グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬と犬の対面、経験学習と落ち着き

今日は犬と犬を対面させるクラスを行いました。
犬の呼び名をクロ、シロ、チャ、として説明します。

クロは現在プライベートクラスで勉強中です。その中で、社会性や自制について学ぶ機会のひとつとして、飼い主さんと行うプライベートトレッキングクラスを受講しています。飼い主さんと山道を歩くトレッキングクラスでは、初期にみられた興奮行動や、落ち着きなく動き回る多動行動、逃走行動が少しずつ減少し始めたため、他の犬と対面させる対面クラスを開催することになりました。これまでに数頭との犬の初対面を済ませました。

今日の対面クラスでは、クロとチャは2回目の対面です。クロとシロは初対面です。
クロにとっては3頭で過ごすのが初めての機会です。

実はシロも数年前にプライベートクラスを受講し始めたときは、興奮行動と多動行動、逃走行動が非常に強く出てきました。ご家庭の問題行動もこの行動により犬との暮らしに不安を感じるような状態が起きていました。飼い主さんの熱心な取り組みで、これらの行動には自制が働くようになり、制御不能の行動を起こすこともなくなりました。それだけでなく、他の犬との関係作りを進めるクラスでも成長を見せ始めました。

クロとシロは最初の行動が似ていたので、今回の対面がどうなるのかとても楽しみにしていました。結果、クラス経験値の高いシロは、ほとんど興奮することなく安定した行動を示してくれました。

犬と犬の対面時、犬への声かけは最小限です。犬に声をかけたり合図や指示をすることはありません。犬に行うオスワリやフセやツイテや、他のどんな合図もここでは無効どころか逆効果です。犬の中にあるのは、過去の経験、特にこの場所で出会った犬との関係、このグループに属することの意味と行動、この場所で行ってきた行動のパターンです。

対面や遊び行動を含め、犬と犬とのコミュニケーションには「落ち着き」を求めます。3歳までの若い年齢では興奮することも多いものですが、自制のきかない興奮行動は遊びではありません。犬と犬の出会うコミュニケーションは非常に緊張を伴うものですが、「落ち着き」を求めて行動を促していくと、犬はきちんとそのことを学習していきます。能力の差はありますが、それは学習に必要な時間の違いだけです。

チャは犬とのコミュニケーションがある程度安定しています。幼少期から月に数回をオポという先生犬といっしょに過ごしました。当初から、オポに非常に興奮して接触していましたが、オポから抑制を促される行動を引き出され、犬に対する抑制がかかりやすくなっています。また、食べ物への関心が低く、人への依存傾向が低いことも犬とのコミュニケーションをシンプルにする要因になっています。自制のかかりにくい犬の多くは、依存的性質が育っています。食べ物依存、飼い主依存、ボール依存、など、思いあたる方は要注意です。

クロとチャの対面は先月の犬語セミナーでビデオ紹介しました。犬語セミナーに参加された方は思い出してみてください。クロは主張が強く対立の方向へ転がりやすく不安定で、チャは抑制をかけ、対立をさけるためのシグナルを引き出そうとします。ですが、チャには相手のシグナルを引き出すほどの誘引力はありません。これは性質と呼ばれるもので、成長してもあまり変わらないのです。

実は、シロの行動を抑制してきたのもチャでした。ここでも、対立をさけるところにはもっていけるのですが、落ち着きを引き出すことはできません。それでも、シロはグループ行動の経験値を上げて、自己抑制を少しずつ身に付けてきたのです。

こういう変化を長い時間をかけてみていくと、犬って本当に不思議ですごい動物だなと感心します。クロは保護犬で年齢がわかりませんが、チャもシロも犬としては、中年にはいっています。それでもまだまだ変化する部分があるのです。

抽象的な表現になりスミマセン。どんな風だったかぜひ見たいという方は、このビデオを題材にした今月の犬語セミナーにご参加ください。6月26日日曜日の午後と、平日も1日開催を予定しています。

さらに、今日の対面クラスを撮影しながら、やはりと思うことがありました。落ち着かせの道具「リード」についてです。リードでバランスをとるということは、経験や練習もありますが、日々の犬との関係性を示しています。人と犬のバランスのとれた関係性、リードをつけているときはそれがそのまま表現されます。そのため、小手先の技術で変えようと思っても簡単にはいきません。
犬に声かけをしたり、フードを使って飼い主に注目させるトレーニングが主流になってしまうのは、簡単で誰にでもでき簡単に犬をコントロールできるからです。依存という形でのコントロールは、人に依存して生きている犬に行うには簡単な方法です。私もこうしたトレーニングを取り入れることがありますが、これは対処法です。対処法は必要であれば取り入れます。そして、次のステップでは、ここを卒業し対等な関係作りを目指してほしいと思います。

こちらの記事でも対面時のリード使いについて書きましたので、参考にしてください。
ブログ記事「犬と犬の対面、落ち着かせの道具とは

リードは奥が深いですね。みなさんによりよく学んでいただけるよう、私も日々勉強です。

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お散歩チェック

今日はプライベートトレーニングクラスやカウンセリングを行ったのですが、偶然にも「散歩行動のチェックとその説明」が重なりました。

ドッグトレーニングの中で「散歩のチェック」と聞くと、散歩中に問題となる行動があると思われるのが一般的です。たとえばこんな行動です。

・リードを引っ張る
・リードにかみつく
・歩かない
・くるくる回る行動が出る
・立ち止まりが多い
・臭いをずっとかいで歩く
・排尿の回数がとても多い
・いきなり立ち止まって排泄する
・他の犬とすれ違いなどで吠えたり、後ずさる
・他の犬によっていこうとする
・他人とすれ違うとき吠えたり、後ずさる
・他人によっていこうとする、後ろから追う
・自転車を怖がる
・バイクや車を怖がる
・まっすぐに歩けない
・拾い喰いをする
・家に帰りたがる

