グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬のストレスを回避する力

ストレスをいうと、うちの犬にストレスなんかあるはずがないとか、ゴハンを食べて寝ているだけなのに、犬になんのストレスがあるっていうんですか?といわれることもあります。

ストレスはどのような動物にもあります。ただ、どのような状況がストレスになるのかとか、どのようにストレスを表現するのかということが、人と犬の動物としての違いや、犬でも個体によって異なるということです。

ストレスは受け続けるだけでなく、動物はさまざまな方法でストレスを回避しようとする行動をしています。このストレスを回避する力も、犬の個体によって違いがあることがわかります。

どんな犬もストレスを感じる状況といえば、「暑さ」と「寒さ」。
犬が暑さを感じたときに、日陰に移動したり、冷たい床の上に移動するのは、暑さというストレスから回避してよりよい環境を選択する力です。同じように、寒ければストーブの前へいたり、コタツに入ってしまうということもあります。
この温度によるストレスから回避するための行動を全ての犬が行えるように思うのですが、まれにこの回避行動ができない犬がいます。たとえば暑い場所から動けずに熱射病になってしまうこともあるのです。

人の場合にも似たような事故があります。暑さを感じることができず、室内で熱射病にかかってしまったという老齢者に関するニュースを耳にされたことはないでしょうか。

犬の場合には年齢には限らず、暑さを回避できないどいう行動が実際に起きていることは事実です。老齢犬や子犬にも見られるし、精神的に未熟で鼻を鳴らす行動が残っている成犬にも同じような現象が起きています。

どうしてこのようなことが起きるのかについては慎重にとらえたいと思いますが、日常的に不安定な行動が出ている犬に、ストレスを回避できない行動が見られることがあります。
老犬や子犬は、いろいろな場面でサポートが必要な年齢です。そのため、温度によるストレスを回避できない状態であれば、それについてもサポートを行う必要があると思います。
成犬で自主的に行動できる環境を与えられているにもかかわらず、暑さや寒さを回避できない犬については、なにか行動制限が強くかかっている状態を知り、飼い主として改善できることについて考えてみてください。

ストレスを回避する力は、動物にとって必要な力です。
どの犬も適切に持つ事のできる力を発揮できる環境を整えていく、これも飼い主の役割だと思います。

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子犬のにおい

犬は乳歯から永久歯に生え変わるのが生後5ヶ月~6ヶ月齢くらいです。この時期が子犬といわれる時代です。そのうち、生後6ヶ月までを発達段階に応じてさらに細かくわけることができます。生後2ヶ月齢が人の3歳くらい、3ヶ月齢で6歳くらい、そして永久歯が生えるころは小学校高学年くらいです。

生後2ヶ月齢くらいまでは、毛質は成犬のような硬い毛ではなくふわふわとした毛です。生後3ヶ月くらいになると艶のあるやわらいけどしっかりした毛になってきます。このふわふわとした幼い子犬特有の毛の時期、おなじように子犬の特徴であるのが、独特の子犬臭です。子犬と接する機会があれば、その独特のにおいにビックリされることもあるでしょう。犬の臭いがするからとシャンプーされてしまうことがあるようですが、子犬にとって大切な臭いだということをご存知でしょうか。

独特の子犬臭、どういう目的のためにあると思いますか?
犬、臭い、臭いつけ、役割。こういうキーワードをあげてくると何を想像しますか?

犬が臭いでつくる世界を大切にしています。犬はお互いの臭いで相手を認識することができ、排泄の臭いつけによって自分のテリトリーを獲得したり、他の犬とのコミュニケーションをとったりします。ということは、子犬の発している臭いもなんらかのメッセージであるということです。それも、他の動物に対するものではなく、同種の犬に対して発せられるメッセージです。

この臭いが子犬特有なものであることから、「自分は幼い犬である」ことを知らせるメッセージであることがわかります。
この臭いは大変強いものです。子犬が少し離れた場所にいても、臭いで存在を知らせています。でもこの年齢ではまだ群れのテリトリーをまもれないし、個体のスペースをまもることすらできません。子犬は成犬の後をついて回ったり、近くで休んだり、子犬たちだけのときには巣穴に引っ込んだりします。

臭いは成犬に居場所を知らせるためにも役立っているのでしょうが、実際には親犬は子犬の行動を強く制限したりはしません。子犬が親犬やテリトリーから離れすぎてしまうとキューキューと鼻を鳴らすため、音に応じて子犬を迎えにいくという行動をします。こういうときには音の方が合図になっていますが、子犬を探すのに役立つ臭いではあるでしょう。

