅子、テレビ、スマートフォンなど、
どんなものも、人工的に作られたものにはすべてデザインがあります。

中には実際に見る機会のないものもあります。
人工心臓、人工血管、飛行機の部品なども、デザイン設計されたものです。

大きなものでは、家、ショッピング街、住宅地、公園もデザインされています。

デザインは機能性が高く、そしておそらく機能性の高いものは美しいのではないかと推測もします。

どのような技術であれ、物を作ったり環境を作るためにデザインが必要なのです。

そして、そのデザインが人を惹きつけてしまうということも納得がいきます。

東大生など、優秀な人材ほど新しいものを人為的に作り出していく、
だからこそ、そのデザインは人にとって本当に役立つすばらしいものでなければならない、ということでしょう。

悪意を持ったものや、人を陥れてしまうもの、人をダメにしてしまうようなものを作ってはいけないという倫理観の大切さを、優れた教師は教えられているのでしょう。


このデザインですが、実は犬にも起きています。

様々な形質を持った純血種の犬たちがわたしたちの周りにいます。

変わった顔をした犬、サイズの小さな犬、もしくは毛が長いとか色が変わっているとか、大きすぎるなど、様々に求めたデザインの方向に人為的に繁殖をくり返している、それが純血種です。

繁殖ではどうにもならないこともあります。

プードルやミニチュアピンシャーの尾は、生まれてすぐに切り落とされます。

人為的な繁殖では限界のあった尾を短くするという行為を、切断という方法で実現してデザインを思ったとおりに完成させるためです。

このデザインされた犬は、やはり人を惹きつけてしまいます。

そのため、多くの人が純血種を欲しがり実際に手にいれて育てています。


人が人為的繁殖によって生み出された純血種犬を欲しがることが間違っているとは思いません。

人はどのようなものでも、手に入れたいと思うものは作り出していく強い欲求があります。

そのことが、人の文化を発展させて生活がよりよい方向に、つまり便利で快適に変化してきたことも事実だからです。

ですが、たまには基本に帰って考える必要もあると思います。

「その犬のデザインは、本当に犬を幸せにするのか?犬はそれを求めているのか?」ということです。


人のデザインセンスによって繁殖された犬たちに不具合はないのでしょうか?

短すぎるストップ(鼻先)は犬の呼吸を苦しめていないでしょうか?

尾のない形は歩くことを不安定にさせてはいないのか?

伸び続ける飾り毛は犬の皮膚を守る役割を果たすのだろうか?

抜けない毛は犬を健康にしてくれるのか?


デザインによって変化した犬の不具合を考えるとき、どうせデザインするならもっと内面的に格好良く変化させていってはどうかと考えます。


自然界が環境に応じて作り出した動物は機能性が高いのです。

完璧ではないですが、野生動物はやはり機能性が高く美しいのです。


犬をデザインするなら、機能的で美しいものを求めてほしい。

優れた能力をもつ人間なら、きっとできるのでないかとそんなことを考えていました。

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<犬のしつけ方>ネットワークカメラの使用で注意したいこと

先日のブログでネットワークカメラについてご紹介しました。

ブログ記事 <おすすめのアイテム>犬の留守番中のカメラ観察:連休明けには必須アイテム

ネットワークカメラとか、リモートカメラという名称のこのカメラは、
飼い主の不在時に犬の行動を確認するのには、大変有効な道具です。


外出中にスマートフォンで犬の状態を確認できるだけでなく、室内で動くものがあったり犬が吠えることがあると、カメラの方からスマートフォンに連絡をしてくれて確認できるものもあります。

防犯用に作られていますので、そのようなシステムが備わっているようです。

また、これらのリモートカメラは双方向のコミュニケーション機能を備える優秀なものもあります。

スマートフォンの方からカメラを通して、カメラの前にいる犬に話しかけることができるというものもあるのです。

便利に思えるこの話しかけ機能ですが、絶対に使わないで欲しいのです。

理由は単純です。犬を混乱させてしまうからです。


たとえば、家族から電話がかかってきたときに電話から声を聞かせようとされたことがあるでしょうか?