など、たくさんあります。いくつかチェックが入りましたか?
これらの行動が大きくなってくると、犬の困った問題としてトレーニングを考えられる方もいます。問題と感じられるほどひどくなくても、上記の行動が見られるときには、早めに専門家のアドバイスを求められることをお勧めします。これらの散歩中の行動は、犬がなんらかの理由で、散歩をリラックスして楽しめていないという状態なのです。それでもこれらの行動は一例です。

犬の散歩行動を分析していくと、犬の状態がよりわかるようになります。飼い主さんが問題と感じられなくても、犬のことを知るために「散歩行動のチェックと評価」は犬のトレーニングには欠かせません。
最近見せていただいたいくつかの犬のケースでも、飼い主さんはほとんど問題を感じられていませんでした。散歩の様子を見せていただいても、問題行動と思われるものはありませんでした。でも、散歩の行動からたくさんの情報をひろうことができました。

散歩行動がなぜ、犬にとって重要なのか。それは犬の散歩の意味づけにあります。
犬の散歩は単に排尿をするためでも、他の犬に会うためでもありません。犬の生活スペースの周囲を飼い主さんといっしょにパトロールするという行動なのです。
犬によってはパトロール力のない犬もいます。理由は年齢的な問題だったり、性格的な問題だったり、成長の課題だったりします。それでも、散歩はパトロールなのです。なぜかというと、散歩は犬と人の協同作業だからです。

その散歩の中で行っている様々な行動は、犬のテリトリー(なわばり)の安定性を示すものや、飼い主さんとの関係性を示すもの、犬の性格についての情報を得られるものなど、情報の宝庫です。全く関係ないようにおもわれる室内での行動が、散歩中の行動と結びついていることを説明することもできます。散歩行動が奥が深いのです。

最近は、犬の散歩中にスマートフォンを見ていたり、携帯電話で話しをしながら歩いている人をよく見かけるようになりました。飼い主さんの集中力が不十分な状態での散歩は、犬を落ち着きなくさせてしまいます。

カウンセリングでは、ひっぱりも吠えもマーキングもなく、ほとんど問題ない状態で歩いている犬の行動からも重要なヒントとなる行動を観察することができました。その行動から犬が必要としている成長の機会について説明をさせていただき、飼い主さんも納得された様子です。「特に問題はないんですけど…」といわれていた言葉が「そういうことだったんですね。すごくよくわかります。」という言葉に代わります。飼い主さんの「特に問題はないんですけど…」のあとの心の声「でも、ちょっと気になることがあるんです。」という部分がとても大切なのです。

犬の散歩中のちょっと気になることが、犬の新しい気づきに変わることを楽しんでください。



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庭から吠える行動への対策:環境を整えることの犬への効果とは

引越し後にご自宅の環境整備についてトレーニングに伺ったご家庭について、その後の変化を教えていただきました。ブログ記事「引越し後の環境整備」でトレーニングの一部をご紹介しました。

飼い主さんはすぐにいくつかの環境整備を行ってくださったようです。すぐに効果を発揮したのは、道路に面した庭の柵の隙間を犬目線から外が見えないように改善したことでした。隙間については、経過をみれる状態なのか、すぐに対応すべき状態なのかを、犬の性格や経験、現在の行動のパターンを考慮しながら、決めていきました。結果、即処置をして道路側が見えないように工夫をしてほしいとお願いしてきました。

隙間があり通行中の人が話しながら通過する際に、犬は走り出して左右にウロウロしたり、場合によっては吠え立てていたということです。犬が庭に出るたびに呼び戻しをかけたり、吠えるのを止めなければいけないので、飼い主さんは大変疲れると嘆いていらっしゃいました。
ここに目隠しをします。通行中の人の話し声は聞こえてきます。ところが犬は全く部屋から出て行くこともなく、走り出すことも吠えることもなく、無反応になり落ち着いていられるようになったという効果があわられました。

庭の柵の向こうに通行中の人の刺激は二つありました。ひとつは「話し声」ひとつは「歩いているのが見える」という刺激です。目隠しをすると「見える」刺激は取り消すことができますが、「話し声」は消すことができません。それでも、犬の認識力や行動のパターンをとらえると、目隠しによって吠えなくなったり、反応しなくなる可能性は十分にあることです。飼い主さんがこの犬の行動の変化に驚いたのは、「まさかこんなに静かになって落ち着いていられるようになるとは思わなかった。」という理由からです。

犬の目線にたった環境整備には「そんなことでこんなに変わるの?」ということがたくさんあります。目隠しもそのひとつです。今回は、飼い主さんがアドバイスをすぐに受け入れてくださり、目隠しをされたため、犬の行動の変化を引き出すことができました。ですが、なかなかそうならないことがあります。それは、犬のために行う環境整備が、人にとっても環境を変えてしまうという理由からおきるようです。

動物はどんなに小さな環境の変化も多少のストレスを感じます。良い方へ変化させようとしても、適応力が落ちている場合には、変化することを無意識に拒否するようにできています。不思議ですが動物として自然な反応であって、性格の問題でもありません。人にも同じことが起きてしまうのです。そのため、飼い主さんの方が環境を変えたがらないことがあります。この場合には犬の問題となる行動は継続されてしまうのですが、飼い主さんが環境を変えようという気持ちになるまで、待つ必要があります。