子犬の独特のにおいはもっと別の形で活用されています。親犬でなくとも成犬と子犬をあわせると、成犬が成犬と対面させたときとは明らかにことなる反応を示すことがわかります。同じ群れの仲間でなくても、すべてのおとなの犬たちは子犬を攻撃することはありません。

おとなの犬の子犬に対する反応はさまざまです。たとえば、子犬をグループに受け入れる犬、子犬を無視する犬、子犬をさける犬、子犬がそばにいるとよだれを垂らすような犬もいます。子犬は成犬にとって歓迎されるというよりは、どちらかというと避けられる存在になっているようです。近づけさせないための威嚇をされることはあります。ですが成犬のような扱いを受けることはまずありません。

もちろん、ストレスが過剰となり普通の精神状態でない犬にとっては、子犬はストレスの塊です。成犬がルールを破って子犬を攻撃することもありますので、知らない犬と子犬を接触させることはおすすめしません。

子犬のにおいが消えるころをよく観察してください。子犬が乳歯のころに子犬のにおいは消えてしまいます。成長と発達の過程を見逃さず、飼い主としてその犬の月齢にあった接し方を心がけると子犬は安定した性質に育ちます。

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成犬を迎えるための譲渡会

熊本県動物管理センターへボランティア活動に行ってきました。寄贈された中古の犬舎を運搬し、センターの犬たちのお世話を少しだけお手伝いしました。

明後日、同施設内で熊本県が主催になって行われる譲渡会をひかえ、職員やボランティアのみなさんもその準備に忙しい様子でした。熊本のローカルテレビの取材も入り、被災後の動物管理センター内が多少混乱した状態を継続していることを、一般のみなさんにも知っていただくための情報提供も行われているとのことでした。

譲渡犬の中には、生後8週齢くらいの子犬たちも含まれています。動物愛護施設や保健所から犬を譲り受けようとする方々の多くが、成犬よりも子犬を希望されます。子犬の方がなつきやすい、かわいい、愛着がわくというのがその理由のようです。

でも、犬を迎えるには子犬よりも成犬の方がいいという点もあります。
たとえば、子犬には子犬を育てる環境が必要です。昼間は家族が外出してしまい、子犬がひとりになるのは、子犬を育てる環境として不十分です。子供さんに子犬育てを任せることはできません。子犬を育てる環境を整えていないのに子犬を迎えてしまうと、犬の成長と発達に影響を及ぼし、成犬になってから問題行動が起きる可能性があったり、人との接触が難しく、庭につないだまま飼うことになってしまうかもしれません。

その点、成犬は一定の時間であればひとりで留守番することができます。犬の性質も表面化しているため、どのような行動が出やすいのかを予測することも可能です。成犬の習慣化した行動には、好ましいものと、好ましくないものの両方がありますが、それらを事前に知った上で、犬を迎えることができるのです。そのため、自分が犬を迎えようとしている環境に、一番適してる犬を迎えることが可能です。

成犬の場合には、多頭で飼育されている環境では行動を抑えていることがあります。おとなしかったりあまり動かない犬が、一頭になると変わってしまうようになることもありますが、犬が変わったわけではありません。変わったのは環境です。
こうした間違いを防ぐためには、一頭ずつ個別に扱われる状況をつくる必要があります。ケージや犬舎をわける、食事をわける、一対一で接する、一定のテリトリーを与えるなどです。施設内でも可能な限りこれを行うことができますし、保護団体が一時預かりをする間にこうした環境を整えて、十分なケアをされていることもあります。

犬をどのようなところから譲渡するのかによって、成犬の見方は変わってきます。犬を見極める自信のない方は、信頼できる保護団体が預かっている犬や、ボランティアやプロのアドバイスを受けることが可能な環境で、犬との面会を行ってください。

今回の熊本の動物管理施設のボランティアを通して、私も様々なことを学んでいます。地震をきっかけに譲渡が必要な犬が急増したことによって、混乱を生じていることは事実です。ですが、これをどのように解決することが動物たちにとって有益であるのかを考える必要もあります。被災時とはいえ、人が犬を飼うというところから始まったことです。

譲渡のシステムもまた、人が犬を飼うために必要なシステムです。犬と暮らしているすべてのみなさんに知っていただきたいシステムです。これらのシステムはまだこれから整えていく必要があります。すでに犬と暮らしている方も、この譲渡に関するシステム作りに関心をもって参加してください。


