グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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小さくてもパワー全開のカレンちゃんの変身:『犬を飼う』から『犬と生きる』へと変化したこと

 グッドボーイハートの受講生からいただいたクラス受講の感想文です。
毎回、それぞれに犬と飼い主さんの成長を感じられる文章をいただきありがとうございます。

今回はシェットランドシープドッグのカレンちゃんの飼い主さんからです。

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・グッドボーイハートのクラスを受講したきっかけは?

やっとやっと飼いたかった子犬(生後3ヶ月過ぎ)を迎えましたが、
最初3日間くらいなかなか近づいてはくれませんでした。
そのうち慣れてくれるだろうと様子をみていました。

それでもなかなか来てくれないので、 気を引くためにおやつをよくあげました。

少し近くに来てくれるようになってからは、
甘噛みが酷く自分達の服が破れたり、
トイレシートを噛んでは散らかしてしまうといった毎日でした。
それも、幼いからやんちゃなのは当たり前だと思って過ごしていました。

生後5ヶ月になるころには、問題はますます悪化してきました。

おやつを見せてもお座りをしてくれない
外に出ると座り込んで散歩に行けない
糞を散らかし食糞
部屋のあちこちで排尿
そして食後の唸りがだんだんと強くなる

などといったことで悩んでいました。

ドックスクールを 探していたところ、グッドボーイハートのホームページを拝見しま した。

犬を通わせることばかりを考えていましたが、
犬を飼うことが初めてなので環境も整えたいと思い
家庭訪問型のクラスを受講させていただくきっかけとなりました。

カレン2
・家庭訪問トレーニングクラスを受講して気づいたこと感じたことは?

まず犬を飼うことがこんなに難しいと思いもしませんでした。

犬を迎える前に自分たちなりに勉強したつもりでいましたが、
本などのマニュアル通りにはいきません。

幼少期の成長スピードが早いことも理解しておらず、まだ子犬だと思いずっと幼稚な扱いしていたところ、
先生から『 彼女は人で言えば、中学生から高校生です』と言われたときは衝撃的でした。

犬へのレッスンではなく、飼い主へのレッスンであり、
『できない』のでなく適切に『教えていない』ということ、
たくさんのサインを見逃してきたことにも気づきました。

犬が何故そういう行動をするのだろう、表情、気持ちを汲み取る事もなく、
こちらの理想ばかりをおしつけてしまい、人と犬の間に大きなズレがあると感じました。

それから、 宮武先生の犬に対する熱意真剣さもお手本にすべきところだと感じています。
犬を通じて動物のこと生態系のこと多岐にわたり考えさせられます 。
私たちもいろいろなことへの興味もできてきました。

カレン子犬

・犬が変化したこと、自分が変化したことは?

犬の変化として、、、

ある日突然唸らなくなり、庭で排尿できようになり、便の位置が自宅より遠くなりました。
目つき表情がやわらかくなったり少しづつ少しづつ変化があります。

自分の変化として、、、

『犬を飼う』ということはドックランへ行きお友だちができて~という意識でしたが、
今は『犬と生きる』という意識への変化があります。

犬のことをただかわいいと『見る』から、『視る』に変化してきました。

カレンお外

・これから犬とどのように暮らして行きたいですか?犬とどのような 関係をつくりたいですか?

この犬を迎えなければ、出会うこと無かった様々な方との出逢いが有り、
今まで学ぶことのできなかったたくさんのことを教えてもらっています。

犬は飼い主を選べませんが『ここへ連れてこられてしまった』のでは無く、
『ここに来なければならなかった』と思ってもらえような居場所を作っていき、
共に歩んで行けるような生活を築いていけたらと思います。

karen ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

シェットランドシープドッグ、通称シェルティは国内ではあまりみかけなくなりました。
繊細で感受性が高く、環境に対する反応がとても高いのが犬種の特徴です。

小さな物音で吠えたり、散歩中もいろいろな刺激に対して吠えたり逃げるという過敏な反応を示すこともあります。
シェルティがリードをつけてクルクルと周りながら散歩しているのを見たことのある方もいるかもしれません。警戒心が防衛行動を生むため、リードの範囲でクルクルとまわって歩きながら進むことで周囲を防衛しているのです。

カレンちゃんはまだその状態には達していませんでしたが、すでに吠えたり防衛しながら散歩に出ていました。室内でも回る、吠える、咬みつく、唸ると、様々なストレス行動がありました。
まだ年齢の若い乳歯の生えている子犬ですから、やんちゃなのでそのうちにおさまると飼い主さんは思ってしまったようですね。

さらに、念願の犬を飼ったというときに陥りやすい穴にはまってしまうことがあります。
テレビなどのメディアが賞賛する犬との暮らしへの憧れです。
その映像は、本当に犬が幸せになるやり方なのでしょうか。

本当に犬が安心して飼い主と信頼できる関係を築くためには、飼い主としてたくさんの疑問に答える必要があります。

犬とはどんな動物なのだろう?
犬が求めているのは何か?
犬が言いたいことってどんなこと?