先日、猫のカウンセラーの本を読んだということをご紹介しました。ブログ記事「犬を撫でること
この本の著者のジャクソン・ギャラクシーが出演している番組の猫のカウンセリングの内容について、知人に話しを聞く機会がありました。「猫にあった床にしてください、とかいっていきなりリフォームが始まるんですよ。そして問題がすぐに解決するんです。」ということでした。
いかにもテレビ番組ですね。「すぐに変わる」というスピードで視聴者をビックリさせてくれます。利点としては、環境を変化させれば動物も変わるということを伝えてくれていることです。ですが、人はそんなにすぐには変化しません。飼い主さんが動物の目線に立って、全ての物事を考えるようになるには時間も必要です。ゆっくりと変化することが本当の変化につながり、飼い主さんの見方が変わって人が行動できるようになるためにも、時間が必要なことがあるのです。

環境整備を行ったことで、犬の行動は変化していきます。犬の行動学に基づいた結果のひとつで、犬にとって非常に有益なことです。もっと大切なのは、飼い主さんが「犬の視線にたって環境を整えてみよう。」と決めて実行されたことです。この実行力は、犬との関係作りにつながっていきます。

ゆっくりと犬目線で考え、変化を楽しんでください。


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犬と刺す飛び虫<ヌカカ編>

先日の犬語セミナーのときに虫博士の大田こぞうさんが参加されたとき、聞こうと思って待ち構えていたことがありました。昨年から悩まされていた、大量の室内に入ってくる極小の虫のことです。

大田さん「うわあ!見えません。」
私「小さいよね。たくさん入ってくる、しかも刺すし…。」
正体さえわかれば、という気持ちだったのですが、さすがに虫博士「ヌカカじゃないですかね。」ということで、うーん、やっぱりかという感じでした。

早速数日後のラジオ月下虫音の中の“ロクヨンコーナー”(6と4、虫のことですね)で、ヌカカを取り上げてもらいました。ブユよりも小さな刺す虫で、あまりにも小さく洋服の中にも入ってくるため、いつの間にか刺されてしますそうです。確かに腕や足の洋服から10センチくらいのところにいくつかの刺され跡を見つけることがあります。それが“やつら”の仕業だったことがついに確定しました。

七山の土地の人にブユについて尋ねたとき「シノブという名の網戸を通ってくる小さなブユのような虫がいる」ということを聞きました。シノブはヌカカの地方名称だったようです。

刺したり噛んだりする昆虫に対して、犬は個体事に反応したりしなかったりします。七山校でいっしょに過ごしていた大型犬のオポは、このセンサーの精度がかなり高い方で、さらにわかりやすく伝えてくれていました。

オポの昆虫に対する反応を3つのレベルで分けるとこんな感じです。

大変危険=レッドシグナル
注意が必要=イエローシグナル
安全=ブルーシグナル

たとえば、ムカデはレッドシグナル、ブユやヌカカはイエローシグナル、ゲジゲジやアリはブルーシグナル、という感じです。

イエローシグナルのヌカカに対する反応は、数が少ないと刺されることがあっても反応はないのですが、数が増えてくると場所を移動したり、室内にいるときは息遣いがハアハアと上がってきて、その危険性を知らせていました。

こんなこともありました。ある夜、オポの息遣いが急に上がってきます。その様子から、何か環境に変化が起きているにちがいないと部屋のあたりを見渡すのですが何も見つからず、それでもオポの状態が変わらないため、いつもは薄暗くしている部屋の電気をつけて入念にチェックしました。そうすると部屋の四隅の天井が真っ黒になるくらいヌカカで埋め尽くされているのです。

このとき天井にいたヌカカ軍団のうちのいくつかが、私たちを刺していたのだと思います。オポもすごく刺されているという風ではありません。
羽音もなく天井を見ているわけでもないのに、ヌカカがたくさんいる!ということを、オポが知っているということが、とても不思議でした。
さらに、オポはこのときすでに15歳を過ぎていて、十分なおじいちゃん犬であったにもかかわらず、そのセンサーだけは十分に機能していたということにも驚かされました。

科学的に調べたわけではありませんが、こうした犬の行動は日頃から行われることなので、虫情報を得ているのだと確信することはできます。虫が与える危険性や、虫数により危険度が増すということを受け取るしくみについては、推測の範囲内になります。犬にとって可能性の高い情報は、虫のフェロモンです。フェロモンとは臭いの物質です。昆虫も臭いを出すことはよく知られています。その臭いの質が、危険性のある虫が群れて活発になったり、刺す直前になると独特のにおいを出すなのだと思います。推測の域をでないのは、感知できる犬と感知できない犬にわかれてしまうためです。すべての犬の鼻は人よりずっと優れていますが、センサーの精密度は犬によってかなり違いがあります。

感じられる気配もあります。こちらも冷静に受け取れる犬と、日常の不安定さや恐れや興奮が強く、反応が大きく出すぎてしまう犬など様々です。

犬の昆虫センサーがしっかりと機能している場合には、それを家族の人間に伝えようとしている場合があります。特に室内犬の場合で室内環境を変化させられるのは人であることを理解している場合には、オポのように伝えるシグナルもはっきりとしてきますので、こちらも対応しやすいです。

昆虫センサーがまだ未発達の場合には、飼い主さんの管理力や環境を整える予防的努力が必要になります。センサー力は、個体差だけでなく日常の生活や心身の発達の影響も受けますので、伸びる可能性も十分あります。