電話とはいえ、家族の声に似ている音がすれば、犬はその声の主を探そうとしたり、
混乱を生じて落ち着かなくなってしまうことがあります。

リモートカメラでの話しかけも同じような状況を作ります。


犬は、人がカメラという媒体を通して話しかけているというところまでは理解できません。

飼い主が近くにいると思って探すか、状況がわからず混乱するか、
もしくは、状況を無視すべきということで回避行動をとるかもしれません。

いずれにしても、話しかけ機能は犬にストレスを与えるため使用しないで欲しいのです。


さらに、使って欲しくない機能として「フードが飛び出す機能」です。

不定期にカメラからフードが飛び出して留守番を演出するという機能らしいのですが、
これも犬を混乱させます。

犬はカメラからいつフードがでてくるのかと執着を始めるようになり、カメラの前にじっとすることになるかもしれません。

この機能によって犬は心安らかに留守番することができなくなり、日常的な留守番の行動を知ることもできません。

さらに、どんな状態であっても執着行動は動物を不幸にしてしまいます。

この二つの機能がついているカメラはとても高額です。

使用して欲しくないので、機能のないものを選んでいただくようにしています。

どんな道具も、人目線になってしまうと犬に負担を与えます。

話しかけたいという欲求は人側の問題です。

留守番中に食べ物を与えたいという欲求も人側の問題です。

そうなら、1分でも早く帰宅して犬を安心させてあげてください。

一人暮らしで犬を飼うなら、夜の出ごとは最小限にしなければいけません。

共働きの方も、交代で早く帰宅して犬の留守番時間を短くしてあげてください。

大変なんですけど、それが「犬を飼う=犬と暮らす」ということだからです。


犬と暮らすなら、犬といっしょに過ごす時間を作りましょう。

時間と空間を共有して、共通のルールで安心して楽しく過ごす時間をしっかりと持つ。

そうすれば、短い留守番を犬は安心して過ごしてくれます。


リモートカメラが犬にとって快適に使用されるように、工夫をお願いします。




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<犬のしつけ方>案外多い?から脱走する犬:なぜ自分の家から逃げる必要があるのか。

マンション飼育の方にはあまり経験ないことかもしれませんが、
家庭犬が「脱走した」という話を聞いたことがあるでしょうか。

戸建てでは、門扉がたまたま開いていたために、
飼い主の知らぬ間に、門扉や玄関の隙間から犬が「脱走する」ことがあります。

この「脱走」という言葉、いつ頃から使われるようになったのか微妙ですが、
犬の家からの逃走行動を多くの人が「脱走した」といいます。

犬が脱走しなければいけない時点で、すでに犬は自宅敷地内に囚われの身だということです。

室内に幽閉されているのか、庭に係留されて拘束されているのか、
いずれにしても犬たちはそこから脱走したわけです。

脱走経験のある犬のほとんどは、家庭犬として食べ物と住まいを与えられてた上で、
何不自由なくさらに家族として愛されて育てられている犬なのです。

これらの犬が、自宅を脱走しなければいけない理由はなんなのでしょうか?


この自宅からの脱走という逃走行動ですが、案外多いのです。

この行動によって迷子犬が増えてしまうため、犬の首輪には名札や鑑札をつけることが条例によって義務付けられています。

もし、あなたが戸建てに住んでいたとして、玄関の門扉が開いていてあなたがそれに気づかずにいたとしたらどうでしょう?

あなたの犬は自宅から脱走するのでしょうか?


