グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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「動物福祉セミナー」開催に見る動物との関係の変化

1月28日に福岡市で「動物福祉の視点から犬猫の殺処分ゼロを考える」セミナーが開催されました。
講師は日本動物福祉協会顧問の山口千津子先生です。動物に関わり動物福祉を学ぶ中では必ず山口先生の講演や原稿に触れられることと思います。

山口先生から今回講演またこれまでに教えていただいたことについて、わたしなりの解釈にはなりますが今後もクラスやブログを通してみなさんにお伝えしていきたいと思っています。待ちきれない方は遠慮なく個人レッスンのときにでも質問してください。なぜなら、山口先生が伝えている動物福祉の姿勢は、すべての家庭で共に暮らしている犬の生活の質に関係する問題であるからです。


動物福祉という言葉は、動物愛護という言葉の影に隠れてしまいがちな考え方であり姿勢です。
しかし、今回のセミナーの開催運営を通して、ようやくこの動物福祉とは何かそれを実践するためことは、といった考え方が専門機関や業者をはじめとして一般市民にも広がり始めている感覚を得ることができ、とてもうれしくまた感動しています。
当初このセミナーを企画したときにはどのくらいの参加者を集めることができるのか予測が立ちませんでした。
これまでは「動物福祉」という視点で対話したくても理解を示していただけないことも多いというのが現状でした。

グッドボーイハート開講のクラスの特に行動学専門のクラスの中では、動物福祉の観点から行動を捉える意義を説明しました。専門学校講師時代の教え子たちは愛護と福祉の違いを知った上で、動物と関わる仕事に従事してくださっていることでしょう。ボランティア団体を立ち上げた際には、動物愛護団体ではなく動物福祉団体として活動をすることをその柱とし、会員の皆様もその気持ちをもって活動に参加してくださいました。

では、なぜ動物愛護ではなく動物福祉なのか。
セミナーの中では動物愛護と動物福祉の違いについて以下のように説明がありました。

動物愛護とは 主体は人
→動物を愛護する情・思いやり・共感を醸成する :心情的主観的アプローチ
 
動物福祉とは 主体は動物
→科学的アプローチで客観的に飼育環境・動物の状況を測定評価し、動物のQOL(生活の質)を向上させる 
:科学的論理的アプローチ

動物愛護の主体が人であるといわれると、反論や疑問も生じるかもしれません。動物をかわいがることがなぜ人が主体なのかと思われるかもしれません。確かに動物愛護の姿勢で動物をかわいがったとしても、各個人の中には動物を動物として捉える気持ちが全くないわけではないからです。特に日本人の場合には、歴史的な動物とのかかわりの中において、動物を動物として主体的に捉える感覚を見につけていると思います。動物愛護の姿勢を持たれていた方が非難されることもありません。

動物をかわいがる気持ちを持つ方は、「動物福祉」の視点にたって考えるという新しい見方を知って欲しいのです。
具体的な例をあげると、犬の行動を科学的に見るというのもそのひとつです。
犬の行動を「かわいい」「よろこんでいる」「癒される」「遊んでいる」と感情で受け取るのではなく、犬の行動学に基づいて分析し、そして科学的に評価します。これが動物福祉を基盤にした犬を理解するという過程です。
犬の行動学の学問は、専門家のためのものではありません。犬と共に暮らす飼い主さんたちのための学問です。みなさんに学ぶチャンスがあることを知って遠慮なく学んでください。


今回の動物福祉を考えるセミナーは熊本地震で混乱する動物保護施設の現状を知ってボランティア活動を続ける中で見えてくる限界と問題を、根本から考えたいという気持ちから起こりました。
セミナー開催までの時間が数ヶ月という十分な準備期間も設けられない中、日本動物福祉協会顧問の山口千津子先生に講演を快諾いただきセミナーの開催にいたり、そして意識の高い参加者のみなさまを迎えて共に学ぶ時間をいただいたことを感謝いたします。ありがとうございました。



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熊本被災ペット支援ネットワーク
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犬を飼う前に:純血種を飼うのか、雑種を飼うのか

昨日のブログ「子犬を飼う前に」に引き続いて、犬を飼う前に知っていただきたいことをお伝えします。

純血種を飼うのか、雑種を飼うのか。

純血種を飼われる方の場合、専門用語では「形態」といわれる、つまり外見の好みで飼われることがほとんどでしょう。
他人が飼っているのを見て買いたかったというのも、人が買っている犬が可愛いからと理由も多いでしょう。
これは犬を飼う価値観の問題です。趣味的な選別ではありますが、そうした外見で選ぶという価値観が存在していることは認められることです。
ここでは、なぜ自分はこの犬を選ぼうとしているのかということを客観的に見ることができるようになってくださればそれで十分だと思います。

小型犬の場合には、外見で選ぶ傾向が強くあります。
そのため小型の純血種には「ブーム」があります。ひとつの犬種を有名人などが飼いはじめてブログやインスタグラムで紹介されると、同じような犬が欲しくなる、SMSでは広がりやすいものです。

人が飼っているのを見て他の人も欲しくなる、これをくり返していくと一種のブームが起こります。
小型犬のブームは、犬を集合住宅で飼育できるのが一般的になってきた30年くらい前からはじまりました。

最初のマルチーズやシーズーはまだ、お座敷犬と呼ばれるところがあり、少し特殊な犬として扱われていました。
犬を室内で飼育したり抱っこしたりする飼い方が趣味的であり、皮肉をこめて「お座敷犬」の名前がついたのかもしれません。

しかし、その後、小型犬の室内飼育は瞬く間に広がっていきました。
最初に少し広がったのはチワワでした。このころチワワはまだ今のように超小型化されておらず、体重は5キロくらいありました。本来のチワワは屋外でも元気にまた番犬としても優秀なほどの強い気質を持っていました。
そのため抱っこされるのをいやがったりとすぐには愛玩化されなかったようです。

そのうちにブームになったのはミニチュアダックスです。
これはよく増えました。ダックスフントは短毛でサイズも大きく愛玩用ではなかったのですが、このダックスにロングコートをつくりさらに小型化して愛玩犬として人為的に繁殖したのがミニチュアダックスです。
声質が太くよく吠えるため吠えの問題はいつも抱えていますが、愛玩化した犬としては非常に増えました。
そのうちあまり吠えない気質のミニチュアダックスも出るようになりましたが、おびえのひどい犬も多くなりました。

ミニチュアダックスの数が増えすぎたあとブームになったのがトイプードルです。トイプードルはもともとあった犬種ですが、プードルカットが好まれなかったものを、テディベアカットにされたことで本当のぬいぐるみのような犬になり、爆発的に販売されています。今でも街中では最も多く見られる小型犬ではないでしょうか。

そして、現在増えているのは小型化されたチワワです。特にロングコートのチワワですね。
性質的にはチワワではなく、パピヨンのようになっているチワワもいます。顔つきも少しパピヨンに似てきました。
パピヨンはヨーロッパで愛玩犬として繁殖されている犬で、ペットショップでも見られ飼っている方も多いですが、性質的に神経質なところがあるためか、あまり数は増えていません。

キャバリアも小型の愛玩犬で人気がありますが病気が多いためあまり増えてはいません。純血種はそれぞれに遺伝的に欠陥がありますから、病気になりやすく健康に過ごしにくいということも考える必要があります。キャバリアの場合には心臓に負担がかかりやすいため、行動が比較的ゆっくりで大人しい犬が多いのもそうした理由からです。性質が大人しいというよりは身体的理由でそのような動きになるのでしょう。

他には、短頭種たちです。パグ、フレンチブルドッグなど、犬としてはかなり形が崩されているため不具合のあることも多いのですが、変わっていてかわいいと受け取られるのでしょう。

純血種の犬たちが人の好みによって、また人のつくるブームによって変わっていくことがわかりますね。

犬という動物が愛されるのはうれしいことなのですが、外見で選びすぎたり、選別しすぎたりすることの危険性も知った上で行って欲しい事です。

純血種を選ぶ場合には、愛玩が目的なら愛玩犬を選べば良いでしょう。
小型犬はほとんど愛玩を目的として人為的に繁殖されています。
大型犬や中型犬で愛玩を目的としているのは、ゴールデンリトリバーや、いわゆる飾り毛のあるスパニエル系の中型犬です。
純血種のうちドッグショーに出すために繁殖された犬たちをショータイプといいます。ショータイプで繁殖されている犬たちは、実際の使役で使われている犬よりも大人しく扱いやすい犬になっています。顔つきや体つきは現在の審査員に好まれるように変わっています。たとえばボーダーコリーは顔が丸っこく体つきもどっしりしています。ラブラドルリトリバーも顔が丸く、脚が短く、実際に猟で活動するラブラドルリトリバーと同じ犬種とは思えません。