カレンちゃんは、ストレスを感じやすく表現しやすいという犬種としての特徴と、個体としての性質を持っています。しかしその前に、カレンちゃんは犬です。

犬という種としてまず認め、犬という動物にとって必要な生活環境や接し方、テリトリーを与えることがまず先決です。

飼い主さんの変化でカレンは少しずつですが、確実に大きな変化を遂げてきました。
まさに犬の成長は飼い主の成長から。


カレンの選んだ飼い主さんと共に、これからもお互いを鍛えあいながら前進していかれるでしょう。
ますますの成長を楽しみにしています。

Posted in 受講生のコトバ

おすすめの本「旅する木」:星野道夫展※9月3日まで久留米で開催してます。

星野道夫展が福岡県久留米市で開催されています。

不思議なことですが、何人もの方が星野道夫展について教えてくださいました。

すでに見に行かれた方々から、マスキングテープやポストカードもいただきました。

ぜひ行きたいのですが、スケジュールがあわず自分が行けません。

それで、時間のある方、星野道夫の写真は本に触れたことのない方に、ぜひおすすめします。

没後20年 特別展 星野道夫の旅 について詳しくはこちらからリンクしています。

すでに行かれた方のはなしでは、写真集として見ていた星野道夫の写真が畳くらいの大きさで見ることができるということでした。



さらに、星野道夫氏著作のおすすめ本はこちらです。

旅する木
題名 旅する木

発行 文春文庫

星野道夫氏といえば、熊の写真で見たことのあるという方は結構いらっしゃるでしょうが、
実は文章がほんとうに透明なのです。

どの本の文章も心洗われるものですが、特にこの旅する木は大好きな一冊です。

子供の頃には誰しも、自然への畏敬の思いや、純粋に何かを知りたいとか近付きたいという
人としての素直な思いを持っていたと思います。

ただ、その思いは大人になるたびに消されていき、行動の動機は別のところに移っていきやすいものです。

星野道夫氏は子供のときに抱いた、感動をずっと持ち続けた人でした。
自分がこうしてここにいるときに自然の山の中に熊が生きているという不思議です。

そして熊に近付きたいという気持ちをただ純粋に行動に移していきました。

純粋な思いを持ち続けることができたのは、彼自身の信念だけでなく、家族や環境もあったのかもしれません。

それにしても、この透明な文章に心響くとき、人と動物のかかわりについて再度考える機会を持つことができます。

犬と暮らしているすべての人に読んでいただきたい一冊です。

犬はペットになってしまいましたが、そもそも自然の中に生きる動物でした。

わたしたち人が今、犬に対してどのような影響を与え続けているのか、考えるきっかけとなればと思います。

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Posted in 本の紹介, お知らせ

ラジオ放送補足版:イヌのゴハンはどう選ぶのか?

 ラブFMで放送された月下虫音を聴いて、たくさんの方から感想や励ましのお言葉をいただきました。
遅い時間に耳を貸していただきありがとうございました。

 ラジオ放送では話せなかった事、補足も含めていくつか紹介させていただきます。


● 犬のゴハンを考える前に、犬の基本的な安全欲求を満たすこと

 放送された内容にひとつに、犬のゴハンは何を与えたらいいのだろう?という質問がありました。結論からいうと、環境と個体により異なるというしかありません。ラジオの中ではこのフードがいいという話をすることは、あえて避けました。情報集めはいくらしてもきりはないし、もっと大切なことを今回はお伝えしかったからです。

 もっと大切なこととは、どんなに栄養価の高いバランスのとれた食事も、犬がストレス状態にあったり、環境に強いストレスを感じると食べたものもきちんと消化して見になることはありませんということです。食事の前に環境の安定性を考えて欲しいということをお話ししました。

 その上で、次にゴハンについて考えるなら、いくつか参考になることがあります。


● 犬のゴハンはどうやって選べばいいのか?

 食事にはいくつかの選択肢があります。加工されたフード、手作りで加工したフード、手作りで加工を少なくしたフード、加工の少ない市販のフード、缶詰、療法食など、いくつもの選択肢があります。

 この中で自分の犬のためにより良い食品を選ぼうと思うなら、まず、外してほしい食品はこんなものです。

 添加物が多く臭いのきついものは省いてあげてください。人工的な添加物は化学薬品です。ビタミン剤もこの中に入ります。これらは大変臭いがきつく、犬の体臭にも影響します。しかし、ドッグフードには規制値というのがあり、これらの科学的な添加物がたくさん混入されています。添加物によって栄養バランスがとれたように思わせているだけで、犬にとって健康的な食品とはいえません。

 犬は食べ物を臭いでかぎわけて食べています。よく加工されたフードは消化はいいものでも、個体の食べ物のにおいがしません。たとえば、鶏肉が入っていても鶏肉の臭いはしません。こうしたフードは加工されていることで安定した排泄物をつくりだしますが、犬にとっては喜びの低いフードです。食べる喜びという欲求が満たされないものです。

 とはいえ、犬の中には加工されたフードしか食べられない犬たちもいます。いきなりいろんな食材の入った手作りゴハンを与えてしまうと消化不良を起こしてしまう場合です。これらの犬たちには、加工されたフードが一定期間は必要になります。もちろん、飼い主さんの方が手作りゴハンを与えることも難しいという生活をされているなら、加工食品の一部を臭いのある個別の食べ物を加えることで、食の満足をアップさせてほしいものです。

 手作りゴハンを与えている場合には、ナチュラルなフードに近く犬たちは食を楽しんでいるでしょう。食べ物を生で与えるかどうかは、犬のお腹は食材の確保の仕方、気温などの外的な環境との兼ね合いを見ながら判断してください。

 犬にあった食事とは、犬の身体的な消化能力を含む個体による差、季節や気温による変化により様々なのです。たとえば、この夏はとても暑く皆さんの中にも食欲が低下された方もいたかもしれません。実はわたしもゴハンがあまり食べられなくなり、加工された食品を食べ続けることもありました。気温が下がったり体調を取り戻して、ようやく普通に食事ができるようになりました。

 犬も年齢や状態によって、受け付けるものと受け付けないものがあります。老犬になるとますますこれが激しくなります。それまで加工されたドライフードしか与えたことのない犬でも、ササミや豆腐などの食品しか食べられなくなる犬もいます。犬と話し合いながらその犬にあった、そして犬が喜ぶ食事を選んでいってください。


● ラジオを聴いたあとでうれしいコメント

 生徒さんのおひとりから、こんなコメントをいただきました。

「はじめて犬にバナナを与えました。本当においしそうに食べていました。
今まで、ドッグフード以外のものは与えてはいけないと思っていたけど、
食べる楽しみも大切だと気づきました。」

 犬に健康で病気なく過ごしてほしいという気持ちはよくわかります。
でも、自分たちにあてて考えれば、このストレス社会でそんなに節制して体にいいものだけを食べ続けることができるでしょうか。あまり乱暴な食事になってはいけないけど、ときには果物も食べたいしといろいろと食べてしまいます。その食べ物を室内で暮らす犬たちはいつもそばで臭いを嗅いでチェックしているのです。


 以前、人の食事のときにいつもワンワンと吠える犬がいました。食欲はあって加工されてある程度の価格のする栄養バランスととれているとうたわれていたドッグフードを与えられていました。
 犬の様子を見て、飼い主さんとも話し合い、手作りゴハンに変えていただくことにしました。手作りで食材の臭いのする食べ物を食べるようになってすぐに、人の食事のときの吠えはなくなりました。
 ドッグフードを仕方なく食べていたのですね。逆にストレスだったのかガツガツと早食いだったのに、手作りゴハンにしてから味わうように食べてくれるようになってくれました。

 ゴハンを選ぶことも、これがいいといわれたからと選ぶのではなく、自分の犬にとって最適なゴハンは何かな?ストレスなく過ごせているかなと考える機会になると、犬のことをまた知るチャンスを得られます。