もし、自分の犬はその門扉の隙間から逃走する可能性があると思うのなら、
犬の日常の行動について観察してその理由を探していただきたいのです。

過去になんども自宅の庭や玄関から逃走した経験を持つ犬を飼っているなら、
今すぐその犬がなぜ逃走するのかを考えてください。

犬はただふらりと遊びに行きたくて逃走しているのではありません。

犬の逃走行動には理由があるのです。

家庭犬として愛情を持って可愛がっているのだから、うちの犬が逃走するなんて考えられないという飼い主もいることでしょう。

希望と現実は別です。

犬たちが抱えている問題は、すぐ目の前にあってさまざまな行動によって示されています。

それは、飼い主が犬に対して解決しなければいけない問題が今目の前にありますよという、わかりやすくてありがたい犬からのメッセージなのです。

犬の安定性は人の愛情だけでは達成できません。

こんなに愛しているのに何故?といって泣き崩れても仕方ありません。

愛しているなら理解するしかないのです。

それが真の関係作っていく方法になります。

種が違うのですから、本当のところはその犬に成り代わってみないとわかりません。

でもそれは人と人も同じことです。

本当の気持ちは、その人になってみないとわかりません。

だから100%を分かりきるということはできないのです。

それでも、理解しようと努めることは相手に伝わると信じています。

犬も同じだというと「動物なのに?」と違和感を感じれるでしょうか。

それなら試しに真剣にやってみてください。


あなたの犬は脱走すると思いますか?

そうだとしたらそれはなぜでしょうか?

日常にあるちょっとした行動を、犬だからと済ませないこと。

犬のしつけ方はただそれだけのことです。

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<犬のこと>あなたの犬のクローンドッグが必要ですか?

美容室に行くと自分では購入する機会のないセレブな雑誌が置いてあります。

ご縁のないものとはいえ、好奇心の強さからか、もしくは知らないもの見たさなのか、つい目を通してしまいます。

それで見つけたのが「クローンわんこ」という記事でした。

国内の美術造型を行っている会社が、自分の犬にそっくりの犬を作ってくれるというのです。

いわゆる遺伝子学的なクローンではなく、クローンとおもわしきほど本物に近い人為的に製作された人形というです。

体型や毛質など、飼い主と細かく打ち合わせして作られるそのクローンわんこの代金に驚きました。

小型犬で300万円、大型犬になると450万円もするのだとか。

どのような飼い主がこうした人形を必要としているのかわかりませんが、ペットビジネスということで必要な人には必要ということなのでしょう。

趣味の世界として楽しまれている飼い主もたくさんいるのだなと、知らない世界を垣間見た感じです。


クローンといえば、少し前ですがNHKのBSドキュメンタリーでイギリスのBBCテレビが製作した番組で「クローンドッグ」を取り上げたものを見ました。こっちは本当の犬のクローンです。

韓国のク韓国企業「Sooam Biotech」社のクローン研究チームが、イギリスの愛犬家をターゲットにし、コンテストに入賞した犬のクローンドッグを無償で提供するというものでした。

コンテストとは、わが犬のクローンを希望する愛犬家たちが「なぜ、この犬のクローンが必要なのか」ということを、研究者たちに打ち明けて犬を体面させていくものでした。

同研究チームはすでに500頭以上のクローンドッグを作り出しています。その技術がどのような用途で必要とされているかはわかりませんが、犬を食用とする韓国であれば良い食材の提供としてクローンドッグを活用されるもかもしれません。

イギリスの愛犬家たちはもちろん全く別の視点です。

韓国で犬が食用にされることに嫌悪感を抱く発言を出しながらも、その技術を用いて自分の愛する犬のクローンドッグが欲しいという願望がむき出しにされます。

クローンドッグについては、倫理的にいかがなものかという反論も当然出てきます。

番組内でも「絶対に反対だ」という意見も少数でしたが紹介されていました。


クローンドッグは本当に必要なのでしょうか?

この犬のクローンが欲しいということと、この犬の血を残したいから繁殖させたいという気持ちとどのくらい違うのでしょうか?

この問題は、犬と暮らす飼い主のひとりひとりが真剣に考えるべき問題だと思います。

技術はまだまだこれから進化し続けるのです。

クローンドッグが当たり前の世界はすぐそこに来ています。

ほんの数千円とか数万円でクローンドッグが作れるとしたら、あなたはどうしますか?

犬という動物の未来は人に委ねられています。

犬を愛するとはどういうことなのか、真剣に自分自身に問うこともときには必要なことです。

dav

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<犬のしつけ方>犬の執着行動:囚われた犬たちを解放するためにできることは?

物や人などの生き物に執着する行動を見られたことはあるでしょうか?