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子犬と庭あそび

子犬が生後5ヶ月くらいになってから、トレーニングの相談を受けて家庭訪問に伺うことがあります。散歩に出ようとしてうまくいかなかったり、子犬の室内飼育から外飼いに変更しようとして、外で吠えるようになるなどの問題の相談が多いですね。

お話をうかがうと、子犬をずっと室内に入れたまま飼育していたといのです。ワクチン接種が数回済むまでは、外には出してはいけないというアドバイスを受けたり、そのような事がしつけ本に書いてあるということでした。

子犬を室内に閉じ込めておけば、細菌やウイルスから子犬を守ることはできるでしょう。でも、子犬を室内に閉じ込めてしまったことで、子犬の脳の発達を阻害することになるとしたらどうでしょうか。

子犬脳のは刺激を受けて発達していきます。その発達の期間は非常に短く、生後4ヶ月になると脳の8割が形成されるという研究結果もあります。刺激を受けて行動を起こすことをくり返しながら子犬の脳の神経が伸び、脳が形成されていくのです。

ちょっと想像してみてください。この時期に、子犬が平坦で狭い空間にいれられていたとしたらどうでしょうか。自分で排泄に行く環境もなく、サークルの中で排泄をしなければいけないとしたら、子犬の環境把握はどうなるでしょう。外の臭いを嗅ぐこともなく、室内の食べ物や香料の臭い、人の臭いに囲まれて過ごしたとしたら、行動の制限が与えられて何かしようとすると飼い主が抱き上げるという行動をしたとしたら…。
子犬期のこうした閉鎖的な環境は、成犬になったときに自律行動ができず、ストレスを回避することが難しく、パニックを起こしやすい性質になる可能性が高いのです。

子犬は応答性のあるものが好きです。ですが、動くおもちゃ、ネット、ケーブルなど室内にたくさんのオモチャを置いてあげれば、脳を発達させるのに十分でしょうか。子犬の脳を本能的に刺激させて満足を与えてくれるものの対象を人工化されたものだけにすると、子犬の環境への適応力は低いものになります。

脳の発達は哺乳動物としての人と同じですが、必要な刺激は種としては異なることを理解する必要があります。
子犬は土のにおいを嗅いだり、草を口で食べてみたり、枝にジャンプしたり、草の上を転がったり、穴をほったりして遊びます。これらの臭いは、動物として犬を安心させる臭いのメッセージであり、泥を体につけて遊ぶことも意味のあることなのです。その意味については、ブログ記事「犬の隠れる術「カモフラージュ」で紹介しましたのでご覧ください。

子犬を外に出すのは怖いという飼い主さんも、整備した安全な自分の庭や他の犬の使用していない知人の庭などを、子犬の遊び場所として活用することができます。もちろんリスクもあります。ですが、子犬を閉鎖的な環境に閉じ込めることによる性格形成に対する影響や、環境によるストレスによりで免疫力が落ち、重篤な病気に感染する危険性も十分にあるのです。子犬が部屋の中で急に走り回ったり、クルクルまわるようになったらそれはストレスのシグナルだと受け取ってあげてください。

今の時代にも、庭で生まれて庭で育っている子犬たちもいます。子犬の環境に対する考え方は多様化したというだけで、何が正しいのかという応えを出すものでもありません。あとは飼い主さんの選択です。選択をするためには、本やネットの情報だけではできません。いろんな犬の育ち方について関心をもち、いろんな選択肢があることを知ってください。

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犬語セミナー<変化の兆し>

雨が続きますね。雨の日なりの動物としての過ごし方で、一番落ち着くのは土や木々の葉におちる雨音を聴くことでしょうか。

今日は、今月2回目の犬語セミーを開催しました。

ビデオに登場のBくん(仮名)は、数年前にトレッキングクラスに参加し始めたころはロングリードをつけた行動中に、興奮したり、リードをひっぱったり、制御すると威嚇する、リードを短くするとパニックを起こすなど、非常に不安定な状態でした。ところが、飼い主さんの真剣な取り組みによって、昨年くらいから、グループ行動が比較的スムーズに行えるようになり、少しずつ変化が見えはじめていました。

Bくんの他の犬との新しい対面は久しぶりのため、対面の様子がどのようになるのか、B犬を知る飼い主さんたちは楽しみにしていたようです。
さて、ビデオの映像を見た飼い主さんたちは、驚きを隠せませんでした。