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Posted in 犬のこと

犬語セミナーに学ぶ犬の世界:犬語の深読みを学ぼう

 週末はグッドボーイハート七山校で犬語セミナーを開催しました。今回は上級者編として開催しました。内容もいつもよりも深いものとなり学びの多い時間でした。


● なぜ、犬語を学ぶ必要があるのか

 七山校では毎月、福岡校では不定期に開催している「犬語セミナー」。犬のさまざまなコミュニケーションを読みとる学習をし、犬への理解を深める座学の講座です。そもそも、犬との暮らしの中で飼い主さんたちが最も興味があるのは「犬は何を考えているのだろう」「犬はどういう気持ちでいるんだろう」ということです。

 犬が考えていることに対する理解がなかなか進まず行き違いが生じるのは、お互いにこちらはヒトであり、向こうはイヌであることから、“種”のことなる動物だという違いがあるからです。そのため、犬の持つコミュニケーションの表現の中から人側がそのシグナルを読み取り受け取る練習をするのは、犬を飼う上で最優先させるべき学習項目です。はっきりといえば、それは犬にオテやオスワリを教えることよりも、ずっと大切なことです。

 ところが、これらのコミュニケーションはなかなか習得することが難しいのも事実です。たとえば、本にも犬の会話を知ろうというものがありますが、図や写真で紹介されるものと、実際のコミュニケーションには差が出てしまいます。比較的わかりやすいシグナルに落ち着かせ行動(カーミングシグナルとも呼ばれる)があります。これらのシグナルは単発で短いシグナルであるために、拾いやすくわかりやすいシグナルです。

 しかし、ほとんどのコミュニケーションは動きや音などといっしょに表現されるため、単純に受け取ることもできません。その犬のコミュニケーションをできるだけ正確に受け取る練習をするためのセミナーがこの「犬語セミナー」です。

 犬語セミナーを通して犬語を学ぶ目的は、犬がどのような状態にあるのかをまず把握するためなのです。この犬の状態を理解せずに、人の言う事を聞くようにさせるというのは一方的で相互コミュニケーションの機会を失うことになります。

 犬は関係性を蓄積させるようにつくっていきます。人と同じですね。相手が自分のコミュニケーションを理解しないと受け取ると、人とのコミュニケーションに不快感を覚え積極的なコミュニケーションをとろうとしなくなります。孤独になり落ち着かない行動をするようになってしまいます。


● 犬語の深読みとはどんなこと

 犬のコミュニケーションを受け取るには、受け取り側が人ですから視覚的に理解できる範囲内で、また聴覚的に受け取れる範囲内でということになります。ビデオなのでスローモーションにもなりますから、視覚的なシグナルの分析はかなり細かくできます。ただ、残念なのが臭いのコミュニケーションを受け取ることができないということです。犬たちは様々な臭いを発してお互いのメッセージを交換していますが、その世界に人は入ることができません。しかし、そうした見えないシグナルも、行動を通してある程度は理解することが可能です。

 今回は上級者編として犬の行動の読み取りのあとにさらに深読みを行いました。
犬語の深読みとは、犬のコミュニケーションに影響を与えている環境は背景について予測するということです。実際にはビデオを提供してくださった飼い主さんに、環境に関する背景をカウンセリングさせていただければ、細かく環境の影響について説明することができます。しかし、ここは犬語セミナーですから、知らない犬の行動を見て、犬の環境を推測するという逆バージョンでやってみます。

 この深読みをする目的は、犬たちの抱えている社会環境についてみなで考える機会を持つためです。自分の犬だけが幸せになればいいと思っている飼い主はほんの一部だと思います。犬と暮らしている人、犬と暮らしたことのある人の多くが、犬という動物から多くの恩恵を受けることから、すべての犬に幸せになって欲しいという願いを持っています。家庭で人と暮らす犬たちはみな、家庭で大切に飼育されています。栄養のある食べ物をたべ、温度管理をされた室内にいれられたり、屋外の安全な場所に居場所を提供され、清潔にしてきれいにして過ごしています。そんな現代でも、犬を取り巻く社会的な問題はたくさん存在しています。


● 現在の犬たちが抱えている複雑な問題について

 犬たちの抱えている現代の問題とは、行き過ぎた管理という飼育です。この言葉にはすでに矛盾があります。飼育という「飼い方」がすでに管理環境の中で行われます。犬を飼う上で「管理」という言葉は外せません。これは法律で定められた項目でもあります。昭和48年に議員立法で制定された「動物の愛護及び管理に関する法律」は改正を重ねながらも、犬と暮らすすべての人が守るべき法律として存在しています。

 もっとも管理すべきものとして、犬は必ずリードをつけて散歩をすることや、犬を飼育する環境は囲いのある私有地であること、囲いのない場合には係留をするという管理は、犬の飼養管理として義務付けられています。これは現在守るべき法律であることは、疑いもないことです。

 しかし、これ以上の犬を管理する方法が国内に普及しています。これらは西洋的な動物を利用することが前提での完全管理の方法です。少なくとも犬の飼育方法については、圧倒的にドイツをはじめとする西洋的なやり方が指示されています。しかし、どうでしょうか。私はこのことにはいつも疑問をかかえています。日本の土着の犬たちにこうした西洋的な飼い方や人との関係を持ち込むことを歓迎しないのです。その理由については、深いものがありとてもブログでお伝えすることはできませんが、グッドボーイハートでご縁のある方々とはこうした問題についても機会のあることにいっしょに考える機会をもっています。

 さて、次回の犬語セミナーは9月24日(日)12時~14時 グッドボーイハート七山校で開催します。

犬のことを深く学びたい方はぜひご参加ください。

クール寝顔

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怖がりさんだったリロと飼い主さんの成長の足跡:犬の行動を理解することは飼い主の役割

 グッドボーイハートのクラスを受講してくださっている生徒さんたちの感想をご紹介しています。
今回はチワワの2才になるリロくんの飼い主さんからクラス参加についてのお言葉をいただきました。

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・グッドボーイハートクラスを受講するきっかけについて

 リロは1才までペットショップにいました。そのためなのか、私以外の人にはなかなかなつかず、すぐに逃げたり隠れたりしていました。特に、主人に対して強く怯えるようになってしまいました。

 主人になついてほしくて、いろいろと試してみたのですが、さらに怯えがひどくなってきているように思えました。主人も自分になつかないためか、リロのことをまったくかわいいと思えないと言い出してしまい、どうしていいのか分からなくなって、グッドボーイハートに相談しました。

 主人や他人になつかないというこの他に、散歩をこわがって全く動こうともしないし、自分もどう接していいのかわからなかったのです。他にも不思議に思える行動がたくさんありました。

 最初に家庭訪問のカウンセリングクラスを受講したときに、自分が思っていたことがずい分違っていることに気づきました。もっとリロのことを知りたいし、リロと主人が仲良くなって欲しかったので家庭訪問トレーニングのレッスンをはじめました。