昆虫センサーに調整が必要な場合。反応が強すぎて防衛行動が多かったり、逃走行動が出たりします。この犬たちには毎日の安定した環境が必要です。生活全般を見直してみて、足りないことを足し、過剰なことを減らす、環境整備が有効です。

ところで私のセンサーはまだまだ未発達です。とりあえず、予防管理を優先する必要があるため、網戸の仕様から変えなければ…。まずは、ホームセンターですね。

臭いを取るオポ

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犬のテレパシー<ミリちゃん編>

犬と関わりながら過ごしていると、ときどき不思議なことが起こります。
今日はこんな形で起こりました。

グッドボーイハート福岡の近くにお店を持っている生徒さんがいらっしゃいます。日頃からスクールやボランティア活動のチラシをおいてくださり活動に協力していただいています。チャリティイベントのチラシが出来上がったので、昼頃にお店にポスティングに行きました。

その後、外出することになり、用件を済ませて戻るバスの中で携帯電話が受信を知らせます。ポスティングした生徒さんからの連絡でした。そのとき私は「ああ、チラシを見られて電話をかけてくれたのだな。」と思いました。バスを降りる直前だったのですが、バスを降りすぐに折り返し電話をかけました。すると、何か生徒さんのお話が思ったのとは違ったのです。

電話で「あ、先生!今マンションにいらっしゃいますか?お仕事ですか?ミリがどうしても先生にごあいさつすると聞かなくて、今少し離れたところにいるんですけど…」ということだったのです。それで、バス停にいるけどすぐに事務所に戻れることと、ミリちゃんといらしてくださいという旨をお伝えしました。

このとき、私の中では次のようなストーリーが出来上がったのです。
まず、ミリちゃんの飼い主さんが、ポスティングした私からの連絡を受け取った。
次に、飼い主さんがグッドボーイハートと私のことを意識したか、もしくはミリちゃんに「先生からお手紙が来てるよ」と言葉に出して言った。
それでミリちゃんが、グッドボーイハートの事務所のあるマンションの前に止めてある私の車の横に止まって、「先生にごあいさつする」と主張した。

この程度の推測なら筋は通っていると思うのです。「先生」という言葉で私を認識し、その上で、事務所の私の車の横で止まるくらいのことなら、犬の認知能力としては十分に可能性のある行動です。

ですが、今回のストーリーはこのことをはるかに越えていました。

ミリちゃんと飼い主さんが事務所に到着しました。チラシを受け取られたと思い込んでいる私は「チラシとお手紙を見られたんですよね。」というと、飼い主さんは「え?すみません。見てません。」ということでした。

飼い主さんの説明では、ミリちゃんの様子はこんな感じだったそうです。
「お店に行く前にこの建物の前を通ったんです。先生の車があっても、いつもミリはそんなに反応しないんですけど、車の横に止まって建物の中に入るといって、どうしても先生に会うといって聞かなくなったんです。先生はお仕事しているかもしれないよといっても、ミリはどうしても入ると聞きません。それで、あんまりミリがいうもんだから先生に電話してしまったんです。」

これは偶然だね、と思う方もいるかもしれません。確かに偶然だと思うことの方が信憑性が高いとは思います。ですが、こうも考えられるのです。

ポスティングした封筒に、今朝になりミリちゃん用にお手紙を書き添えました。先日バザー用品などをいただいた日に、ミリちゃんが事務所に入りたがっていたのに対応する時間がなかったため、また今度連絡するね、と約束していたからです。それで手紙には「この日ならミリちゃんが来ても大丈夫ですよ。」と書いてお店のポストに入れたのです。

私がミリちゃんに出した手紙を、ミリちゃんが直接受け取ったと考えることもできます。あまりにもファンタジーですが、否定することもできないと思います。犬にはそんなテレパシー的な能力がきっとあるのだと思うのです。それは原始的な生活をしている人たちが、遠くてもつながりを持てるのと同じようなものではないかなと、ですね。
もちろん、これには行動学的な証拠は何もありません。だからこのことを主張する気もありません。ただ、さすがミリちゃん、ありがとうと思っただけのことです。

ミリちゃんは事務所に入ってからも、ミリちゃんパワーを全開にさせていました。電話台になんども飛びつきます。行儀の良い犬なので興奮しすぎることはないのですが、結構しつこくしていました。何も置いてないはずなのにと思いつつ電話台の上をみると、ミリちゃんの良く知っている亡くなったオポの写真があります。写真を手にとり、ミリちゃんの顔近くまで下ろしてあげました。ミリちゃんはオポの写真に鼻をちょこっとつけて、満足したように電話台から離れていました。子犬のころからオポに会うときちんとご挨拶することを覚えたミリちゃん。オポの写真にも何か言いたい事があったのかもしれませんね。

ミリちゃんは9歳の小型犬のワンちゃんでミリちゃんの飼い主さんのことは一度コラムでも紹介しました。
コラム「たくさんの知識が必要なのか~しつけトレーニング~」

ミリちゃんは普通の犬です。ですが、飼い主さんが真剣に向き合って育てられミリちゃん自身も今でも飼い主さんを真剣に見ている犬だなと感じます。

犬にも人にも、すべての動物にはテレパシーとか、つまり言葉では表現できない能力というのがあると思います。「虫の声」ですね。そして人との関わり方によって、その力の使い方も違ってくるのではないかなと思うのです。