バーニーズマウンテンドッグやグレーとピレニーズなども同じようにショータイプがあり、繁殖者から人手に渡るのは大半がこのショーのために繁殖されたけど、実際にはショーではトロフィーをもらえそうにない犬たちです。ショータイプが飼いやすいからといって、これらの超大型犬を飼うことはおすすめしません。結局ずっとつながれたままになり、人や犬のいない夜間にひっそりと散歩しているこられの大型犬をよくみかけます。

純血種のうち使役犬を目的に選ばれる方がいるでしょうか。
実は日本には犬を使役として使う文化がありません。牧畜や牧羊、荷物を引かせる犬、ソリ犬、猟犬、などすべて西洋の文化の中で、動物を使うという形で生み出されたものです。猟犬については国内でも使われていますが、この使い方もいろいろ賛否のあるところですので、ここでは述べません。
これらの犬は一般の方が犬を飼う目的としてはないということで話を進めていきます。

次に雑種です。

雑種は繁殖に人の影響を受けていないように思えますが、実は雑種の方が長い時間をかけて繁殖に影響を受けています。
なぜかというと、人が飼いにくい雑種は生き残っていないからです。
かつては国内では人が犬を飼う法律がありませんでした。
犬は人の近くをうろつき、こびて食べ物をもらったり住む場所を与えられたりしてあとはのんびりと過ごしていました。
人に近づいて食べ物をもらうためには、人に大人しく尾をふったりゆっくり近づいていったり、その人が犬嫌いなときにはあわてて逃げるなど、多少の警戒心と、そして人を見て行動できる力が必要です。
やみくもに人に吠えたり咬みついたりする犬は食べ物をもらえないため、生き残っていくことができません。
日本が育てた雑種はみなおとなしくなつきやすく飼いやすい性質をもっていました。
こうした犬を昔は野良犬と呼んでいました。

ところが雑種の中には大変難しい犬がいます。
これらの犬は人になつきにくくおびえて、人に吠えたり警戒したり咬みついたりします。
これらの犬や野犬とよばれる犬で、山の中で犬たちだけで野生として暮らしていたものが、はぐれて里に下りてきてしまったものや、子犬のころに山で捕まってしまった子犬たちです。
野犬と野良犬は違います。野犬は犬だけの群れで動物を捕獲したり自力で生活をしています。山のサイズにもよりますが、野良犬よりも少し大きめで毛も短め、そしていつも自由に動いているため尾も巻いていません。
野生のイヌ科動物を見るとわかりますね。
活動する犬の尾は巻き尾ではなく、オオカミのようにまっすぐによく動く尾です。
尾の形だけでもその活動の様子がわかります。

野犬は今でも山に存在します。野犬はなつきにくく警戒心が高くすぐには近づいてきませんので、子犬のころから飼育したとしても人と信頼関係を結べるようになるかどうかは判断が難しいところです。人に近づいてこない子犬については、選択から外してください。そのような犬が家庭犬となることが全くできないわけではありませんが、慎重に判断する必要があり、一般の方にはおすすめできません。

野犬との付き合いに関してはみなさんも考えるところもあるでしょう。また別の機会にお話しします。

雑種に関しては、野良犬の場合には人になつきやすく飼いやすい犬たちが残っているのですから、気質的には確かに大人しいのですが、これはあくまで人との距離がある程度保てていたことが前提なのです。犬たちはリードをつけずにいつもふらふらとしていたり、夜になったらひもを外されて夜遊びを楽しんでいたという犬のことを覚えている中年以上の方もいらっしゃると思います。犬にとっても古き懐かしき思い出です。

これらの人になつきやすい野良犬たちは自由があったからこそ落ち着いて過ごせたのです。リードにつながれたり、庭で囲われて飼う場合には、いろいろと工夫が必要になっています。愛玩犬ではない、ふらふらした野良犬の良い気質を残した犬たちですが、都市環境での飼育にはむかないこともあります。こうした犬たちがまた、日本の犬としてゆるりと生活できるようになったらいいのになという希望も、わずかですが持ち続けています。

人の生活がこれからのどのように変化していくのか、人の価値観がこれからどう変わっていくのか。
人の周りにいる犬はいつも人次第です。

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子犬を飼う前に考えること:犬を迎える準備

子犬を飼う前に、保護犬を迎える前に考えなければいけないことがあります。
すごく大切なことなのですが、考えなくもしくは衝動的に犬を飼う方が増えています。そのため、犬を飼ったあとに問題が起きてしまいます。そして、そのことが「飼い主が捨てる犬」が減らない原因にもなっています。
考える項目としてはとても単純なことです。以下にまとめてお伝えします。

子犬を飼う前に考えること、大きく分類するとふたつに分かれます。

●その1 犬を飼うことができる環境が整っているかどうか。

チェック項目でチェックしてみましょう。

□ 犬を飼うために必要なお金を準備できる
購入の買う資金ではなく、犬を育てるために必要な費用です。

犬の飼育にかかるお金は、食費、登録費、狂犬病予防接種費、犬用道具費、医療費、トレーニング費、預かりなどのお世話の費用などを考えると、毎年数万円のお金が必要になります。

□ 犬を飼う場所を提供できる

屋外で飼う場合 → 犬を安全に管理し、周囲にも迷惑のかからないような適切な屋外飼育場所がある。
きちんと囲われた場所や安全に係留できる場所を提供できる。
目隠しなどで、周囲の刺激にさらされないような屋外飼育環境の整備ができる。

※屋外飼育の場合には、場所があるだけでなく、周囲の住宅との距離や道路から犬が見えるかどうかなど、密集地帯では、以外に難しい面があります。
犬を安心できるように飼育場所を整えようとすると、日当たりが悪くなることもあります。
犬はテリトリーに近づくものがあれば吠えるという番犬吠えをするのは習性のため、全く吠えないようにすることもできません。
住宅密集地での屋外飼育は地域の苦情問題に発展することが多いため、十分に考えてから決める必要があります。

これは間違い! 以下の場所は犬を飼育できる場所ではありませんので、外してください。
□ ベランダ
□ 土間(一時的な避難所にはなりますが、飼育場所にはなりません)
□ 玄関 上記と同じ
□ 通路
□ 倉庫
□ 車庫
□ 物置
□ 畑
□ 資材置き場

このようなスペースで犬を飼う方がいるのかと驚かれる方もいるかもしれませんが、過去にご相談を受けたときに実際に犬の置かれていた場所でした。


室内で飼う場合 → 犬を上手に飼うための犬用のクレートや、居場所を一時的に制限するなどの工夫がなされている。
犬が歩きやすく滑らない床を準備している。
犬が気になるようなものや危険なものをおかずに室内が整備されている。
犬が適切に排泄できる場所を確保できる、もしくは提供できる。

※犬を室内飼育する場合の最も大切な問題は、その犬が室内飼育が可能である性質であるかどうかです。
犬の性質によっては人と距離を置くことでうまく人と関わりを持つことができる犬もいます。むしろ本来の犬はその性質を持ちます。
犬は人為的な繁殖によって愛玩犬化をすすめられてきたため、人がそばにいると安心、言葉をかえれば人がそばにいないと不安定な状態になりやすくなっています。小型の愛玩犬にはこの傾向が強くみられます。

これは間違い! 犬を室内で飼うときにサークルにいれて飼うというのは犬の習性に反する飼育方法です。
犬は大変落ち着かなくなり、不安定で吠えたり咬みついたりする問題行動を起こすようになります。
サークルでの飼育で犬に問題が起きているときには、犬の生まれつきの性質ではなないことが多いため、専門家に相談されることをお勧めします。
犬のサークル飼育は、飼い主がいつでも犬を観賞でき、自分の気分次第で簡単に出し入れできるため最近は増えているように思えます。犬という動物と暮らすことが、犬という仲間と共に暮らすことではなく、犬というアクセサリーを持つという風に代わってきているのかもしれません。時代の流れなのかもしれませんが、これまでに人と犬がつくってきた関係を思うと推奨できません。