今まで、犬を見ると興奮したり、逃走しようとしたり、とびのいたり、硬直したりとストレス行動を多発していたBくんが、落ち着いた状態で対面を果たすことができたからです。

犬と犬が対面した際には、必ずお互いの関係性を示すような行動が見られます。それは関係を作ろうとしない行動のこともあるし、関係を作ろうとする行動のこともあります。わかりやすい言葉では、対立する?もしくは対立を避ける?という姿勢、そして関係をつくる場合には、どちらが優位かというシグナルを出します。優位性については、オスとオスの場合にはわかりやすく、メスについては不安定でわかりにくい場合もあります。

対立するといってもいきなりケンカをするわけではありません。どちらかがどちらかを追い出そうとする行動をしたり、一方が対立的な行動をして、一方が対立を避けようとして逃げようとすることもあります。

どちらが優位か、という関係性をつくることができない場合には、対立をさけるシグナルを出して緊張緩和を維持しているということもあります。犬の性格として、リーダーや班長(小さなリーダー)といった役回りにも持たない犬のほうが数は多いのです。また、飼い主の力をかりて優位を主張している犬が、実は飼い主さんがいないと全く優位性を示さず気配を消してしまうこともあり、飼い主との関係も持ち込まれるため、犬と犬の関係はとても複雑になっています。

話しを元に戻します。
このBくんがどうしていたかというと、回避行動をとりながら相手との距離をとろうとする行動をしていました。過去に見られた硬直やパニック、逃走行動がみられなかったのです。対立を避けるシグナルとして出るものに、落ち着かせ行動というシグナルがあります。落ち着かせ行動は自分や相手の緊張をとくために出てくるもので、次のようなものがあります。耳をかく、顔をそむける、片足を軽くあげる、ゆっくり歩く、回避行動をする、においをとる、身震いをするなどです。この落ち着かせ行動を出すことによって、自分の緊張をといていき、その緊張の緩和が相手にも伝わっていくというものです。

犬は社会性が高い動物だということはなんども書いてきました。社会性が高いということは、社会的なコミュニケーション力が高いということです。私たち人間はシグナルを視覚的にしか捉えることができません。ですが犬と犬にとって一番重要がとれるのは臭いなのです。
視覚的シグナルしか受け取れないなら相手のことをじっとみていなければなりません。みていなくても顔を背けていても相手のことがわかるのは、臭いの情報を得ることができることと、相手の気配を感じることができるからです。やっぱりここでも気(エネルギー)の受け取りが行われていることがわかります。

また社会性が高いというのは「仲良し」とは違います。犬と犬は、職場の仲間のイメージでとらえると分かりやすいでしょう。役割分担があって、秩序をそなえて行動し、安心安全を獲得する。職場のあるグループが社会的に円満で、互いが役割を認識して行動し、安定感をもって仕事を行えば、そこに所属する社会的満足感というものが得られると思います。Bくんも、グッドボーイハートという臨時のグループであっても、グループの中で得られる安定を得て社会的欲求を満たすことで、自宅に帰ってひとりになってもその安定度が継続しているのです。もちろん、飼い主と犬にもこの社会的関係は大切です。

こうした変化も、今までに不安定な行動をした中でも、グループの犬と飼い主さんが根気強く見守り続けてくれたおかげだと、有難く思います。こうした変化はゆっくりとしか起こらないのですが、起きたときは本当に奇跡だなと思います。犬の精神に深く刻まれている高い社会性。その社会性に触れる瞬間は特別の時間です。

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おすすめの犬の本・コンラートローレンツ「人イヌにあう」

中学生のときに犬の訓練士になりたいと思ったときから、犬の本をたくさん読みました。30年以上前、覚えているのは犬の行動学に関する本はほとんどなかったということです。犬のしつけ本すらありませんでした。犬は外で飼うのが当たり前で、咬む犬は飼えないという判断が当時の常識だったことや、室内飼育の犬が少なかったことが、しつけ本のなかった理由なのかもしれません。

しばらくすると、海外の動物行動学者で、オオカミやジャッカルなどのイヌ科動物を観察対象とした行動学の翻訳本が出版されるようになりました。これらの本が出たらすぐに購入して読みふけりました。逆にペットの増加で急増した犬のしつけ本のほとんどが、大変つまらないものばかりでした。犬の本質にはふれない、対処法的なものばかりでしつけ本の危険性を感じたものです。