リロ
・家庭訪問レッスンを通して得た学びと気づき

 レッスンを受けるたびに、犬の一つ一つの行動にはそれぞれに意味があることを知りました。そのリロの行動の一つ一つを少しでも理解してあげることも、飼い主の大切な役目なのだということに気づきました。

 リロがやっていることを見てわからないことがあるたびにレッスンの時に先生に質問しました。そのたびに、犬の行動にはこんなにいろんな意味があるのだということを知りました。それで、ますますリロをよく観察するようになりました。

 観察していると、リロのやっていることにはいろんなメッセージがあることに気づきました。今までは笑って過ごしていたようなことも、リロのメッセージとして受け取ることができるようになりつつあります。


リロ1
・レッスンを通して変化したリロのこと

 レッスンを重ねるうちに、リロにもいろんな変化が起こりました。まず家の中でのトイレの失敗がなくなったことです。最初はペットシーツでさせていましたが、ときどき違う場所でしてしまうこともありました。トイレはすぐに室内ではしなくなり、庭に出てするようになりました。庭でのトイレも最初はリロを誘ってしていたのですが、今はひとりでトイレに行って戻ってくることができます。

 庭でのトイレをさせるためにペットドアをつけました。リロがひとりでは庭には行かなかったのですが、次第にひとりでも行けるようになってきました。ペットドアも最初は通ることができず、リロがペットドアを通れるようにいろんな工夫をしてやっとできるようになりました。

 庭におりるためには階段があります。階段はリロが来る前に作っていたので段差が高くてリロはなかなか下りることも上ることもできませんでした。でも、これも克服できました。こうしてひとつずつリロがいろんなことができるようになってきています。

 朝起きたときに走り回るような行動をしていました。留守番の後にも同じようにしていました。その走り回り行動は最初は喜んでいると思っていたのですが、それはストレス行動であることを教えてもらいました。レッスンを続けていくと、朝部屋の中を走り回る行動もいつの間にかしなくなっていたのです。

 家の中でいろいろと教える練習もしました。最初はオスワリを教えて、フセやマテもできるようになりました。ベッドに行く事も覚えました。お手も最近できるようになりハイタッチも教えました。とても元気にしてくれます。

 散歩に行けるようになったのことも喜びのひとつです。最初は怖がって歩かなかったりリードをひっぱっりしていましたが、今ではとても上手に歩けています。特に散歩は主人と行くのが好きで、散歩や外出のときには、自分よりも主人にべったりになっています。

 室内ではいつもクレートに入って出てくることがなかったのですが、少しずつクレートから室内に出ていられるようになりました。そしてついに、リビングで横になってリラックスして寝ているのを見てビックリしました。それも、グッドボーイハートのトレッキングクラスで、そのときお泊りにきていたボーダーのワンちゃんといっしょに山歩きさせてもらってからのことです。こうした変化がいきなり出るので驚く同時にとてもうれしく思います。

リロ山歩き3 

・これからもリロと良い関係作りを

 家の中ではリロはまだ多少、主人に警戒しているようですが、家の外へ一歩出ると、主人が大好きになってくれたことがとてもうれしいことです。散歩もとても上手いなって、リードをたるませていても、ロングリードを使っているときでも、ちゃんと主人の右横にいてペースをあわせるようにして歩いてきてくれます。いっしょに山歩きにもいけるし、野原で元気に遊ぶこともできるようになりました。宮武先生のレッスンを受講するたびに、リロが良い子になっていくことを感じています。

 リロが家の中でも主人と良い関係を気づいて、今少し怖がっていることを克服できるようにしていきたいと思っています。そのために、リロが上手に自分でテリトリーを作れるようになってほしいですし、リロも私達もいっしょに落ち着いて過ごせる空間作りをしていきたいと思います。


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 この時代に人と暮らしている純血種犬の多くの犬たちは、人為的な繁殖や販売といった過程を子犬のころに経験しています。これもすべて人が犬に与えている影響のひとつですが、この経験の中には犬の発達や、性質形成に強い影響を及ぼすこともあります。

 リロちゃんは1才までペットショップで過ごしていたようです。その経験はリロちゃんの人に対する社会性の発達について一定の影響を及ぼしています。これは特別なことのように思われるかもしれませんが、実は自分の犬たちも多少なりともそうした人の及ぼす影響を受けてきています。犬を飼うということは、こうしたことも含めて理解して飼うということです。

 犬を迎えたあと、思ったようになつかないとか、思っていたように言うことを聞かないというフラストレーションをかかえることがあるかもしれません。でも、ピンチはチャンスなのです。これらの犬の抱えている問題を、どうとらえていくのかという飼い主力が人と犬の関係を変えていきます。

 リロちゃんの飼い主さんは、最初は困ったと感じた問題を、リロと自分たちのためになんとか解決していこうと取り組みを始めました。実際に取り組んでみると、今まで思っていたことがずい分を違っていたことに気づきます。気づいて接し方を変えたり、リロちゃんの生活に必要なものを整えていくと、次第にリロちゃんに変化起きてくるのを観ることができます。

 その犬の変化は、ある日突然できるようになるというものもあるし、ゆっくり改善するというものもあります。どちらにしても、毎日犬をきちんと観ることが習慣づくと、なかなか変わらないといって不満を漏らすことがなくなるのは不思議なことです。犬のしつけや犬育ての際に、犬がなかなか思ったように変わらないと思われるなら、すでに犬を変えようとしていることに無理がありますよとお伝えします。

 なぜなら、変わるべきは飼い主であって犬ではないからです。

 その変化の中で、リロちゃんの飼い主さんは、犬をちゃんと観て理解することは自分の飼い主としての役割なのだと気づき、そして自分を変化させてこられました。犬のすばらしいところは、この飼い主の変化を敏感に感じ取り、そこに安心と安定を見出すことです。

 先日もクラスの中で、リロちゃんの以外な一面を見ることができました。まだまだ隠された部分もたくさんあり、表現できていないこともたくさんあるのでしょう。これからも一歩ずつ、リロちゃんが自分を表現できるように成長していくことが楽しみですね。


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Posted in 受講生のコトバ

本日ラジオ出演します。:月下虫音で大田こぞうさんと

本日のラジオの生出演して犬のことを話します。

今晩10時から、ラブFMの「月下虫音」という番組です。

月下虫音(げっかちゅうね)の大田こぞうさんは、グッドボーイハートで学んで下さった生徒さんです。過去形になっていますが、今でもときどきセミナーなどを受講して、まだまだ犬のことを学ばれています。