犬にはこの執着行動が多く見られ、そのほとんどが「遊び」や「好き」として片付けられています。

執着行動にはいろいろなパターンがありますが、比較的多いものをあげてみましょう。


まず、飼い主に対する執着行動というのがあります。

多くは分離不安行動として表現されています。
飼い主が犬から離れると鼻をならしたり奇声を発する、部屋の中をついて歩く、ひとりになると破壊行動や排尿、排便などの生理的反応を起こす、いわゆる「留守番ができない」状態になるなどもこの中に入ります。

他には、ボールなどの特定のオモチャに対する執着行動があります。
一人遊びのようにオモチャをずっと追い回す場合もありますし、人にオモチャを投げてもらい倒れるまでボールを拾いにいくような犬もいます。

ガムに対する執着行動もありますね。
一旦ガムを口にくわえるとなかなか放すことができず、唸ったり攻撃したりすることもあります。

食べ物に対する執着行動では、食べ物を常に探すような行動をします。

性的な執着行動では、特定のクッションなどのマウンティング行動が常習化してしまうことや、飼い主に対してマウンティングすることが頻繁に起きることもそのひとつです。

執着行動という言葉の意味合いをよく理解するために、類似語を調べてみました。

良い意味合いではくじけないとか、あきらめないという表現もありましたが、
犬の執着行動の場合は、ストレスが上昇している状態としていますので、その意味合いに該当しそうな言葉を上げてみます。

しつこい
頭がいっぱい
陰にこもる
溜め込む
深くうらむ
頑固な
偏執

不安がる
固執する
こだわる

どれも切羽詰った感じになります。

犬の執着行動もよく観察すると、楽しそうに遊んでいる行動には見えません。

犬は執着行動によって心身共に疲れてしまいます。

いつも活発すぎる犬がグッタリと寝ていると、疲れて寝てくれてよかったと思うかもしれません。

でも、動物は人と違って本来は疲れることなど必要ないのでは?という見方もあります。

執着する行動が、楽しみではなくストレスから生じていると判断するのは、
犬の表情が厳しく、体の使い方は硬くなっているからです。

犬がこれらの執着行動から解放されるために、何をしたらいいのでしょう。

ストレス行動は叱るなどの行為で一瞬とめることはできても、またすぐに始まってしまいます。

ストレス行動は根本治療が必要な行動なのです。


犬が固着した状態から抜け出し解放されるためにできることといえば、自然環境の中で過ごすことしかありません。

臭いや広さ、空気の透明感は、犬だけでなく人という動物にも開放感を与えてくれます。

実際、執着しているのは犬ではなく人の方ではないかと思うことも多々あります。

自然環境で過ごすことで本当に解放される必要があるのは、まず人かもしれないのです。

わたしたちヒトという動物と共にいることで起きるたくさんの犬のストレス行動を見ながら、人社会のストレス度の高さを考えてしまいます。

とはいえ、とりとめもなく考えても仕方のないこともあります。

犬のために何か行動を起こしてくださる飼い主さんであれば「いっしょに山歩きしましょう」とお誘いしています。

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<犬のしつけ方>犬と休日の過ごし方:お庭時間を満喫しよう!

今年も大型連休が近付いてきています。

犬といっしょに旅行の計画を立てていらっしゃるご家庭も多いかもしれません。

ところが、飼い主さんたちにお尋ねしてみると「連休中は人が多いので遠出はしません。」
という方が増えてきているようです。

最近では、食事も「家食」などといわれる、外食ではなく家でご飯をいただく傾向が高まっているようです。

同じ傾向で、休みのときには渋滞で疲れてたくさんの時間を消費してしまうのを止めようということでしょう。

渋滞を避けて近場に出かけたり、自宅のお庭でゆっくりと過ごすことについては、犬も大賛成ははずです。


なぜかというと、犬にとっては移動はやはり負担になります。

自分の脚で移動するよりもずっと速く移動するわけですから、室内でじっとしているとはいえ、動物の体に一定の付加がかかるのです。

それでも犬は外出したがります。

何よりも飼い主と共にいたいという気持ちが高いことと、外出によって普段過ごしているよりもより良い環境に過ごすことができる経験をしたことがあるからでしょう。

例えば、都心に住む犬なら自然環境に連れていかれることは移動のストレスを超えてでも、やはり心地よいことなのです。

山や海には上手に出かけていただきたいと思います。

そして、それとは全く違う日常的な空間として、身近な「庭」という自然環境を活用してはどうかと思うのです。


一時期、庭よりも室内を広くとってデザインされた間取りの家が多かったようですが、最近は庭のスペースを十分にとって日常的に活用するデザインに変化していることを感じています。