ミリちゃんに「ミリちゃんは先生のお手紙を直接受け取ってくれたんだね。」というと、ミリちゃんは得意げな顔をして、飼い主さんは笑っていました。

みなさんは犬のテレパシー力を感じたことはありませんか?
犬の不思議な話しを笑いながらもっとしたいものです。犬ってスゴイよねって。

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里山犬の育て方

グッドボーイハート七山校は山との境界線にある、いわゆる奥山と里山をわけるような地形にあります。それぞれの里には家のすぐ裏側に「自家製の野菜室」となる畑を作られています。その畑を奥山から狙っている野生動物たちがいます。イノシシ、タヌキ、アナグマ、テン、イタチ、サル、キツネ、モグラ、鳥たち…とメンバーもそうそうたるものです。

これらの野生動物たちによる被害は大変なものらしいことをイノシシやシカに関する本を読みながら知りました。家の裏の畑は生産物用ではなくあくまでも自宅用のようですが、それでも手をかけて育てた日々の食材に手を出されることは阻止しなければなりません。そこで野生動物を寄せ付けない方法としていろいろな手立てが行われているようです。そのひとつが犬です。

私も当初は、他の生産物用の畑の用に動物用のステンレスの柵で囲っておけばいいのではないかと考えていたのですが、なぜか、家の裏の畑には見たところどのご家庭もその仕様がありません。その必要がないのだとすると、その存在は里の犬たちのガードによるものだと推測しています。

七山校の近くのご家庭にも立派な里山犬が住んでいました。その犬はとても不思議な犬で、私の犬知識をさらに深めてくれた犬になったのですが、まさに彼は飼われているというよりは、住んでいるという犬だったのです。この犬については逸話はまた別の機会にゆっくりと書いていきます。話しを戻します。それで、その立派な里山犬は亡くなって数年たったのですが、1ヶ月ほどまえにその家に新しい犬が来たのです。

さいしょは、ワオーン、ワオーンと4ヶ月くらいの犬が出すような呼びなきが聞こえてきました。まさか捨て犬ではないかと注意深く聞き耳を立てていると、ときどき、キャインキャインと興奮した声になる時間があり、明らかに人が子犬に接触していることがわかりました。新しい里山犬が来たのです。

先代の犬にとても興味があったので、次の犬はどんな犬なのだろうとついつい犬の様子を観察したくなってしまいます。実物を見ると体型はかなり大きくなっており子犬という風貌でもありません。若年期くらいかなと。その犬が少しずつつながれる場所が変化していくその過程がさらに面白いものでした。まだ途中なのですが、つい先日、日中裏側の畑の車のそばに係留されるようになりました。

その日は七山で一日作業日だったので、デビューした犬の様子を掃除したり洗濯したりしながらその日の成長を見届けていました。そしてある行動を学んでいることを目撃しました。というか私自身がその刺激になってしまいました。
午前中に洗濯物を干しに出ると、ちょうどその犬の視界に入る状態になり、ウォンウォンと警戒吠えをするのですが(私は目線を合わせずに淡々と洗濯物を干す)、尾は下がったままで、体重も若干後ろにかかっており、後退の動作にはいっています。私の方をみながら、ウォンウォンと吠えたり、吠えやんだり、吠えたり、吠えやんだり。行動の不安定さにその気持ちもうかがえます。室内に入ると吠えるのを止めましたが、しばらく尾を垂らしたまま立ち尽くしていました。
午後になって、洗濯物の位置を変えに出ると、なんと今度はつながれている車の下にもぐって、吠えずにこちらの様子を伺っています。私の方からは明らかにその姿が見えているのですが、私が視線を送らなかったり、気づかないふりをしていることでその「隠れる行動」は継続しました。結果、室内に入るまで隠れたままでいたのです。
「隠れる行動」については先日ブログに書いたばかりです。
犬は隠れる動物

つながれた午前中は私の姿以外にも、ちょっとした変化にいちいちビクビクとして吠える回数が多かったので、このままビクビクさせて終わってしまっては社会化学習は後退してしまうと心配していたにもかかわらず、昼過ぎには隠れる行動を自分から行ったことで環境は一変し、警戒吠えは明らかに対象を認識したときだけに変化していきます。
途中家の人が作業のためかそばを通ると、キャインキャインと飛び上がろうとする後追い後鳴きをしてアピールしましたが、振り返ってももらえていませんでした。はたからみるとかわいそうかと思えるこうした接し方も、犬が自主的に行動することを引き出すきっかけとなり、簡単には判断できないものです。

田舎でも犬は係留して飼育するようにとの指導が厳しいため、どの犬も係留されています。ですがその育て方は数十年前とたいして変わっていないのではないかなと思えるほど、原始的な感じがします。農業も機械化が進む中で行程自体はかなり変化してきたのだと思いますが、変わらない作業は変えようとしないという風潮が見られるからです。そして犬育てについても同じように「つないだだけ」あとは変わらないという風景に見えるのです。そのことが、犬にとってストレスを与えていることもありますが、変わらないものの中には、犬が育つ接し方も垣間見えて、何事からも学ぶべきことは多いのだと感心させられているところです。

さて、このニュー里山犬。冬季からの今シーズンのイノシシ防衛に力を発揮できるほどになるのでしょうか。陰ながら応援しくたいと思います。

いつもながら犬の立場にたって写真はありません。白地に黒いぶちのある洋犬風のミックス犬。その表情と行動の変化がこれから楽しみです。

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わからん犬語も読み方次第

生徒さんの犬語自己解説を聞いていると、「ん?」となる瞬間があります。
先日もこんな「ん?」がありました。

生徒さん「よく会う家族の犬が来ると鼻をペロッてなめるんです。だからちゃんと服従しているんですよ。」といわれるのです。
私「なぜ、服従しているって思うんですか?」
生徒さん「えっ?だって、なめるのって服従ですよね?えっ?違う?」
私「服従する行動の中に確かに“なめる”という行動はあるけど、だからといって“なめる”行動がすべて服従する行動というわけではないですよ。それだったら尾をふっているのが全部喜んでいるのだと思ってしまうのと同じ誤解になってしまうでしょう。」
生徒さん「そうですよね。意地悪するときだって“なめる”ようなことしますよね。」
私「そうそう。そいういうことです。」