今や膨大な犬の本の中で、この本だけは自信をもっておすすめすることができます。

動物行動学者のコンラート・ローレンツ博士の著書「人イヌにあう」

この本は古典です。1966年に翻訳された初版が出版されました。犬の本がすくなかった私の学生時代にもあり、いち早く手にとり読んだ本です。ところがその当時、まだ犬のことを理解できていなかった私にとっては、この本はなかなか難しい本でした。他の行動学の本と異なり、ローレンツ博士が自分のイヌやネコとの関わりの体験を元にして書いた、動物の行動学に、人と動物の関係学が含まれた内容となっています。

人と動物の関係学については、のちにこの分野が確立されるようになり、動物行動学とは別の研究分野となってさまざまな本が出版されています。動物の家畜化の過程や、ペットの人に与える影響などについて書かれています。

ですがローレンツはずっと以前から、イヌとネコは他の家畜化された動物とはことなる動物として分類していたようです。本の冒頭にも、友人からイヌとネコの本を別々に書くように忠告されたことが記述されています。動物行動学として考えれば、イヌとネコは別々の動物ですが、ローレンツ博士がここで伝えたかったことはそれだけではなかったことが、イヌとネコのことをいっしょに書いたことからも伝わってきます。

私は今でも時折この本を読み返します。イヌという動物のことを理解すればするほど、この本のすばらしさを共に理解することができるようになり、少しずつだけど近づいているという感覚を得られて自分の道を確認することができます。そして、ローレンツ博士のいう「イヌ」が減っている危機感もつのらせています。この本は古典であり真実です。

本からはコンラート・ローレンツ博士の動物に対する愛を感じます。それが彼がイヌやネコ、他の動物を正しく見ることができた姿勢なのだと感嘆し、自分もそうありたいとそこを目指しています。

イヌを心から愛するという姿勢を持っている人なら心に届く本です。。読んだことがない方はぜひ、読んだことがあるけどあまり覚えていない、という方はもう一度読んでみてください。

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犬に会わせた方がいいの?<他犬への社会性>

犬に「会わせた方がいいのか、会わせない方がいいのか」という質問を受けます。
この質問は、一般的ではないので考えたこともなかったという方もいるでしょう。
犬のコミュニティのようなものがSNSなどで知られるようになって、犬に会わせたいという方が増えてきているのかもしれません。

犬が犬と過ごすことは、飼い主さんのライフスタイルや犬を飼う目的によって全く異なります。犬が犬と「出会う」状況にはこのようなものがあります。

散歩中に互いにリードをつけて犬とすれ違うくらい
親戚の犬にたまに接触させる
他の犬と近づくことはない
散歩中にリードをつけて鼻をつきあわせるくらい
友達の犬といっしょに出かける
ドッグランで他の犬と過ごす

散歩中に犬同志が鼻を付き合わせる程度のことをするか、もしくは犬に近づけられないという方も結構と多いと思います。

犬が犬と出会う風景の例をあげます。犬にリードをつけていない時代に、犬が各自のなわばりをうろついています。普段からなわばりが明確なので、どの犬がどのように通行したのかという情報を犬は知っています。避けたい犬は避け、避ける必要のない犬は避けない。出会えば対立もある。メス犬を探していればその臭いを追跡してたどり着く。そういった単純な出会い方です。

ところが、最近では犬にお友達を作らせようという飼い主の愛情から、犬と犬を複数でいっしょに過ごさせる場所や機会が増えています。でも飼い主の準備した「会わせる」という行為が犬の負担になることもあります。

リード付きの犬は、公園などで犬と出会ってしまうと避けることができずに、犬と犬は互いに近づいていくことがよくあります。飼い主さんは犬と犬が仲良しだと思い込んでしまいます。これらの行動は、リードという道具によりなわばりが不安定になり、犬に不自然な行動を強いられていることで起きているものですが、このような不自然行動がたくさん見られます。

ドッグランや他のコミュニティでも同じです。多数の犬が同じ場所に入れられて柵があって逃げられない状況下の場合、犬たちの行動を十分に監督する必要があります。自分のテリトリーでない場所でしかも逃げる場所もない、そのような場での犬の行動が不安定であることに気づいているでしょうか。

どのような状態でも、犬の行動をよく観察してください。犬の行動はとてもシンプルで読み取りやすいのですが思い込みによる間違いは多いものです。走り回っている、飛び跳ねているのを犬が喜んでいると思って放置すると、いずれこの犬は、他の犬に対してストレス行動を示すようになるかもしれません。