□家族全員が犬を飼うことに賛成している

どこで飼育されようと犬は住居を共にする仲間になります。
人がそう思っていなくても犬の方は仲間と仲間でないものを分ける習性があります。
ひとりでも反対する人がいる、犬が苦手な人がいる場合には、犬を飼うことを諦めましょう。

・飼い主の家族構成
→ 小学生3年生よりも小さなご家庭で、子供の面倒を見る存在が母親だけの場合には、犬を室内で飼うことをお勧めしません。特に犬だけのスペースとして庭を提供できない場合には、子供の社会化が進み子供が室内に動く犬をおもちゃとして触りたいと思わなくなる小学生高学年まで待ってから迎えた方がよいでしょう。

→ ご自宅に介護中の方がいらっしゃって、お世話が必要な場合には、上記と同じ理由で犬を飼うことは延ばされたほうがいいでしょう。ただ、介護のためにサービスを受けられるなどの準備が整っていて、犬のお世話の方が重複した負担を強いられないのであれば犬を飼うことも可能でしょう。

□犬の世話をすることができる人がいる(責任者は大人だけです)

犬の世話をする責任者が一人以上いることです。この中に学生以下の子供は含まれません。
生活が安定している社会人だけを責任者とします。
大学生は大人ではありますがすぐに就職して生活時間が変わってしまいます。
そのため責任者予備にはなっても責任者にはなりません。

犬の世話をする人は、毎日数時間を犬と共に過ごすことになります。

犬のゴハン、散歩、遊び、など。特に子犬のうちはひとりにすることができないので、半日は子犬の世話が必要です。
また老犬になると再び半日、もしくは終日が老犬のお世話に必要になることもあります。
犬は病気もします。またこのときにも時間を割いて世話をすることを苦痛に思わずに飼えることはお互いにとって必要でしょう。


●その2 どのような犬を飼うことが可能なのか。

「どのような犬」を分類すると以下のようになります。

・犬の大きさ 大型犬、中型犬、小型犬
犬のサイズは、外界の環境の温度に左右して変化していきました。
日本の国土で季節を問わず屋外で活動することができるのは、体重が6キロ~12キロくらいまでの中型犬です。
15キロ以上の犬になると暑さによわく、5キロ未満の犬になると寒さに弱い傾向があります。

・純血種か雑種か
これはあくまで好みということですが、ぜひ知っていただきたいことがあります。
雑種というと、全く性質がつかみにくいと思われがちですが、実はいくつかに分類されます。
純血種の場合にも、一般的な犬種の性質とは別にわける必要があります。
この分類については明日のブログでご紹介します。

いずれにしても大切なのは「外見で選ばない」ということです。
犬を飼うことは人の趣味的な行為のひとつでもあるため「外見の好み」で犬が選択されることが多いようです。
しかし長い年月を家族として暮らしていくのです。「見かけより中身が大切」は人も犬も同じです。
性質はよしあしではなく、犬を飼育する環境に適しているのかという意味で大切だということです。

・犬の性別 メス、オス
性別による行動の差はありますが、その差は飼育の大変さには関係ありません。

都心であれば不妊手術をされることをお勧めします。
不妊手術は犬の病気を事前に防ぐ方法でもあります。また、都心で犬同志の生活距離が近いため、不妊手術をしていないことによる犬のストレスから解放させるための手段でもあります。
健康な動物に手術を受けされるのはかわいそうとも思われるかもしれません。しかしその前に、犬を飼育している環境がすでに不自然なのです。その不自然な環境の中で、犬の方に負担を強いていることも考える必要があります。
不妊手術に対しては賛否があるところだと思いますが、犬の立場にたって、飼育環境や犬の病気をかね合わせて十分に考えた上で飼い主さんが選択してください。

・飼育する場所 屋外飼育が可能か、もしくは室内飼育向きなのか
主に洋犬気質の犬、愛玩犬気質の犬は室内飼育でないと落ち着きなく不安定になります。
逆に、日本犬気質、野良犬気質の犬の場合には、人との距離を上手にとらせることで安定します。室内飼育でも距離感を保つことはできますが、物理的な部屋の広さは必要です。日本の狭い家屋やマンションではお互いに距離をとることはなかなか難しいことです。

・犬の年齢 子犬から飼う 成犬を迎える
現在の多忙な生活の中で犬を迎えるのであれば成犬から迎えることをおすすめします。
ただ、成犬であっても行動に問題がある、性質的に把握できないような状態で迎えることはお勧めしません。
信頼のある保護団体や保護施設を通して犬を迎えることができれば、安定した気質と行動の犬を迎えることも可能です。
ですが、すべての犬ではありません。施設にも不安定な状態の犬たちはたくさんいます。それをケアするシステムや場所や人手が整っていないからです。かわいそうだからとなつきにくい犬を引き取ってしまい、結局犬を安心させることができない場合もあります。飼い主は自分の力量を知って時間をかけてゆっくりと犬と出会ってください。

子犬を迎える場合には、前述したように1日の半分は子犬のために使うようにしてください。
子犬は成長が早くいいことばかりでなく、不安なことや危険なこと、いわゆる良くないこともすぐに覚えてしまいます。
子犬をただ甘やかしてしまい、成長の機会を与えずに成長後は手に負えなくなり放置してしまうのは、立派な動物虐待ですす。


・犬を飼育した経験があるのか
犬を飼育した経験がない方には→
飼いやすい性質の犬を提供できる環境にあわせて選択されることをお勧めします。

犬の飼育の仕方について学校で習われることは必須ですが、犬を飼う前から学ぶこともできますので、ぜひそのような良い相談場所をご利用ください。犬は飼ったあと「やはり飼えない」と捨てることも人にあげることもできません。
たとえば1千万円の車を買うことよりも、動物を飼うことのほうがずっと大変なのです。

犬は最初に人がどのように接したかが、その後の犬の性格形成や社会性に大きな影響を与えます。
問題が起こってから対処というよりも、最初から学ぶことは犬との生活を断然豊かにするでしょう。
犬のしつけ方についてのトレーニングクラスをご利用になった方のみなさんが「早くやればよかった」を口にされます。

犬を飼育した経験のある方には→
中には上手に犬を飼育されている方もいます。特に環境が安定している場合には、上手く犬を飼われている方もいらして関心すると同時に、犬のことをよく理解されているのだと安心してとてもうれしくなります。
このようなご家庭でしたら、幼少期に辛い経験をした難しい犬でも、残りの犬生を楽しく過ごせそうです。

しかし、そうではない飼い主もいます。

過去に飼育しやすかった純血種があると、同じ純血種を飼いたいと思うかもしれません。犬種が同じだから性質が同じということではありませんが、似たような行動の特徴が見られることは確かです。
ただ、犬という動物をもっと知っていただくためには、純血種にこだわらず犬を迎えていただきたいなと思います。

今まで飼っていた犬が大人しかったため問題がなかったが、今回の犬は問題があるという場合もあります。
これは、犬という動物を理解するチャンスでもありますので、ぜひ犬の学校などで学んでください。


・現在犬を飼育している どんな犬を何頭
現在犬を飼育している方が、さらに犬を迎える場合には、多頭飼育になります。
多頭飼育については法律で明確に制限された数はありません。
飼われている犬たちが動物福祉の観点から守られていれば、問題はないでしょう。

ですがあえて個人的な見解で数を上げさせていただきます。
集合住宅飼育の場合は、2頭まででしょう。
多頭飼育は吠えの問題を生みます。集合住宅内での吠えは非常に大きな問題です。
散歩も1頭ずつ行く時間を設けます。そうなると一日3回以上は散歩に出ることになります。
これだけでも大変なことです。

戸建て住宅の場合には、周囲の密集度が強い場合には同じ理由から2頭まで。
周辺が広く田舎環境で、その上犬の世話をする人が二人以上いる場合には4頭までです。
ひとりで2頭の犬の世話をすると考えて、ふたりで4頭、それでも少し多いかなと思います。

収容犬舎での飼育は、家庭で犬を飼うこととは違います。
犬は運動上かクレートケイジなどにいれられ、完全管理されているため、人が犬を飼うということとは別に考えてください。これは飼うでなく収容です。収容する施設のサイズと、世話をする人の人数で決まります。
もちろん24時間体制で世話をする必要があります。