なめる行動=服従行動ではないことをなんとか納得してもらいました。
そうすると「ではなぜ、なめているのか?」という疑問がひとつ増えてしまいます。

生徒さん「じゃあ…なぜなめているんですか?」となります。
私「なぜだと思いますか?その2頭はどんな関係だと思いますか?」
生徒さん「ストレス?実は仲が悪い?えー、わかんないです。」

こうなった場合には、2頭の犬と犬の間で起きていることですから、この2頭の間に起きている様々なシチュエーションの行動を再検証して、その関係性を考えなおしてみるといいのです。付き合いの長い犬なら、過去のデータからいくつもの行動チェックができます。これをピンチを思うと辛いけど、チャンスと思えば希望の光が見えてきます。

犬のコミュニケーション、つまり犬語はある程度体系化しています。コミュニケーションですから、ある犬が出すシグナルに、相手の犬が応じるシグナルという風に、刺激があれば反応し、そしてその反応に次の刺激が出る、という風にシンプルなものなのです。

だから本当はわかりやすいものなんですよ、といいたいところですが、最近では犬も犬語が下手になってきています。犬語をきちんと話すことができなくなってきているようです。「うちの犬は犬といっしょに育ったから大丈夫。」ですか?子犬だけが複数で育つと、コミュニケーションが荒くなってしまうこともあります。興奮した行動を止める大人がいないからです。先住犬が子犬を受け入れられないケースもあります。意地悪なのではなくて、「自分にはお世話は無理だよ。」という姿勢を示しているだけなのですが、子犬にとってはきついものですね。

コミュニケーションは「発達」して身に付くという過程を経ていきます。種同士のコミュニケーションは身に付けるべき年齢があり、その後に発達していくのです。コミュニケーションの発達は反復練習ではなく、犬の成長と共に変わっていくコトバの変化のことをさします。私たちの言語の身に付け方と同じように、少しずつ洗練されていくもの、それがコミュニケーションです。

その発達と成長のためのベストの環境が、犬にはなかなか準備できません。そのため、最近の犬たちの言葉は「読み取りにくい」ことがあります。つまり、話題になった「なめる行動」も複雑になっていることがあります。いくつかの「こういうときになめる行動をする。」中に当てはまらないこともあります。

だから、ひとつずつ丁寧に犬の行動を見て、感じて、知ってあげましょう。読み取りにくいというだけで、わけのわからないことを言っているわけではありません。細かく読んでいくと、どの犬もきちんと何かを伝えたがっていることを感じます。

そして、ここが恐ろしくまたすばらしいところなのですが、犬の言葉を感じて知って共感していることをどうやらわかっているらしいのです。この部分については、身近な犬の反応しか例に出すことができず、「それって先生の思い込みやろ。」といわれるかもしれません。それでも、私はこの思い込みを少しだけ維持しようと思っています。「それ私も知りたい!」という方、大歓迎です。




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犬語セミナー

今日は犬語セミナーの日でした。プライベートクラスで撮影した犬と犬の対面のビデオを2本見ながら、みなで犬語の勉強をしました。犬語セミナーに始めて参加する方もいたので、最初に犬語セミナーとはどういうクラスなのかを紹介して開始しました。関心のある方はこちらでご覧になってください。
犬語セミナー紹介

今日のビデオは、1頭の犬が異なる2頭の犬とそれぞれに対面したビデオでした。初対面のビデオは、その犬の他の犬に対する行動が分かりやすく表現されているため、犬を知るための貴重な映像になります。さらに、できるだけ条件をそろえた上で、異なる犬を合わせたときにどのような行動の違いが生じるのかを見比べると、より理解も深まります。

犬語を理解するためには、時系列で進む犬の行動をノートに書き出してみることから初めてください。行動を書き出すときは、犬の行動をそのまま書きます。
たとえば、背中の毛が逆立っている、口を大きくあけている、舌をペロッと出す、地面のにおいをとる、といった行動です。時系列で書き出していくと、その犬の行動がどのように変化していくのかを見ることができます。ビデオ撮影したものは、くり返し何回も見ることができます。最初は拾えなかった行動も、くり返し見ていくと拾い上げられるようになり、これをくり返すと、よくたくさんの行動を拾えるようになります。

初参加の方に感想を聞くと「犬の動きが早くて見逃してしまった行動がいくつもあった。」といわれていました。これは見方の練習なので、くり返し参加しているとたくさんの行動を見ることができるのです。とにかく回数です。

今度は拾い上げた行動の種類をまとめていきます。ストレスの表現行動として出たものはどの行動なのかとか、この行動は何を目的としたものなのか、この行動は何に反応したものなのか、ということです。

地道な作業が続くためひとりだと断念しそうですけど、パズルをみんなで探して埋めていくような作業です。犬語セミナーとのきにはだれかが自分の気づかないことを見つけてくれるので、どんどんパズルが出来上がっていきます。