犬は犬とコミュニケーションをとるときに、はじめて自分が犬である機能性を発揮するため、犬との関係作りというのは、犬の成長において大切なことです。ですがそれは「あわせる」という単純な行為でもなく、興奮させるということでもありません。

犬と犬のコミュニケーションには、犬の性格や犬同志の相性だけでなく、日常生活のストレスや飼い主との関係性が強く反映されています。動物のコミュニケーションとして自分たちに置き換えて考えると、生活のストレスや家族間の関係性や日常の行動が、他者とのそれに影響していることを理解していただけると思います。

このことに関しては、単純に説明できないないのですが、注意してすすめていただくためのポイントだけを紹介します。

まず、犬と犬は会わせるのではなく、関係を作るのだということ、そして、その関係作りには、年齢や性格や経験によって、それぞれの関係性ができますが、全てが「仲良し」にはならないのだということ。関係作りには十分な時間と環境が必要です。さらに、それぞれの犬の飼い主と飼い主の関係も反映しています。

こうした条件で、犬と犬の関係作りを支援しようと思ったら、お友達や家族間の犬と犬が最も可能性が高いということです。お友達といってもグループ行動は危険です。一対一で信頼関係を結べるようなそんな関係作りをすすめてください。

最後に飼い主さんの目的をはっきりさせてください。犬に「会わせたい」と思うのは、自分の犬に犬のお友達が欲しい、という理由からでしょうか。もしそうなら、自分の犬の社会性をまず知ってください。他の犬と並んで写真を撮りたいのであれば、犬はそれを望んでいるのかを考えてください。

少し厳しい意見ですみません。子犬のパーティや犬と会わせる会に参加した経験が、犬の社会性を後退させることもあります。飼い主自身が学び、現実をきちんと見れるようになれば、やるべきこともはっきりしてきます。犬語セミナーなどのビデオ勉強を通して、客観的に細かくシグナルを観察しながら犬と犬のことを学ぶ機会をつくっていきます。「理解すること」これが一番の気持ちです。


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もしもマムシに咬まれたら

七山を数日離れて戻ると、草刈したはずなのになぜ?という状態になっていました。この梅雨の時期、刈っても刈っても延びてくる雑草。その生命力には驚くばかりですが、気持ちが負けそうになることもあります。「あとは野となれ山となれ」というコトバの感覚が、山暮らしにより身にしみて分かるようになりました。

梅雨の晴れ間に都合よくトレッキングクラスが開催できました。わんこ山の下刈りをお願いしたばかりだったのでコース変更でわんこ山散策となりました。下刈りというのは、まだ成長しきっていない雑木を育てるために、雑木の間に生えてくる成長の早く高い雑草を刈り込んでいく作業です。私も手をいれますが、梅雨時期になると一気に伸びてしまい、素人では思うようにいきません。それで、下刈りをお手伝いしていて、おかげさまで雑木はスクスクと成長し、山は健康に育っているようです。

下刈りをお願いしている方はご近所にラブラドルリトリバーと暮らしています。子犬のころから七山のきれいな空気と水と空間のある環境で暮らせるなんて素敵ですね。そのラブちゃんとご家族が立ち寄られてお野菜をいただきました。少し前にマムシに咬まれたと聞いていたのですが、腫れもほぼひいてとても元気な様子でした。

山歩きや畑近くの散策でマムシと遭遇する確立は非常に高いです。草むらで何かの動く気配があり、顔をつっこんだり、脚を踏み出したりしてマムシに咬まれる可能性も十分にあります。「マムシに咬まれたらどうしたらいいですか?」と聞かれることもよくあります。

マムシに咬まれるときは突発的なので、瞬間なにがあったのかわからないこともあります。マムシに咬まれたとわかる理由の一つ目はすごく腫れてくるということ、二つ目は、咬み跡が穴が開いたように小さいけどはっきりとした傷があることでわかります。

腫れは、時間の経過と共に少しずつ進むので、数十分にかけてゆっくりと、かなり大きく腫れてくるでしょう。咬まれた傷から出血し少しずつですが継続します。毒が体内に少し入ってくるのを防ぐため免疫反応が高まり、息遣いが荒くなってくることもあります。最初はゴハンも水も取りたがらず、じっとふさぎ込むようになるか、犬によっては土の上にいたがることもあります。体は毒素をできるだけ外に排出しようとするため、嘔吐するような症状が出る事もあります。戦っているんですね。