ご家庭に家庭訪問でトレーニングに伺うため、ご家庭の間取りをできるだけ活用する方法も提案しています。

この訪問トレーニングの中で、家の間取りや庭の取り方などがご家庭によって違うのだなと知ることになりました。

昭和初期くらいまでは、庭は家の中の自然と位置づけられていたようで、庭には山にある様々な木々が植えられていました。

この博多区でも、自分が育った古い家の庭は木々と豊かな土でおおわれ、虫や小鳥もたくさんいたのです。


この都市空間の庭は、そのうち硬い土となり、木々は勢いをなくし、人がゆっくりとは過ごしにくい家から見るだけの空間に
変わってしまったようです。

家庭訪問トレーニングで思うことは、庭には犬を出していないとか、庭はほとんど使っていないというご家庭がとても多いことです。

整備したり手を入れればとても豊かな庭になることが予想されるような空間なのに、あーもったいないなと思ってしまいます。

お庭を整備して、人も犬も心地よく過ごせるようになると、犬たちは庭に駆け出していきます。

庭でひなたぼっこでうっとりしていたり、探索行動する犬の姿を見ると、やはり犬は自然が近い生き物なのだなとうれしくなります。

ゴールデンウィークの間に、活用されていないお庭を犬といっしょに過ごせる空間へ生き返らせてみてはいかがでしょうか?

お庭のないマンション暮らしの方は、知人が使っていない庭の整備をしながら、犬もお邪魔させていただくというのも一案です。

お休みは楽しいものです。犬との限られた時間を充実させたいですね。


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<犬のしつけ方>人によくなつき頭がよく飼いやすい犬種って?

犬を飼っている人に、なぜその犬種を選んだのか尋ねることがあります。

犬種というのは、人為的繁殖によって分類づけられた純血種といわれる犬の種類です。

みなさんがよくご存知の犬種でしたら、柴犬、プードル、ゴールデンリトリバー、チワワ、など。
こうしたものを犬種というのです。

「なぜこの犬種を選んだのですか?」という質問に、多くの人は「一目ぼれ」といわれます。

雑誌やペットショップで犬の風貌を見て、愛くるしい、可愛らしいといった理由で犬種を選ぶのです。

次に多い理由が「この犬種は、人になつきやすく飼いやすいと書いてあったから」といわれることがあります。


今はほとんどの情報をインターネットに頼っている時代です。

テレビや雑誌で見た情報を基にして、もう一度インターネットで検索してみる方も多いでしょう。

実際にネットで「犬種 飼いやすい」と検索すると、なんと検索ランキングが莫大で出てきます。

それだけ検索される方が多いため、情報提供者も増えるというです。


ところが、これらのランキングも不思議なことがたくさんです。

まず、人懐こいとか人に馴れやすいというのは、犬種の性質ではなく家庭犬としては当たり前のことです。

逆に、人になつきにくいというと野犬などの人とのかかわりの薄い犬についていわれることです。

家庭犬は長い年月を掛けて人と暮らすことになった犬です。

その中でも純血種は人為的に繁殖を続けた結果、人になつきやすいというはあまりにも当たり前のことです。

人になつきやすい、それが家庭犬なのです。

ですから、人になつきやすく飼いやすいというランキングがあることが不思議なことです。


次に、頭がいいという犬種のランキングですが、このランキングにも疑問を感じます。

頭がいいというのはそもそもどのような犬の状態を指していっているのでしょうか?

犬は人への関心が高く、特に室内犬の場合は人に対して注目する時間がとても長くなります。

飼い主の行動を予測したり、自分のゴハンや散歩の合図を覚えたりするのは犬という動物としてこれも当たり前の能力です。

逆に、頭がいいといわれている犬種の中にこそ、テレビの動画に向って吠えたり、散歩中にポスターを見てビックリするなど
認知力の発達に問題を抱えている犬がたくさんいることは見落とされているようです。

頭がいいといわれることと、落ち着いてリラックスして過ごすということは同じものではありません。

犬の学習能力は一般的に人が思っているよりもずっと高いのですが、それが安定につながっているかどうかは、
犬の行動をよくみて判断して欲しいのです。


これらの理由から、自分の飼っている犬種がかならずしも「人懐こくて頭がいい」わけではないことをわかっていただけたでしょうか?