今日のまとめとしては、題材になった犬はどのような性格なのだろうということでした。完全な答えはでませんが、いくつかのヒントは掴めたようです。犬の性格とは、犬がどのような経験を積んできたのかということと、犬が本質的にもっている性質がミックスされたものです。犬という動物を習性的に理解するだけではなく、犬という個体を個性として理解することは同じくらい大切なことだと思います。

どのような環境が犬に落ち着きや安心の効果をもたらすのか、逆にどのような刺激が犬を興奮させたり緊張させたりしてしまうのかをご存知でしょうか。もしかしたら犬にとって良かれと思ってやっていたことが、実は自分が求めていたことの押し付けになってしまうこともあります。こんなことは人と人でもよくあることです。気づいたときに修正をして、より良い関係になれるよう努力すればいいということです。だから、気づくことを恐れずに、犬語セミナーは笑顔で受けていただきたいのです。

犬語にふれる機会はどの飼い主さんにも、犬を飼っていない方にも訪れます。犬語セミナーを通して、犬のことを知りたい方に犬のことをわかりやすく伝えるツールにしていけないかなと考えています。


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犬は隠れる動物

犬のトレーニングクラスで大切にしている課題のひとつが「環境を整える」ことです。

家庭犬インストラクターとして、今までにさまざまな形のクラスを通して犬の生活を飼い主さんといっしょに考える機会がありました。訪問件数が多くなりすぎて訪問ができなくなってしまい、通学型のドッグスクールに変えたこともあります。通学型のスクールの良い点というのもありましたが、どうしてもクリアできなかった問題が、家庭環境を直接見て、その中で犬の行動を観察することができなかったということです。家庭訪問トレーニングから通学型に変更したあとに、家庭訪問トレーニングの大切さを改めて痛感しました。

通学型のトレーニングのときには、飼い主さんにヒヤリングを行ったり、ビデオや写真を取ってきてもらい、いろいろと改善点を探していきました。ですが、実際に家庭訪問を行うと、犬とって大切である環境のいろんな部分が犬目線では考慮されていないことに気づきます。「通路からは犬のスペースが見えないように配慮されていますか?」という質問に、「はい、大丈夫です。」と答えられても、実際にはそうなっていないことがあるのです。

家庭訪問でトレーニングを行うと、犬の目線に立っていろんな角度から、犬の生活している環境を犬がどのように感じているのかを知ることができます。そして、より早く犬の落ち着かない理由を見つけ出すことができるのです。
たとえば、室内と続きのスペースで犬の居場所を設置されている場合があります。テラスを犬用のスペースにされている状態を想像されると良いでしょう。こうした空間は仕切りが家のガラス戸です。そのため、カーテンが閉まっていないと、室内の人からも犬がすぐそばに見え、犬の方からも室内の人が見える状態になります。

カーテンはいつもあけられ、室内にいる飼い主さんたちに常に見られている犬がテラスにいます。もしくは、飼い主さんたちは、各自が犬を見たくなったときにカーテンを開けて犬を見るということも多いようです。
小さな子供さんがいる場合には、犬のスペースは中からみると動物園のような観賞用のスペースになってしまい、子供さんは動くものを見たくてガラス戸に張り付いたり、手を振ったり、ガラス戸の内側でオヤツを食べたりしているのをみかけます。

こうした状況を好まない犬は、そのスペースにある犬小屋に隠れたりすることもあります。まさに動物園の動物が、見物されることをさけるため、奥の部屋に隠れている姿のようですね。あまり出てこない動物のスペースには「夜行性なので日中はあまり外に出てきません。」の表示がかけられていることもあります。犬もそう思われてしまうかもしれません。

犬小屋に隠れることもできないタイプの犬は、自分のスペースを左へ右へとウロウロと歩き回ることがあります。ときには円を描くようにグルグルと回ることもあります。こうした行動も動物園の動物がしているのと同じ行動です。これは常同行動といって、同じ行動を何回もくり返すストレス性の行動で、動物のストレスの度合いはかなり高まっていますよというシグナルです。

犬は動物園の動物と異なり、人に対し積極的なコミュニケーションをとりますので、相手を遠ざけようとワンワンと吠えたり、唸ったり、ガラス戸にとびついたりすることもあります。ですが、こうした攻撃的な行動も、犬が喜んでいると受け取られてしまうことがあるのです。実際これらの行動を見て、小さな子供さんたちはキャーキャーとはしゃいでいます。犬はますます興奮します。犬舎から出てこれらの子供達と接触した場合に、日頃の攻撃的行動のくり返しにより事故が起こる可能性も高まっていくため非常に危険な状態です。

こうした犬の行動から見ると、犬が室内から「いつも見られている」環境では、落ち着けないことがわかっていただけましたか?犬がガラス戸に飛びついたり、吠えたり、くるくると動き回っているのは、喜んでいるからではないことを、知っていただきたいのです。

犬は散歩や遊び以外の多くの時間を休むために使います。他の動物達と同じです。人のように熟睡をしない犬は、浅い眠りを続けますが、その時間はとても長いのです。活動時間は午前中と夕方が中心となり、昼間と夜は寝ています。そのため、犬の生活空間は、落ち着いて寝ることのできる場所を必要としているのです。

子供さんや家族にいつも見れてしまう動物園状態になっている環境では、犬の視線が隠れる高さまで何らかの目隠しをします。犬と遊びたくなったら犬舎まで出て行ったり、犬の散歩に出かけるなど、直接的に触れ合うコミュニケーションをとっていただくこともルールのひとつです。目隠しの設置で犬はかなり落ち着きを取り戻していきます。