・飼い主の性格と犬に対する価値観
実はこれが最も影響力があるでしょう。
結局、どのような情報があっても、「自分がこのように犬を飼いたい」という願望が先にある限り、人はそれをなかなか飼えることができません。もし犬を飼った後で「思っていたのと違う」というのであれば、それはあまりにも自分の最初の思いこみが強すぎたのだと謙虚に反省して、やり直してください。

やり直し方は二つ、その犬に新しい飼い主を見つけるための里親募集活動をする。
これは大変なことです。特に、老犬、病気の犬、問題行動のある犬、にはまず見つかりません。
犬を大切にして暮らしている方には驚かれることですが、「犬にかみつかれたから誰か犬を引き取ってくれないだろうか。わたしはもう飼うつもりはない。」というご相談もよくあるのです。ほとんどが子犬のころから飼育されていて、甘やかしと放置で問題が大きくなったケースばかりです。問題犬をつくって人に押し付けるのは、最もやってはいけないことです。

ふたつ目は、新たな気持ちでその犬を自分が責任を持って飼うことを決めがんばることです。
不満で飼っていても犬は変化しません。犬はとても繊細で必要とされていないことがわかるのですね。

どちらにしても大変です。

そうならないためにも、まず「自分がこのように犬を飼いたい」という願望が現実に即したものかどうかを、よくよく考えてから決めてください。冷静に考えられる方に相談することです。

あなたの近くで犬を飼うつもりの方がいたら、まずもっと考えることをすすめてください。

犬はすばらしい動物です。
だからこそ、犬との暮らしを犬と共に、豊かに楽しんで欲しいのです。

そのために、犬を飼う前にたくさん考えてください。



mde



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犬猫の殺処分ゼロを真剣に考える

福岡市で開催される「動物福祉の視点から、犬猫の殺処分ゼロを考える」セミナーまで、残すところ一週間となりました。日本動物福祉協会の山口千津子先生を講師として迎え、この問題をみんなで真剣に考える機会を得たいという思いから企画したセミナーです。
セミナーは現在満席でキャンセル待ちとして受け付けている状態です。行政、業者、ボランティア、そして一般の方と、多くの方がこの問題を考えたいと思ってくださっているということを知り、心強くなりました。

ここ数日見た犬猫の殺処分問題に関する二つのニュースの一部をここでご紹介します。犬猫に関するマスメディアの報道の内容については疑問を感じることも多く、すべてをうのみにすることはできません。その中で、ひとつでも何かを知ったり調べたいと思うきっかけになるのであれば、そうした情報は有効に活用していくべきだとも思います。この二つのニュースは今までの殺処分の取扱いとは少し異なる内容を発信しているものでした。

ひとつは1月18日にTBSニュースで映像配信された神奈川県の猫の保護活動に関する報道です。題名は<犬・猫「殺処分ゼロ」裏側で…ボランティア団体「対応は限界」>とあります。

ニュースの要旨は以下のとおりです。
神奈川県の動物保護センターで猫の譲渡会が行われている。猫を引き取る方へのインタビューもあり、ここまでは今までの動物を保護することの情報提供のように思われます。ニュースの主題はここからです。

同施設にある殺処分機はしばらく使われていない。なぜなら、神奈川県は犬は3年、猫は2年、殺処分を行っていない。神奈川県知事は、このまま殺処分ゼロを継続するといういわゆる「殺処分ゼロ宣言」を行っている。

その実態について譲渡会を主催するうちのひとつの猫のボランティア団体代表がコメント、「預かりは200匹にのぼりもう限界かな?」という。
預かりには多くの資金がかかり、特に病気の猫の場合には多額の医療費も必要。代表のコメントでは「殺処分がいつ始まるかと…」という不安の言葉が乗せられています。
実際のニュースはこちらです。
TBSニュース「犬・猫の殺処分ゼロの裏側で…」

このニュースの受け取り方は様々です。
事実として言えるのは、殺処分ゼロを宣言する県行政が多数あり、実際に犬猫の殺処分ゼロを実現している中で、犬猫の保護ボランティアに出される頭数が異常な数になっていることです。行政は数字の結果だけを残し、それ以外に必要なことを怠っているのではないかと思われる事態です。そしてその「殺処分ゼロ」という数字の達成だけを歓迎しているのは誰なのでしょうか。

犬と猫を比較すると、動物の習性の違いにより猫の方が多頭飼育にいたりやすいため、殺処分ゼロをかかげる行政がボランティアに譲渡する猫の数を調整しない限り、ボランティア団体の猫の飼育数は増えるばかりです。またその先に、一般の方の猫の多頭飼育が増えているという現実もあります。猫の多頭飼育が問題かどうかは、「動物の福祉」についてひとりひとりが考え、表面に流されない意見を持っていただきたいのです。

ふたつ目は1月19日にヤフーニュースで配信されたサイト発信の記事の中にありました。この記事の一文を抜粋します。

ココから

●「殺処分ゼロ」追い求めるだけでは問題は解決しない

ペットを取り巻く問題として、たびたびクローズアップされてきた殺処分の問題だが、以前と比べその数は大きく減少している。環境省の調査結果では、1974年に約120万匹だった犬猫の殺処分の数は、2015年には、約8万3000匹まで減少している。

これに加えて、2013年に改正動物愛護法が施行され、自治体は、ペットショップなどの「犬猫等販売業者」からの引き取りを拒むことができるようになった。安易に自治体に持ち込むことを防ぎ、殺処分の数を減らす狙いがあった。その結果、「殺処分ゼロ」を達成する自治体も出てきた。

ところが、行政がペット業者からの引き取りを拒むようになった結果、売れ残ったペットを有料で引き取り劣悪な環境で飼育する「引き取り屋」と呼ばれるビジネスが活発化し、問題視されるようになった。


ココまで

「引き取り屋」などという名前がつけられているのが事実かどうかはわかりませんが、終生飼育が原則の犬・猫の飼育の背景で、さまざまな事情で犬猫を飼育することができなくなった飼い主から動物を有料で引き取り、終生飼いますというビジネスが存在していることは事実です。老犬の世話ができなくなり老犬ホームに犬を預けてしまうことも、見方や考え方によっては、「飼えなくなったから業者が引き取って終生飼育する」という、上記と似たような形態になる可能性もあります。

すべての引き取り業者がずさんな飼い方をしているわけではなく、中にはほんの数頭を愛情をこめて最後まで飼ってくださるような家庭的な預かりを実現されているところも存在するのかもしれません。実際には、具体的にそのような理想的な形をビジネスという形では見たことがないので、あくまでそうあってほしいという気持ちでいるところです。家に飼われるということと、施設に収容されるということは、まったく別のものとしてとらえる必要があります。外側は一軒家のようにしていても、室内にはケイジやクレートがならび、その中に収容されるのであれば、それは家庭での飼育とはいえません。

犬と猫では、動物としての習性もことなり、人が飼うようになった歴史も、人が管理するようになった過程もすべてに違いがあります。そのため、この問題をまとめて扱うことは不可能ですが、唯一、動物の福祉という立場にたって考えることは、犬についても猫についてもできることです。犬という動物の立場にたって考える、猫という動物の立場にたってかんがえる。動物福祉という考え方も、それぞれの環境は立場に応じて考えていかなければいきつく道はありません。

飼い主として犬を飼っている方は、犬の立場にたって考えることが必要です。
甘やかしや人側に立ちすぎた可愛がりや愛情の注ぎ方が、犬という動物を犬ではなくものにしてしまうこともあります。犬という動物として成長する機会を奪われることが、動物が生きていく上でどのくらい苦しいことなのかを考えることもできます。
こうしたことも動物福祉という考え方です。動物福祉は数ではありません。雑種の日本の野良犬らしい犬を飼育できる方が少なくなってきました。環境が整わない、接し方がむずかしい、愛玩犬にむかないと理由はさまざまでしょうが、日本の土壌が育てた日本雑種の犬たちはそのうち絶滅危惧種になるでしょう。そして、珍種として動物園に展示されるようになるのではないかと思っています。オオカミの最後の数頭が生き残っていれば、同じ運命をたどったことでしょう。

殺処分ゼロの問題は、数の問題ではありません。殺されるのがかわいそうなら、魂を抜かれたまま生きることはもっとかわいそうなことです。

わたしたちのまわりには、犬猫の問題ばかりでなく、考えなければいけない問題は山のようにあります。それぞれに関心をもって自ら考えることに参加したいと思います。そして、特に自分が得意として、真実をみることができる世界については、そのことについて話す機会も持ち続けたいと思います。