人と暮らすグループにいる家庭犬という犬たちは、みなそれぞれに人になつきやすくて飼いやすく、そして頭がいいのです。


純血種の場合には、実際の選択はそのサイズと見た目で決められているようです。

犬のかわいい顔は幼児性が高いもしくは、イヌ科動物としていびつな構造になっており、犬に負担のあることも多いのです。

犬を知れば知るほど、犬と暮らすことは大変だと思われるかもしれませんが、

愛する犬のことを何もしらないで無知なまま共に暮らすよりは、ずっと健全で前向きな関係性をつくることになります。

引き続きこのブログでは一般的な視点とは違った面から見る提案を続けていきます。

みなさんがどう考えるのか、どう思うのか、どうして行きたいのか、
いろいろと会ってお話できればうれしい限りです。

4月22日は七山で犬語セミナーを開催します。

グッドボーイハート生でなくても参加できるセミナーです。

ご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

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<犬のしつけ方>[動画]熊本地震で被災犬として保護され家庭犬となったアルクの知的玩具遊び

平成26年の熊本地震から2年が経ちました。

テレビやラジオで被災後の生活やご遺族の紹介もあり、災害はいつも辛さや怒り、やりきれなさが積もります。

福岡、佐賀方面でも強くゆれを感じることのできた身近な災害であったために関心も高まりました。

そのため臨時にでも何かお手伝いをしようと、熊本県で被災した犬猫のためのボランティア活動を
ほんの少しですがさせていただき、機会を通してたくさんの学びを得ることができました。

この学びの中で、ご縁をいただいたのが熊本県の保護施設から福岡での犬の譲渡会に参加し、
福岡で家庭犬として迎えられたアルクちゃんでした。

熊本県の県営の保護施設には、サイズの大きなミックス犬がたくさん収容されていました。

福岡の生活事情からすると少しサイズが大きく、都心部では引き取りが難しいと思われるような犬たちです。

アルクちゃんも福岡市のご家庭に迎えられたのですが、以前からグッドボーイハートとご縁のあった飼い主さんで、
都心といっても自然環境がまだ十分に残る庭もしっかりとある環境で適切に飼育され暮らしています。

普段の生活も落ち着き始め、いくつかの学習のテストをしてみようとアルクちゃんに与えたのが知的玩具です。

以下の動画に出てくる知的玩具はヨーロッパで作られたもので、つくりはとても単純です。

木製のフタようなものを開けると中にオヤツが入っているという仕組みになっています。

事前に特別な練習はなく与えて、アルクちゃんの反応を見ました。

短い動画ですがご覧ください。



最初に臭いを嗅いで、オヤツのある場所を特定させています。
探索行動といわれるもので、食べ物の在りかを認識している様子です。

木のカップのようなものを口で移動させています。
カップを移動させるには、口でくわえて上に持ち上げるという動作が必要です。
一定の認知力があれば犬でも簡単にできる行動です。

カップを取り去るとその下にはオヤツが乗っています。
ところが、カップを取り去ってもオヤツを食べずに次の動作に移っていきます。

オヤツを食べるためにやっていた行動のように思えるのですが、ここで覆されます。
オヤツを食べることよりも、探索して見つけるという行動に集中しているのです。

犬は食べることだけにしか関心がないと思われてしまうことがあります。

しかしそれは違うのです。

犬は食欲の塊ではありません。

犬の欲求はもっと違う構造になっており、犬の脳がどこに満足感を得られるのかも犬によって違います。

もし、アルクちゃんが食欲しかないような犬だったら、木のカップを持ち上げるような行動はすぐにはできません。

犬の認知力の発達は、ただ寝て食べるという単純な生活の中では培われてこないのです。


アルクちゃんの知的玩具遊びを見ながら、その成長と今後の可能性についても飼い主さんとお話しする機会が得られました。

犬に過剰な期待をするのは人側のエゴですが、犬が本来持っている可能性や能力を発揮する場を与えることは別のことです。



アルクちゃんの飼い主さんからいただいたコメントは過去のブログ記事にも掲載していますので、以下からご覧ください。

<受講生>怖がりの保護犬から信頼できる家族に出会ったアルクの九ヶ月

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Posted in 犬のこと

<犬のしつけ方>犬は純血種である前に犬であることを忘れないで!