虫の世界について特別に知識や情報を持っている大田こぞうさんですが、実は虫よりも犬が好きらしいのです。好きというレベルを超えているみたいですね。

過去にも月下虫音になんども出演させていただきました。
特に昨年一年間は毎月のように出かけていたような気がします。
その過去の放送は残念ながらこちらではご紹介できないのですが、大田さんがグッドボーイハートに来たときにおしゃべりしたものを録音したものがあります。

以前ブログでご紹介しました。まだ聴かれたことのない方はこちらからどうぞ。

犬のこと話そう<大田こぞうさん編>第1回:録音ファイル付

グッドボーイハートの録音部屋、通称「犬小屋」で録音したものですが、大田さんのラジオとは違う素顔を少しだけ感じることもできます。

ラジオだとなかなかいえないこともあります。
たとえばその一遍だけを伝えてしまうと、誤解されることもあるのです。
その誤解から避難を受けることもあり、それがだれかの責任になってしまうこともあります。

グッドボーイハートのブログでの紹介であれば、ブログを通して追記で説明もできますし、ここはグッドボーイハートの責任の場所でもあります。そんなことで録音をお試しでやってみたのです。


さて、明日のラジオ方法の内容についてです。
実は、大田さんとメールで2回くらいの簡単な打ち合わせしかしていません。

というのも、いつも打ち合わせのときにすごくいい話になってしまい、本番のときにはなかなかその話が出てこないのです。
ラジオ放送という枠を意識しすぎて言葉が詰まってしまうというのは本当のことです。
深い話ができないといいますか。

今回は、大田さんから「ゴハンの話とかどうですか?」と提案されました。
これに対して、どんなゴハンがいいとかいう情報に偏った話にしようと返しました。
つまり、情報を伝えるのではなく、犬に必要なものとは何かを考える機会を持とうという提案です。

それで、今回は「犬に必要なものとは何か」という漠然としたテーマで始まります。

むしろ音楽も楽しんでください。
毎回、わたしが好きそうな音楽や、犬たちに関連するものなど、大田さんの選曲を楽しめるのが月下虫音の大きなたのしみなのです。

そして、みなさんも番組に参加してください。
番組宛のメールはすぐにその場で回ってきます。

それで、ブログをご覧いただいている方からの、番組中に番組へのメールをお待ちしています。


メールアドレス→ 761@lovefm.co.jp

楽しみにしています。
ペンネームで大丈夫です。
質問でも感想でも、気軽に送ってください。



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Posted in お知らせ

<犬のしつけ方・動画>ベッドトレーニング:犬用ベッドは犬の室内生活に必須です

 犬のしつけやトレーニングをいつ頃から始めたらいいのかという質問に対する答えは、犬がどんな年齢であろうと「今」です。犬と暮らしていなくても、学ぶべきは「今」なのです。

 学ぶにはなによりも時間が必要です。今学んだことを理解できるようになるのにまず時間を必要とし、そしてそれを実際に身につけるようになるためにさらに多くの時間がかかります。さらに、それを人に伝えようと思ったら、その数倍の時間がかかります。

 テレビの洗脳なのか、世間の思い込みなのかわかりませんが、犬のしつけとトレーニングは生後6ヶ月を過ぎないと始められないと思っている方もいるようですが、とんでもありません。むしろ犬ができるだけ小さな年齢のときから、犬のトレーニングを開始してください。

 ここでいう犬のトレーニングとは、飼い主が犬のことを理解するための勉強のことであって、犬を訓練学校に預けるという意味ではありません。長期間の預かりトレーニングは一般の犬にはおすすめできません。

 子犬期にどんなトレーニングをすると思いますか。犬の日常生活に必要なしつけの多くは生後1才くらいまでに、ステップアップを重ねて教えていくことができます。

 今日はグッドボーイハートのパピートレーニングのカリキュラムのひとつでもあり、成犬のトレーニングにも必須項目のルールをひとつご紹介します。

「居場所を指定するトレーニングのベッド編」です。


● 居場所を指定する「ベッドへ」の意味と様子

 室内飼育の犬の場合には、犬だけのスペースを確保して生活環境の安定と安心を獲得させることは必須の犬を飼うための環境整備です。犬だけのスペースというのは、犬の立場からいうとそのスペースを他の誰かに侵されることのない安全地帯のことをいいます。また、個体のスペースを主張できるスペースでもあります。

 この物理的なパーソナルスペースは、人間も日常的に利用しています。自宅にあるダイニングの椅子、リビングのソファ、座敷の座布団、そしてベッドや布団といったものです。これらは、屋外の外敵から身を守るための場所というよりも、室内の限られた空間(テリトリー)を、家族(群れ)内の集団で上手に利用し、そのことで関係性を安定させるために役立ちます。

 では実際にどのような行動をするのかを動画で確認してみましょう。以下の動画は家庭訪問レッスンのときに撮影させていただきました。飼い主さんの「ベッド」という指示で自分たちのベッドに犬が移動するシーンです。

動画 「ベッド」の合図で自分の居場所に移動する子犬たち

 飼い主さんの「ベッド」という声の合図と手の指示で、それぞれの指定された犬用のベッドに犬がいきます。「ベッド」合図はしばらくそこで待機をするようにという時に使用しますので、ベッドの合図があったらフセの姿勢になれるように誘導していくと、ベッドでの行動がさらに安定してきます。

 動画に協力してもらったラブラドル・レトリバーの2頭の犬たちは、胴胎犬(兄弟犬)で、生後5ヶ月になります。トレーニングの際にオヤツは使用していません。報酬はもっと別のところに設定されています。


● 犬に「ベッドへ行って」のトレーニングがどのように役立つのか

 室内で犬の居場所を指定するトレーニングは生活の中で大変役立ちます。犬がどのスペースにいていいのかがわからないときに、ここに居なさいといわれることは、犬たちにとて居場所を獲得したという価値のある合図です。価値の高さは「居場所」という特別なスペースの存在が影響しています。

 人を例にして考えてみましょう。たとえば、家族の関係性によって、室内の家族が過ごす場所では細かく場所が指定されていることがあります。特にダイニングの椅子はそうです。

 食事をするときに利用するダイニングの椅子には、指定席というのがあります。みなさんのご家庭にもないでしょうか。自分はそこに座る権利があるというものです。食事をしようと思ったときに、兄弟間で席の取り合いになるのは、弟の席に兄が座ってしまうときです。お父さんはここ、お母さんはここという風にですね。いつもの自分の居場所に他の人が座っていると違和感を覚えるでしょう。時にはお父さんの椅子は格別立派ということもあります。昔は父親は上座に座るのが基本でした。居場所は家族間の序列を明確にするものでもあったのです。