いずれも自己治癒力のなせる業です。治癒反応は、犬も他の動物のようにとても高いなと思います。人と暮らして長く、動物力を落としているように思えるのですが、犬という動物の底力はたいしたものだと関心します。腫れは人間よりも少なく、食欲の快復も早く、2日目には何かを口にするようになり、行動も快復に応じ普通に動くにようになります。

犬は治癒反応を出しながら快復へがんばるのですが、飼い主はどうしたらいいのか、というのがみなさんの知りたいところでしょう。犬がケガをしたときにどのように対応するのかには、飼い主さんの価値観や経験が強く反映されます。よく「病院に連れて行ったほうがいいのか」尋ねられるのですが、それを私が決めることはできません。私だったら、と答えるしかなく、飼い主さんのしたいようにしていいのですよ、ということです。

マムシに咬まれたら、私だったら病院へは連れていかずに様子をみます。それは私が自分の犬が自律して行えることに対しては、それができる環境を整えたいと常々思っているからです。特に自然環境の中で、犬として生きていたら遭遇する確立の高い昆虫やヘビなどに咬まれることについては、犬の体もそれに対する機能を備えていると信じていますし、毎日の生活の中で犬である過ごす時間を大切にしていれば、犬の動物力は見えてきます。

でも、普段から犬という動物のことを知らなかったらとか、また、下痢をしたりゴハンを食べなかったらすぐに動物病院へ連れて対応される飼い主さんには、病院へ連れていかずに様子を見るということは難しいことです。またストレスのかかる生活をしている犬は、何事においても無気力なる傾向があります。体が戦う用意があるのかどうかと不安を感じることもあることも事実です。

そして、犬にとって一番難しいことは、自分のグループの基盤である飼い主が落ち着かず、不安で、悲しげな顔をして緊張していることです。だから、病院へ連れていきたいと思うのならそうしてください。犬のためにというよりは、自分を落ち着かせるためにという理由であっても、結果、犬も落ち着きます。犬がケガをしたり症状が出たのが、病院と連絡のつかない夜間や土日に出るのであれば、夜間対応する病院を事前に把握しておくといいでしょう。

それよりも、常日頃から犬が犬らしく過ごせる時間や環境、関係性を大切にしているかどうかを考えてみてください。犬らしさがわからないのでしたら、犬ってどんな動物なんだろうという素朴な質問をもって学ぶことをおすすめします。まずは思い込みを捨てること、これが最初の一歩です。

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自然療法セミナー

今週予定していた熊本でのお手伝いが高速道路が不通となってしまいました。また仕切りなおして、寄贈いただいた中古の犬舎などを、早く現地に届けたいと思っています。

ボランティアというと特別のことをしているように思われることもありますが、人にほめていただいたりお礼をいわれるようなことではありません。ボランティア活動を通して、普段は関わりのない方々と話す機会を得られたり、日常とはことなる現場を体験したり、新たな出来事について考えたりと、活動を通して得られるものは、どれも自分にとって宝になることばかりです。その中で、自分が十分に役立っているかどうかについての評価は常に自己反省が必要とでが、日々の仕事を含める基盤をしっかりと軸にしながら、できることをチャレンジさせていただいています。

熊本地震の支援活動のためのセミナーを今年の9月に開催します。その打ち合わせの会議が昨晩行われました。企画のきっかけは、臨時に構成したボランティアの会のメンバーと、こうした災害などの非常事態に備えるためには、日々の心の備えというのが大切なのではないかという話しが持ち上がったことです。

日々の備えというと、災害時のペットのためのフードや人のための避難グッズなどのハード面では、十分な情報が得られていると思います。準備をするかどうかは自分次第ということです。ところが、心の備えとなるとどうでしょうか。いつか自分も災害に会うかもしれないと思うことは心の準備にはなるでしょうが、こちらに偏ると不安に心を奪われてしまうのではないかと思うのです。

心の備えを考えるにあたり、やはり自然の力と切り離して考えることはできないと行き当たった次第です。自然の力が犬や猫など人と暮らしている動物に与える影響をいろんな側面から知ることで自然と動物のつながりについて触れ、それが心の備えになるのではないかと思いました。
このテーマについてはいろんな側面から様々なセミナーが思いつきますが、今回は今までなかなか聞く機会のない「ペットの自然療法」について、地域の臨床獣医師の先生方の生の声を聞けないだろうかということになりました。