まだ4月中旬なのに、山やひと月先くらいの風景になってしまいました。

暖かな日差しを思いっきり受けて、草も葉も成長したい放題になって少しあわただしくなっています。

春という不安定な季節に体調を崩す人も犬も増えているようです。

休息から活動に入るこの時期ですから、自宅ではゆっくりと過ごし屋外ではきちんと活動するメリハリをつけていくことも、健康のために必要な時間になりそうです。

プライベートトレッキングクラスに来られる方が増え始めたので、自分も山活動時間が増えてきました。

犬との過ごし方はいろいろありますが、自分にとっては犬と共に山歩きすることが最高の時間です。

一定のルールを持ちながら広い空間と時間を使って、お互いに拘束されることなく自由でありながらかつつながっているという関係性を深めることができるような気がするからです。

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歩いている犬を見ると、結構大変なことになっていることがあります。

杉の枝や草の種が犬の毛にからまっていたりと、歩きにくそうにしています。

先日いっしょにトレッキングしたリンちゃんの脚にも、たくさんの種が絡まりついていました。

リンちゃんはシュナウザーという純血種で、色は真っ白です。

白色の毛が土色に変わり、脚の汚れが目立ちます。

毛はほとんどが飾り毛なので、種や杉の葉といった繊維にひっつきやすいものが絡まってなかなかとれなくなってしまいます。

同じように土も繊維の深くに絡まるため、泥状の汚れがふき取る程度ではきれいにはとれません。

犬は本来、山で生活するようにできています。
その骨格、筋肉、皮膚、被毛も、この山空間で安全かつ快適であるように歴史をかけて自然がつくってきた犬本来の体というのがあります。

ところが純血種の犬は違うのです。

純血種というのは100年ほど前にヨーロッパで始まった趣味の犬の世界から始まっています。

よく純血種=働く犬と思われていますが、そういうわけではありません。

使役のために繁殖された犬たちはサイズや性質を求められましたが、規定の体の大きさや耳や尾のタイプ、毛質の色や状態を純血種の規格として求めているのはドッグショーという趣味の世界です。

このドッグショーのために繁殖されている犬たちから、家庭犬としての純血種が広がってきました。

不思議なことですが、ドッグショーをよくご存じない人でも「チャンピオンの子」と書いて売り出されている子犬を見ると、なぜか特別にいいものだと思ってしまうようです。

ドッグショーの規格の中で人為的に繁殖をくり返される純血種犬の中には、山という環境で快適さを保つことができなくなった犬種もあります。

前述した飾り毛、毛の色、皮膚の弱さ、免疫力の低さ、体型、筋肉のつきにくい体など、不便を強いられることもたくさんあります。

こうした犬たちと山歩きをしたあとは、このあと脚を洗ったり毛から種を取り去るなどいろいろと大変なのです。

その大変さや犬が汚れるのがいやだという理由から、犬に山歩きをさせたくないと思われる飼い主もいるとは思います。

それでも、知っていただきたいのです。

山を探索しながらゆっくりと歩いていく犬の満足した表情や真の安定や落ち着きや欲求を満たすということについて、実際に犬を見て感じていただきたいのです。

犬が山を歩く姿を見れば、犬が人の繁殖によって変わってしまい、汚れや種などが絡まる毛質になったことを不便だと思う前に、もっと違った気持ちが生まれるのではないでしょうか。

真っ白なリンちゃんですが、お山では満足した表情で歩いています。

たくさん歩いても、まだまだ歩けるといった風でもあります。小さいのに頼もしいですね。

飼い主さんも、汚れても苦にされている様子はなく、「リン、楽しいね、良かったね」と声をかけています。

犬がどこでどのように過ごすのか、その権利を持っているのは飼い主なのです。

その小さな積み重ねが犬の一生になることを考えると、人の10分の一の時間しか持たない犬に対してできることはわずかなことしかありません。

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