犬猫の殺処分ゼロの問題。犬の動物福祉の問題をいっしょに学び、いっしょに考えましょう。

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犬のクレートトレーニング:ハウスの合図でクレートに入る動画

室内飼育の犬や移動が多い犬には、クレートを犬の居場所とするクレートトレーニングをお勧めしています。

クレートを犬の休憩場所として活用されている飼い主さんとお話ししているときに、こんな話を聞きました。
「知人の犬が部屋の中で狭いところに入りこんでいるのを見たのでクレートを使うことをすすめたのですが、犬を閉じ込めるなんてかわいそうだといって使ってくれないんです。」


クレートの戸口を空けたままで犬が寝ているときには、犬がかわいそうと思われないのでしょうが、戸口を閉めてしまうことをかわいそうと思われるのでしょうね。


まず、クレートの戸口を閉めることが犬を閉じ込める行為だと感じられるなら、それはあくまで個人の見方や捉え方の問題もありますので、否定することはしません。
そう感じる方もいるし、そう感じない方もいる。
もしくはそう感じていたが今はそう感じないという方もいるでしょう。
ですが、クレートが犬にとって「落ち着ける自分のテリトリー」となることや、クレートという道具を使って犬を上手に管理することが犬を落ち着かせる方法なのだということを知る機会もぜひもっていただきたいと思います。


犬をできるだけ自由にして飼いたいと思うお気持ちは尊重します。しかし、日本での犬の飼育現状を考えると、その自由は、人の価値観で区切られた中途半端なものではないでしょうか。
犬を部屋に閉じ込めて留守番させる、犬をバッグにいれて外出に連れていく、犬を車の中に待たせる、犬をホテルに預ける、屋外であっても庭から外への戸口はしまっておりやはり犬だけで自由になることはできません。
犬は常に誰かに管理されているか、もしくな何かの仕切りによって管理されているのです。これが国内の犬の飼育の現状であり、法律として定められた状況です。

実はクレートなど使っていない室内飼育の場合の犬のほうが、一面をみれば自由にしているように見えます。犬は居場所がなく、つねに飼い主の膝の上に乗っていたり、飼い主に体の一部を接触させて過ごしています。飼い主が立ち上がるとついて周り、夜も飼い主の臭いのする場所でないと眠ることができません。このような状態で居場所を確保できない犬は、飼い主から離れられなくなる分離不安に陥ってしまうという事実も、犬の行動をみながら正しく理解してあげる必要があります。


犬にとってクレートがなぜ必要なのか。
クレートが犬にとってどのような場所になるのか。
クレートをどのような時に活用させると犬は落ち着くのか。
クレートという犬のハウスを持っていないと、犬が不安行動を示すようになることを理解しているか。もしくはその犬の不安の気持ちを読み取れているか。

これらの内容は犬の習性と人が犬に関わるということ、そしてクレートの意味について知ることで解決できます。

犬がクレートを自分の居場所=もっとも小さなテリトリーと認識を始めると、クレート中で休んだりくつろいだりするようになります。


それから「ハウスといったらクレートに入ってね。」というハウスの合図トレーニングをします。時間と余裕があればトレーニングとして気合をいれなくても日常の中で覚えてしまうくらいです。


この「犬の居場所を指定するトレーニング」は、ハウスといったらその居場所に移動、そして次の言葉を待つというものです。クレートに入ってすぐに出てきてしまうことではありません。


ハウスの合図でクレートに入るクレートトレーニングのひとつを練習中のみなさんに、イメージしていただけるように動画を掲載しました。動画はグッドボーイハートのクラスを利用された生徒さんにお願いして、学校の室内で撮影しました。


ハウスの合図でクレートに入る動画↓

 

[youtube]https://youtu.be/V9K9T-cBEeI[/youtube]


ハウスの合図でクレートであるハウスに入ってくれました。

椅子に座っているのは飼い主さん、ビデオを撮影して「ハウス」の合図を出したのは私です。



ハウスに入る行動以外に、いろんなシグナルが見られますね。

犬の動画は全て「犬語セミナー」の手法で、観察、分類、評価、共感性を働かせてみると犬がどのような状態なのかを知ることができます。このビデオの中にもいろんな行動を見ることができます。

いくつの行動を拾い上げることができ、そしてその行動の意味や行動から予測する犬の心理についてどのような情報を得られたでしょうか。

犬の行動と心理について関心のあるみなさんは、じっくりと見てそして考えてください。みなさんのどの答えも今の段階で「絶対に正しい、間違っている」ということはありません。わたしはこう思う、なぜそう思うのかを問い続けることです。


ハウスといわれたらクレートに入る動画は動画サイトにたくさん掲載されていました。これらのたくさんの動画を見て、犬がハウスに入る動画で伝えられることは何かという疑問を覚えました。掲載動画は犬が「できている」「かわいい」「おりこうさん」という評価をするものではありません。犬がハウスに入ることがどういうことなのかを伝えるほんのひとつの道具として、考える機会としてご覧いただきたいのです。

ハウスの合図でハウスに入ることができるようになるのは大切なことです。管理されることで犬は落ち着けるという状況も起こり得るからです。それはごほうびをあげたりほめたり、犬に行動させて飼い主が喜んだりすることが目的ではありません。
ハウスの合図で犬がハウス(クレート)に入るという行動をする、クレートの入り口の管理を飼い主に任せてくれる。その中で犬と人がつくりあげていく関係が人側に有利になりすぎないようにバランスをとるのは大変なことです。犬はクレートに入ったり出たりする行動を見るだけで、クレートをハウスとして活用できている犬たちの一頭一頭が、それぞれに犬がクレートをどのように活用し、犬と人がどのように暮らしているのかを見ることもできます。犬の行動は本当に奥が深いなと感じます。


今後も犬の動画をご紹介したときには、犬ができたとかできないという結果だけで見るのではなく、そのとき犬がどのような行動やシグナルを出しているのか、そしてその意味は何なのか、犬はどういう気持ちなのかを学び、問い続ける機会にしていきます。


今回はじめて動画を掲載しようと試みたことで、また伝えたいことがはっきりとした気がします。動画撮影に協力してくれた犬と飼い主さん、動画撮影について意見をくださった生徒さん、いつもブログを読んで感想を寄せてくださっているみなさまに改めて感謝いたします。

これからも、いつも新しい視点にたって真剣に犬のことを学ぶ、犬と飼い主と犬のことが少し気になるみなさんの学校としてGoodBoyHeartは前進します。


クレートトレーニングの必要性については過去のブログでも紹介しましたのであわせてご覧ください。
お正月に活用する犬のクレートトレーニング

クレートトレーニング

ペット可集合住宅セミナー

犬を室内でつなぐこと

犬の車酔い

犬の不安を解消する



 

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犬の雪遊びをお勧めしたい理由:犬と大自然のかかわりのひとつ

今年は暖かな日が続いていましたが、ついに寒波がやってまいりました。
福岡の都心にお住いのみなさんであれば、山手の方を見てください。
山がうっすらと白くかすんで見えたなら、きっと雪が降っています。

犬に雪遊びをさせたいと思われる飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
子供に「雪遊びしたい?」といったら、元気な子供達は「したい!したい!」と大興糞することでしょうが、犬には尋ねても返事は帰ってきません。本当に犬は雪遊びしたいのだろうかと疑問を感じる方もいらっしゃるとは思います。

実際のところ、雪遊びではしゃぐ犬と、雪あんまり好きじゃない犬とに分かれます。
寒いのが苦手な超小型犬は冷たいことが苦手ですから、雪だからといってはしゃいだりしません。
雪はただ寒いもので嫌なものに過ぎないでしょう。

年をとった老犬も同じく寒さは苦手になりますから、雪だからといって元気になったりはしません。

中年期になる犬で、特に雪に慣れてしまっているような犬、たとえばわたしの同伴犬だったオポも、若いころは雪で少し興奮していましたが、七山に移り住んでからは雪が日常となり、今日もまた雪…となってくると、はしゃぐということはなくなりました。年齢もあるのでしょうが、特別感がなくなったのは飼い主である私もいっしょです。

それでも、雪が降り積もった初日はいつもと違います。
人が見るとまず景色が違います。とにかく真っ白ですね。そして音が違うのです。人の私でもわかるくらいですから犬だったらもっと違いがわかるでしょう。余分な音が一切なくなった、そんな感じなのです。