 犬に話を戻します。犬はもともと屋外にテリトリーをもつ動物です。イヌ科動物が巣穴の近くで過ごすときには、かれらにはダイニングテーブルも椅子もありません。しかし、ある程度の配置がされています。あるのは巣穴とテリトリーの境界線だけです。巣穴には子犬たちが、巣穴の前には巣穴を守る犬たちが、そして境界線を外敵から守る犬は境界線を確認しながら配置されます。群れの中心的な存在のものは、少し高いところや全体を見渡せる中心地点にいます。

 そして一部の犬は、人といっしょに室内で暮らすようになりました。飼い主という人が管理する生活スペースです。寝る場所や隠れる場所としてクレート(もしくはケイジ)を与えられています。リビングで人とスペースを共有するときには、飼い主の居場所である椅子には上がらないように教えられるでしょう。

 最後に、リビングでくつろげる犬の居場所として犬用のベッドが必要なのです。犬用のベッドを室内に置いてある家庭はあります。犬は自分の好きなときにベッドの上で寝たり遊んだり、休憩したりしています。

ブランとマージベッド
 しかし、飼い主の指示で犬用のベッドに行ける犬はあまり多くありません。その理由の多くは、教える必要性の高さがわからないということ、日常的な犬との暮らしでのその合図の使い方が分からないとか、また、教え方がわからないというものでしょう。

 この合図の必要性の理由についてはたくさんあります。簡単に説明すれば、人と共有するスペースに自分の居場所を獲得すること、そしてその居場所は誰にも侵害されないものであるということ、そのことは、犬が自らの安全を確認できるということと、さらに群れの中での精神的な居場所の獲得にもつながっていきます。

 ひとつの状況を例にあげます。来客が来たときに来客に興奮したり警戒するシグナルを見落とされることがよくあります。吠えたりとびつくという犬の行動はわかりやすいですが、そうでないものもあるのです。

 来客時に落ち着かないシグナルとしては、部屋をウロウロとする、自分の体をなめたりかじったりする、おもちゃをもってウロウロする、床をなめる、来客に体をくっつけてくる、飼い主のうしろをついて歩くといったものも入ります。

 自分のテリトリーに、家族以外の動物が入ってきたのですから、落ち着かなくなるのは当然のことです。飼い主にとって日常であることが、犬にとっても同じようになることはなかなかありません。イヌ科の動物の生活では、他の社会的な対象となる動物が自分の生活圏に入ってくるのはとてもまれなことなのです。

 このときに犬にベッドにいくことを指示します。最初はクレートで練習をしますが、クレートとベッドは違いがあります。ベッドのテリトリーはもっとゆるいものです。クレートの中には人が手をいれられませんが、ベッドにいるときには簡単に犬に触ることができます。そのゆるい境界線の中に犬は居場所を獲得し、来客を多少の警戒心をもって観察していたり、環境全体の安定性についての情報を取得していきます。

 子犬のころはこうした観察や環境把握に時間がかかりますが、生後3ケ月もなると犬は自分の周囲の環境に対して強い関心を持つようになっています。少しずつ環境を把握させる練習もさせていく必要があるのです。もちろんそれは、たくさんの場所につれまわして、たくさんの人や犬に会わせることではありません。

 犬用ベッドに犬を行かせることは、犬を社会的に排除することではありません。むしろ犬用ベッドに行く練習をすることで、犬は安心を獲得し、自分の役割を理解し始めます。このベッドトレーニングは犬がインターホンに反応する前にできるようになることをおすすめします。

 少ない犬との時間でたくさん教えることがあるでしょうから、優先順位は決めていかなければいけませんが、少なくとも、犬にお手などを教えるよりはずっと重要なトレーニングです。


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おすすめの本:「岐路に立つ自然と人類」今西錦司著、生物の見方が変わり世界が広がる本

 今日お薦めする本は、日本に生き物たちと暮らすすべての日本人に読んでいただきたい今西錦司先生の本です。

書籍名 岐路に立つ自然と人類
著者 今西錦司
発行 アーツアンドクラフツ

岐路にたつ
● 今西錦司先生という生態学者

 生態学という学問はもちろん専門分野なので、ノーベル賞でもとらない限り世間から注目されることはありません。ノーベル賞は科学的な裏づけがあって評価されるものです。今西先生の研究は細かくみるのではなく、生物全体を抽象化しておおきく全体からとらえるという視点から立っていると感じています。そのため、抽象論だとして見逃してしまうこともあるかもしれません。しかしその見方や考え方にはひとつの哲学があり、ほんとうに惹かれてしまうのです。

 今西先生の専門分野や生態学、文化人類学ということらしいですが、生態学から文化人類学へ以降した経過についても、この本の中に述べられています。また人のことを知りたいと思って入った文化人類学という学問さえ、西洋の細分化やその偏った見方に対して常に警笛を鳴らしていらしたようです。

 「私は人類学をやろうと思って、生物学をやったのではない。生物学をやっているうちに、人間のしていることも、現象的にはどうであろうと、また人間がこれに対して、どのように好き勝手な理屈をつけようと、その根底には、生物の生活を支配している法則が、やはり人間だの生活も支配しているのではなかろうか。つまり、人間だけが、他の生物から切り離された特異なものでなくて、生物といい、人間といっても、それらはともに、同じ地球のうえで、同じような運命にしたがわなくてはならないのではなかろうか、というように思われだしたのである。」(本文より抜粋)

 というように表現されているのですがこれはあくまで抜粋です。このあとに続くまた最もだ思われる今西先生の持論にワクワクすると同時に、この時代にこのようなことを述べられた先生の言葉に対して、大勢は耳をかさなかったのだろうかという不思議な気持ちにもなりますが無理もありません。当時は、といいますか今でも、学問については西洋に習えの姿勢が強いのです。実験室の中で起きていることがすべてで正解で、実験室の中で起きていることは再現性が高く科学的に評価されてしまうからです。そして、研究の目的が自分が本来知りたいことではなく、他者や多くの人たちに評価されることに変化してしまえば、みな実験室に帰っていくということでしょう。


● 「岐路に立つ自然と人類」カバーコメント

 この「岐路に立つ自然と人類」は今西錦司先生の著作やコメントやらを集めて一冊の本としてまとめられています。発行が2014年で先生が他界されてから、22年もたったあとに出版されました。そのカバーコメントにはこのようにあります。

 「実験室のなかの生物(生命)ではなく、自然に生きる生物を、生物全体社会として環境もふくめ思考した今西錦司ー。
 21世紀の科学の閉塞的な状況を予想した今西錦司は、登山家として自然に関わるなかから、細分化・専門家する生物学に対して、自然に生きる生物自体を対象とする「自然学」を唱えた。本書では、その「今西自然学」の主要論考とエッセイを収載する。」