早速、自然療法をしている獣医師の先生にチャリティセミナーということをご理解いただき、セミナー講師について快諾いただきました。それだけでなく、ペットの自然療法の研究会が主催団体として参加してくださるということになったのです。一般の飼い主さんは、動物のために自然療法を取り入れている動物病院を選び、治療法としてそれを選択することは可能ですが、様々なペットの自然療法について獣医師の先生から話しを聞くという機会は、日常ではなかなか得られるものではありません。

どんなことでも、特に動物たちに代わって彼らのために選ぶためには、まずきちんと知ることが大切です。きちんと知るというのは、インターネットで検索したり、本を読んで情報や知識を得ることだけでは終わりません。私はやはり、人と人だと思うのです。どんなことでも、直接会って話す、話しを聞く、ということが本当に知ることだと、常々思っています。

熊本地震を通して災害が自分たちにとって身近なものになることで得られる備えたいという気持ちは、学びたいという気持ちと同じものです。みなさんに湧き上がるこういう気持ちが広がって、セミナーの開催に至ったのだと実感しています。

昨晩の会議では、一般飼い主や会場として借用するペット系専門学校の学生たちにとって、理解しやすく興味のもてる内容に構成されることなどが決められました。真剣なお話はもちろんですが、簡単にご家庭でも取り入れられることも紹介していただけるようで、私も主催の一員ですが、今からとても楽しみにしています。

今回のチャリティセミナー「ペットのための自然療法セミナー」の詳細は、近々ブログ末尾にある「熊本被災ペット支援ネットワークの会」ブログでもお知らせします。チャリティセミナーは定員がありますので、早く知りたいという方はグッドボーイハートへご連絡下さい。


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チラシのPDFをこちらに添付します。
ペットのための自然療法セミナーチラシ



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犬と夢

犬も夢を見るんですか?と尋ねられることがあります。

犬が夢を見ているように感じられるのはどういうときでしょうか?
犬が寝ている最中に、吠えたり唸ったりして、声を出すことがありますね。他には、寝ているときに、歩いたり走ったりするように四肢を動かしたり、耳をぴくぴくさせたり、尾を振ったりすることもありますね。

犬が夢を見ているかどうかは、犬にしかわかりませんが、犬が夢をみているような睡眠をしているかどうかなら、知ることはできます。犬にも人とおなじように、睡眠の深さに違いがある深い睡眠と浅い睡眠があります。深い睡眠のときには、脳も体も休んでいるので、ぐっすり寝ているような感じです。浅い睡眠のときには、体は休んでいるのだけど、脳が機能しているため脳の反応によって筋肉や神経が動き、それが動きや声などとなって表現されています。

寝ているときに声を出したり走る四肢の動きを見せると、「夢のなかで楽しそう、走っているのかな。」と思ってしまいますね。

実はこの浅い睡眠は、私たち動物にとっては大切な睡眠らしいのです。脳の情報を整理する役割をもつ睡眠で、余分な情報を処理するためにも必要な睡眠です。浅い睡眠ができていると、脳もスッキリするということです。「なんか昨日いやな夢を見たな。」という風にはならないでしょうから、安心してください。

逆に、寝ているときに吠えたり鼻を鳴らしたりしているのがかわいそうに思って、犬を起こしてしまうことがあるかもしれませんね。せっかくの情報処理の時間ですから、そのままにしてあげた方が犬のためにいいので、ぜひ見守ってあげてください。

この浅い眠りと間違えられるのが、ほとんど寝ていない眠りです。たとえば、犬の目の前を静かに歩いただけでも目覚める、なんども目をあけて寝返りをうったり顔を上げたりする、などの行動をして、寝付けない状態になっている犬がいます。安心して寝る場所が確保できていなかったり、興奮してハイになりすぎたり、緊張しすぎたり、不安が継続すると、犬も「眠れない症候群」になってしまうのです。静かな環境が得られにくいとか人工灯が明るすぎるなど、犬の「眠れない症候群」も増えているようです。

なかなか眠れない犬は、他の行動も不安定になってきますので、飼い主さんは早めにそのシグナルを受け取ってあげましょう。事情があってたくさんの犬たちの入る犬舎や、多頭飼育を強いられいている環境にいる犬の安眠は難しいものです。一時的に睡眠の取れる場所に移動させるなどの工夫も必要です。

夢を見ているような犬の睡眠は、犬にとって大切な睡眠です。
今日もいい夢がみられますように。

オポお昼ね22年3月


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