犬が見る景色とは「臭いの景色」です。人と犬は脳内の情報処理分野が少し違います。人は視覚的に情報処理を行うのが得意だけど鼻はあまり効かない動物、犬は逆に視覚的な情報処理は得意ではないけど、鼻はすごくきく、臭いの世界に生きる動物です。
犬の見る世界とは「臭いの世界」なのです。犬はこの真っ白に広がる雪をどのような臭いとして受け取っているのは、いつも不思議に思っています。同じ世界を体験することはできないのですが、犬の行動を通してそれを感じたいと思うのです。

若い犬たちは「新しい世界の出現」に興奮しています。飛んだり跳ねたり、走ったりですが、雪の中では思うように走ることもできません。雪に鼻を突っ込んで冷たさにビックリしたりと、子供のようですね。

中年期の落ち着いた犬たちは「雪の世界」をじっくりと調べています。いつもより行動がゆっくりとなり、慎重に調べます。いつもより遠くに行きたがらなくなり、とくふぶいてくると前進せずに後退しようとします。映画の八甲田山のようなのかもしれませんが、ふぶくと帰り道の臭いがわかりにくくなります。新しく雪が降り積もることで情報が消えてしまうのは、人も犬も同じなのですね。

いつも動いている山なので、50センチくらいの積雪では居場所がわからなくなることはないのですが、雪は冷たく犬も人も体力を使います。酸素は少なくなり心臓にも負担がかかりますね。

そんな大変な雪に犬を触れさせたいと思うのは何故かというと、ただそうした自然の大きな力を感じて欲しいからです。本当はそんな自然の大きな力に触れながら生きて欲しいといいたいところですが、そうもいきません。ですから、まずははしゃいでもいい、そのうち雪を穏やかに受け入れて困難だけどつきあう犬になる機会を得てほしいとただ思います。

雪を感じるなら積雪の朝です。降り積もった雪も福岡佐賀の人が近づけるくらいの山では数日で溶けてしまいます。2日目にはその柔らかさも失ってしまうのです。明日積もるかもしれないという日の前の日に山に入っておくことをお勧めします。今日は最大のチャンスですね。しかも土曜日ですよ。
土曜日の夜に犬といっしょに山小屋で過ごし、明け方に犬といっしょにビックリしてほしいのです。日曜日の朝に降り積もっているなんてこんなに素敵なことはありません。

日曜日にはグッドボーイハートでも尾歩山歩きの会があります。
どんな山になっているか楽しみです。

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純血種のかわいい飾り毛、実は犬にとって結構やっかいな毛であること

純血種の犬たちが人気があるのは、純血種ならではの独特の毛が魅力的であるのは大きな理由のひとつです。

たとえば毛足の長い長毛種は人気があります。長い毛の犬が人気があるのはそれだけ人の好みにあっているということでしょうが、長い毛が好きな方に尋ねると、毛を触ったときの感じが短い毛の犬のようにあっさりとしたものではなく、毛の分量がある分満足度が高いということをいわれたこともあります。あくまで個人的な意見でしょうが、触ったときの感覚が短毛の犬とは明らかに違うというは確かなことです。

大型の長毛種を好まれる方の中には「格好いいから」という意見もありました。
大型、中型犬の長毛種で人気があるのは、ゴールデンリトリバー、フラットコーティッドリトリバー、ボーダーコリーのラフタイプという毛質の犬、バーニーズマウンテンドッグ、グレートピレニーズ、ボルゾイ、アフガンハウンドなどが身近で見ることができる代表的な犬種です。

もう少し小さなサイズになると、スピッツ、シェルティ、スプリンガースパニエル、コッカースパニエルなどのスパニエル系もみな毛が長いですね。

小型犬の長毛種で人気が高いのは、キャバリアキングチャールズスパニエル、巻き毛になりますがトイプードルも伸び続けるという意味では長毛種になります。他にも、ポメラニアン、パピヨンなどもそうです。チワワとミニチュアダックスなどは、もともとは短い毛の純血種しかいなかったものが、人為的な繁殖によって長毛種をつくったため、ロングコートチワワとロングコートミニチュアダックスがつくられるようになりました。

純血種の繁殖はどの時代も人の要求に応じて犬の姿形を変えてきました。その中で長毛種がこれだけ増えてきたというのは、それだけ毛の長い犬を人が求めた結果であるともいえます。
ところが、この長い毛は犬の歴史の中で人が手をいれていない本来の犬の毛とは大きく違います。

本来の犬の毛とは、犬の体を守る人の洋服にかわる部分です。「犬は毛皮着てるから暑いね」などという言い方をされることもありますが、実際そのとおりなのです。犬は毛という洋服を着ているからこそ、イヌとして人と離れて暮らしていたころにも、野外での活動の中で怪我から身を守ることができ、アンダーコートの発達で寒さから身を守ることができます。夏にはアンダーコートを落として、薄い夏用の毛に変えて皮膚を守っています。

話しが少しずれますが、夏のサマーカットをお勧めしていません。なぜなら、犬の毛を必要以上に短くしてしまうと犬は皮膚を守ることができなくなってしまうからです。犬の皮膚は人の皮膚とは違い、とても繊細なものでもあるのです。

さて、このかわいらしい長い毛ですが、言葉を変えていえばこの長い毛は「飾り毛」なのです。
「飾り」です。犬の体を守ったり犬が生きているために助けになるような毛ではありません。
犬にとって長い飾り毛になることの有意義なことは、人が好んで犬長い毛の犬を飼うようになることです。
多くの犬は人に食べ物をもらい飼われることによって暮らしを立てていますので、長い飾り毛を上手く活用しているのは犬にとってのメリットであることは事実でしょう。

ただ長い飾り毛は犬の暮らしを不快なものにすることにもなっています。
飾り毛のある犬たちの多くは脚や脚の裏部分にも飾り毛が生えています。
犬の足裏の飾り毛はトリミングのときにカットされているようですが、その飾り毛は指の間にまで入り込んでいますので、全てを刈り取ってしまうことはできません。バリカンで刈られてしまうと逆に皮膚がむき出しになって弱くなってしまいます。弱い皮膚は常に地面で湿度にさらされるため赤く変色してしまいます。皮膚炎などになりやすい理由のひとつにもなっています。

足裏の手入れが上手くいかないとそこには土がはりつきます。短毛の犬の場合にはマットで数回足踏みすればとれうような土がこびりついてとれません。長毛の犬になると外にでる度にお風呂場で脚を洗っている飼い主さんもいますが、お気持ちは察します。実際その犬がタオルで拭いた程度で室内にあがれば、室内のじゅうたんや畳で足裏の掃除をすることになり、じゅうたん側には泥汚れがぎっしりということになるでしょう。日本のような家屋では痛手が大きいですね。これは洋風の土足で家に上がる家であれば気にならないことなのでしょう。そのため、洋犬種では飾り毛の犬が増えたともいえます。この問題に西洋人がぶつかっていたら、この毛足の長い中型、大型の純血種たちは繁殖されつづけなかったと思います。

日本は都市環境が広がっているため、道路はアスファルトで公園も土ではない場所が多くなっています。散歩で歩いて帰っても長毛種の犬の足が泥だらけといった事件は起きません。さらに、小型犬が圧倒的に増えていますので、小型犬の場合には脚を洗うとか使い捨てシートでふき取るといった入念な作業によってきれいにされています。脚が小さいですから大型犬のような事件には発展しそうにありません。

山歩きをすると、この飾り毛がますます歩きづらくしています。山に落ちている葉や種、枝などがたくさんついてくるからです。特に杉の枯れた葉などは飾り毛に絡まってなかなかとれなくなります。その他の小さな種子も野生動物や本来の犬たちにくっついて移動するための方法として、ギザギザ構造になっています。少し大きな種子は大豆サイズから、小さなものになるとゴマサイズまでといろいろです。ゴマサイズのものになると脚の指の間の足裏の毛についてしまい、そのまま取れずに皮膚に刺さったりする不快な状態になります。飼い主が取り去ってあげなければいけないような毛であれば、その犬の毛は飾り毛であるということです。
山に暮らす本来の犬の毛はこれらの種子を一定時間は運びますが、歩く摩擦でとれたり、身震いで簡単にとれますので不快感を感じることはありません。