 今西錦司先生のいろいろな考え方の側面に浅く触れ、自然や生物といったものに対する見方に幅を持たせるための導入書としては、とにかく多くの方に読んでいただきたいという内容です。

 たとえば、ダーウィンという名前は多くの方がご存知です。生態学を学んだことのない方でも、生物に興味がなくても耳にしたことがあるでしょう。そのダーウィンが唱えた生物の進化論についてあらたな見方を提唱されています。また、ダーウィンの進化論が持てはやされたあと、実験室の中の科学で行われた進化を研究する遺伝子的な学問の中で、遺伝子が突然変異して進化するという見方についても厳しく論じられます。

 「だからダーウィンのように、進化は現在も進行中であるという見方に、そのあまま賛成しがたいばかりか、遺伝学者のように、実験室内で突然変異がおきるからといって、それをそのまま自然でもおきているかのように要請するのは、事の順序を誤るものとしなければならない。とくに、その突然変異がでたらめなものである、というにいたっては、もはや自然を侮辱し、これを冒涜するものであるといっても、過言ではない。われわれの自然は、好きこのんでそんな無駄な気まぐれをしない自然である。自然には、自然によってたつ経済があり、種社会にはまた種社会で、それを維持していくための、経済というものがあるかである。」

 と最のことを、整然と述べられていて感嘆してしまうわけです。

● 登山家の今西錦司先生

 本の中には、今西先生は一時自然に対置されるものとして人工を選んだけれども、西欧流の考え方では、自然に対置されるものは人間であるといわれています。全くそのとおりだと思います。そしてその上で、先生は「しかし、私は、人間もまた自然である、と思うようになった。」と続けられています。

 今西先生は学者としてすばらしいだけでなく、生涯を通して山を愛した登山家でした。山に対する言葉や山で感じたことなどの言葉も紹介されていることで、今西錦司先生という方が自然とどのように過ごしてこられたのかを知り、感動を覚えます。先生は、自分は長く自然の中ですごしすぎたかもしれないがともの述べられていました。自然に過ごす時間がながければ、思ったり知りえたことがあってもそれを著作として残す時間はなくなるのです。しかしそうした自分と自然の時間を削ったところで、机の上で何が学べるというのでしょう。

 蒙古の遊牧民族の家畜化と西洋の家畜化の違いや、人が人として育つことの環境についてなど、犬との暮らしに絶対に役立つ見方や考え方が満載です。これは一度に読める本ではありませんが、手元においていつも見返して今西先生を感じられる本の一冊です。

 愛犬をしつける本や、ほめて育てる犬のしつけなどという本をもう捨ててください。そして、犬や動物、そして人間を自然のひとつとしてみる、今西錦司先生のような本に触れていただければ、きっと今日からのあなたと犬の関係は確実に変化していきます。

・グッドボーイハートのお薦めの本はこちらからもご覧いただけます。
GoodBoyHeartの本棚

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人に吠えたことがない犬に吠えられるのは何故なのか:犬が見ている世界とは

 たまにというよりも、犬と会ったときに度々起きる不思議なことがあります。

 レッスンで訪問したり、偶然通りかかったドッグランの中にいる犬や、ときには散歩中に近付いてきた犬が、普段人に対してしているのとは違う行動をすることがあるらしいのです。


● 人には吠えたことがないんですといわれたこと

 たとえば、こんなことがありました。あるご家庭へ訪問レッスンに伺った初日のことです。わたしはまだ飼い主さんとも顔をあわせていません。インターホンを鳴らすと中からワンワンと犬の声がします。

 その声は、ワンワンというよりはガウガウという風に、戸口の向こうなのでこもった声ではありますが、多少の緊張感もあわせて伝わってきます。中から飼い主さんが「どうぞー開けてください。」といわれるので、戸口を5センチくらい開けてみます。5センチしか開けられないのはその後の犬の行動を多少なりとも予測しているからです。

 ドアを少し開けたとたん、玄関の框から玄関の戸口の前まで中にいる大きな犬がガウガウいいながら突撃する姿をみました。それで戸口を5センチから3センチ程度にせばめます。

 「すみません!犬にリードをつけていただけますか?」と大きな声でお願いします。戸口の向こうで飼い主さんが犬にリードをつけたのを確認します。飼い主さんがそのまま犬に引きづられないことを見ながらようやくドアをはっきりと開けると、犬はますますガウガウと今にもとびかからんばかりです。

 そこで飼い主さんがひと言「今まで人に吠えたことはないんです。」といわれました。


 同じようなことはなんどもありました。ドッグランの横を歩いていたら、中からウォンウォンと太い声で大型犬が私の方を向いて吠えています。周囲には犬も人もいませんから、わたしに対して吠えているのだとは思います。

 飼い主さんは犬を抱きかかえるようにしてなぜかわたしをにらんでいます。そして「人に吠えることなんてないのに」とひと言。もちろんその犬とは初対面で、犬との距離は10メートル以上は離れている上に、間には高い柵もあります。


● 他のパターンの「他の人と違う」といわれた犬のこと

 他にも普通の人とは反応が違うといわれたことがあります。歩道を歩いていると散歩中の犬がわたしのそばをとおりかかるときに衣類の臭いをとるような形で立ち止まってしまい、そのあとわたしの後を追うように数歩ついてきます。

 このときなぜか飼い主さんもついてきてしまう上に、このような状態で自分の背後を見せるとトラブルが起きることもあるので、一旦止まって相手の犬が下がるのを待つようにしています。

 犬は入念に臭いをとったあと、少し顔をそらして立ち止まりじっとしています。それをみながら飼い主さんは「他の人とは違いますね。犬を飼っているのですか?」とたいてい尋ねられます。

 犬と暮らしてはいないのだけど仕事で犬に接することがありますのでとお答えすると、飼い主さんの方は納得します。せっかくだから「他の人に対するのとどう違うのですか?」と質問させていただきます。「他の人にはとびついたり、体を寄せたりするんです。」とのことでした。なるほどですね。

 こんなことの積み重ねで、当然家庭訪問レッスンでも飼い主さんや他の人とは違う行動を犬たちが見せてくれます。犬のトレーニングクラスの訪問レッスンでは、インストラクターであるわたしが直接的に犬を訓練することはありません。少しだけやりかたの説明などをするときに犬に接するというだけのことです。

 しかし、ほとんどの犬は他の人とは違う反応や行動をするようになります。大人しくなったり、飼い主さんいわくいつもと違うおりこうさん、今日はできるモード、従順にしているなどといった行動になる犬たちがいます。


 しかし逆もあるのです。前述した「人には吠えたことがないのに吠える犬」と同じように、他人に対する反応がいつもより過剰になることがあります。
 こういう激しい行動が出たときには「わたしの後ろに100頭の犬がいるような感じですから」とか「他の犬に対する反応を同じ反応をされますから」という冗談ともつかないような説明で一旦は納得してもらいます。

 この不思議な犬の行動に注目されすぎると今日やりたいレッスンが不十分になるからですが、本当はこの犬の反応は犬の社会性を表現する大切な行動です。他のトレーニングを進めるうちに、この不思議現象も次第に理解できるようになります。


● 犬が感じているのは何なのか?