室内に近いテラスを犬のスペースにされることが増えているのは、いくつかの理由が考えられます。
いつでも犬に触りたいので、犬を汚したくない。
せっかく犬を飼うのだから、できるだけ近い場所にいていつでも会いにいきたい。
庭が狭いため、テラス以外に外飼いが可能な場所がなかった。

理由はともかく、テラスを犬の生活環境とするなら、きちんと環境を整えてあげる必要があります。

犬という動物は「隠れることが休むこと」という動物です。実はわたしたち人にもその性質があるため、この点については共感できると思います。犬の視点で考えること。動物を理解するためのシンプルな方法です。

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引越し後の環境整備

生徒さんが郊外の戸建てに引っ越したため、環境整備のトレーニングのためにご自宅に伺いました。

犬は9歳の小型犬で、子犬のころからご家族といっしょに、高層マンションに暮らしていました。飼い主さんはマンション暮らしを始めてから犬を迎えることになり、マンションの規定にある「共有部分は犬を抱くかクレートにいれること。」というルールをクリアするために、小型犬を選んだとのことでした。

犬と一緒に暮らしながら、犬の行動についての勉強を重ねる中で、犬の生活にいろいろとストレスもかかっていることを受け止められるようになりました。グッドボーイハート七山校では、犬といっしょに山歩きをするような機会も増えてくると、犬の表情や行動の変化に気づくことも多くなり、お庭のある家でいっしょに暮らしたいと思いが高まってきます。そしてついに戸建てに引っ越すことを決められました。

念願の庭付き戸建て家での生活ですが、最初から思い描いたとおりというわけにはいきません。動物は環境の変化に敏感だからです。それがどんなに良い環境のほうに移ったとしても、今までとは異なる環境に変化したことにストレスを感じてしまうのです。今回は、移転直後にお話を伺ったときにいくつかのアドバイスができる点に気づき、よりスムーズに新しい環境に適応できるようにするための指導のためご自宅に伺いました。

新しい家には庭というスペースがあります。犬が生まれてはじめて経験することは、屋外のなわばりの境界線です。庭の前には道があり、人や犬が歩いているのが見えています。「すぐ外に他者がいて、自分のなわばりが内側にある。」この境界線はどんな動物にとっても緊張感を伴うものなので、できるだけ互いに刺激しあわないようにするのが大切です。
柵があったとしても犬には柵の意味がすぐには理解できません。そこから家族やまた他者が出入りする場所ではない、境界線は守られていると犬が理解するようにする必要があります。たとえば、見えないように工夫をするなどです。犬は臭いで相手との距離をはかっていますが、見えない、つまり自分の姿が見られていないという状況では落ち着いていることができます。逆に見えている、つまり自分が見られているという状況では防衛的行動が高まっていきます。

排泄をどこでさせるかという問題もあります。マンションでは散歩に出て排泄をする以外は、室内のトイレシーツで行っていました。今は、庭に出て排泄をすることができます。ペットドアをつけてあるので、戸口が開いていればいつでも自分で排泄に出ることができます。このような空間があるのに、室内で排泄をしなければいけないのは、庭がなわばりになっていない、もしくは室内マーキングをしているということです。
庭での排泄の仕方をよく見ていると、室内のトイレトレーを撤去できる状況かどうかがわかります。トイレトレーの撤去は、犬に習慣化した不要なマーキング行動をさせないことで、ストレスを軽減させるためです。家族との関係性にも影響します。排泄については天候による排泄行動の変化など、順番を経ながら行う必要があります。

室内のスペースも整えていきます。今まではマンションの高層階だったため、窓の外をみても何も見えません。ところが今度は、窓の外に庭や庭の前の道が見えます。犬の視点に立って、どのスペースが犬が落ち着いて過ごせるのかを考え、犬の臭いのついたベッドやクレートなどをいくつか配置していきます。留守番のときはどうしているかも確認しました。

庭で過ごす時間が増えていたので、散歩に出る時間が少なくなっていたようです。庭があっても散歩はとても大切な時間です。犬が老齢の場合には別ですが、元気な犬にとっては、散歩行動は健全な関係と生活のために必須です。
都市環境での生活では、散歩コースは車の多い大通りでした。自転車は走っているし、騒音もすごいし、犬は散歩を楽しめていないようでした。新しい環境では、家のすぐ後ろが森になっていて、家を出るとすぐに山道へ入ることができ、自然とふれあう散歩ができます。
森が近い環境を選ばれたのも、犬の生活を思っての飼い主さんの思いでした。引越し後も散歩に出るようになり、犬の行動もさらに落ち着いてきたようです。

マンション住まいの方が庭付きの住居を敬遠される理由のひとつが「虫がいますよね…」ということです。虫はいるものと諦めるしかありません。害を及ぼす虫については自分たちの方法で駆除するしかないというはなしです。
七山に来られた当初は虫を見ただけ「キャー」と反応の高い飼い主さんでしたが「昨日、ムカデがいたんです。すごい大きい奴が。」と比較的落ち着いて話されました。「凍結するスプレーでやっつけました。」とのこと。飼い主も強くなりますね。
他にも「目覚まし時計がなくても自然に目が覚めるようになりました。」といううれしい変化もあったようです。新しい生活環境に慣れていない部分もありますが、犬の表情や行動は明らかに以前と違います。

心地よい風が吹きホトトギスの声が聞こえるこの庭と家で、飼い主さんと犬がどのような時間を過ごしどのような関係を結ばれていくのでしょうか。心地よい環境をじっくりとあじわうには時間が必要です。環境を整えていくこの変化のときも含めて、ぜひ楽しんでいただきたいです。


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