長い飾り毛についてしまうのは種子や枯れ葉ばかりではありません。実は大変なのは雪です。
大雪の日に飾り毛の犬が雪遊びをすると、その犬そのものが雪だるまになってしまうほど、雪の上に雪がついていきます。これは本当に不思議な現象ですが、毛質に油分がたりないため雪をはねることができないようです。

かわいくゴージャスな飾り毛に生まれたことで人に飼われるようになった反面、自然の中で克服しなければいけない現象については適応力が下がってしまったのです。毛に限らずこうした例は他にもたくさんあります。
犬を人為的に繁殖しているわたしたち人間は、人にとってメリットになることだけを見るのではなく、犬にとってデメリットになっている部分についても知る必要があると思います。犬たちの不快を知った上で、その不快な感覚を軽減させるために人ができる手入れについて考え、これから純血種の繁殖をどうしていったらいいのかを考える素材とすることができるからです。これは人ができることであり、人にしかできないこともあります。

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吠える、かみつく、言う事を聞かない、問題行動は犬からのメッセージ

なぜこの犬種を飼ったのかという理由に、「知人の犬を預かったらとても大人しかったから」という方もいます。正確には預かった犬が大人しいからという理由が、犬を飼うことは大変だと思っていたけど、こんなに手がかからず楽なのなら私にも犬が飼えそうだと思ってしまった、からかもしれません。

ところが犬を飼うのはそれほど大変なことではありません。特に犬は小型化の傾向があって、小さくなればなるほど問題も小さく思えてしまうからです。

たとえば、犬の吠える行動は他人に迷惑をかけてしまうので、犬を飼うときには心配になるものです。ですが小型化した犬はまずそれほど大きな声がでません。小型犬で大きな声が出るのはミニチュアダックスくらいでしょうか。ミニチュアダックスの場合には中型犬と同じくらいの声量で吠えるため、吠えることが問題になることもあります。

ところが、小型犬は室内に飼われていることが多いです。室内で留守番というケースも多いので、声量の大きなミニチュアダックスであっても、現在の音をシャットアウトできる壁や窓で頑丈に作られている戸建てでは、室内での吠えはあまり問題とされない上に、留守中に吠えているという事実を飼い主さんが知らないことも多いのです。

犬がとびつく行動についても同じことです。大型犬や中型犬のとびつき行動は、自分や他人もケガをする危険性が高まるので問題を解決したいと思う行動のひとつです。ところが小型犬のとびつき行動になると、同じ行動なのになぜか「喜んでいる」と勘違いされてしまいます。大型犬がとびついたときは不機嫌になったり、こわがる人間も、小型犬のとびつきに対しては「喜んでいる」と感じてしまうのは何故だろうといつも不思議に思いますが、それが一般的な心理というものなのでしょう。小さいものがピョンピョン飛び跳ねることはかわいいと思ってしまうのですね。これは思い込みという見方で本質を見失ってしまいます。本来の価値観を捨てて、もっと素直に行動を見ていくとその本質が見えるようになります。つまり、犬がなぜ飛びついているかという犬の心理(気持ち)が読み取れるようになってくるのです。

犬を預かったときに「おとなしい」と感じたのには訳があります。動物には、特に犬という動物には警戒心があって安心できる環境だと判断できるまでは、自分の本質や欲求を隠し静に行動して相手を観察するという能力があります。これは犬が生きていく上でとても大切にしている本能のようなものです。特に雑種犬や警戒心の高い日本犬はこの警戒モードを発揮しやすいので、一時的に預かった場所では大変おとなしい犬になってしまいます。保護犬を一時預かりしたときに大変大人しかったからそのまま飼うことを決めたら、しばらくしてなれるととても乱暴になって手が付けられなかったという例もあります。

人から見ると「猫をかぶっている」という行動にみられるでしょう。表面的には大人しくみえるのに本性を隠しているということです。相手のことを信用できないのですから、犬が本性を隠してもずるいとはいえません。犬にとっては生きるための術ですから、それを見抜けなかった人の方に問題があるということです。

裏を返せば、犬がおとなしくないとか、問題になる行動があるときには、犬が正直に環境に対して反応を示しているということなので、犬は素のままの自分でいるということです。それだけ自分を出すことができる環境であるともいえます。だから、おとなしい犬である必要はないのですが、犬が出している目立った行動はすべて犬の行動を通したメッセージなので、言葉としてちゃんと受け取ってあげましょう。そして犬が必要としていること、犬が安定するために飼い主ができることを提供してあげることです。それが犬のしつけとトレーニングです。

犬が小さくなって小型犬となってしまい、とびついたり吠えたり興奮したりする行動が「かわいい」で終わってしまっては、犬の大切なメッセージは伝わらなかったことになります。犬の不安定で興奮する行動は、「もっと落ち着きたい、もっと安心したい」という逆のメッセージです。

犬を飼うことは大変なことです。その大変さに真剣に取り組むほどに、犬との関係は変化してきて、犬ってこんなにすばらしい動物だったんだと気づくことができます。だから犬の問題行動は本当にチャンスだと思えます。犬のしつけやトレーニングが面倒だなと感じられる方もいるかもしれません。関係をつくっていくというのは小さなやりとりの積み重ねなので、時間がかかるのは当然といえば当然です。時間をかけずにつくった関係はとても浅くあっという間に離れてしまいます。

せっかく犬を飼うことになったのだから、飼い主として責任というような枠にはめずに、犬と暮らすことを思いっきり楽しもうと思ってください。それは犬で楽しむこととは違います。この違いがわかるようになったら、犬との関係は変わっていきます。とても楽しいですよ。

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子供嫌いの犬:犬の社会性は社会経験が基本

犬が子供が苦手になってしまうことがあります。

ここでいう子供とは、外で遊ぶようになる幼稚園児くらいの年齢から小学生くらいまでの年齢の子供をさしています。犬が最も苦手とする年齢です。

母親から離れて遊べるようになる活発な幼稚園児は、新しいものに関心を示します。犬や猫は小さな幼児が関心を示す対象となるのは自然なことです。

小学生になると犬は珍しい動物ではありませんが、かかわりを持とうとしてちょっかいを出す対象になったり、別の意味で動物を利用しようとする目的を持つこともあります。

中学生に入ると自分のことで忙しくなり、犬や猫に関心を示し続けるかどうかは個体差が出てくるでしょう。

動物に関心の高い中高生もいるし、さほど関心を示さない中高生もいます。

中高生が犬に関心を示したとしても、中学生になると犬に対する愛護の気持ちも育ってきています。

他者を思いやる感情も十分に芽生えていますので、犬にとって脅威になるような存在にはなりにくいのです。

3才から小学生くらいまでの年齢の子供に対して、犬が苦手意識を持つようになるのはなぜでしょうか。

その話に進む前に、子供が苦手な犬というのはどのような犬なのかを探っていきましょう。
「子供」という社会的な対象に、不安や緊張のシグナルを示したり、興奮や攻撃、逃走といった社会的行動を示すようになります。
具体的には犬が子供が苦手だと知らせる行動は次のような行動です。

子供の声を聞くと興奮したり吠えたりする
室内で子供の声を聞くと吠える
外で子供に対して吠える
子供を見ると唸り声を出す
子供を見て震えたり散歩の途中でも逃げ帰ろうとする
子供が抱き上げると震える
子供が近づくと逃げる、後ずさる
子供が手を出すと牙を当てる

これらの行動は、全ての子供に対して出るということもあるし、特定された個別の子供に対して出ることもあります。また、どういう違いなのかはわからないけど、こうした行動が出ることもあるし出ないこともあるといったこともあるでしょう。

いずれにしても、犬が子供に対してこれまでになんらかの経験を通して学習したことが、犬が子供が苦手であるというシグナルとして表現されるようになった要因です。特に生後4ヶ月齢までの社会化期に犬が経験したことは、のちの行動に強く影響していきます。

子供に対して犬が学んだ社会的経験というのは、さまざまな環境の中で行われるのであくまでも例としてしか紹介できませんが、具体例を挙げるとこのようなものがあります。

子供が子犬を抱き上げて歩いたり遊んでいたことがあった。
子供が子犬をおいかけて遊んでいた。
子供が子犬を膝の上に乗せてずっと抱いていたことがある。
子供が子犬とおもちゃ遊びをしていたことがある。
散歩中に子供が近づいてきて子犬を撫でていた。
来客としてきた子供が子犬を撫で回していた。
散歩中に子供が子犬に走って近づいてきた。
散歩中に子供が子犬にものをなげた。