 タイトルには犬が見ているとしましたが、正確には犬が感じている世界は何なのかということです。もう少し科学的にいうと、犬が感知している環境は何なのかということです。その感知した環境の因子のひとつがわたしという“人間”です。

 もちろん、犬たちはわたしのことを人として間違いなく感知しています。まさかゴジラだと思っているわけでもないし、未知の生物と感知したわではありません。そして、一番疑いをかけられる「犬と間違えているのではないか」というわけでもありません。

 犬は臭いの動物です。確かにわたしは日常的にいろんな犬の臭いを衣類につけています。毎日洗濯はしていても、わずかに残った犬の臭いがついていることは間違いありません。犬が衣類の臭いをかいでいるときは、わたしに関心があるのではなく、今つけてきた犬の臭いに関心があるのだなということはわかります。だからといって、わたしを犬と勘違いしているということはありません。

 遠くで吠えられることもあります。逆毛を立てられることもあります。臭いがとどかないような状況でも、瞬時に吠えられることもあることです。犬に関心はありますが、凝視して相手を挑発するような行為をしたわけではありません。戸口の向こうにいてまだ会ってもいない相手に吠える犬は、一体なにを感知しているのでしょうか。

 こういうときに「オーラが見えてるんですよね!」といわれることがあります。気のようなものですね。戸口の向こうにいる相手に対してただならぬ気を感じて吠えているというのでしょうか。いやそこまで強い気を発するほどの人間でもありません。いたって普通の人間なのです。

 犬の先生が来ると飼い主さんが意識していたため、その飼い主さんの意識が犬に働きかけたのかもしれません。ただ、そうともいいきれません。同じ仕事なのにスタッフの訪問ではこうした行動が見られなかったからです。

● 犬の隠れた社会性を観ること

 こうしていろいろな状況を冷静に考えてみても、今まで人に吠えたこともないという犬が、まだ会ってもいない状況下で吠えるのでしたら、それはかなり高い犬の環境を感知する能力であると思います。オカルト的な意味ではなく、どのように感知しているのかは不明だとしても何かを感知したのでしょう。

 対面したときに明らかに犬の反応が他の人と違うことについては、ある程度説明ができます。なぜなら、自分が見ている犬というのは、見るではなく観るです。しかも、外側のかわいい容姿や形を観ているのではありません。知りたいのはその犬の性質について、特に社会性についての情報です。

 もしかしたら、犬はわたしが何を観ているのかを感知しているのかもしれません。そして慌てふためいて吠える犬は、何かを見透かされてるのを恐れているのかもしれません。自分にとって一番怖い相手は、自分のことを見透かしてしまう人です。犬という動物は、人に対して表面的にはお利口さんに言う事をきいているように見えても、実際には本来の社会的な服従関係にはないこともあります。それは観ればわかることです。

 ということで、もしカウンセリングに伺ったときに犬が他の人とは違う反応をしたとしても、決して驚かないでください。あなたの犬は環境がいつもと異なることを感知する能力を持っていて、それをあなたとの関係の中にも使ってきたということです。それは安定した関係を築く能力でもありますが、バランスを崩せば不安定な依存関係に発展していることもあります。

 こうしたなんでもないけどいつもと違う行動には、犬を知る上での重要なメッセージが隠されています。そのメッセージ受け取っていますか?

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タッチヒーリングクラス(人用)リンパマッサージのオプションができました。

 ドッグヒーリングクラスは飼い主さんもいっしょにタッチヒーリングを受けていただけるペアクラスがあります。
犬は飼い主の鏡なのですから、癒しを必要としている犬の飼い主さんにも癒しの時間を持っていただきたいからです。

 その飼い主さんのタッチヒーリングクラスのオプショナルコースに「リンパマッサージ」が加わります。追加料金は700円(税込)です。

 
 実はリンパマッサージは数年前にアロマ整体クラスを運営されている先生の下で指導を受けて学びました。その後自分のケアで練習し、セルフケアのひとつとして少しずつクラスの中で生徒さんにご紹介してきました。七山校で調子の悪い方には短時間ですが無料でさせていただいたこともあります。

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 飼い主さんのセルフケアというのはとても大切です。飼い主さんのストレス状態は犬に直接的に影響をするからです。犬は飼い主さんの状態にはとても敏感です。人は時代とともに発達して豊かな生活を実現してきたはずなのに、なぜかストレス過多の社会になってしまいました。ストレスを緩和させるためにペットを飼う人も多いのです。しかし飼い主のストレスはペットにとってはとても強いストレスになります。

 癒し=リラクゼーションではありませんが、リラクゼーションがストレスケアをすすめてくれるのは確かです。リンパマッサージは皮膚に直接的にアプローチし、リンパの流れが改善されるのを助けてくれます。もちろん医療行為としては行いません。健康ケアとして、気持ちよいと感じていただければ、セルフケアとして覚えて帰ってください。リンパマッサージならご自宅でも気軽に自分でやっていただけます。

 今までヒーリングクラスで無料のオプションで提供していたものですが、「サービスとして加えてほしい」というご要望があったので、ヒーリング料金+700円でご提供することにしました。

 リンパマッサージは、デコルテ、フェイス、膝から下のあし、脇からしたの腕のみです。タオルなどが必要なので来校の方のみとさせていただきます。また、お顔の化粧などとれますので、フェイスをされる方は化粧品もお持ちください。

 使用しているオイルはニールズヤードレメディーズのグレープシードオイルをベースオイルとして、飼い主さんのお好きなアロマオイルを使っています。アロマの種類もそれほどたくさんはありませんが、ニールズヤードのオイルなので香りは絶品です。700円はオイル代として頂戴します。

 専門家の方のようにはいきませんが、七山に流れる自然のリズムがマッサージの緩やかさを支えてくれます。みなさん、よく寝てくださいます。お気軽にご利用ください。


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