これらの行動は、子犬が逃げたり隠れたりするチャンスを与えられずに、子供は子犬を玩具として遊ぼうすることから、子犬は子供が恐怖の対象となってしまうケースです。
子供が子犬とおもちゃ遊びをするというのは、対等な遊びであればとても良いのですが、遊び方が子犬の持っているおもちゃを取り上げてしまったり、子犬のくわえているおもちゃを激しく振り回しすぎたり子犬を吊り上げたりするような行動をしてしまうと、子犬は子供に対して乱暴になってしまうことがあります。

ご家庭に子供さんがいて、子犬のときに子供達と子犬を遊ばせていたこと経験があるというご家庭も多いのですが、実際に飼い主が子供たちと犬がどのように関わりをもって遊んでいたのかという監督をしていない場合には、子犬は子供たちに持ち上げられたり、追いかけられたり、からかわれるイジメに近い行為を受けていることもあります。

子供の方には悪意がないため、子供達は楽しかったまた遊びたいと思っているのです。
このとき、子供たちは「子犬がどのような気持ちや感情をもっていたのか、子犬は怖がったり嫌がったりしていなかった。」といったことを受け取る力が育っていません。小学生にもなると「人に対しては」共感力を発揮できる年齢です。友達の気持ちを配慮できる子供達であっても、犬に同じように接することができるとは限らないのです。ご家庭の中で飼い主である大人が、どんなに小さな年齢の子犬に対しても、どんなに小さなサイズの犬に対しても敬意をもって対等に接する姿勢が見られない限り、子供達はこのことを学ぶ機会を持ちません。
※ここまでの子犬の部分は犬と当てはめていただいても同じ内容のものです。

大人は犬をかわいがって育てているつもりなのかもしれませんが、その接し方が大人にとっての玩具のようなただ撫でたりダッコしたりするかわいがるだけの存在であれば、子供は自分たちも同じように接していいのだということを大人をみながら学んでいくのです。
大人が犬に対して、犬にも成長の機会を与える必要があり、環境をうまく管理して成長と発達ができるようにサポートとしてあげたいという姿勢で犬育てに取り組むようになると、同居の子供達は協力してそのことにいっしょに参加してくれるようになり、そしてルールも守ってくれるでしょう。そのことが、犬と子供がいっしょに成長するということです。

子供さんでも犬に興味のある自宅に遊びにくるような子供であれば、犬との接し方についていっしょに学ぶ機会を持たれるといいでしょう。子供の世話を犬にまかせるようなことをしておくと、犬が子供が苦手になるという経験をすることになりますので、それはしないでください。
公園で接する子供たちの教育については、すべてを引き受けることもできません。ご家庭にはご家庭の教育というのがありますので、子供達が犬に近づいてくるのをやさしくでもはっきりと断ってください。

公園で犬をみたら「さわってもいいですか。」と尋ねてくることに対しての意見は過去ブログで紹介しました。
触ってもいいですか?をご覧になってください。

厳しい意見だと思われるとは思いますが、こうして子供に犬を触らせることで、子供が犬ともてるかもしれない絆をもつ機会を失いたくないからです。なかなか触ることができない、でもいつか犬の方からゆっくりと友好のシグナルを出してくれるまで辛抱強く待とう、という気持ちを育てていきたいのです。

子供が苦手な犬が増えていると感じています。
子供と犬との関わり方が難しくなっていると思います。
子供の教育の方向性はいつの時代にも変わり続けているのですから、これからもっと本質的な犬という動物と子供達が本当のふれあいを実現するようになれることに対して、希望を持ち続けたいと思います。

mde
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落ち着きをとりもどす自信のある犬とは

昨日のブログで犬の興奮度の高さを、活発な活動性と間違えてしまうことがあるということをご紹介しました。
犬と人は動物としては哺乳類という点で一致していますが、種としては別のものなので同じような精神的な状態を持っているのかどうかはわかりません。

犬は人とは違う動物だというのは事実です。犬が犬という種として備えているものを見る必要があります。
犬は同種が集まってひとつの群れを形成し、その群れを維持ししてくために高い社会性を身につけている種であることは、犬の行動観察をする中でわかってきています。犬という動物は人が飼育するものだと思われていますが、それは世界中ではごく一部です。この話についてはまた後日ここで紹介していきます。

とにかく、犬は高い社会性によって群れを維持していくことができ、その高い社会性を保っているのが犬の社会的なコミュニケーョン術なのです。犬が群れを維持するためには、自分の状態を「群れ」にすぐに伝達する必要があります。
興奮しているのか、緊張しているのか、危険が迫っているのか、、いろいろです。そして群れを長く維持させていくために、お互いの過度な興奮や緊張は、互いに抑制しあって爆発しないように、良い影響を与えられるようになっています。それは、成犬が子犬の過剰な興奮を抑えるという形で行われることもあるし、1頭の犬が逃走しようとする状態に入ると、その犬の危険を察知して攻撃して押さえ込もうとする行動が生じるなど、様々な社会的コミュニケーションとして発達していきます。

これらの興奮、不安、緊張といったバランスの崩れは、群れの仲間によってなだめられ、抑制されるばかりではありません。犬の成長にとって最も大切なのは、自ら抑制、つまり自制をする力が育っているかどうかということです。未熟な動物は自制の力が育っていません。自制力の発達には時間がかかります。一日にして出来上がるわけではなく、抑えるという経験を重ねながら、自制というのを自ら育てていくのです。

ここで書いている犬の自制は、人との距離をとってイヌという動物だけの群れで生きていく場合には、絶対に必要なことです。たとえば、関心のあるものを見つけたとします。そのときに、急に走り出したり興奮したりすれば、事故にあって怪我をしたり命を落とすことにもなりかねません。自然界ではそうした動物は生き残れません。そのため自然淘汰という形で、自制の育ちやすいイヌたちが生き残ってくるということになります。このしくみは、わかりやすいですね。

ところが、人が繁殖したり飼育している犬は違います。自制ができなくても限られたスペースの中やリードで拘束された状態で自ら興奮を抑えるのではなく、物理的な道具によって管理されることで危険から守られているのです。道路の向こう側に他の犬を見てリードを引っ張りながら2本脚で立ち上がって吠えている犬がいるとします。飼い主さんは「リードがなくなったらどうするのだろう」と思われるかもしれません。この犬には自制というブレーキはついていませんので、リードが切れてしまったら車通りの道路をそのまま走る可能性がとても高いです。実際にはこうした交通事故も多いのです。

人の飼育管理下で犬に自制を育てていくのは大変なことです。決してできないとはいいません。ただとても時間を必要とすると共に、飼い主の犬への理解と対等な態度が要求されるのです。
特に人為的繁殖によって幼稚性を高められた犬や、人の接し方によって未熟性を備えたまま2才、3才になってしまった犬には、とても時間のかかることです。
それでも、犬にとってどちらが毎日を過ごしやすく豊かに生きていけるかというと、自制のできる動物ではないでしょうか。常に誰かに自分の行動や気持ちをコントロールしてもらわらなければいけない状態で日々を生きていくということを考えたとき、自分であったらどんなに不安できつい毎日になるだろうかと思ってしまいます。不安や緊張といったネガティブな感情だけではありません。自制のできない動物にとっては、喜びや楽しみといったものも他に依存してしまうことになります。犬たちにもっと自由な世界で生きてほしいと思うのです。

今までそんなことを考えたことはなかったけど、なんとなくわかるような気がするという飼い主さんの犬は、きっと飼い主さんを喜ばせることができる、とてもよくいうことを聞く利口な犬なのかもしれません。飼い主さんを喜ばせているのは、もしかしたら犬の自制が発達する環境が整わずに、飼い主の喜びが自分の喜びになっているからかもしれません。

犬の自制についてのはなしは、すぐにはわかりにくいものです。すぐに自制のできる犬に変えることができないため、自制できる犬と接するという機会を得られにくいからです。こうしてブログで紹介しても、なかなか伝わりにくいということは覚悟しています。また、変わった考え方だなと思われるかたもいらっしゃるでしょう。きっと、変わった考え方なのです。ですが、そんな考え方や犬とのつきあい方もあってもいいと思います。飼い主さんには選択権があります。今の日本の法律の中では、犬には残念ながら選択権は与えられていません。犬だったらどう思うだろう、自分が犬だったらどう生きたいだろう。いつもいつも考えています。これからもまだ悩み続けたいと思います。


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